2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第46話 どこへ行っても災厄

 

 

 

 

「し、死ぬかと……思えた……おえっ…」

「死ぬのはいいが頼むから俺のいないところで死ねよ」

 

 私の兄弟子(仮)が酷い。

 

「たかが魚人島への航海如きで騒ぎやがって……」

 

 いや、普通シャボン玉で潜ろうとは誰も考えませんから。普通の、一般的な、軍艦サイズの船だからこそ海獣達に狙われまくった。なんかおっさんみたいな顔した深海生物とか。

 

 

 私達はシャボンという物体に包まれた船で、指針も無い中海流を航海したりシャンクスさんが鬼徹で船ごと食べようとした深海生物ぶった斬ったり、酔いまくってゲロゲロ状態の私は食べられたくない死にたくない一心で水、つまり海流をコッソリ操って深海の島、魚人島ヘやって来た。

 

 

 一言言いたい言葉は疲れた。

 そして一目見た印象としては、ここなんてディズ○ー?

 

 未知の場所で人じゃない生物が訳の分からないシャボン玉に乗ってプカプカしてる。

 幻想的だよ、幻想的なんだが…ちょっと考えてくれよ。怖くない?

 ジンさん──七武海ジンベエ──本人なら知ってるから大丈夫だけど魚人や人魚特有の文化があったらどうするの?もしもその文化とか規則にひっかかって処刑って事になったらどうする………。

 

「リィン、どうする?少し此処に滞在して戻るか?」

「今すぐに去るが望み」

「よしブラブラするか」

 

 人の話を聞いてくれヤソップさんよ。

 

「箒いるんだろ?」

「神様!…あ、お代はそちらぞ?」

「おまっ、貰うもん貰ってんだろうが女狐さんよォー…」

「少なくともヤソップさんの如き海賊よりぞ定期的な安定した収入源は所持してる、ま、子供料金?1人前など頂けぬぞ」

 

 これは本当に。

 私はどうやらクザンさん達1人前の大人が貰える給料の半分も貰って無いらしい。

 確かに海賊討伐には出させてもらえないし(雑用だから)

 大将としての仕事と言えばほとんどが私の名前をツラツラ書いていくだけの仕事ばっかりだし(確認は他の人がしてくれる)

 時折今回みたいに遠征行く時特別手当が付いたりするけど割に合わないし(理不尽)

 

 子供って利点も欠点もあるね。

 

 利点の例としては「子供だから」「ガキだから」という理由で失敗を許されたり甘い目で見られたりする事、だな。私はそういった判断に甘さを加えてくれる人大好きです。

 欠点としては「子供だから」「ガキだから」と意見が通用しなかったり1人前として扱われなかったり。でも欠点は全然カバー出来る範囲だ。

 

 

 まァ今現在子供なんだからあーだこーだ言っても仕方ないってのもあるけどね。

 

「リーィーンー!ほら、この箒どうだ?」

「無理…飛べぬぞ……」

「…? そう言えばなんで箒にこだわるんだ?掃除用の箒じゃダメなのか?」

 

「飛行用の箒を所望するぞ……」

 

 ヤソップさんの質問に答えれば彼は更に首を捻り「絵本に出てくる魔女みたいにか?」と呟いた。

 

「そうぞ…、私はイメージしやすい箒が必要……」

「そっかそっか、ほんとにお前の能力はなんだろうな」

「……不明ぞぉ……」

 

 はぁ、とため息を吐くようにつぶやけばシャンクスさんもヤソップさんも箒探しを再開した。

 

 ごめん、ホントは能力なんてありません。

 いやー、ほんとにこの力は何とかしたいものだよ。小規模な爆発とか無機物、つまり箒を操作しての飛行とかは慣れたものだけど他に慣れてないものはかなりの集中力が必要になってくる。

 ミホさん相手に爆発は使えないから風を使って牽制(けんせい)しようと思ったんだけど…その隙にミホさんが跳んできて1本切り傷付けられる、みたいに。寸止めじゃ無い所もまた彼の鬼畜さと非常識さが伺えるよね!

