やがて我が身は剣となる。   作:烏羽 黒

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  今回の一言
 ん~、なんだか妙に長くなってしまった。

では、どうぞ


解放の時間だ

「あの方たちは一体……」

 

 チップが詰まったケースを片手に提げながら、彼女は一人呟く。重さからして、相当な額となるのは明白だ。眼前でありえない儲け方をされてしまったのだからそれも霞むと言えようが。

 

「すっごい綺麗だったね、あと太っ腹。一回滅んじゃえばいいんじゃないかな」

 

「シル……? あの、目が笑っていませんが……」

 

「気にしないで、リュー。それより、こんな手に入れちゃったけど、どうするの?」

 

 確かに、これだけあると処理に困ってしまうのは事実。だが、丁度よかった。彼に近寄ったのはあわよくば資金提供をしてもらうため。こうして得られたことは幸運と言えよう。あの方々に感謝しなければ。

 これを利用して、後は実力で勝つのみだ。

 どんなゲームでも良い、勝って、勝って、勝って、勝って―――あわよくば稼ぐ。これだけあれば損失を恐れる理由も無いのだ。

 

 彼がまたルーレットで稼ぎ出し、先の静けさがどこかへ吹き飛んだのを横目で見ながら別テーブルへと去って行く。彼と一緒にゲームをすれば儲かり目立ちこそすれ、それは私たちの実力ではなくなる。それでは見せつけの意味がない。  

 

「ではシル、やりましょう」

 

「うん」

 

 ベットは多量に、さすれば必然、最低でも店の従業員乃至オーナーの目に留まる。一般人には目立つ必要がない、ただ目に留まり、貴賓室にさえ入ることができたのなら――あとは、こっちのものだ。

 私は経験を積んだ熟練者でも無ければ、この道に秀でた人間でもない。ただ少しばかり、『駆け引き』という点では向いているだけだ。

 そんな私が勝ち続ける方法は、真面目に勝負に挑むという一点のみ。実際問題、ずっと勝ち続ける事なんてできないだろう。だが、負けも負けで終わらせないことはできる。

 

「……あちらの方々も相当目立ってますね」 

 

「ほんとだねぇ。あっ、ちょ、ちょっと見て……! あれってもしかして」

 

「……?」

 

 騒ぐ二人の女性――主に叫んでいるのは桃髪の人――が妙に気になり一瞬視線を向けるが、勝負に集中しようとすぐに戻した矢先、ちょんちょんと呼びかけられて、疑問を持ちながらもまた振り向くと、件の二人が今まさに、従業員と思われる男性の指示の下貴賓室へと誘われていくところであった。

 

――あの二方に、危険が及ぶのは避けたいのですが。

 

 いや、桃髪の女性はともかく、銀髪の女性は確実な実力者だ。ほっそりとした腕の筋肉に沿った特徴的かつ効率的な肉付き、あれは鍛えている者にしかありえない。

 私たちも負けずと頑張らなければ。

 

「ストレートフラッシュ」

 

「畜生ぉぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 さて、ペースを上げなければ。

 

  

    * * *

 

 あぁ、先に来ちゃったよ……私の計画全部ひっくり返されたわ。

 まさか私が招待されることになるとは。断りを容れたかったのだが、ミイシャさんがあまりにもはしゃぐもんだから、危険を承知でやって来たまで。なに、安全は保障するさ。

 

「ミイシャさん、どう思いますか、一般人の見解からして」

 

「そうだねぇ、噂に違わない、とだけ言っておこうかな」

 

「訂正。貴女全然一般じゃないです」

 

 耳打ちすると、そっと彼女も返してくれた。

 従業員と思われる男は私たちを貴賓室へ通しただけで、「ごゆっくり」の一言だけ言い残し横へと逸れてしまう。だがそれは一本道を創り出す最後のピースであった。明らかに、誘導している。点々と(まば)らに立っているように一見して見えるのだが、その隙間は実に絶妙。意識せずこの景色に目を奪われる人間ならば必ずと言っていい確率で目的地(わな)へと誘われてしまうだろう。

 彼女もそれを見破ったか――否、どうやら違う。彼女が言っている『噂』とは、『エルドラド・リゾート』自体の噂か。情報屋紛いのことをしている彼女からしてこれくらいは当たり前と知っているのだろう。

 

――乗るべきか、避けるべきか。

 

「二つに一つ……なんだよなぁ」

 

「ん? どうしたのセアさん。貴賓室は通常よりベット率が高くなるけど、さっきあんなにベットしてたんだからもう怖くないでしょ。ほら、早くはやく」

 

「はいはい、わかってますって」

 

 この人が、戻る逃げる――等々悲観的行動を許すおよび選択するわけない。

 一つ溜め息を吐くと、先導するように私が前へ出るが、彼女の歩調に合わせる。不測の事態への対処、そのためにも彼女からは離れてはならない。

 なにせ、彼女はこの状況に気付いているか怪しいのだから。事が起きて混乱するのは目に見えている。

 

