2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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初めて日記形式にチャレンジしたけどもう一生しないなって思いました。月組の1人の5年間の日記。


閑話
小話集その1


 

 〇月✗日

 今日は海軍入隊の記念すべき日。ということで日記を付けようと思う。俺は海兵育成学校に通える金を持っているわけじゃないから海軍雑用として給金を頂きながら上を目指そうと思う。

 最初は当然微々たるもの、だが昔から憧れていた少年時代の夢をこの歳で追える事に感謝しなければ。人生何があるか分からない。店が潰れたことは不幸だが、妻と幼い我が子を養うために俺はやらなければ。やる気は十分だ。

 

 俺の所属は第1雑用部隊。寝床も当然個室なんてなく雑魚寝だ。部屋は部隊名と同じく第1雑用部屋。上は多分40くらい行ってんじゃないだろうか、年齢も出身もバラバラだ。同じ島の出身のやつは……別の部屋だった。

 俺が部屋に戻る時間が遅かったこともあってほとんど揃っていたがパッと見12.13辺りの坊主が1人、その次がまだ20にギリギリ行ってない奴ら。「お、若いのがいるんだな」って思ってた。

 

 どうやらそれぞれ30人のチームらしい。まあ雑用なんて至る場所に配置されるから行動を共にとることは少ない、だが同期であるから長い付き合いにはなるだろう。

 軽く自己紹介をして、どうやら1人足りない事に気付いた。初日から医務室に叩き込まれてるらしい。情けないな、レクリエーションでまさかの医務室お泊まりだ。

 

 これからの海軍生活が楽しみだ。目指せ!将校!……はちょっと言い過ぎだな、伍長くらいにはなりたいな。

 

 

 

 〇月*日

 おれのむすことおなじくらいのけがしたおんなのこだつた。

 

 

 

 〇月#日

 昨日は動揺し過ぎたが一晩寝て働いてようやく頭が働いて来た。

 第1雑用部屋のもう1人の子というのは4歳位で何故か包帯だらけだった。名前はリィンちゃん。多分俺はこの出会いを一生忘れないだろう、ショックすぎるわバカタレ。

 どうやら故郷で海賊に怪我を負わされ、医者を求めてここに来たらしい。保護者が海兵と色々な諸事情が重なって海軍に入隊したようだ。しばらく医務室との行き帰りが多いとムスッとしていたが俺としては大人しく医務室というか病院に行って入院してて欲しい切実に。あとその海賊は許さん。それとリィンちゃん、頼むから療養してくれ、仕事をするな、箒を手に持つな。置くんだ。治るまで寝ててくれ。

 

 

 

 〇月☾日

 海軍入隊5日目、同じ部屋の1人がリィンちゃんのファンクラブを一緒にしないかと誘ってきた。いや、流石に妻子持ちにファンクラブ勧めるのはどうかと思う、と遠慮したのだがどうやら普通のファンクラブとは違うようだ。

 誘ってきた男はジョーダン。やけに説明が上手く納得させられた。「可愛くて庇護欲を刺激されるのは間違いじゃない」「その感情は歳が一回りも二回りも離れているから欲情にいかない」「他の部屋には若いのもいる」「この部屋は妻子持ちも多い、教育面や保護者としての面で団結しておきたい」「ただ囲うとやっかみを受けることも確実」「なら幹部という事で他の部屋の奴らに協力的な意欲を見せて実際壁になっておきたい」と。

 うちの部屋でリィンちゃんを除き若いのはカクって13の少年だ。カク自身はかなり人柄がいいみたいだから、うちでリィンちゃんに抱く感情があるとしたら『親心』に『兄心』だろう。今は『小さい子が頑張ってて可愛いな』という感想でも、リィンちゃんが成長してくると穏やかな感情で終わらないのも確か。

 

 なんで女の子が同性の多い部屋じゃなくて第1雑用部屋だと思ったら。部屋の平均年齢が高い+家庭持ちの多さか。と納得する。まぁ、言葉を濁したいが日記だし。

 妊娠して海軍を辞める奴もいると聞いた。つまりはそういうことだ。唯一でその上幼子だからこそ第1雑用部屋が安全なんだろう。例え同性が居たとしても、もしもその同性が事に起こった場合情操教育に悪い。うん、うちが最適だな。