 

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 

「ほ、う、きー!私のほ、う、きー!」

 

 疲れたからシャンクスさんの背中に捕まり高い所を物色していく。

 

「どうだ?見つかりそうかー?」

「ふーむ…やはり前に使用して居た箒が1番利用しやすき……。しっくりくるのが居らぬぞ……」

 

 毛を思いっきり掴んでバランスを取りながら視線をあちらこちらへと移す。はー…見つかんないなァしっくり来るの。

 

「いででででで、はげる禿げるからリィン!いででで、お前、なんの怨みがある!」

 

 いっぱい。

 

「アーーバランスガー」

「いだだだだだだ!ブチッて、ブチッて言ったから!なァリィンちゃん!?」

 

「私どうやら一気に歳を取った模様…」

 

 はて、聞こえないな、とばかりに片耳に手を当てると何処かから女の人の大声が聞こえた。

 

「何事?」

 

 

 

 ==========

 

 

 

「へ〜、地上への移住の為の署名活動か…」

 

 シャンクスさんがふと呟く。

 視線の先には黄色い髪の人魚が大きな箱の後ろに立って色々呼びかけて 、住民は何かしら一言声をかけると離れていく。

 

「オトヒメ様もやるな…」

「オ、トヒメさま?」

「この国の王妃さん」

「…!?」

 

「頭、クルーを全員連れて来たぞ。それでどうしたんだ」

「ん?いや、ちょっとあの署名に協力してくんねェか?」

 

 私がシャンクスさんの言葉に動揺しているとクマさんが赤髪海賊団のほとんど全員を引き連れてやって来た。なるほど、さっきでんでん虫で電話してた理由はアレか。

 なんだかんだと良い人なんだな。

 

「頭ァ〜…あんなに集まってるのに俺達の署名まで必要かァ?」

 

 クルーの人がそう質問するとシャンクスさんが頭を捻った。

 

「んー…それもそうか?でもよォ…」

 

「意味はあるぞ?」

 

「「「へ?」」」

 

「あァ…リィンはこう言いたいんだろ?──ただの海賊の署名ならまだしも四皇の署名なら大きな力を発する、と」

 

 クマさんが私の言葉に追加した。

 

 ごめんなさいそんなに深い意味は無かったです。

 私は、まァ人間が署名するんだから心意気くらいは感じ取ってくれるだろう程度しか考えてなかったです。

 

 私が心の中で否定している間にもクマさんの説明は続いていく。

 

「四皇が後押しするという事はそれに否定するものは四皇の意見に逆らうという事、賛同しないならまだしも否定した場合大袈裟にすればそれは四皇に喧嘩を売ってる事と同類になるわけだ」

「なるほど…さすがベン!よく考えたな!」

「お前は何も考えずに言ったのか……、元々リィンがそれを言ったんだ。あんたより随分賢いさ」

 

 罪悪感に押し潰されそうだが……そういった事にしておこう。自分の価値を落とすより高める方が良いだろう。

 

「分かったって…分かったからベン。ほら、書くぞ書くぞ」

 

 ペンを取り出して名前を書き始めた。

 じゃあついでに私も。海軍上層部…もしくは五老星が見ることがあればそれは海軍本部の大将の後押しになる。多分、クマさんの言う通りなら。

 

「リィン、届けに行くか?」

「………行く!」

 

 シャンクスさんが3分の2を持って残りは私が持ち列に並ぶ。

 何人かで1枚だから数はそんなに多くないから助かる。

 

「魚人島は白ひげさんの縄張りなんだ…、あの人で本当に良かったよ」

「同意、迫害差別の多き種族には強い後ろ盾が必須。四皇はそれに十分ぞ」

 

「オトヒメ様…、これどうぞ!」

「オトヒメ様〜!頑張って下さい!」

 

 魚人や人魚は署名を渡すのと同時に感謝や応援をしている。オトヒメ様って王妃様なんだよね?いいの?こんな所に居て。

 見てる限り国民は『オトヒメ様大好きー!』って雰囲気だけど果たして全員が全員そう思って無いのかもしれない。

 

 ジンさんに話を聞いたことがあるけど迫害されてたんだよね?いやむしろ迫害されてるんだよね?

 

 人間、本当に怨んでないの?

 

「お。俺たちの番か…──オトヒメさん、ほら、俺たちの署名だ。頑張ってくれよ」

「…!貴方は確か赤髪…ふふっまさか人間が手伝ってくれるとは……ええ、頑張るわ。そちらのお嬢さんもありがとう」

「わ、私も応援致しますです…」

 

 なんだろう、応援しているのにこのモヤモヤした感じは。

 

 何かゾクゾクと寒気がするんだ。

 

「………!オトヒメさん!伏せろ!」

 

 シャンクスさんが慌てて私とオトヒメ様を抑え込む。

 

「何をする気だ人間…!そのお方は──」

 

 事は護衛さんの停止の声が言い終わる前に突然起こった。

 

──ゴオオッ!

