思わず頭を抱えたがそれも数秒。
とりあえず現状をどうにかする事にした。つーかまともに動けるの私しか居ない。
ここでスモさんに対抗して一味を逃がすのは造作も無いだろう。だが本業を忘れるなかれ、私はスパイ。一味が滅ぶ機会ならすぐさま協力すべき。
状況は至ってシンプル。劣勢な麦わらの一味に悪魔の実のスモさん、そして大ボスドラゴンさん。1対1だと平和的に解決出来るが…無理だな。
「ほぉ…リィンか」
「うん、刺青さん。ちょっとお前黙ろうか」
「なぜだ?」
ド天然なドラゴンさんに頭を痛めながらどうするか考える。………ドラゴンさんに責任転嫁してもいいかな。
「………だから嫌いぞこの家系…!」
この人相手にイラッとしたのも仕方ない。絶対仕方ない。
「さて白猟のスモーカー、海へ出る男の邪魔をしないでもらおうか」
するとドラゴンさんは驚いた事にスモさんを攻撃してルフィ達を解放した。
「おっさん、ありがとな!」
「ふふ、海賊か…。それもまたいい……行け!お前が決めた信念を貫くのだ!」
ドヤ顔で言ってるけど多分本人『息子を陰ながら応援する俺カッコイイ』とか思ってるからな、騙されるなよ。
「ルフィ、ゾロさん任すた。先出航頼む」
「リーはどうやって…!」
「私は飛ぶ」
「ん、分かった」
小声でルフィに話しかけるとゾロさんを託した。そして後ろを振り返る。
「
グッ、と拳を握りしめてスモさんに向かって突進していった。
後ろの気配が消えてなくなるまで。
「……テメェ、邪魔すんな堕天使!」
「何をォ!」
慌てて私と組手をし始めたスモさん。
だけどドラゴンさんが見てるだけだから別にもうしなくてもいいよね。
「よし!終了!はー…無駄に疲れるた」
「じゃあリィン、ちょっと革命軍トップ討伐付き合え」
「無理、集中力かなり切れるした。参謀総長と腹の探り合いすた後情報屋相手に精神すり減るさした私の集中力に余力は無き、無理、能力使用不可能」
「テメェさっき風使って飛んでたろ」
「あれは慣れ」
「何だ、お前達は敵対関係じゃなかったのか。なら俺が残ってる必要無いな」
フッ、と笑ってドラゴンさんが背を向けた。
「育児放棄と言うされたから無理やり
私がそう呟くとドラゴンさんはポカンとした表情で暫く見ると口を開いた。
「……………………お前さてはエスパーか」
「逝ってよし!」
私が本格的にモンキー一家を嫌いになる前に。
「というかサボと会ったんだな、どうだウチの子偉いだろ」
「親バカか!」
「どっちのだ?」
「頼むです…さっさと消えるしてください!」
「ほう…俺に向かって言うか」
「今更威厳を出すても無駄です消えろ」
そう言うとやっと渋々消えていってくれた。無駄に疲れる。
「やだもうあの自由奔放具合!ジジの血を色濃く受け継ぐしてるから本格的に嫌だ!」
「何がどうなってんのか分かんねェが苦労してんだな」
そっと置かれた手が泣きそう。
「わーん!スモさん天使!私の天使!そして癒し!好き!愛すてる…!」
「あー、はいはい」
抱きついたら否定されることなく受け止めてくれる人ってかなりレアだと思う。
クロさんだったら多分ぶん投げるな。私一応女の子なのに。
「というか私を捕まえるしようとしない限り…」
「察してるよ、
「正解です!スモさん天才!」
偉いですねー、と頭を撫でたら流石に叩かれた。脳細胞死滅する。
「スモーカーさん!」
追いかけて来たであろう海兵がこの状態に少し仰天した後報告していった。
バギー一味を壊滅寸前まで追い込んだが突風のせいで取り逃がしたこと。革命軍の船を見かけたがそれも同じく取り逃がしたこと。
何、スモさんの部下統率力ありすぎない?何、ちょっと敵対関係にあるこっちとしては恐怖なんだけど。
「……スゲェって顔してるが俺の所の部下はお前の同期がほとんどだぞ」
「何!?」
ヤベェ、私の同期スゲェ怖ぇ。
つーか私が消える時まで雑用だったよね!?
