2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第69話 子供っていうのは最強の武器

 

「ふむ、やはり覇気については知っていたか……なぁ、不思議なお嬢さん──一般人A、かな。先ほどぶりじゃないか」

「ハ、ハハハ…先ほどぶりですぞ」

 

 

 人間屋(ヒューマンショップ)にいた白髪のお爺さんをよく観察する。ここにいるって事は売られること無く逃げ出せる実力があるという事、そして筋肉が付いてるからそれなりに戦えるという事。

 何より、覇王色の覇気というレア物が使える事。

 

 覇王色の覇気は間違いなくこの人から出たんだろう。

 

 この状況で私が取るべき行動は──

 

「──逃げる」

「いや待て待て待て待て。何故そうなる」

「見知らぬ 怪しくて 強い お爺さん、と

 幼く 狙われやすい 不運体質の 少女(プリティガール)

 

 どの行動かは明々白々だと……」

「そう言われると反論出来んな…!」

 

 大袈裟に笑うお爺さんに敵意は見られない、と思う。

 

「何、こう出会ったのも何かの縁。私の奢りだ、何か食べに行かないか?」

 

 よく考えれば朝食べてお昼を抜かしていたんだったな…。

 

 それを自覚した瞬間お腹がぐぅ〜っと鳴った。

 

「ハハハハッ、随分元気だ。海賊に襲われ怯えてるとばかり思ったが平気そうで安心したよ」

 

 あ、そうか、普通は海賊に襲われたらビビって半泣きになるのか。

 なんかもう慣れって怖い。

 

「……………私に一般人は務める不可能の様です」

 

 ガクッと肩を落としたのは仕方ないと思う。カムバーク!一般常識ー!ていうかこの世界の一般人常識なんだかんだ言って知らないよーーーー!カモーン!一般常識ー!

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

「シャッキー’s ぼったくりBAR?」

 

 聞いたことも無い不思議なネーミングセンスに首をかしげながら不思議お爺さんの後ろに続く。あら、中は結構普通。

 すると黒髪ショートのお姉さんがタバコをふかしながら顔を出した。

 

「おかえりレイさん…っと、後ろの女の子は?まぁた引っ掛けたの?」

「あァ引っ掛けてきたさ」

「どちらかと言うと釣られたです。ご飯のお誘いに」

「随分とおませさんなのね」

 

 精神年齢が肉体年齢を追い越してますから。多分。

 

「ちょっと待っていてね、何か作るから」

「ありがとうございますです」

「レイさん、犯罪はダメよ」

「犯罪者が犯罪者に向かって言う言葉では無いな」

 

 ククク、と堪えるように笑う姿を横目で見ながらカウンターに座る。

 ん?〝犯罪者が犯罪者に?〟

 

「………………………海賊?」

「おや、バレてしまったか」

「自分でバラしたんじゃない」

 

 海賊とは思えないくらい穏やかな会話をする店主さんとレイさんと呼ばれた人。

 

「ねェキミ、名前は?」

「一般人A……以外の回答が欲しいな」

 

「あー…じゃあリーで」

 

 シャボンディ諸島は海軍本部と近いから名前バレ怖い。海賊()と分かった以上なるべく個人情報の漏洩(ろうえい)は防いでおこう。

 

「レイさん、は普段何を?」

「〝じゃあ〟というのはスルーした方がいいのか。……私は普段コーティングをしてるよ、コーティング屋のレイさんで通ってる。腕は一流だからコーティングが必要な時は頼ってくれ」

 

 海賊がコーティングを?怖いなぁ。実に怖い。

 

「リーちゃんは普段何してるの?」

「えっと…、書類仕事(お手紙を書く事)脱走兵捕縛(鬼ごっこ)とか七武海から逃亡(隠れんぼ)、それに世界規模配達(お散歩)です」

「あら、随分アクティブなのね」

「えへへ………………はァ」

「随分深いため息だな」

 

 辛い現実。どうしようもう本気で泣きたくなってくるよ。

 

「レイさんは海賊現役?時はどのような船に?」

「船?……そうだな、アホでバカでヘタレな船長と」

 

 よく分からないが船長さん可哀想に。

 

「愉快な仲間をまとめて調きょ…指導しながら楽しい日々を送っていたさ」

「今凄く悲しい言葉が」

「世の中には知らない方が幸せな事があるんだよ」

「は、はぁ……」

「特に私の事を何度も『腹黒』だと言ってきた盲目野郎には念入りに調教してやったさ」

「隠す気皆無」

 

 何度も言って何度も調教されるくらいなら学ぼうよ盲目野郎さん。

 

「あァ…思い出すだけでぶん殴りたくなってくる」

既視感(デジャヴ)

「私はね、人の嫌がる顔や悔しそうにする顔が大好きなんだよ」

「うわー…どっかで考えるすた感じー」

「人をおちょくったりした時の相手の顔の歪み具合を見るのは楽しいだろう?」

「常識的に考えて私の如く幼き相手に聞くはダメだが悔しながら全力で同意」

 

 ダメだ……この爺さんと私の思想が被る……!