 他の部屋は若い坊主も多いみたいだし。

 ということで俺はリィンちゃんのファンクラブに入ることになった。歳も同じようだし息子の嫁に……。いいな、あの子が娘になるの。

 

 

 

 〇月▲日

 入隊して1週間だ。恐ろしいことに既に部屋の全員がファンクラブに同意してるらしい(グレンってやつは馬鹿げてると鼻で笑って無視していたがあれは分かるぞただのツンデレだって)。リィンちゃんがいることを認識して6日だぞたったの。その行動力が恐ろしすぎる。いや、今日はそれより恐ろしいことが分かった。リィンちゃんが医務室通いしてる隙にあの海軍の英雄が現れたのだ!拳ひとつが隕石と同じ天変地異を引き起こし、そして数多の海賊に恐れられた拳骨のガープ中将!

 ……まさかリィンちゃんの保護者が英雄殿だと思うか?

 「うちの孫をよろしく頼む」と真剣な顔で頭を下げていた。流石は英雄。その表情ひとつで気が引き締まる。

 

 代表であるリックが一応保護者である中将にファンクラブの許可を取り、他の奴らも説得に加わる。俺もした。流石は中将、懐が広いのか許してくれた。幹部は全員で28人。ガープ中将は29番目のナンバーを持つことになった。保護者が入り、そして幹部外になるからこそ俺たち幹部の地位が高くなるからと。他のファンクラブメンバーと同じように扱えと仰った。懐広過ぎてグランドライン飲み込めるんじゃないかなあの方。これで他の部屋や上司からリィンちゃんを守りきれるだろう。憧れていた海軍だが、もちろん一枚岩じゃないことくらい知ってる。若いのには理解されにくいけど。最年少(カクのこと。リィンちゃんは別口)がそこに理解あってよかった。

 

 

 

 ◣月×日

 海軍を入隊して1ヶ月の月日が流れていた。リィンちゃんがあの悪魔の実の能力者だった。海軍に入った色々な諸事情は多分これだと思う。自分の悪魔の実がまだ分からないようでその日から堂々と悪魔の実大百科を読んでいる。難しい文字はまだ読めなくて、よく傍にいるやつに読んでもらっているがいや欲張りすぎだろう。普通に読めるもんは読めるんだから。

 読解能力が4歳児のレベルじゃないが、そういえば喋り方は拙かった。アレが可愛いんだけど。サウスバードみたいに「ぞ!」「じょ!」と返事する姿の可愛いこと。ちなみに驚くと「みょっ!」とか「ぴぎゃっ!」と言いながら飛び跳ねる。可愛い。

 

 

 

 ◣月▲日

 大概の情報はリックに集まっている。俺は早速リィンちゃんの喋り方についてリックに聞いた。あいつは名前を覚えないので言語能力はリィンちゃん以下だと思う。

 流石に知らないだろうと思っていたんだがどうやら結構前に知っていたらしい。ふざけんな。情報共有しろよ。

 曰く、人里離れた山の中でカクより少し下くらいの、まぁようはガキンチョだな。そんな兄と暮らしていたらしい。保護者が英雄なこともあって地元の人に育てられたらしいが。まぁ山の中か。自給自足だろうし家の中で兄と留守番して本でも読んでたんだろうな。

 あとお前は本当に情報共有しろよ。

 

 

 

 ◣月☾日

 昨日情報共有しろよとこっぴどく言ったからかリックが寝る前に今日あった業務やリィンちゃんのことなどを共有している。

 俺は日記を取りながら聞いている。

 ファンクラブの人数が60人達成したらしい。大体秩序を守ってくれる人数、として歓迎すべきだ。おー、と拍手している。

 今日は特筆すべきことはないだろう。そろそろ寝ようと思

 

 ふざけんなよあんぽんたん!今まで集めてたリィンちゃんコレクションを売りにかけることに決まっただァ!?いやそりゃ活動資金も必要だし他の部屋の奴らのガス抜きにもなるの知ってるしヘイト向けられないっていうのは分かるけど!そういう大事なことをてめぇ1人で決めるな!