「ねぇ、セアさん。どっちのチップ使ってゲームする?」

 

「私ので構いませんよ。大切なんでしょう、そのチップ」

 

 振り返らずにそうとだけ告げると、彼女はふざけたような態度を一瞬にして改めた。息を呑み、ふと足を止めたがまた歩み出す。少しばかり速くなって。隣で歩む彼女が、えぃっとケースをぶつけて来るが――びくともしない私にげんなりとさせてごめんね? 硬いことが取り柄なの。

 

「ようこそおいで下さいました、お客様方。当賭博場(カジノ)はいかがお楽しみでしょうか」

 

「「噂通りですね」」

 

 見事に被った二人に、三人は何故か一様に驚きを見せる。だが何もかもに誤差が生じていて、その意味すらも一様ではなかった。

 悲しきかな、ここのオーナーたるその男も違えてその意味を理解していた。だからこそ、内心ほくそ笑み、己への慢心を続ける。気づいていない、と。

 

――だがそんな訳、無いんだよなぁ。

 

 ささっと私を盾にするように隠れたミイシャさんも、この男の本質に気付いたのだろう。純粋な屑男め、下心が丸見えだからなぁ。この人絶対『モテない』なタイプの人間。少なくとも私は無理。

 短足短腕の小太りドワーフが無理をしてきているスーツはたいへん見苦しい。発するしゃがれた声も聞くに堪えず、今すぐにでもその喉を潰してしまいたいものだ。

 

「ここ貴賓室は、通常よりも危険(ハード)なゲームをお楽しみいただけます。どうぞ、幅広くお試しくださいませ」

 

「ふーん、因みに私『初心者』なのですけど、誰か説明してくれる方とかいませんかね。できれば、綺麗な女性で」

 

「ほぅ……」

 

 あぁ、自殺行為だけど、仕方ない。後ろから冷ややかな視線をしみじみと感じるのも耐えながら、こうするのが一番だと己を貫こうと誓った。

 目を細める男はどうやら私に特殊性癖があるとでも考えているらしい。その脳内で、私は他の女性たちと共に百合的凌辱がされているのだろう。うわぁ、寒気する……

 

「では、私の()()でどうでしょうか。詳しい希望はありますか?」

 

 どうやらこの男、本気で私のことを引き込みたいらしい。既に調教している自分の愛人とただならぬ関係を作ってしまえば容易いとでも思っているのか。ふざけるなよ、アイズ以外にティアとかフレイヤとかアリアとかその他比較的親密な人間・精霊諸々以外、私が絆されるわけ無いだろうが!

 

 まぁ、これは実際狙い通りなのですけどね、てへ。

 

 アンナ・クレーズさん。それが現在の重要人物。

 『愛人』なんて片腹痛い名目で連れられている彼女が非常に不憫で仕方ない。ただ可愛いだけでどうこうされるのは理不尽だと思うのだ。可愛いは正義。男に見られて拝まれるのはともかく、何も独占されて散々好き放題去れるために居るわけでは無いのだ。

 

「では……新鮮な()でお願いします」

 

 じゅるり、わざとそうして舌なめずりをしてみせる。勿論演技だ、だから引かないでくれ、ミイシャさん。それは本気で応えるから。

 

 男がにたりと笑うのを、私が見逃すはずなかった。それは確実に、私の掌の上で踊っている証拠である。たとえでも嫌だな、こんな人が掌の上で踊るのは。気持ち悪いですよぅ……

 

「では、最近できた愛人をご用意いたしましょう。おい!」

 

「下品な」

 

「ねぇセアさん、一発殴ってくれない?」

 

「嫌だ、触りたくない」

 

 品位を欠片も感じられなかった男に、見ているだけでは最上の品位を感じる二人は呆れに陰口を交わす。その内容はあんまりな誹謗中傷だが、相応のものと言えた。

 

「では、どうぞお好きなテーブルへ。直ぐに向かわせますので」

 

 なんて言い残し、男はとたとた去って行く。行儀の悪いその様にまた溜め息を誘われてしまった。

 どこかへふらっと勝負しに行こうとしたミイシャさんの首をがっしり掴み、軽々と持ち上げると連れて行くのは高級感漂うソファが置かれた休憩所だ。

 

「どうふぅっ」

 

「――バカですか貴女は。どう見たってここは人を貶めるためにある場所ですよ。そう簡単にゲームをしない、これ鉄則」

 

「初心者が何語ってるの……? セアさんは単に女の子を楽しみたいだけでしょ? 身の危険を感じるから早く逃げたいんですけど……」

 

「ちっがうから! 私にそう言う趣味趣向がないとは断言できないけど、今回限りは違います!」

 

