2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第66話 兄と妹の大捜査線

「我が妹よ」

「何事ぞ我が兄よ」

 

 久しぶりの再会に浮かれる事無く、プロポーズ→乱闘 というおかしな結末を迎えた兄と向かい合ってベッドの上に座っていた。エースは悟りでも開くつもりなんだろうか。

 

「この状況を5文字以内で説明せよ」

「 と も に ね る 」

「正直出来ないと思ってた!」

 

 カッ!と真顔で叫ぶように言うエースを見てこいつ何してるんだろうという目になる。私も随分可愛げが無くなったものだ。

 

「我が兄よ」

「なんだい我が妹よ」

 

「ティーチの名を聞きたぞ」

「やはり気付いておったか……」

「boss、いかがしやしょう」

「むふ…現状維持としか言いようが無いな……」

 

 おかしなテンションで繰り広げられているコルボ山最年長最年少コンビでございます。正直設定は分かりません。

 

「……エース現状維持という言葉ご存知か」

「お前自分の兄ちゃんどんだけアホだと思ってんだ」

「少なくとも私の本名を忘れる程には」

「その説については大変申し訳無いと思っております」

 

 スッ…と綺麗に土下座を決めるエース。さてはマルコさん辺りに土下座しまくってるな?

 

「シャンクスさんには会うした?」

「〝会った〟が正解な。答えは会ってない」

()()の件。伝えるべきかと」

 

 

 『マーシャル・D・ティーチに注意しろ、特に悪魔の実が奴の身近に現れた時に』

 

 

 一体何の事を言っているのか分からなかった。

 ティーチ、という人間を見る事は叶わなかったが、伝言をエースに伝えた人間が()()エースが白ひげ海賊団に入る事を知っていたのか。

 

 まずそもそも伝言をシャンクスさんに伝えた時点でシャンクスさんがエースに会えるかどうかも分からなかったんじゃ無いか。謎、謎すぎる。警戒しておくに越した事は無いな。でもとりあえず

 

 

「寝る」

「ええーー!兄ちゃんと話さねェのか〜?久しぶりの兄ちゃんだぞ〜?……と言うか本気でお前の隣で寝れる気がしないので起きてお兄ちゃんとの会話に付き合って」

 

 後半やけにマジトーンだったが妹と気付かずに幼女に手を出す様な人間を兄とは認めたくない。

 おっきくなろう。エースを変態にしない為にも。

 

「リー!」

 

 先に布団に潜り込んだ私を無理やり引っぺがそうとする人間は兄じゃない──。

 

「なァリー……ィ゛」

 

 ──敵だ。

 

「エース………私がこの6.7年ただ平和を送ると望んで叶わぬ日々が昔のままの私で生き残れると思考可能ぞり?」

 

 私がちょっとでも力を使える様にならないと七武海という頭のおかしな動物さん相手に出来るとでも?

 

「………忘れてた、こいつ眠りを邪魔されるのが1番嫌いだった…」

「死ねェェェェ!」

 

 

 甲板に2番隊隊長候補が降ってきた時は敵襲かと驚いたらしい(※不眠番談)

 

 いや私一応敵だよ!?

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

「おはようお嬢」

 

 廊下に出ると和服美人が現れた。

 和服着たいなー!ワノ国に行ってみたいけど世界政府非加盟国だから(政府の人間)は行きにくいんだよなー!

 

「イゾウさんおはようです」

「昨日は大丈夫だったか?襲われなかったか?」

「おいイゾウ人の妹に変な事吹き込むな!」

「……俺は子供に変な事吹き込む奴だと思われてるのか。……エースといいサッチといい…」

 

「(私が物理的に)襲うした」

「エース………」

「誤解だ」

 

 言葉足らず?大丈夫自覚済み。私の眠りを妨げる者には徹底的な排除を実行するぞ?

 やだ、なんだか厨二臭い……。この世界は厨二に疎いようでわざわざ技名を叫んだりしてるけど私は騙されないからな!すっごいイタいよ!いやほんとなんで技名叫ぶの。

 

「あ。マルコォォォ!」

 

 エースが猪の様にパイナッ…マルコさんに突進して行った。猪か(2回目)

 

「ぐふぅ…ッ!…っ、の、なにしやがんだよい!」

「ちょっとさ〜、挨拶しに行きてェ人がいるから小舟貸してくれねェ?」

「小舟で…?お前能力者なの知ってるのかよい」

「リーも行くからイザとなったら大丈夫」

「子供を海難事故に巻き込むな!」

「事故するのは前提なのか」

 