 

 今日は夜空が綺麗だ。窓からぶら下がるリックさえ目に入らなければ。

 

 

 

 ▇月◣日

 約半年、この日記初日以外リィンちゃんのことしか基本書いてないなと思った。なので今日もリィンちゃんのことについてかこうと思う。そろそろ日記の題名を変えるべきだと思っている。

 最近、リィンちゃんが定職についた。いや、俺たちと一緒の雑用なんだけどさ。

 

 その名も『ガープ中将クザン大将追走式捕縛係』だ。馬鹿げてるだろ、4歳の女の子に海軍のめちゃくちゃ偉い人が捕縛されるんだぜ、その名の通り縄で。あの捕縛術どこで習ったんだろうってくらい鮮やかな手つき。痺れた。好き。

 

 ほんとに海軍のお偉いさんが悪魔の実の能力者だとしてもリィンちゃんみたいな可憐な少女に捕まるのは謎だと思う。他の部屋の奴らも言っていた。でも俺たちは知っている、自分の足で歩いたマリンフォードのマップを作ってんのあの子。地点にポイントの名前つけてて、そこ、俺たちが雑用する場所だったりする。そこでお2人を見なかったか聞いて、逃亡ルートをトレースして、先回りしてんの。小ささ活かして物陰に隠れて。

 本当にすごいよあの子。海兵になるべくして生まれてきた思考回路持っている。

 

 測量士の知識持って、マッピングが得意なのがうちに1人いて、まぁノーランって言うんだけど。よく協力してるんだけど本当に恐ろしい。

 捕まえたらやりましたって言いたげに近くにいる雑用にピース向けるからファンが増える増える。末恐ろし。可愛い。

 

 

 

 〇月▊日

 もうすぐ雑用として海軍に来て1年が経とうとしている今日この頃。

 今日リィンちゃんは居ない。つまり俺たち野郎共の祭典だ。

 

 というのも、クザン大将捕縛で目をつけられていたのか黄猿ことボルサリーノ大将の任務に付き従う任務に着いたのだ。恐ろしい出世をしそう。上に目をつけられ過ぎてないかちょっと不安だ。

 

 

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「ところでさ」

 

 酒を注がれたので日記を手に置くとオーウェンという男が口を開いた。

 

「雑用勤務は1年で他所に配属」

 

 その言葉に俺たちはみんな動きを止めてしまった。

 そういえばそうだ。雑用仕事はもうすぐ終わる。

 

「──…勤務先希望届け、もう届いてるぞ。第1希望から第3希望まで書く枠がある」

 

 部屋で1番のしっかり者でもあるグレンがこの部屋の代表だ。まとめ役、となると別だが冷静沈着に周囲を見て指示を取れる。

 そのグレンに希望届けが来た、ということはこの部屋のタイムリミットも近い。

 

 どこに配属されるのか分からない。希望は一応取られるらしいけど結局は個人の手腕が1番優先で、希望も吟味した上で人事部が選ぶから。

 

「そりゃ、三、いや二等兵になるか。まぁどっちかわかんないけどそこら辺になるのは分かってるぜ?でもさ、部隊は違うし今まで通りってのもいかないだろ」

 

 オーウェンは言葉を続ける。同期である、昇格にばらつきもまだ出ない。だが、うんまぁ確かに、今まで通り情報を共有したり連携取ったり出来ないのが痛い。大まかな部隊も、曹長が変われば方針も変わる。

 

「平和な場所で燻りたい変化を望まない日和ってわけじゃないけどさ」

 

 ぐいっとグラスに入った酒を飲み干すとオーウェンは顔を俯かせた。

 

「……このチーム以上に力が発揮出来るとは思えないんだよぉ」

 

「あ、すまんハッシュ水とってくれ」

「おうとも」

「モリスお前1杯で終わりだこのクソ下戸」

「わしも呑んじゃダメか?」

「ダメに決まってんだろこのスットコドッコイ」

「嫌だ、僕は酒を愛してる、手放さない。僕がこの酒を用意したんだ。ショットグラスは実質ゼロカロリーだから無問題だ!」

「グレンさんのケチ、ノーランさんだけが頼りじゃ頼む……! わしにも酒を恵んでくれ!」

「カメラワンランク上狙いたいですよね」

「問題だらけだ! レオン! モリス寝落ちコースに誘って!」

「よっしゃ買いじゃ!」

 

