あぁ、これは夢だな。
夢だと分かる夢のことをなんというんだったか。
場所はコルボ山だ。
私の兄は3人。エースとサボとルフィ。
ぼやけた視界から考えるにどうやら私はコルボ山の日差しの強い場所でお昼寝をしているようだった。
「こんなところで眠るなんて」
金色の髪がサラサラと視界に入る。青い空と金髪ってやっぱり似合うなぁ。
子供の頃ではなく、成長した様子のサボが呆れたような声色で言っていた。
「だけどそろそろ起きてもらわなくちゃ──」
同じく成長した様子のエースがそう言えば、視界を埋め尽くす様に麦わら帽子が突撃してきた。
「おい! 起きろ! おーきーろー!」
まだ被るにはちょっと大きい麦わら帽子。甲高い子供の声で私の体を揺する。
ルフィ、重たいよ。
「起きろよエース!」
うるさい……。エースを起こしたいんだったら私から退いてよ……。
「おい、そろそろ起きろエース」
サボ、言ってる暇があるんだったらルフィ除けて……。
「おーい起きろ! ひとりだけサボんなよ!」
エース……さっきまで寝てた癖に私を攻める側に回るの卑怯だと思わない?
「なぁ、おいエースぅ!」
麦わら帽子がズカァン、と顔面に当たる。
うるっさい……。
だからエースに直接言ってって。
「エース起きろ!」
「おい! エース!」
「……るさい」
「──起きろ!」
「うるさいって……言ってんだろうが!」
「あっ、こいつ寝起き悪いタイプだ! シャンクス避けろ!」
「へ?」
麦わら帽子頭を掴んで空に向かって投げ捨てた。
か弱い乙女の腕力じゃもちろん足りないので風使って……。
「え、エースこのやろぉぉおおお!」
大丈夫大丈夫、ルフィはゴムだから。まぁ海ぽちゃしても非能力者が回収してくれるし……。
「んぇ?」
景色が違った。
白い雲と、船と、よく分からん海獣と、白い海。
白い海……??
ふと麦わら帽子を見てみると、赤髪の少年だった。
あ、やべ。
あれ見習いタイプの赤髪のシャンクスじゃん。
「エースお前何やってんだよ!」
「俺の眠りを妨げる方が悪い」
おでんと言っていた侍が軽い足取りでタコみたいな?魚?獣?の触手を足場にシャンクスの足を掴んだ。
「着地は任せたぞ」
「うおああああ! なんで俺ばっかりこんな目に!」
どべーんっ!と下手くそな着地をした。
「〝おでん二刀流〟」
おでんは独特な二刀流の構えをすると、勢いのまま刀をクロスさせた。
「〝桃源十拳〟!」
大技だろう。雷のような炎のような技がタコにぶつかると、風船が破裂するような衝撃音が響いた。
「わははは! どうだ新米! いや俺より先に入ってたみたいだがちょっと位は先輩風を吹かせたい」
「おでん、どうやって戻る気だ」
「泳げばよかろう! 俺は能力者では無いからな」
「いやそうではなく。白海は浮力が無いから沈むぞ」
「ほへ?」
どぷん。
おでんはレイリーの言葉の通り沈んで行った。
「しゃーねぇな……。俺が行ってやるよ」
元より原因が私にあるし、ロジャー一味に実力を見せておくのも悪くない。実力(過剰表現)を。
不思議色の覇気を使って無事救出出来ましたとさ。
==========
空島。
積帝雲と呼ばれる分厚い雲の表面にあり、それぞれ7000m上空の白海と10000m上空の白々海というふたつの空層に分かれている、空に浮かぶ海のことだ。
雲はふたつの性質が存在し、「海雲」と「島雲」に分けられるが、空島の人々は島雲を加工して道具を作って生活をしていた。それが
「それで空島には大地が無いから、土のある所は
「はい副船長!」
「なんだねバギー。質問か?」
「他にも色々と聞きたいことがあるけど、どうして空島の人はへそって言うんだ?」
「それでは明日は
ここは空島にある街、スカイピア。
宿の中でレイリー(恐らく空島経験者)が説明している中、私は実際行ったことがないけれど知識上はあるのでスカイピアの宿のベランダで夜風に当たっていた。
「エース」
ロジャーが声を掛けた。
「よォロジャー」
「お前はあっち混ざらねぇのか?」
ギャーギャー騒いでる奴らを横目にデッキチェアに体を預けると、ロジャーも横並びで座った。