 この2人癒される。

 

 おたくらその行動私が子供の時に見たルフィとエースそっくり何ですけど。暴走癖(トラブルメーカー)のルフィと阻止役(ストッパー)のエースみたいに。

 なんというか…エースって。

 

「若返るした」

 

 ガキっぽくなったと言うか。

 

「それはリィンに近付いたって事か?」

「何故そうなるぞ難聴、逆ぞ逆」

「リィンが俺に近付いた?」

「遠ざかる道一直線」

 

 昔は人を寄せ付けない印象の方が強かったのに。第一印象とかジジを睨み殺さんばかりで警戒心MAXの猫だったと言うのにさ。

 その代わりサボはニコニコしてて親しみやすい印象が強かったな。赤ん坊に向かって自己紹介するのはどうだろうと思ったけど実際私は把握でしたし。

 

 

 そこで私は気付いた。

 

 

 …………エースとサボって根本的な部分が入れ替わったりしてないよね??

 

「……」

「なんだよリー、そんなに見とれて」

「マルコさん鳥肌ーー!私鳥肌ぞー!マルコさんとお揃いー!」

「俺を巻き込むなァァ!」

 

 それでも逃げないキミが素敵。

 

 

 

 

 

 

 

「で。そういやエースは一体誰に会いに行くんだよい」

「シャンクス」

「…………………イゾウ。ナースを呼んできてくれ」

「どれを診てもらうのか分からないがとりあえず落ち着けマルコ」

 

 頭を掻きながらマルコさんがエースに聞くとエースの即答に動きを止めた。

 

「……リィン、こいつは一体誰に会いに行くんだよい?」

「四皇赤髪のシャンクスさん」

「……イゾウ。こいつら誰って言った」

「現実逃避したい気持ちは分からんでも無いがそろそろ現実を見てくれ頼むマルコ」

 

 どんな組織にも苦労人はいるんだなって察した瞬間だった。

 

「なーぁー!小舟貸してくれたっていいだろー?」

「だめだ」

「あー…じゃあ私が連行というのはどうぞです?ほら、シャンクスさんは私の兄弟子らしきですし…」

「赤髪自体には心配してない。同じ四皇同士だし手は出さないだろうよい。俺は手段を言ってるんだ手段を!」

 

 私箒あるから飛べることは知ってるよね?

 前回来た時は…巨大トルネードで飛ばされてきて…帰りはシャンクスさんの船で…空中散歩はマルコさんの能力で…箒は真っ二つ……。

 

 …………言ってない?

 

「あの、私単独飛行可能……」

「はァ?お前はガキで………、いや待てよい。海軍大将にガキが非能力者で務めれるか…?ひょっとしたら特別な悪魔の実だとか……──」

「リーは箒で飛べるんだぜ〜?凄いだろー!()()妹凄いだろ!?」

 

 ぎゅーぎゅーくっついて来るエースの手をひっぱたきながら箒を取り出す。

 

「うわっ!……お嬢それどこから出した?」

「女の子の ひ・む・つ」

「リー。〝ひみつ〟だからな」

「……意図的なる間違いぞ」

 

 まァ聞きたいことあるしエースの許可が取れなくても私は単独で行くけどね。

 となると私の服って目立つから着替えた方がいい?どう考えても隊服を(私のサイズに合うように)リメイクした服だし。

 

「着替える」

 

 ガバッ、と服を脱いでタンクトップとショートパンツになる。この服じゃだらしないか。仕方ない、アイテムボックスに数着入ってあった筈だからリュックの中で開くか。

 

「っておいおいおいおい!おい!何こんな所(廊下)で着替えてんだアホか!」

 

 別に真っ裸になる訳じゃないし最低限の服は隊服の下に着てるからいいでしょ。むしろ前を全開にするキミ達の服装を先にどうかして欲しい。

 

「……?」

「何言ってんのかわかんねェみたいな顔するな!兄ちゃんしまいにゃ怒るぞ!?」

「お嬢。襲われても知らないぞ?」

「その場合社会的抹殺を実行するです」

「そんな実行力の前に恥じらいをもて!」

 

 イゾウさんに叱られるのはまァ同性のよしみで許すがエースに怒られるのは意味がわからん。1度海に落ちろ。

 

「行くするです」

 

 箒に(またが)って飛び立とうとすると腰あたりにガシッと何か掴まった。この体温の高さは誰だか分かるな、エースだ。

 

「あ、じゃあマルコ行ってくる!」

「お前ら兄妹の自由人めぇぇぇ!」

 

 私海賊じゃないから海賊の指示に従う義理は無いぞ。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

「速ェ!リー速ェな!」

 

 キッドさんがビビったスピードにビビらない、だと!?