 深いわけが合って……なんて説明することができないのがものどかしい。ここで話すわけにもいかんし、何よりその対象たる人間――最近できた『愛人さん』ことアンナさんに聞かれては不味い。

 

「ねぇミイシャさん、貴女は知らないのですか、ここの裏を」

 

「あ、うん、知ってるよ。ほんのちょっとだけね」

 

「初耳だよ畜生」

 

 今まで無知だと思い込んでいたら、どうやら根本的に異なっていたらしい。彼女をそこまで侮るべきでは無かったようで、えっへんと慎ましやかな胸を張られては何も言えない、空しくて。

 私の方が大きいのって、世は理不尽だよ。

 

「まぁ、わかっているなら話が早い。まずここに入っちゃったら、簡単には出られないことは明白です。ですので、散々ふんだくってやるか、武力行使の二択……どっちがいい?」

 

「ふんだくっちゃおうよ」

 

「流石わかってる」

 

 援助はもう終了しているが、ここに入ってしまったからにはもう最後まで突き通しちゃおう。アンナさんの身柄を確保していれば、少しは役に立てるはず。

 

 

――コン、コンッ。 

 

 

「――愛人、じゃないよね、たぶん」

 

「良く解ってらっしゃる。でも、声に出しちゃダメですよ」

 

 そんなことを、地に着いているかのような足音を立ててやって来る少女をもとに語った。

 今にもすらりと落ちて、素の姿を晒してしまいそうな純白のイブニングドレスを纏う少女は、女神にも見紛う容姿を誇っており――とてもじゃないが、愛人には向いていない。そんな暗い顔をして。

 

「こちら、アンナという女です」

 

「お目が高いようですね、気品あふれる()()()()()だ」

 

「こわっ、セアさんこわっ、目が怖い」

 

 おっとイケナイ、つい感情が籠ってしまった。怯えている少女が更に恐怖で委縮してしまっている。私に悪いイメージを持つ分には構わないが、気分を害するつもりは殊更ないのだ。

 ただでさえ傷ついている少女相手に、非道を働くほど鬼ではない。

 

「では、よろしくお願いします、アンナさん。貴方もありがとうございますね、もう結構ですので、どうぞ他の方々の対応に回ってくださってよろしいのですよ」

 

「ははっ、そうですか。では、ごゆっくりどうぞ」

 

 厭味を言ったつもりが、気にする事でもないかのように受け流されて去りゆく。その背中に一つ風穴を作ってやりたい気分だね。

 ぶるぶる怯えて、浮かない顔をしている少女がその場に残り、その瞳には明らかな動揺が見て取れた。数日前に突然見ず知らずの人間に誘拐紛いのことをされたのだから致し方あるまい。

 

「あっ、こ、此度は、当賭博場(カジノ)にご来場いただき、誠にありがとうございます。ご、ご紹介に(あずか)りました、アンナと申します――」 

 

「こんにちは、アンナ・()()()()さん。私はセアと申します。どうぞ硬くならずに接していただけると、こちらとしては嬉しいですね。あっ、そうそう。こっちの見た目は素晴らしい女性は私の連れ――ではなく、私を連れてきてくれた方です」

 

「どうも、ミイシャでーす。見た目だけでごめんなさいね、あはははははっ。でもどうしてだろ、ここにいるとその見た目すらなくなっちゃいそうなんだよねあははは――――っ」

 

 冗談程度のことに、彼女はどうやら深く気にしているらしい。それもそうか、世間一般価値からしてここにいる女性は容姿の完成度(クオリティ)が抜群に高い。特に私たち三人は周りから常に周りから目を集めるほどだ。だから彼女は比べてしまう、嫉妬というやつだ。

 アンナさんはそれに笑みを浮かべることも無い。そんな様子では、私がこっそりと出したヒントも気づけていないのだろう。これは、じっくりと時間を掛ける必要がありそうだ。

 

「さっ、座ってください。一先ず、何かゲームでもしましょうよ。その為に呼んだわけですし」

 

「は、はい」

 

 丸テーブルを囲むように座る。そのひと動作ですら彼女は苦心していた。仕方あるまい、蝶を展翅したかのような形状の薄布――しかもその先端のみが彼女の不可侵領域を隠しているのだから。純真な少女であることが明らかな彼女にとって御開帳は恐れるべきことの一つである。

 といっても、もうほとんど晒しているような姿なのだろうけど、問題は尖端なのだろう。

 

「ねぇ、なんでわざわざこんな子呼んだの、私を虐げたいの? 自身を無くさせたいんでしょ。はいそうですよ、私は化粧しないとそこまで可愛くないですよ。こんな天然美人ちゃんには劣りますよ!」

 

「まぁまぁ、何を怒っているのか全く理解できませんけど、とりあえずミイシャさんに害を及ぼすつもりは一切ありませんので安心してください。私がこの子を呼び出したことには理由があるんです」

 