「あー!リィンちゃん!」
するとワラワラと寄ってきた声に聞き覚えがある事に気付いた。
「皆!」
思わず駆け寄ると最初に報告して来た海兵に襟首を捕まえられ引っこ抜かれた。
私は猫か。
「お前結構危ないからあの変態共に近づくな」
「まさかその声はグレンさんです!?我ら第1雑用部屋の唯一のストッパー!」
「お、おお…不本意だがストッパーの立場を理解してるとは」
こう考えると第1雑用部屋の皆が一つの部隊にいる事は少し疑問だ。
「あの、何故皆はスモさんの所に?」
グレンさんに振り向き聞くと目を一周回して口を開いた。
おい、待て、なんで回った。
「……正直俺が所属してるのも本格的に嫌だが、曰く『スモーカーさんの所に居れば天使と会えるかもしれない』って、な…」
「……………エスパー?」
「俺は素直にスモーカーさんに申請出してたからだけどこいつらお前が居なくなった途端何かを察知してだな……それでこの結果だ。もちろん主犯は」
「リックさん」
「……………大当たり」
ため息混じりに説明されたが10年程の年月の絆はそう容易く無い様です。
これはまとめて突っぱねる事も出来なかったなセンゴクさん…。ホントにあの人苦労してる。
「流石天使愛好会」
「…?お前知ってたか」
「ご存知ぞ?流石に定期的に所持金が増えるていれば気付くです」
見ざる聞かざる言わざる、全ては自分の為に黙っていましたよ。
「スモーカーさん…!」
するとたしぎさんも合流して来た。多分他の階級の人も寄って来そうだな。
「グレン!やりましたか、その子も海賊です!」
「すんませんたしぎ先輩、俺にはコイツ捕まえるの無理っぽいです」
「やっほーたしぎさん!そうぞスモさん彼女貰うしても」
「ダメだ」
「はー、ダメですかー」
グレンさんが解放してくれたのでたしぎさんに近づく。
「な、なんですか」
「あの鬼徹くん、元々持ち主私のですた」
「は、はぁ……海賊ならば益々回収しなければなりませんね」
「で、私の前は剣帝カトラス・フェヒターの物です」
「…な!そ、それは本当ですか!?」
「でももう1本の無銘は実は海軍で配るされた物です」
「は?」
たしぎさんは表情コロコロ変わって面白いな。
「私が持ってても宝の持ち腐れ。必要とされることは多分刀も幸せです」
「……それは、そう、ですかね」
ざぁー…と雨が振る中随分変わった会話をしてると思う。
「女のたしぎさんも必要とされてるぞです」
「私、が?」
「知りませぬよね、実はヒナ…少佐?はたしぎさんを欲すていたのですよ」
「ヒナ少佐が…? で、でもそんな話私には…っ、と言うよりなぜ海賊の貴方が知ってるんですか!?」
「話が来ぬのも仕方のなきこと。スモさんが全力で阻止すてましたから」
「リィン!」
暴露すると私の頭に拳が飛んできた。
随分痛いじゃないですか…スモさん。
「へ?え?」
「たしぎさんは必要とされる側の人間ですよ」
真っ赤になったレアスモさんも見れたしたしぎさんに言えたし。うむ、我は満足でござる。
「ハハー!流石我らの天使!堕ちてもなお太陽だな!」
「それでリックさん達は月とでも?」
「その通りだ!」
「スモーカーさんたしぎ先輩こいつがアホでホントすいません…ッ!」
グレンさんは今年もリックさんの手綱を握ってるのか、大変だな。
「たしぎ先輩は知らないですけどリィンとスモーカーさんとヒナさんは古くから友人ですよ」
「え?古くから、古く?」
だよね、私まだ子供だもん。
「私の方が後輩です」
「……」
『お前平気な顔して嘘ついてんじゃねーぞ女狐』的な目をしてスモさんが睨んでくる。実際入隊時期的にも表の地位的にも後輩じゃーん。
「俺たちはお前が何のために海賊に入ったのか知らないが全てを捨てて堕ちていくとは微塵も思ってない、俺たちは味方だよ」
「はー、グレンさん常識人過ぎて辛い」
「……苦労してんだな」
スモさんとスモさん部隊下っ端は味方と見たり!
