『ん?』
私は真っ黒い空間にいた。
『え、なに、なにこれ』
発した声は闇に消えていくだけで誰も反応しない。
『だ、誰かいませんかー…』
何処が上で下で右で左なのか分からない。身体がフワフワ浮いている感覚に不思議に思い手足をバタバタさせてみた、けど何も起こらない。
『…───って!二度もやるか!ここの記憶めっちゃくちゃあるわ!なんだ!また狭間か!狭間なのかバカ野郎!喧嘩売ってんのか!まだ人生途中だよ!なんで二度もここに来ないといけないんだよ!あぁ!?まだJKどころか小学校も入学してないわ!ふざけんな!出てきやがれぇえええ!』
「ヨホホホ〜、ヨ〜ホホ〜ホ〜…ビンクスの酒を届けに行くよ、海風気まかせ波まかせ〜 潮の向こうで 夕日も騒ぐ 空にゃ 輪をかく鳥の唄〜……」
歌?確かシャンクスさん達が歌ってた歌に似ているような…というか同じか。
「おやおや、お嬢さんの声が聞こえますね…そちらにいらっしゃるんですか?」
『あ、はい。誰かいるんですか?』
「言葉、違いますね…どうやら私には理解できない様で。ヨホホホー!困りましたー!」
言葉が違う?あ、そうか。私日本語喋ってたのか……。この場所だと自然と口から出るのは日本語なのかな。
「えっと、そちらにぞ滞在している方誰ぞり」
「…!おやおや天使さん。言葉が使えるようで何よりです」
「天使、否定。リィンぞ」
「そうでしたか。それは失礼しましたリィンさん。私はブルックと申します……ところで──」
「?」
「──パンツ見せていただいても宜しいでしょうか」
「却下っ!!」
何を言っておるんだこの変態は!
「ジョークですジョーク。ヨホホホ〜」
うん。ジョークだと言っているが私はジョークに思えなかった。そもそも真っ暗で見えないだろうが。
「ところでこちらが何処なのかご存知でしょうか」
「えっとな、恐らく時空の狭間たる所だとぞ思考中ぞりん」
そう言うと相手は復唱した。
「時空の狭間…………」
「…」
「……ぞりん?」
そっちは復唱するな。
「私言語不安定、理解注意ぞ……」
「あぁそうだったんですね。あの、質問何ですけど時空の狭間、とは…」
その言葉に私は説明を続けた。
「人死してのみ通行可能な場所ぞよ。天国も地獄も行けぬ彷徨い人ぞ行き着く場ぞり」
「それでは、私は成功したのでしょうか…」
「成功?」
「えぇ、私、実は悪魔の実の能力者なのです。あ、ご存知ですか?悪魔の実という者は」
「肯定ぞ」
ルフィもそうだし私も多分そうだし。
「私、そのヨミヨミの実を食べたのです。どのような能力かあまり実感出来て無かったのですが、意識がある状態ではどうやら成功でしょう……どうやって現世に戻るのか分かりませんが!ヨホホホホ〜!」
「それなれば簡単ぞ。
「堕天使!そのような方がいるのですね!…詳しいのですね、ここの事に」
そりゃ1度来たことあるんだ。多少なりとも知識はある。
「私ぞ死亡したのか……」
「リィンさんはどう言った理由でこちらに?」
「兄ぞ庇った愚かなる行為のせいぞ…」
「愚かではありません。立派です」
いや、愚かだ。もっとうまい方法もあったはずだしあの時どうして魔法が使えなかったのか。山賊の時は使えたし、直前脅しに使った氷をはる力も普段と何ら変わりなく使えた。
使えていたらきっと死なずに終わったし、それに庇わなければ良かった。
なんで私は庇った?なんで魔法が使えなかった?
グダグダ考えてても埒が明かない事に気付いたしブルックさんほっておくのも悪いと思うので質問した。
「ブルックさんは?」
「私は海賊に襲われ殺されました。毒が武器に含まれていたようです」
「私とぞ同意…刀ぞ毒がかかって背を斬られたぞり……」
「そうでしたか…痛かったでしょうに……」
そりゃ死にそうなくらい痛かった。
あ、死んでるから死んでるくらい痛い、なのかな?あ、ダメだ、痛みがフラッシュバックしそう。話題転換転換。
「ブルックさんぞ、海賊ですか?」
「ええ!ルンバー海賊団の副船長をしています!いや、していた、と言った方が正しいでしょうか……」
「少しだけ昔話に付き合っていただいて構いませんか?」
「大丈夫ぞ」
そういえば気配を隣に感じた。相変わらず寝てるのか起きてるのか分からないくらい真っ暗だけどな。今回ブルックさんは輪郭すら見えない。
「ありがとうございます……。
実はですね、私の所属している海賊団にはクジラがいたんです。名前はラブーン…
「クジラぞ仲間…珍しいぞ」
「ええそうなんです。ラブーンは音楽が好きで私によく懐いてくれました……。ですが、現実は厳しい。夢半ばに私たちは倒れました。私たちは死ぬ時
「応援してるぞ……」
「ありがとうございます。……リィンさんのお話を聞いても?」
「つまらぬぞ?」
「構いません」
「私にぞ3人の兄が存在しておるぞり。親はお互い不明ぞしかしながら…大好きぞ。1人無茶苦茶ぞ兄存在するがな。海賊貯金たるものを貯蓄しており、その金を狙われるが故に私ぞ捕えられヘルプぞ致した兄庇ったぞ」
「リィンさんの親も知らないのですか?」
「んー……確定は否定ぞ。恐らく〝戦───」
『ストップ、そこまでにしておくんじゃ。そいつはお前さんのいる時代とは違う』
「……………
今世紀1番会いたくない相手ナンバーワンの声を聞いた気がする。意味が重複しているがそれだけ会いたくなかったんだと察してくれ。ふざけた世界に転生させやがったクソジジイめ。
『なんじゃその不服そうな声』
『うるせぇわ!あなたの与えてくれた
『へっぽこスキルだぁ?ワシはそんな事しておらぬぞ』
知らぬ?それはへっぽこスキルを与えてないということでございましょうか?