 それに、二人はそれぞれの驚きを見せる。彼女の発言に、明確な違和を見つけて。

 立場に悩み、逡巡しているアンナに代り、ミイシャは堂々と告げた。

 

「ねぇ、セアさん。『呼び出した』なんて、まるで選んでいったみたいに聞こえるけど、どういうこと」

 

「……っちゃぁ、やっちゃったなぁ」

 

 自分のミスに気が付いて頭を抱える彼女に向けられる視線は何故か冷ややかなモノが生まれた。ミイシャはがっしり、彼女の無駄な肉がそがれているのに柔らかい肩を掴み、にっこり表情だけで笑いかける。

 その目は変わらず、無表情であるのだけれど。

 

「はいはい、白状しますよ。私は端から、この方の救出作戦の援助に来たんです。ですが、所々で私の計画に異分子が生まれましてね、今のところ失敗です。ですが、こうして接触できたことでまだマシな状況と言えるでしょう」

 

「え、えっ……なんで、そんな、どういう……」

 

「混乱するでしょう、ですがどうか、落ち着いて。バレてしまっては全ておしまいなんですよ」

 

「は、はい」

 

 どうしても困惑の表情を隠せないでいるアンナに、優しくセアが語り掛ければ深呼吸一つで落ち着きを取り戻す。顔に浮かんだのは憂いや強い動揺――まだ、疑いはあるよう。

 

「最初っからそういう目的だったんだ。なら話してくれればよかったのに、すぐに逃げたから」

 

「賢明な判断ですね、今すぐにでも貴女だけなら逃げられますけど、どうします?」

 

「嫌だ。救出ってことは、やっぱりそういう事なんでしょ。私、そういうの見逃せないし。ここで逃げちゃったら、シオン君の前で堂々と胸張れなくなっちゃいそうだし。だから残る」

 

「あら、そうですか」

 

 そのシオンと全く同じ意識と今正対しているのだけれど、知ったらどう思うのだろう。ちょっと気になるかも。

 興味の下に彼女に耳打ちしようと身を寄せて言ったところでふと気づく。

 

「どうなされたのですか?」

 

「――!? い、いえ、その……なんで、私なんかを助けに来たのかって思いまして」

 

「……本当にそれだけ?」

 

 遠慮するかのような彼女の視線の動きを見逃すセアではない。どきりっと射貫かれたかのように身を振るわせたことこそ正鵠を射たことへの証明だろう。

 

「なんでも話してくれて良いですよ。遠慮はいりませんから」

 

「……本当に?」

 

「えぇ。本当に」

 

 安心させるように朗らかな笑みを二人そろって見せてやると、あら不思議。魔法で溶かされたかのように彼女を取り巻いていた悪感情の渦が無くなった気がした。

 ここ数日、そうして本心を暴露することなんてできなかったのだろう。だから、相当鬱憤が溜まっているのかもしれない。

 

「あの……実は、()()()()お名前に、反応してしまって……」

 

「「―――は?」」

 

「い、いえ別に、興奮してしまったとはでは無くて……その、先の戦争遊戯(ウォーゲーム)であのお方を知り、ご迷惑でしょうけれども憧れてしまったのです……か、かっこよくて」

 

「――――――」

 

 もう、なんて声を掛けたらいいのかわからない。ミイシャさんは何故頷くの?

 いやさ、かっこ好いと言われて嫌な気はしない。こんな美少女からなら尚のことだろう。だがしかし、彼女はそれがご本人にも伝えられていることを知らないのだから質が悪く、どう反応してら良いものか迷いもの。

 

「ねぇ、アンナさん、ちなみに好意はあるの?」

 

「ふぇっ!? そ、そんな烏滸がましい! その、あの方にだってお好きな方の一人や二人――」

 

「いやいやそんなんじゃないから! 一人しかいませんよ、どんな浮気性だと思っているんですか!」

 

 勿論のことアイズである。愛しているのは彼女だけだ、断言しよう、うん。

 愛は一本道、恋は一方通行なんだよ。それに一夫多妻(ハーレム)なんて望んでおらんし、懇意にしてくれる人は多数いるわけだが、その方に対し好ましく思えど好き(あい)を感じることはない。かなり無情な現実だな。

 

「し、失礼しました――! で、ですがその、あれだけの美男子ですし、さぞかし『モテる』のではないかと……」

 

「よくそんな言葉知ってますね……確かに好意を持たれることは多々ありましたが、全部切ってますよ。ずっと昔から、思い返すとほんっとに最低な行為ですね」

 

「なんでそれを自分のことみたいに言うの?」

 

「……………話に聴いただけです、本人から」

 

「シオン様とお知り合いなのでしょうか!?」

 

 あぁ、こじれた。何故私はこんな話をしたんだよ……もう少し他人を装ったり、言葉を選んで勘違いさせることくらいできただろうが……あぁもう、ばかばかっ。

 上体を乗り出して、今にも零れてしまいそうな双丘を揺蕩わせるアンナさんを落ち着かせても、瞳をキラキラ輝かせて、興味はその話題ばかりにあるようだ。恐怖を忘れていることは非常にありがたいのだが、もう少しベクトルを調節してほしかった。