ありがたやー……。拝んどこ。
「行ってこい、俺の親友。すぐ追いつく」
「親友…親友!?スモさんデレた!?親友!?」
「お前うるさいからさっさと消えろ」
「そんな所も好き!結婚しよ!」
「誰がするかアホ!俺をロリコンにすんな!」
下手くそな応援をされながらも私はルフィ達の元へ飛んでいった。
………よくよく考えたら追いつくって
==========
たしぎ先輩は嵐の様なリィンを呆然と見送る。
……あの人処理能力がまだ甘いよな。
上から目線かも知れないが俺だってもう30過ぎ。はー、歳をとるって嫌だわ、嫁さんほしい。
「あの…スモーカーさん……」
「………なんだ」
「あの子が親友って、どういう…」
「掘り返すな。言葉通りだろ」
言葉通りに取れないって、流石に。
「まァたしぎ先輩。気にしたら負けです」
「は、はァ…」
「例え時々リィンがスモーカーさんの部屋に泊まりに行こうが休みの日に一緒に遊びに行こうが一緒に七武海に絡まれようがスルーして来た俺の過去を知ればきっとそんな些細な事」
「テメェなんで知ってやがるグレン」
「おおーっと、これはうっかり」
スモーカーさんはからかうのも面白いと思うけどやっぱり1番カッコイイのは何かを決めた時。それがこの人について行こうと思ったきっかけだ。
「
「…はい」
麦わらを討つ?本当にそんな彼事の為?
違うでしょう。貴方は大事なモン取り返す為に躍起になってる子供でしょうに。
「……ついて行きますよ」
例えば階級も何も無いただの海兵だろうと、あなたの親友の友として、あなたの部下として。
んでついでにリックのお世話係として。
スモーカーさん、貴方は例え死んだとしてもついて行きたいと思える人物なのですから。
俺の名前はグレン。
死霊使いの最後の末裔。
「やるか…」
歪な形で馴染みの無い魂に憑かれた少女と暖かな沢山の魂に好かれた男の友情物語を見届ける者。
「あーあ、嫁さんほしい」
雨の中ポツリと呟いた言葉は人知れず消えた。
==========
「お、きたきた!」
びしょ濡れの状態で船に戻ると何故か全員甲板に集まっていた。
樽を中心に何やってんだお前ら。
「何事ですか?嵐の中持ち場を離れるは危険と思うですが……」
「おかえりリー!あのな、今から進水式やろうと思ってよ」
進水式って新造の船舶が水に触れる時にするモンだよね?私達この船で結構航海してると思ったんだが…。
「細かい事考えてるでしょう?」
「ナミさん…」
「いいのいいの、こんなのは気持ちなんだから」
バン、と背中を叩かれて円に入る。
「俺はオールブルーを見つけるために」
コト…とサンジ様が足を置く
「俺は海賊王!!」
むん、とルフィが足を置く。
「おれァ大剣豪に」
笑いながらゾロさんが置いて。
「私は世界地図を描くため!」
ナミさんは雨なんて気にせず。
「お、俺は勇敢なる海の戦士になるためだ!」
焦りながら足を置くウソップさん。
すると全員の視線が私に向いた。
「私…は……」
私の夢ってなんだろう。
平穏に生きる?生き延びる?
生きるは必要条件だからそれは違うだろう。
夢は生という料理の言わば調味料でしょ?
「私は……」
──リー
ずっとずっと、昔に聞いてきた幼い声が聞こえた気がしてバッ、と顔を上げる。
ルフィはニッて歯を見せていつも通りに笑ってた。『お前の味方はここにいるぞ』って言ってくれてるみたいで。
気の所為だけどそう思いたかった。
「私は、家族……もう1回家族と笑い合う為に!」
リアル過ぎる予知夢で死ぬエース
記憶喪失のサボ
海賊王を目指すルフィ
3人の兄は将来バラバラ。
それに家族は彼らだけじゃない。本当の父親や母親も、見守ってくれた父親も、何だかんだと構ってくれる兄貴分達も。
全部、全部だ。
同時じゃなくていい。
せめてルフィ達3人はもう1回揃ってお酒を酌み交わしたい。
まだサボが生きてること言えなくてごめんねルフィ。
「いくぞ!
荒れ狂う海を背景に、私達は思いっきり酒樽を割った。
スモーカーさん(というかクザン以外の海兵)は風使って飛んでると思っている(ようにした)
グレンまさかの死霊使い。結構前から決めてましたがキーキャラじゃないです
ちなみに馴染みの無い魂=前世の記憶です。