「急募! 俺が吐き出したシリアス属性の二酸化炭素!」

 

 情緒もへったくれもない部屋の空気にオーウェンも崩れ落ちた。酔いが回ったらしい。あと二酸化炭素なら出すだけだして他人は吸えないだろ。空気吸うなら酸素だ。そのシリアスは場に留まるだけだからな。

 

「うぉ、うぉぉん、俺なぁ、大佐にスカウトされてんだよォ。返事待ってもらってんだよォ」

 

「オーウェンが潰れたぞ」

「こいつ酒飲むと泣き絡みするタイプか」

「飲み会ってのは最後まで正気保ってたやつが負けるが、ここには正気保てるやつ多くて助かるわ。年齢的に酒飲めないやつもいるし」

 

 ざるとわく共が一角を陣取りながらカオスっぷりを眺めていた。ちなみに俺はほどほどに酔う。まぁ翌日には残らないけど。

 

「なんでオリジンそんなに喚いてんだ?」

「オリジンじゃなくてオーウェンだろうが。名前のランクを勝手にあげるな」

「グレンてめー俺の名前馬鹿にしてるだろ」

「バカにしてるのはお前の名前じゃなくてお前だ」

 

 リックの名前の間違いに即座に反応するのは毎回グレンだ。絶対こいつらはバディから外さんとこう。ツッコミ出来るやつはいるがこいつ以上に子守りが出来るやつはいない。

 

「よくわかんねぇけど雑用希望って書けばいいだけじゃん」

 

 ……。

 

「「「「「「それだーーッッ!」」」」」」

 

 リックの言葉に部屋の八割が声を揃えた。

 

「まぁ思い至るよなそこに」

「馬鹿って確信をつけるよな」

「上に根回ししとかなきゃな」

「ふふふ、リックさんはすごいのぉ」

「あっ、こいつ呑んだな、取り上げろ」

 

 このグダグダ具合、日記には書けないな。

 ……というか今日の酒はどこから手に入れたんだろうか。モリス(今夜の宴の品集め係)は酒に関わると怖いやつだな。

 

 

 ちなみに翌日リィンちゃんを入れて飲み会の2日目を開いた。今日以上にグダグダだった。

 

 

 

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 〇月◤日

 最近大将が4人いるという噂を聞いた。入隊して1年、当時は思いもしなかったよ、雑用が2年目に突入するだなんて。

 ここの所物騒な話も増えている。俺たち第1雑用部屋、通称月組は雑用間でのリーダーだ。雑用仕事のチュートリアルは今回上官方ではなく俺たちがバラバラに別れそれぞれの仕事を指導するという大役になった。リィンちゃん以外。当然みんな布教する気満々だ。

 

 まぁリィンちゃん情報部の手伝いしてるらしい。他の部屋の雑用がそこに行ってたからそいつの雑用作業の引き継ぎみたいだ。ジャンの野郎許せねぇ。アイツが雑用ではなく三等兵になったからその雑用枠にリィンちゃんが選ばれたって訳だ。

 最近物騒な話題が増えてるから情報部人手足りないっぽいし。

 

 海兵(複数)が首ちょんぎられるってどういう事だよ。

 

 

 

 〇月#日

 ここ1週間リィンちゃんの様子がおかしかった。

 食欲が無いみたいだし夜中に飛び起きることも多かった。俺たちはどうすることも出来なくて、何より理解してあげられなくて歯がゆかった。次第に症状は収まっていったけど、それは表面とり繕えるだけでまだトラウマを背負ってるのがよく分かる。

 何があったのかは多分だれも聞かない。リィンちゃんは賢くて強い子だから自分で解決したなら俺たちは愚者みたいに騙されて心地いい空間になるだけでいいんだ。リィンちゃんを叱ったりリィンちゃん本人の為になる親は俺たちじゃなくていい。

 リィンちゃんが羽を休めれる、利用出来る休息所であればいいんだ。あの子は息が詰まりそうな生き方をしてるから。

 

 

 

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「未だに情報共有出来てなかった事に驚いてんだけど」

 