 

「ねぇセアさん、そう言えば私もそんなに詳しく知らないなぁ。教えてよ、シオン君とセアさんのただならぬ関係」

 

「いかがわしく修正すんな。ったく、面倒臭い」

 

「そうそこ、口調とか所々そっくりなんだけど。癖とか、言動とか……目線とか?」

  

 どこまで見ているんだこの人は!? 情報屋紛いのことをやっているのだし、細かいところを見ているのは納得できるのだが……この人、そこまでの洞察力があるのなら、本業変えた方が良いのでは?

 それとアンナさん、もう少し貴女は落ち着きましょう。そんな興味津々とされたところで私に話せることなんて限られるし。なにせこのピンク色の情報魔女に聞かれては困る事なのだから。

 

「――あっ」

 

「「あ?」」

 

「真似しなくていいから。今思いついたんですよ、ゲームしましょう。そうして……よっと。このチップを情報にたとえて、相手から奪った分情報を開示する、なんてどうです? 内容は奪取して側が指定しても構わないという条件付きで」

 

 計三十枚を丸テーブルの上に取り出す。一人十枚、それぞれに配る。チップの色からして、ヴァリス換算すると金額は変わる訳だけど。

 無言で見合った二人は、まるで共闘するかのように頷き合い、それぞれにチップを手に執る。

 

「ゲームは何が良いですか?」

 

「私ブラックジャック」

 

「えっ……私はスピードが良いです」

 

「なら私もスピードで、ブラックジャックなんぞ知らん。ですが、その格好で大丈夫ですか?」

 

「ふふっ、逆に有利ですよぉ。私、子供のころから家族の中で一番強かったんです。ルールって、私が知っているので構いませんか?」

 

「どうぞ、説明してくださいな」

 

 ブラックジャックとやらをできずミイシャさんはふくれっ面だったが、アンナさんは自分が有利なゲームにさぞかし嬉しそうだ。だがそんなに喜んでいると、たゆんたゆんと目のやり場に困るのだが……。

 まさか、これが狙いの名のだろうか。まさかな。    

 

 彼女が説明したスピードのルールは、ちょっとばかり変わったものだったが、根本的には変化のない反射神経勝負のゲームであった。違う点で言えば、三人仕様で手札の色が決まっていないところと、引き分けが存在するというところ、掛け金があるところと、場に表で出せるトランプが三枚だけであること、場のカードを使いきらないと追加してはならないこと。更に、始めに表に出すトランプがそれぞれ一枚ずつ計三枚であることか。

 

「それで、ここでコイン……あ、チップでしたね。それを何枚出すか選択します」

 

「全員共通の枚数にします? 一枚以上五枚以下で、始めに出した人に合わせる形で」

 

「じゃあ五枚」

 

「……次からは時計回りで回しましょう」

 

 この人、マジで勝つ帰か。まぁ、いいや。どうせ結果は見えている。

 何せこれは、反射神経優先ゲームなのだから。

 

「では、始めましょう。せーの」

 

 アンナさんの声で、左手に持ったトランプから一枚を、テーブルの中央に表で晒す。

 

――ハイ、勝ったね。

 

 

 

 

 

 

 

「終わり」

 

「はやぃっ―――ニャッ!?」

 

「ふぅ、油断大敵です。ミイシャ様が負けですね。それにしても、何ですか今の動きは」

 

「私を舐めてもらっちゃ困りますよ。こう見えて、結構自信あるんです。反射神経に」

 

 私が圧倒的速度でカードを正確に滑り込ませていく中、肝の据わったことにアンナさんは全く動揺せず、ゲームに集中したことこそが勝因だろう。ミイシャさんには速さがが足りない。

 

「で、ズレてますけど、大丈夫ですか? アンナさん」

 

「ズレてるって……ひゃっ!?」

 

 途中からしっから零れていた胸の尖端には、流石に目を逸らしていられなかった。 

 なにせ他の男どもに見られるわけにゃいかん。彼女の心理的問題にかかわるだろうから。

 

「み、見られてない、ですよね……」

 

「視線はありませんでしたよ。安心してください」

 

「ふぅ。男の人に見られたらどうしようかと思いました……」

 

 ごめんなさい、なんか本当に、ごめんなさい。十五枚のチップのうち、アンナさんに五枚渡しながらソンナ申し訳ない気持ちが沸き上がって来た。もう絶対バレないようにしよう。

 

「あ、じゃあ五枚分の情報を開示すればいいのかな? って言っても、わかんないなぁ」

 

「なら指定しても良いですか? ミイシャ様」

 

「ん、その方が楽かも」

 

「では、ミイシャ様とシオン様のご関係について教えて頂けませんか? それと少しのシオン様の情報、好みの方とか……」

 

 ゴホッと気管に入った液体を吐き出そうとせき込む。通りすがりの『愛人』ウェイトレスに飲み物を貰って、一口に呷っていると、そんな反則級の質問を行っていたからだ。

 というか貴女、本当に好意ないんだよね。

 

「私とシオン君は……友人以上恋人以下のただならぬ関係」

 

「未満だし別にいかがわしい行為もしとらんわ」

 

「チッ、いいじゃん少しくらい。というか何でそこまで知っている訳ぇ?」

 

「るっさい、ほら次の情報」

 

 あれ、何で私から催促しているの? 可笑しくない?