 我が兄恐るべし……。そう言えばサボもビビらなかったな。

 

「サボやルフィより先に乗ったな!」

「…………。」

 

 ごめん、サボ先に乗ってる。

 

「そう言えばルフィの父親と引き換えに…とかどうとか言ってたけどルフィの父親ってどんな奴なんだ?」

「ん?革命軍のトップぞ?」

「……すっげえ聞いた事ある」

 

 飛行中に会話が出来るって凄いな。ほんとに。慣れてる私でも難しかったってのに一瞬で慣れるとかほんとに怖い。

 

「……私の兄は凄い…」

 

 ポツリと呟いたのに聞こえる地獄耳のエースは最強なんじゃ無いかと思っています。血筋的にも個人的にも。抱き締められて首が死ぬ。

 

 

 

 =========

 

 

 

「お頭?いきなり酒の手を止めてどうした?」

「んー…なんか2つ縄張りに入り込んでるな…。近いぞ」

 

 思わぬ来客に宴だと騒いでいる最中、酒の手を止めて戦闘態勢に入ったシャンクスは周囲に気を配った。

 

「酒の飲み過ぎで見聞色が使えないとかになるなよ」

「うるせぇ」

 

 いつもブレーキを踏むベン・ベックマンも警戒心を緩めない。

 

「……────っ、上だ」

 

 誰かがポツリと零せば一斉に視線が上に向いた。

 

「──ゃぁぁああああ!」

 

──ボウンッ!

 

 降ってきたオレンジ色の塊はどうやら人間の様で熱い空気が蔓延する。

 

「…ッ、の野郎」

 

 熱の塊から男の声が聞こえた。

 

「炎…?」

 

 それぞれが武器を構えたその時、上から更に人の声が。

 

「生きるしてる?」

「自分の兄貴を空中から落とすな!」

 

 炎は男に、空から少女が。

 その変化に頭が追いついて来なかったがシャンクスがまず声を上げた。

 

「リィン!?エース!?」

「シャンクス!」

「シャンクスさん!」

 

 ビビって損したとシャンクスが座るとエースに見覚えの無い面々は納得出来ない表情で首を傾げた。

 

「お頭…?そいつ白ひげの所に入った火拳じゃ……」

「ん?おお!リィンの兄貴だ!」

「ンン!?」

 

 エースの親の事がある、普段口の軽いシャンクスであってもクルーには伝えてない様だった。

 

「はじめまして!俺はポートガス・D・エース!リィンの兄貴だがルフィの兄貴でもあるんだ!よろしく赤髪海賊団!」

 

 こうもポロポロ個人情報が露見(ろけん)すると立場的に辛いのはリィンなのだがここに居るのは赤髪の船員ばかり。仕方ないと腹を括った。

 

 ただ、彼女の災厄がこんな程度で終わらない事は知らなかったが。

 

「───ホォ…。火拳が兄とは…面白い兄妹だなァ、リィン?」

 

 ギギギギギ、とまるで機械のように首を動かすとそこには海兵のリィンとして知られたくない人間が居た。

 

「………………た、鷹さぁん…」

 

 立ち直るまで1時間の時間を要した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「リィン」

「…………はい」

「あの男、誰だ」

「………………鷹の目」

「お前にとって。誰でどんな関係だ」

「…?」

「兄ちゃんはあんな男認めません!」

「何故父親ぶるこのバカ兄貴はぁぁあ!」

 

 絡まれるだけだと説得するのに更に1時間の時間を要したことをここに記しておく。

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「ほいで、その兄妹さんは俺に何の用だ?」

 

 私たち2人が勝手に行った騒ぎがある程度収まったタイミングを見計らってシャンクスさんがお酒を飲みながら話しかけてきた。

 流石に2時間ほどの時間が経てば周りはすっかり宴モード。ミホさんも気を使ってか少々離れた位置にいる。

 

()()についてだ」

「…!」

 

 エースは疑問点をあげた。

 

 まずシャンクスがエースに会うこと。

 エースが白ひげ海賊団に会うこと。

 

 まるでそれを()()したかの様に伝えられた伝言。

 

(海賊王の息子)に伝言を伝えたのは誰だ?」

 

 ただ純粋に予想するとエースの母親のルージュさんで無いことは確かだ。じゃないとあんな可能性の低い賭け(遺書)を家に残したりなんかしないから。

 

「…………知りたいか?」

「おう」

 

「〝戦神〟…俺の憧れの姐さんだよ」

 

 思わぬ名前に目を見開く。

 

「せんじん?どっかで聞いた事ある様な…無いような…」

「大方お前らの爺さん(海軍本部ガープ)師匠さん(フェヒターさん)じゃねェか?」

「そうだった気が………」

 

 

「そ、れ………私の母親ぞ…」

 

 言ってなかったか、現実逃避したくなった。てっきり言ったもんだとばかり思っていたが…あれ?