 

 だが油断したらダメだろうな。調教したのが『船長と愉快な仲間』なら『副船長』はどこに行ったのか。愉快な仲間の方に含まれてある可能性もあるが船長にそんな事が出来るのはレイさんが『副船長』である可能性が高い。大体70%の確率で。

 

「リーちゃんこれどうぞ、有り合わせで悪いけどね」

「ありがとうございます!」

 

 店主さん──多分名前はシャッキーさん──が炒飯を作って私の前に置いた。すっごい美味しそう。

 

「いただきます!」

 

 スプーンで掬って1口食べてみる。

 ふかふかのお米に卵がまとわりつきてて塩が卵の甘さを引き立ててる…ご飯に絡むお肉の風味、焼豚だろうか。……はァ、し・あ・わ・せ♡

 

 海軍本部のご飯みたいに量産式でも無い、サッチさんみたいに有り合わせを活用する様なご飯でも無い。これは、これは!

 

「家庭料理の味…!」

「美味しいの?美味しくないの?」

「美味しい一択!」

「フフ、それは良かった」

 

 惚れる。

 

「お嬢さんは不思議な喋り方をするんだね」

「へ?あー…はい、これでも良くなったですよ?山奥で暮らすてた故に言語不自由で」

 

 原因は決してコルボ山のせいじゃないけど説明の仕様が無いよね。うん。

 

「ふむ、山奥で」

「はい!エースとサボとルフィと…──」

「──エースだと!?」

 

 ガタッと立ち上がったレイさんに凝視される。え…まさか、ツンデレに毒されたパターンの人第二号?

 

「まさかポートガス・D・エースの事か!?」

 

 あぁ…毒されたパターンの人だ。逃げてエース。出来れば一生ここに寄らないで。

 

「エースと何の関係……」

 

「…ポートガス・D・エースで間違いない様だな」

 

 っな!この人上手だった!

 

「……ッ」

 

 落ち着いた様でレイさんは座った。

 マズイ、マズイマズイマズイ。

 もしもこの人がエースの正体を知っていて、親の復讐もしくはエース本人への復讐を企んでいたのだとしたら…、私の身が危険!人質危険!

 

「落ち着け」

 

 とにかく距離を取ろうと立ち上がればシャンクスさんの覇王色なんか比にならないくらいビリビリとした重い空気に当てられる。

 

「…ッは、…は……っ!」

「…! 覇王色に耐性があるのか!?」

 

 ンなものあってたまるか!

 

「耐性があろうが無かろうがいい。こっちは情報を欲しているんだ」

「…ッ、し、るか…!」

「ポートガス・D・エースとの関係はなんだ」

「うる、さ…い…っ!」

 

 すごい威圧に呼吸が浅くなる。

 なるほど、これが覇王色。シャンクスさんが使ったのも、エースがシャンクスさんを人攫いだと勘違いした時に使ったのも全部まだまだの段階の覇気だったのか!

 

「答えてくれないともっと覇気をぶつける事になる」

「……ッ」

 

 細い目からギロッと光が突き刺さる。怖い。いや結構まじで怖いですから子供相手にそれは無いと思います。

 

「早く言え」

「──じゃあとっととその威圧を解けこの腹黒」

 

 新たな登場人物が現れ、呑気な声が場違いに店の中に落ちる。

 げしっ、て音がしたからレイさんをその人が蹴ったんだろう。

 

「ハッ、ハッ、ハッ…!」

 

 緩まった覇気に安心して呼吸を正す。苦しいなド畜生。意識を飛ばす気満々だっただろこの野郎。

 

「おい腹黒。こっちを見ねぇまんま止まるな気色悪い」

 

 会話を察するにレイさんを腹黒と呼ぶのは海賊自体に調教した『盲目野郎』だと。

 

「………」

 

 その男を見た瞬間私は箒を構えて

 

「「死ねぇぇぇえ!」」

 

