ちなみに言うと衝動書きです。
道は一つに決められた
必死だった、そんなことも忘れ、ただ茫然と眺めていた。
視界に映っているのは自分と然程年が離れていないであろう少女。
あまりにも突然の出来事だった。だが、驚くことは無かった。
視界が歪み、体に力が入らなくなり、地面へと倒れた所為で。
そして、視野が狭まっていく。徐々に、徐々に視界も薄れ、遂には何も見えなくなった。
――――――――――――あぁ、なんて美しいんだ。
それは、偶然だったかそれとも必然だったのか。わからない。
薬草は村の近くには見つからず、どんどん森の奥へと進んで行く。
そして、薬草を見つけた時には、村人たちが普段入らないであろう場所まで進んでいた。
周りは木々が生い茂り、足元は整備されておらず、獣道とすら呼べない有様。足を取られないように注意が必要な程だ。
昼などとっくに過ぎていた。もう夕方に差し掛かろうとしている。
見つけた薬草を取り、持ち運ぶための入れ物に入れ、帰路を辿ろうとした時だ。
「グゥゥゥゥ」
背後から声が聞こえた。その声が何なのか理解できた私は途端、恐怖を感じた。
この声は『モンスター』のものだった。
『モンスター』それは、遥か昔から存在する異形の物。
古代と呼ばれている時代にダンジョンと呼ばれる大穴から無限に地上へ出て来たそうだ。
今ではその大穴は塞がれ、モンスターが地上に出てこなくなったらしい。
だが、それまでに地上へ出たモンスターは、いなくなった訳ではなかった。
弱体化しながらも今でも生き続けている。
そして、モンスターは弱体化しても、一般人には相手にならない。
私は振り返る間もなく走り出した。武器も持っていない私には勝ち目など存在しないと分かりきっていた。だから全力で逃げようとした。
だが、整備もされてない道、冷静でない私が普通に走れるわけが無く、木の根に躓き、転ぶ。脚に痛みを感じるが耐え、また逃げようと足を前に出す。
そして、また転ぶ。足が前に出せなった。足を見ると木の根と木の根の間に挟まっていた。
抜こうと力を入れても足は抜けない。そんなことをしている間にもモンスターの足音は迫ってくる。
逃げなければ! 内心がそう叫び続けている。でも、逃げるための足が挟まり、動かない。
手を使い足を抜こうと上体を起こした。そして、入ってしまった、視界に。モンスターが。
モンスターを見たのは生まれて初めてだった。今までは話で聞いて、存在を認識していただけ、とても恐ろしい存在だと。
ただ、その考えは甘かった。恐ろしい。果たして、そんな言葉でいいのだろうか。
私は見てしまった。そして向けられてしまった。その目を。
身体が凍った。いや、全身が恐怖に竦んだ。その目には私が今まで見てきた感情など存在せず、知らない感情が一つ見えた。その感情は今まで向けられたことなどなかった感情。
そして、知らなかった感情を私は理解した。それは、『殺意』。
右手に武器を持ったモンスターが高々とそれを上げ―――――下ろす。
その動きを私は目で追うことしかできなかった。だんだんと私へ下ろされていく刃。強まっていくのを感じる『殺意』。その攻撃を避けることが私にはできなかった。
刃はあっけなく落ちた。途端、体の竦みが解ける。その代わりとして襲ってきたのが強烈な
浮遊感はすぐに消え、後頭部に痛みが走る。だが、すぐに感じなくなった。左足から感じる
何が起きたか。それを理解するのに時間を要した。
寝てしまった上体を起こし、前を見る。わかるのは、さっきまで目の前にいたはずのモンスターが数
モンスターが地面から武器を抜く。武器で隠れていた先にも大量の血が飛び散っていた。武器が下ろされた場所の真横に
片方の先が赤く染まり
途端、
左脚が半ばまで無くなっており、血が溢れ出している。ドクッ、ドクッと心臓が脈打つ度、吹き出すように流れる。そして、理解する。
あそこに落ちているのは、私の脚の半分なんだと。
さらに痛みが増す。状況を理解すればするほど痛みが増していく。
「ぐ…ぁぁ……なん…なんだょ……」
痛みで
モンスターがこちらを見ている。はっきりしている視界の中、見た。
――――――――――――口角が微かに上がったのを。
背筋が凍り、痛みを一瞬忘れた。ただそれも一瞬だった。
「オォォォォォ!」
叫びながら私の方へ、走ってくる。
そして拳を振り上げる。
ギリギリだった。反応が数瞬遅れていたら押しつぶされていた。
拳が振り下ろされた瞬間右へ体を傾けた。拳は少し掠り地面に、そして衝撃。
また浮遊感を覚える。それもまた一瞬。木にぶつかり背を預ける形となる。逃げられた、そう感じられたのもまた一瞬。思考を遮る形で激痛が走る。脚だけでは無く、全身から。
元々少なかった肺の空気も吐き出され、口の中で鉄の味がする。
声を出す――――――――そんなこともできない。何よりも痛みが勝った。
少しずつ視界が歪む。そんな中でも近づくモンスターは
死にたくない。それでも死はやってくる。
武器が振り下ろされた、だが途中で止まる
モンスターに横一文字の線が走る。次の瞬間モンスターが灰となり、消えた。
消えたモンスターの先には剣を持ち、綺麗な金の髪を靡かせ、少女が立っていた。
そして少女は、私を襲ってこなかったモンスターたちに目を向ける。
「【
瞬間、少女は風のように消えた。でも私には
時間としては一秒にも満たなかっただろう。少女がモンスターを切り刻んだ。
モンスターは灰となり消える。ただ一人の少女の手によって。
でも、そんなこと、どうでもよかった。痛みも忘れ、ただ眺めていた。
その光景は美しかった。
それは、素人の私にでもわかるほど洗練されていた、剣。
驚くこともできず、ただ、
そして、倒れる。意識が薄れる。そして私は思ったのだった。
どうでしたか?
ちなみに、何故『少女』が居るかは次回!
おかしな点、誤字脱字等がありましたら、ご指摘いただければ幸いです。