「騒がしい連中に付き合うつもりはねぇんでね。それよりロジャー、ここは前半の海だろ?」
「ん、あぁそうだよ」
「お前の年齢なら後半の海でだってやって行けるだろ。なんでわざわざ、簡単な方に来たんだ」
ちょっと気になっていたこと。
ロジャー一味って20代くらいで
果たして、数十年たっていたロジャー一味が未だに前半の海で停滞してるだろうか。
「あぁ、そういやエースは知らないんだったな。俺余命1年なんだ」
「はぁ……それが質問となんの関係が………………。……? ……は?」
今サラッとなんて言ったこいつ。
「俺余命1年なんだ」
「──俺余命1年なんだ!!!???」
同じ言葉を繰り返してしまった。部屋の中でおでんがうんうんそうなるよな俺も経験したさみたいな顔でこっちみてる気がするけど多分気のせいだろう。
「やり残しがあってさ。
「最後の島……」
って言うと。世の海賊達が目指してる……。
「──ラフテルか」
「らふてる?」
私の呟きにロジャーが顔をこちらにバッと勢いよく向けた。
「そんな名前の島なのか!エース詳しいな!」
「ーっ!」
やってしまった。
やらかしの気配を察知した。
「悪いけどエース、その先は言うなよ。どんな島で、どんな冒険が待っているのか……!俺は知りたいんだ、自分の手で。それが海賊、ゴール・D・ロジャーの最期の航海なんだ」
それはすごくルフィに似ててよろしいけれど、私はそれどころじゃない。しまったよ、ほんとしまったよ。『ラフテル』の名前が存在してなかった時間軸に、名前をつけてしまった責任感に打ちひしがれてる。
困る。めっちゃ困る。
「はあああああ」
「うっわ、でかいため息」
人の気も知らずに呑気な面するランキング一位に上るねこれ。
「んで、D。具体的には?」
「んー? ああ、そういや話してなかったな」
ゴホン、と咳払いをしてロジャーは語った。
「この空島にもだけど
ちょっとだけ。
なんだったらちょっとだけ読めます。
「
ロジャーは手に持っていた酒をグビりと飲み干して言った。
「俺は──」
ロジャーは言ったんだ。
『俺はよ、リィン』
──ルフィと同じ、夢の果ての話を。
「……って言ったら大概のやつはバカにするか笑うかなんだけど。お前のその反応は初めてだよエース」
「いや、ほんと、なんて言うか」
「なんでそんな『やっぱりな』って感じで納得してんだよ」
ため息吐きました。
「いや身の程を弁えろ案件はとっくの昔に通り過ぎてんでな。もう海賊になった時点で」
世界の常識に向かって『うるせえ俺が常識だ』とぶん投げる輩の相手に驚くのはもう一回だけでいいんだよ。悪魔の実に驚くのももう一回だけでいいんだよ。
そもそも生きるか死ぬかの冒険をしたり強者との戦いとか事件に自分から突っ込むとか、個人の意見としては正気の沙汰じゃない。
そんな正気じゃないことをする輩相手だよ? 正気じゃないことの方が当たり前。
逆に常識的なこと言ってたら驚く。
「とにかく、俺はもう一度世界を一周して、ラフテルを見つけ出す。その島に眠る財宝を探し出した時、俺は初めて海賊の頂点に立てるだろう」
そうだな。
お前は絶対そうなるよ。
決められた仕組みのように、未来から来た人間は過去にある事象を『当たり前』と思う。だけど過去で生きる人間はすべからく今なのだ。当たり前ではなく、未知なのだ。
その非常識な冒険に、私は驚くのではなく。呆れ果てた。
==========
「すげ〜!!!黄金だ!!なあ船長どうやって持って帰る!?」
バギーの興奮した声を聞きながら私は自己催眠をしていた。
ここは平地ここは平地ここは平地ここは高くない下は見ない高くない。
「うるっせぇな赤っ鼻……」
「誰が赤い鼻だゴラァ!エースてめぇ!俺の頭を肘掛にするんじゃねぇよ!派手にいてこますぞ!」
チビバギー、厚底はいた私より背が低いので丁度いい。
「エースどうしたんだ?顔色悪いけど」
「…………二日酔い」
「うわぁ、ダメな大人だ」
「あぁ?赤毛のクソガキ。俺のどこを見てダメって抜かしてんだよ。俺ほどのパーフェクト大人はいないだろ」
「パーフェクト大人はバギーを杖代わりにしない」