 顔面に向かってぶん殴った。どうやらレイさんと同時の様でお互いの顔を見てびっくりする。

 

「…ッ、テメェら…!折角止めてやった俺に向かって……!」

 

 殴られた()()()()()()は鼻を押さえながらゆっくり起き上がって私とレイさんを紺碧の目で睨みつけた。

 

「ッの腹黒野郎…!」

「ホォー…私を目の前にして()()を言うとは随分と命知らずらしい……」

 

「まさか………盲目野郎?」

 

「おいゴルァ小娘!黙り腐りやがれ!」

 

「まだ殴っても心を痛まない程度に元気はある様で安心したよフェヒター…」

「テメェも相変わらずムカつく顔してんな腹黒」

 

 目の前にいる男はどう考えても私をめんどくさい人生にした原因の1人。フェヒ爺だった。

 

「………………まてよ」

 

 盲目野郎=フェヒ爺=海賊王の船員

 

 なら

 

 盲目野郎が愉快な仲間だったレイさんの所属する船は……?

 

「………………………海賊王の船員?」

「チッ……バレたか。おいどうしてくれるフェヒター」

「俺のせいかよ!つーか人の話を頼むから聞けよ!何で小娘脅しかけてんだよテメェは!俺は助けた筈なのにどうしてぶん殴られる必要があるんだよ糞が!」

「「フェヒ爺/フェヒターのせい」」

「殺す…まとめてぶち殺す…!」

 

 フェヒ爺がそう宣言した瞬間レイさんが関節技をキメにかかった。

 

「いででででででででで!ぎぶ!ギブ!」

「それでお嬢さん。エースとどういった関係だ?」

「あ、海賊王の船員なれば…兄妹ぞ、義理の兄妹。私エースの妹」

「あぁなるほど…「おい聞いてんのか白髪(しらが)っでぇぇえ!」…すまないな脅してしまって。ロジャーの事はどうでもいいんだがロジャー海賊団の船員の情報が少しでも欲しかったんだよ」

 

 表情をピクリとも変えずに笑顔を貼り付けてフェヒ爺の関節をやっていくレイさんがカッコイイ。いくら頑張ってもフェヒ爺には敵わないと思ってるのにそんな彼を一瞬でこんな状態にするとは…!

 

「……尊敬」

「そりゃありがたい話だ」

 

「ふざけんなよ小娘!」

 

 正直さっさと落ちればいいと思う。

 

「それじゃあ改めて…でも無いな。自己紹介といこうか。私はロジャー海賊団副船長 シルバーズ・レイリー。お嬢さんは?」

「私はえーっと、モンキー・D・リィン……かっこかり?ガープ中将の義理の孫でエースの妹です。えと、親は──」

「──絶対言うな小娘!絶対に!こいつにだけはいでぇぇえ!糞が!」

「続きをどうぞ」

 

 私の自己紹介を中断しようとしたフェヒ爺が更に関節技をキメられて叫んだ。この状態で表情を崩さないレイさんが素晴らしい。

 

 

「あ、はい…。親は戦神シラヌイ・カナエ、ガープ中将より確認は取るしたです」

 

 

 レイさんはその言葉にカッ!と目を見開いて私を見た後フェヒ爺を見た。

 

「まてレイリー。誤解だから、頼むから殺気をガンガン当てるな…!」

「お前がカナエを………?」

「アホな事言うんじゃねェよ!っ、だから余計な誤解を生む前に言うなっつって…!」

「お前がカナエを………?」

「おいおいおいおい…壊れてんじゃねェよ…くそが…もう泣きてェ…」

 

 よく分からないがレイさんが何かを誤解してその八つ当たりというか被害者にフェヒ爺が選ばれたのが分かった。

 

「私のお母さん…可哀想に…ぐすん」

「ぐぇえッ!ギブ!無言で攻撃を加え…っておいい!覇気まで使うんじゃねェ!」

 

 今までフェヒ爺には散々やられたんだから間接的にでも無茶苦茶されてるとスカッとするじゃん?

 

 私はシャッキーさんの料理を味わう為に席に戻った。

 

「リーちゃん…随分と小悪魔ね」

「…………さァ?」

 

 私子供だから分かんなーい。

 

 




リィン<<フェヒ爺<<(越えられない壁)<<レイリー
昔の仲間と絡むとフェヒ爺の雑魚感が増幅する不思議現象

レイリーさんはロジャー海賊団で帝王的な存在だと個人的に嬉しい。ドSキャラだと凄く嬉しい。

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