 

「あとシオン君は、【剣姫】のことが大好きで大好きで仕方ないんだよねぇーねぇー?」

 

 こっち見るな同意を求めるな、言うに言えんだろうが。というか何で知ってるんだよ、私貴女に話した記憶が皆無なのですけど。

 

「そ、そうですか……金髪にしようかなぁ」

 

「いや止めろよ。貴女は貴女なんですから、無理に変える必要なんてないんですって」

 

 それに、私が彼女に惚れた要因の第一は、見た目ではなく剣技だ。どう足掻いても無理がある。見た目で私を惚れさせることができる存在は、もういないと言ってよいだろう。

 

「はぁ、じゃあ次やろー」

 

「そうですね、絶対シオン様の情報を引き出しますから」

 

「できるものならどうぞ。でも、どうやらリミットのようです」

 

 残念ながら、と一言付け加える。やって来たオーナーにあえて聞かせるように。

 一瞬にして蒼白となる彼女の表情に心配を憶えるが、別段身柄には心配なかった。

 恐らく、彼女たちがやって来ただけだから。

 

「アンナ、悪いが来てもらうぞ」

 

「……はい」

 

「お気をつけて~殺されないように」

 

 オーナーに向かって、あえてそう言い放った。今度は、はっきりと。

 にたりと笑うあの男の顔面をへこませてやりたいな。

 

「ねぇ良いの?」

 

「えぇ、問題ありません。では、中心地へ向かいましょうか。単なる、覗き見をしに」

 

「ふーん、面白そうじゃん、いいよ」

 

 手早くチップとトランプを纏めると、片やケースへ、片やテーブルの中心へと戻される。

 重い足取りで名残惜しそうに去って行く彼女の背を、私たちは静かに追った。

 ここからは、彼女たちに任せる。単なる傍観者を決め込んで、この状況を楽しもうじゃないか。

 

 

 

    * * *

  

 あれ、リューさんヤバくない? 完全に劣勢じゃん。イカサマは明らかだけど、それを明かしてはならない辺りが特に彼女を追いこんでいる。なにせ、一度使われた暗号を二度使用することがない。一体何通り用意しているのか、彼女のチップが減るばかりだ。

 

「あ、やばい。見つかっちゃった」

 

「え、うそぉん。何やってんのさミイシャさん……」

 

「ごめん、というか呼ばれてるけど、どうする?」

 

「出た方が良いでしょうね」

 

 がっつりとミイシャさんを見つめるシルさん、それはもう明らか。隠れる意味あもう無いと告げている。

 仕方ないと、げんなりしながら私たちは『戦場』へと身を乗り出した。

 ぎょっと場の雰囲気が豹変する。今まで卑しい流れであったモノが、一気に霧散され、全く別の唖然という空気が流れる。

 

「ねぇ、貴女にお願いがあるの、いいかしら?」

 

「え、えっ、私? セアさんじゃなくて?」

 

「貴女に頼みたいの」

 

 どうしようかと私に許諾を求めるような視線を送って来るが、一つ頷くと彼女はシルさんの下へと向かって行く。耳打ちをされて、何か手に持った状態でとことこ戻って来たけど。

 

「なんかこれ、渡された」

 

――ベルさんに、暴れてとお伝えください。

――それとシオンさん、貴方は相変わらず常識外ですね。

 

「これなんて書いてあるの?」

 

「……お気になさらず。耳打ちされたことに従ってください。恐らくそれが最善です」

 

「はーい」

 

 マジかぁ、何で気づかれてんだよ。

 あの人は相変わらず底が知れない。後でしっかりと釘を刺しておこう。三本くらいが丁度よいだろうか。

 別に物理的にじゃないよ?