 

「署名箱が突然燃え始めた!た、大変だ!」

「俺たちの署名が!」

 

「あぁ!署名が!」

「オトヒメさん!あんたは俺の体に隠れててくれ!頼むから!」

 

 シャンクスさんが私を巻き込んで抜け出そうとするオトヒメ様を庇う。とりあえず私抜けていい?結構苦しいんだけど。

 

「水を!あとお前はオトヒメ様を解放しろ海賊!」

 

──ジュワッ……

 

「水ならば私が消火可能!」

 

 色んな目がシャンクスさんの体から抜け出した私に注がれる。

 とりあえず落ち着け心臓、頼むから落ち着いてくれ。集中してくれ!

 

「火をつけた犯人を探せ!」

 

「頭ァ!」

「リィン!」

 

 クマさんやヤソップさんが遠目で叫んでるのを確認出来た。そう、偶然にも…──サンゴの上で銃がオトヒメ様の方に向いているのも。

 

「ッ!オトヒメ様ァ!」

 

 運悪く、火事場の馬鹿力を発揮しているオトヒメ様がシャンクスさんの拘束から抜け出しかけた時に。

 

──パァンッ!

 

「ッあ!」

「「「「「リィン!?」」」」」

 

 私は急いで駆け出して、何故か庇ってしまった。また。

 痛いなクソ野郎……、せめて毒で来いよ。

 

「リィン、お前なんで…!ベン!船医連れて来い!腕からの出血がある!」

 

 鋭い痛みに思わず座り込んでしまう。痛みで集中力が完璧欠けてしまった、まだ敵は銃を構えて居るのに。

 

──パァンッパァンッ

 

 再び発砲音が鳴り響いた。

 

 クソ、庇わなければまだ生きられたのに……なんで。

 

──キィンッ…!

 

 覚悟は決まってないけど目をつぶった、のに追加の痛みが来ないし左腕痛いしで再び目を開けると──救世主が居た。

 

「危ねェな……」

 

 シャンクスさんが刀を振り下ろした姿だった。

 

「…………………え?」

 

 まさかとは思うがこの人弾丸を刀で弾いた?何?この人、人間じゃ無かったの?

 

「兵士!オトヒメ様の殺害未遂の下手人を探し出せ!」

 

 なんかタツノオトシゴっぽい人が騒いでるけどすっごい痛い。何これ痛い。貧血かな、目がクラクラしてきた。

 

 

 

 もしかして此処でオトヒメ様が狙われるのって私の災厄のせいだったりします?

 

「に、人間がオトヒメ様を庇った……」

「なんだあの少女と海賊は…!」

「人間は怖い人じゃなかったの?」

 

「赤髪の男がオトヒメ様を押し倒したのもまさか庇う為!?」

「何がしたいんだよ人間は!」

 

 

 そこらから動揺と混乱が見え隠れ…いや隠れて無いわ。普通に丸見えだ。

 

「誰か!この子に手当てを!」

「オトヒメ様も早くお逃げ下さい!」

 

 

 辺りは完璧大混乱。どの行動が最優先なのか分かって無い。

 

 あぁくそぅっ、元々私が庇って無ければ楽なのに。いやそれを言うなら白ひげさんの船に乗った所から災厄の始まりでそこに行く原因となったのは海賊女帝が呼び出したからで呼び出されないといけなくなったのは女帝と仲良し(笑)の七武海の影響で七武海と会わないといけなくなった原因は…根本が分かった、堕天使様(あのクソジジイ)だな。

 よぉし次会ったら助走つけて全力でぶん殴ってやる。

 

「落ち着かんかお前さんら!兵士は下手人の捜索と王族の保護!救護班はさっさと怪我人を治療!国民は自分の家に避難せんか!!」

 

 大きな声が辺りをまとめる。すると一瞬呆然とした後すぐ様周りは行動し始めた。

 

「お前さんらは…!赤髪!?」

「お前…!白ひげん所の…」

 

「あれ〜…幻…ジンさんが見える」

 

 青い海の様な体をした七武海常識人、海峡のジンベエさんが幻で見えた。

 

「リィン!?な、何故!?っ、お前さんがオトヒメ様を庇ってくれたんじゃな…!」

「ジンベエさん、お知り合いで?」

「そうじゃ、急いでくれ!この子は、まだ失いとうない人間じゃ!」

 

 ジンさんの声が聞こえたけど、私は襲ってくる睡魔に身を任せ眠りについた。

 

 

 

 

 

 次起きた時は夢オチだと期待したいものだ。

 

 




リィン→自分が居るせいで嫌な出来事が起こってしまう。
実際→嫌な出来事が起こる最中に運が悪い事に遭遇してしまう。

これはリィン本人には分からないので本人にとって悩む原因の一つになるんでしょうね。


アンケートの事で一つ。間違えて無いですよね?これクロコダイルとハンコックの最終決戦じゃないですからね?ちょっとあんまりにも予想外過ぎて笑いが止まりませんでした。

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