「見せてやろうか、パーフェクト大人のパーフェクトなだらけ方ってやつをよ」
見習い2匹と戯れながら目の前にある黄金の鐘を見る。純金だろうに重量感えげつない。柱1本で国ひとつ買えちゃわないかこれ。
そしてその鐘を支える土台の中に打ち込められているのが、ロジャーの目的である
「やっぱりここは声が強いな」
ロジャーの言葉はひとまず無視して、ロビンさんに習った古代文字を読み解く。
海の、王、海賊王?あ、いやこれは人を表す文字かな。
「古代兵器ポセイドンの、在り処……魚人島?」
私が呟いた瞬間、先頭で見ていたおでんとロジャーが同時に振り向いた。
「「読めるのか!?」」
「あ?」
つかつかと詰め寄って来るのはおでんの方。
「この文字は!我ら光月家に代々伝わる文字!それをエースお前が読めるのか!」
「……お前の家に伝わるとかは別に興味無いが。空白の、あの100年間で政府から隠したかったあいつらがこの文字を扱うのは当たり前の話だろ」
適当ぶっこく。
このエース(本名はションのつもり)君は、能力で過去から旅してる旅人。今のところ10年単位くらいで飛んでるから、設定もそれに合わす方がいいだろう。
ただ裏付けが足りないので、意味深ムーブをかましたかったのだ。
……うそです。せっかく少し読めるようになったんだから考古学者ニコ・ロビンのドヤ顔がない空間でドヤ顔したかっただけです。
「にしても……『我、ら、歴史を作るもの』」
「? 紡ぐ、では無いのか」
「そっちの解釈も出来るがな」
やっべ、翻訳間違えた。
難しすぎるんだよな……。
「大鐘楼。この鐘と共に守護する空島人が敵対する連合国……世界政府との敗北を悟り、真実を書き示し未来へ伝えたってことだろ」
文章そのままを読むとボロが出るので分かりやすく説明するふうにしてふわっと伝える。
それにしても……。
古代兵器ポセイドンの在り処が魚人島になってるんだけど……。嫌だなぁ。どうせ行くんでしょ。
いや待てよ。過去だから純粋に私は何もしてない。つまり素直に魚人島観光が出来るのでは……?
「よぉしおでん、ここにこう彫ってくれよ。『我ここに至り、この文を最果てへと導く』ってよ」
「仕方ないな、任せろ」
かんこんかんこんと土台の金を削り始めた。
言われた通りの文字を。
それを尻目に、バギーに体重かけて遊んでいた私に声をかけたのがひとり居た。
「ねぇエース」
カナエだ。
「エースは、もしかして100年間の歴史を知ってるの?」
「知ってる」
「え……」
「…………。って、言ったらどうするつもりだ?」
「えぇ……(こいつめんどくさいって感情の顔)」
やれやれと首を横に振って私は答えた。
「俺みたいに長く生きてるとなァ、歴史と体験が違うんだよ。下手なこと言って追われ続ける人生も勘弁してもらいたいとこただな。ちなみに俺はその100年間で20年は最低でも生きてた。俺に罪を負わせるんじゃねぇよ」
秘技、知らないけど知ってるフリの術。
説明しよう。そのままの意味である。
細かく詰められるとボロが出るので『あの時秘密にしてくれと命をかけて頼まれた約束があるから』とか『重大な秘密を握っている匂わせ系キーパーソンキャラ』見たいな感じに絶対真実を言わないけど知ってるキャラ路線で行く。
な? 簡単でしょ?
「カナエは、何知ってんのかわかんねぇが」
「うん?」
「悔いの無い様に
シラヌイ・カナエは零れる様な笑顔を見せた後、あったりまえじゃん!と言って胸を張った。
「〝戦神〟シラヌイ・カナエ、ロジャー海賊団の羅針盤!あたしは、あたしのやりたい様に、命をかけて後悔のない道を進むと、誓うから!」
ニヒルな笑顔は悪い海賊の者で。
俺のいなかった何年間かのうちに随分悪に染まったらしい。
「王を見つけて狂ったあたしは、何を犠牲にしても決めた目標の為に、己の道を進むの。もう迷わない」
リィンをここで空島に連れていきたいが為に、原作軸で麦わらの一味と共に空島には行きませんでした!!!!やっと回収だぜ!!!!ほんとに。いやほんとに。
全話バレット出たのに今回空気なんで次の話は海賊団メンツメインにしますね。