 

 ミイシャさんが出口へとことこ歩いていくのを見送りながらも私はこの場に残る。

 それにリューさんは不思議に思ったか首を傾げるが、知ったことではない。

 

「ねぇあなた、少し変わってほしいわ」

 

「なっ……で、ですが」

 

「いいの、お願い」

 

 その瞳に宿るのは覚悟でも好奇心でも何でもない。ただ単に、やりかえしちゃおう、とでも言える遊び心だ。

 リューさんと席を変えて座ったシルさんに、参加者たちは色めき立つ。扇情的ともいえるシルさんの格好に興奮したともいえるが、何よりその賭けた内容に対しての興奮が大きいだろう。

 ここでの賭けは身を売るようなものだ。

 

――でも、どうせ勝っちゃうんだろうなぁ。

 

 この先の状況には呆れの溜め息しか出ない。なにせもう、単なる独壇場なのだから。勝って勝って、ただ勝つのみ。それを然も狙っていないかのように豪語するのだから恐ろしい。

   

「ねぇあなた、これってもう、私の勝ちでいいのよね!」

 

「え、えぇ。これで勝利と言えるでしょう。即ち――」

 

「――アンナ・クレーズの解放を意味している。でもそれだけじゃつまらないと思いません?」

 

「あ、貴女は……」

 

 おいしいところは貰っていく主義なのでね。

 動揺するリューさんに対して、シルさんは苦笑いを隠せない様子。この場に居るうち私と彼女だけが常識から逸脱した人間と言えるだろう。この場で平常と居られるのだから。

 

「ねぇ、オーナーさん。私のことも狙ってたみたいだけど、残念だったね。もうここでおしまいだよ、ざまぁ見やがれこん畜生。散々女を弄ぶと恐ろしいということを知らんのかい? 大きな仕返しが待ってるんだよ。例えば……殺されたり」

 

「ヒィッ――」

 

「あははははっ、この程度の殺意でソンナ怯えちゃって。こんなんじゃゴブリンに殺されちゃうレベルじゃない? 勿論地上の。あはははっ、憐れだねぇ」

 

 おっと、これは言い過ぎか。だが仕方ないではないか。この貴賓室内にいる女性たちが大半既に汚されている身だと気づいてしまったのだから。そらぁ多少の怒りも覚えるもんよ。

 だが、ここはリューさんの場だ。もう少し爪痕を残してから終わろう。

 

「ねぇ、ここにいる女性の方々。ここにいる男、すっごく恨んでませんかぁ!? 恨んでいるのなら今がチャンスです。この男をぶちのめしてやりましょう。なぁに、ここは治外法権。どれだけ暴れたって、オラリオで生活するうえでなんの問題も無い」

 

「な、何を言っているのだ! 少し見た目がいいくらいで、なんなんだ!」

 

「何って? あぁどうも、世界で多分二番目に可愛い最悪最低最恐にして最強の異常者ですがなにかぁ!」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない」

 

 つっこみは望んでないですシルさん。

 

「さぁ暴れようじゃないか女性諸君。こんな腐れたところ散々荒しちゃえー!」

 

 そう宣言して、私は正面にあったテーブルを軽く蹴飛ばす。強烈な破壊音が鳴り響き、それが彼女たちに発破をかけた。次なる炸裂音は一人の絶叫となり、連鎖的にそれは爆発していった。 

 それは全て、彼女たちの怒りである。ただ一人、恐怖しか持てなかったアンナさんはただきょろきょろと周囲を忙しなく見渡して、隙ばかりが生まれていた。そこに浸け込む最低男が一人。

 

「クソッ」

 

 なんて下品に言い残して、オーナーたるその男は奥へと逃げ去って行った。

 ヒールである私にとっては知られると困るのだが。あと階段は止めてくれ。

 

「ちょっとシオンさん、この騒ぎどうしてくれるんですか!」

 

「あのねシルさん。わかってはいましたよ、バレたって。ですがね、秘密にしておいて欲しいのですよ。だって、私が女にもなれるなんて彼女が知ったら、悲しむと思いません? 呆れられると思いません?」

 

「そこでリューの名を出すのはずるいですよぉ……はい、言いませんから。とにかくこの状況を何とかしてください……」

 

 うーん、面倒臭いなぁ。私が追いかけるのも億劫だし、戦うのは一般人と戦ったら死人が出かねないし……ん? 

 

「おーい、リューさん!」

 

 私が追いかける必要ないじゃん。

 

「リューさん、シルさん。オーナーを追ってください。私はここに収集を掛けていきますので」

 

「は、はぁ。それは構いません。ですがあなたは大丈夫なのでしょうか……?」

 

「なぁに、戦闘は得意分野です、っよ!」

 

 そう言って、一人背後からやって来た男を吹き飛ばす。その様に彼女は納得の表情を見せてくれた。そそくさと方向転換し、奥へと走り出す。

 その二人の進行方向を遮ろうとした二人を、さっと掴まえた私の行動は褒めて欲しいな。

 

「さぁてお二人さん、拷問と瞬殺、どっちがいい?」

 

 壁に投げ飛ばし、痛みに呻きながら立ち上がろうとする黒が印象的な二人にそう投げかける。

 だが警告を聞かずに、見合った二人は私へと特攻してきた。

 

「はぁ、おっそい」

 