 

 

「「………………は?」」

「事実ぞ?ジジに確認済み」

「な、ななな、ね、姐さんのこ、ここここ!?」

「私とて予想した上でシャンクスさんにぞ質疑応答すた故に…」

「ち、父親は!?」

「フェヒ爺以外なれば最良」

 

 いや、まあフェヒ爺ずっと片思いしてる()()()ってのがいるらしいから大丈夫だと思うけど。

 

「……多分あの人だと……いや、でもリィンが海軍に入ったら…うーん………いや、やっぱりあの人だよな…はァ…」

 

 勝手に自己完結してないで教えてくれてもいいじゃないかだからその遠い目をやめてくれ。

「いずれ会うだろ」

「その根拠は」

「カナエさんの娘だから」

 

 本当に私のお母さん何者なの。

 

「あの人の()()()()はなかなか外れないんだ」

「……それが伝言の謎だと?」

「幸運を引き寄せる吸収体質なのも悪魔の実の能力も影響してるだろうな……」

 

 ほほお。

 娘の私は堕天使様のせいで災厄吸収体質なのに母娘でここまで扱いに差があると時空の狭間に向かって殴り込みに行きたくなる。私ちょっと仮死状態になってきていい?私多分今なら行ける気がする。

 

「なァシャンクス。リィンのお袋さんはどんな事を予知したんだ?」

「あー…例えば一番だとやっぱり〝ロジャー船長が世界をひっくり返す〟って事かァ?」

「…っ!そうか…」

「後レイリーさんに聞いた話じゃ…〝白ひげ海賊団が現れる〟だとか〝金獅子の脱獄〟とか。あ、後俺の四皇になる事とか……いや、ちょっと違うか。俺があの人の言葉で四皇になろうと思ったんだ」

 

「なんか…つまんねェな」

 

 エースの口から出たのは周りを驚かせるには十分だった。

 

 私は抗議したい。どこがつまらないだ危険な事から回避できる予知だぞおいコラ。私がどれくらい欲しがってると思ってんだおい。

 

「……それな。船長も姐さんも言ってたんだよな」

「………え?」

「『先の分かる冒険ほどつまらない物は無い』って」

「海賊王が?」

「姐さんだって『細かい事が分からないのは救いだったかな』って笑ってた」

 

 また随分と豪快なことを。ある意味尊敬。

 

「それで中途半端に強い姐さんが戦闘引っ掻き回して二次災害生むのは得意だったけど」

 

 訂正。随分どころじゃなくてかなりだった。

 

「ま、細かい事は本人か副船長が知ってるから気になるなら聞けよ?あくまで俺は見習い(途中参戦)だからよ」

「あの、ちなみに戦神はいつから船に?」

「最初らしい。船長と副船長と3人で初期メンバー」

「………フ、フェヒ爺は…」

「結成数年後らしい」

「じゃあ俺のお袋は?」

「確か俺より2年くらい前で途中離脱、だっけな?」

 

 海賊王と冥王とトリオ組んでる人が私の母親何ですか?戦場のみならず貴方は私の思考回路と平穏な日々までグッチャグチャに二次災害を発生させるつもりですか?

 ちょっと、頭クラクラしてきました。

 

 安心してください私のお母様。私は只今よりあなたの偉大さを確認しましたので再会した(あかつき)にはあなたを1発ぶん殴ろうと思います。先に謝っておきますねゴメンナサイ。

 

 

 

 

 

 




母親の謎が深まるだけ。予想されても答えませんからね!?叶夢さんのお話はまだ先ですけど少しずつ書いています。まァそんな大した秘密は無いですけど。
そして未だに誤解するイゾウ=女の人。多分本人が口にするまで誤解は解けないでしょうね。

オチ決めアンケートは70話の投稿日が締め切りですが恋愛要素は私の中で添え物です。甘ったるいの難しい。

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