『ひょえ?』
『まぁ恐らく自業自得、じゃ』
聞こえない。私は何も聞こえない。
へっぽこスキルじゃなくて自分の実力だとか知らない。
『お前さんには災厄吸収能力しか付けれてないわい』
今聞き捨てならない言葉が聞こえた。
『!?!?!?』
『ん?最悪だったか?災厄だったか?どっちじゃ?それと儂自身が故意に付けたんじゃないぞ?勝手に付いたんじゃからな』
『どっちみち変わらんわ!!』
「あの…リィンさんが何を言っているのか分かりませんが堕天使さん一つよろしいでしょうか。時代が違う、とは一体……」
『ん?簡単な話じゃ、そもそも死後や狭間には時間という概念が存在せん。時間の縦軸横軸は一定では無く個人差があるんじゃよ。儂とてこのへっぽこヘム太郎に会うのはこちらの時間で換算すると1億年ぶりじゃ』
『はーはーさよですかー。こっちは1億年と2千年前から消えて頂きたく思っておりますぅー』
『………お主見ぬ間に冷たくなっては居らぬか』
「滅相もごさいまぬぞ」
要するに私とブルックさんでは死んだ時間が同時期で無いってわけですね。
『じゃ、先にそっちのアフロを現世に送るか…』
『あ、やっぱり堕天使〝様〟のお仕事でしたか』
『お前死んどけ』
『残念でしたーその言葉無意味ですぅー』
『は?何も言っておるんじゃ?お前さん死んではおらぬぞ』
『は?』
「あの…一体何を話してらっしゃるのでしょうか…」
『アフロが混乱しておるぞ。向こうの言葉で喋ってはどうじゃ』
「…………くっ、死して無きとはいかような理由ぞ!」
『ヘタクソめ』
「滅っ!」
『ただ死にかけてるだけじゃよ、上の天使共が面倒だからワシに押し付けたんじゃ…全く、神の野郎の躾はどうなっておるんじゃ。全ての天使の躾はあやつの仕事じゃぞ』
「……そちらブーメランぞ。堕天使の躾も同じく皆無ぞり」
そう言えば…思い出した。一つ聞きたいことがあったんだっけ。
「そうぞ。
『おい』
「幽霊たるものはいかようにも存在してるぞ?」
『幽霊はいるのかって聞きたいのか……?』
「肯定ぞ」
『──いるに決まっておるじゃろ。死の門をくぐる前に怨みでUターンしてしもうた魂は大量におる。まあ儂の担当で無いからよう分からぬが……天使でも幾分か死天が出たはずじゃと…………』
「ひぃいいいい!!なななはな何ゆーえ!なにゆえゆゆゆゆゆうれれれれいぞ存在しておけるが正解とぞなりゆきているぞ!?!?却下ぞ!レレレ霊体滅ぶがざざざばざばざばばばば!!」
『
「あ、リィンさん現世で会えたら会いましょうね」
ブルックさんの良くも悪くもマイペースな言葉が聞こえた時、私の意識がプツリと途切れた。
どうか幽霊とは会いませんように、と祈りながら。
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ゆっくりと意識が浮上する。目が重くて開けられな……いだぁぁ!!
え!なにこれ何これ背中めっちゃ痛い。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!絶対死ぬってこれ!
「う、あ……っ!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!意識が飛ぶ!グラグラして吐き気もしていっそ殺してくれと言いたい気分だ!
普通に辛い!辛いよ!
いやマジで!マジで!これは普通に死ねる!
「リー!」
手に温かい感触が伝わった。誰?
「リー!大丈夫か!?いや、大丈夫じゃないよな……。しんどいか!いや、しんどいよな……。えっと、痛いの痛いの飛んでいけー!」
サボは何をしてるの?
なんかアホなサボ見てると痛みが吹き飛んだ。
「リー、ただいまは?」
「ふ、ひょ?」
「た だ い ま は ?」
エース実はキミが傷だらけで帰ってきた時の私の真似でもしてるのか?この野郎……。
「た、ただいま……」
「「「おかえり!!」」」
あ、やっぱり痛いものは痛いです。
久しぶりの堕天使様との感動の再会()
とまさかのブルックさん蘇り途中との出会いです。リィンさんオバケダメなので会ったときが楽しみですね!(超笑顔)