 でもその鈍さには欠伸が出る。普通のLv.2か3ってところか。話にならない。

 だが、連携だけは褒めるべきところだな。よく練習している。

 

「ほぃっ、それっ、らすとぉ!」

 

 蹴るのに一々飛び跳ねるのが億劫になって、丁度よく横に並んで特攻してきた二人の間に割り込み、ただ速さでゴリ押し吹き飛ばす。するとどうだろう、

 

「やっちった♪」

 

 壁に風穴が開いてしまった。だが幸いと向こう側も騒ぎが起きていたらしい。ミイシャさんたちが上手くやってくれたのだろう。

 

「おーい、女性陣。怪我した人とかいますー?」

 

「誰もいないよ! むしろ腐った男どもの方がこんなんになってやがる。ハッ、ベットの上では強気なくせに、何だこのざまわぁ!」

 

 うわぁ、こわいよぉ……怒った女性ってこんなことになるの? それともあの巨乳をぶるんぶるん揺らしながら男を足蹴にしている人がそう言う性格なの?

 綺麗な花には棘があるとはよく言ったもんだな。

 

「皆さん、此奴等は恐らくもうじき【ガネーシャファミリア】に摑まってしまいます。復讐は終えていますね!」

 

『おー!』

 

「いい返事です。では皆さま、ここから先は自分のことは自分で管理しなければなりません。でも皆様に何か残っているものはありますか? 例えばお金、ありませんよね。だから盗っていきましょう。私は今からここの金庫に向かいます。さぁ、かっさらいたい人だけ付いてきな!」

 

 まぁ、ここからは知ったことではない。彼女たちへちょっとばかりここの金庫からお小遣いを貰って終わり。私ももらいたいだけもらっておわり。おぉ、素晴らしいな。

 

 金庫はここの奥だろう。なぜそこに逃げたかは知らんが、都合がいい。どうせ脱出口でもあるのだろう。ならば追いかけるという名目で、途中金庫をぶち壊したところで何ら問題ないはず。

 

 階段を駆け下りるなんてことはできず、跳びはね、ヒールの爪先で手すりを滑ってできる限りの速度で降りて行く。女性陣を置いてけぼりにしているがけ、一本道だし直ぐついて来るはず。

 

「あ、シルさん」

 

「シオンさんっ、収集つけたにしては早すぎませんか?」

 

「気のせいですよ。んで、どうしたんですか、コレ」

 

「不味いんですよ! 今アンナさんが金庫の中に閉じ込められて、あの男と!」

 

「―――へぇ、丁度いいや」

 

 リューさんが今魔法の詠唱をしているが、それに乗じてみようじゃないか。Lv.4の魔法の威力は中々だろうが、金庫――恐らくアダマンタイトあたり――を壊すのは辛いだろう。

 

「【ルミヌス・ウィンド】!」

 

 詠唱を終えた彼女の魔法が解放される。それと共に、速射される無数の魔法弾の嵐。

 

――ちょっぴり足りないかなぁ。

 

 んじゃあ、やりますか。

 

「【炎拳(エンケン)】」

 

 付与精霊術(エンチャント)、初級一階位。正直誰にでもできるけどただ熱い!

 しかもこれ魔力をつぎ込むと威力に比例して段々熱くなってくるから早々にぶっぱなす必要があるのでご使用の際はご注意を!

 

「そりゃぁ!」

 

 点々と小さな孔が見られる重苦しい金属扉に決め手を掛ける。

 たった一撃、それだけなのだが。

 

「あぢぢぢぢ……アンナさーん、無事ですかぁー!」

 

「―――――――ぶ、ぶじで、す」

 

 あら、すぐ前に居たのね。盛大に吹き飛ばしていなかったら危なかったな。

 彼女の近くに伸びている腹の出た男はオーナーだろう。ちょっと火傷しているが、それくらいは耐えて欲しい。男だろう。理由がもはや支離滅裂だな、大雑把すぎて酷い。

 

「ふわぁっ!?」

 

「ごめんなさいね。この方が早いですから」

 

「は、はい」

 

 お姫様抱っこの初めてが私でごめんね。でも、腰抜けているから仕方ないじゃん。

 煙が舞う中出てきた私たちに、リューさんが心なしか安心したかのような表情を見せる。 

 だがそれはすぐに間抜けなものへと変わった。彼女の腕にアンナさんが乗せられたから。

 

「頼みますよ」

 

「え、えぇ。ですが貴女は……」

 

「ちょっと金品を頂いてから行こうと思います」

 

「あまり見過ごせるお子ね意図は言えませんが……」

 

「いいの、別に私だけじゃないんだから」

 

 ウインクを残し、私はもうじき晴れようとする煙の中へと突っ込む。ちょっと熱いな……

 

「うっほぉ! こりゃぁ十桁なんて軽く超えてんじゃねぇ!?」

 

 豊作だなぁこりゃ。うへへへへへ―――――  

 

 

 


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