 それは海軍に入って3年目に突入したある日。リィンちゃんが1週間以上不在という異様な事態だ。ガープ中将が会員No.29な事は知ってたけどクザン大将も入ってることは知らなかった。

 

 新しい写真も入手出来ないから若干の焦りもある。

 

「あのさ、俺たちってリィンちゃんを布教するんじゃなくてリィンちゃんを守るために、欲を出せば独占「言い方」したいが為にファンクラブ設立してんじゃん?」

「まぁたしかに」

「でも最近爆発的に増えてるからどうしたもんかと。名前と番号控えてるけど3桁越してもう無理じゃん。全員覚えてる?」

「……俺は見ればわかるが、お前ら無理だろう」

 

 グレンの意味わかんない人外じみた発言を景気よくスルーして月組を見渡すが皆首を横に振った。番号管理してるヴァンが唯一把握出来てる、のかもしれない。俺は無理。今日クザン大将で驚いたくらいには無理。中にはガープ中将の件を知らなかったやつもいるんだから尚更無理だろ。

 

「俺たちの課題は2つ! 今後起こる(確信)爆発的な会員の増加について行く技術と管理! そして情報共有と連携の強化!」

「没個性の僕らに便利な技術も能力もないですよ」

「………………だよなー」

 

 むしろ個性の塊じゃなかろうかとは思ったけど口に出さないでおく。近い距離にいるから個性まみれだと思うだけだコレは。

 

「俺が……俺たちが技術になるんだ…!」

「酔ってんのか?」

「腹減ったんじゃが」

「道草でも食ってろ」

「どうする技術班系のところ行ってなんか便利な機械とかコンピュータ分けてもらうか?」

「どうやってやるんですか」

「い、ろ、じ、か、け♡」

「おぇ……きっつ……」

「悪阻か?」

「誕生したのは殺意でした」

 

 俺たちって脱線しないと会話出来ないよな。

 

 

 

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 ✗月✗日

 なんかできた。

 

 

 

 ✗月☾日

 使い方はマスターした。今まで身バレしないように袋被って開催してもらっていたリィンちゃんの写真買取の会は最後となった。開催は毎週金曜の夜中に行っていたのだが(競りだと給料差で難易度が変わってしまうのでその時々によりじゃんけんやらオセロやらとゲーム内容が変わる)人数が増えてはそれも難しい。『ここに……リィンちゃんがお茶を運ぶ写真が……!』って七武海会議着いてった俺が撮った写真を出すの楽しかったんだけどな。あれ10枚しかスってなかったんでレアモンだったんだけど。

 

 そしてその会を廃止し新たに出来たのは『携帯電機式ナンバーカード』だ。

 使い方は簡単。俺たち月組が毎週金曜に写真を更新する。まぁ写真じゃなくて題名を更新するんだけど。

 大元の機械から発信された情報は会員の元へ届き、会員はその希望の写真と枚数を送信するという作りとしてはシンプルな物。

 ちなみに今週は『髪を乾かすver.5』『窓磨き任務ver.8』『笑顔シリーズver.15』『ぬいぐるみを抱える』の4種類だった。少ないかもしれないけどコピーする枚数が多いんだ。

 

 ちなみに過去の写真は俺たちに直接話をつけるということになっている。望めばいくらでも刷るけど、レアモンは別口。

 ちなみに今週のレアモンは『箒で魔女ごっこ』(10枚限定)だ。ちなみに魔女ごっことしているが悪魔の実の能力で空飛んでる姿をリアンがカメラに収めた。レアモンの取得方法は今回から応募者の中から抽選。ちなみに値段は1万ベリーとお高めなので応募自体の出し渋りも多い。まぁ会員の母数が増えたらもう少し応募への難易度を高めるつもりだけど……。

 

 

 

 ◤月▊日

 リィンちゃんの写真を売って(言い方は悪いけど)得た金の使用用途は今のところ大まかに3つ。

 その1、リィンちゃんに還元。半分は絶対還元するって決めてる。リィンちゃんの服をプレゼントしたりこっそり荷物に入れたり銀行に振り込んだり。

 その2、カメラの購入資金。月組の所持するカメラは2つ。1つは元々カメラの仕事をしていたノーラン。そしてもう1つは共用で第1雑用部屋に置いてある。ランクもまだ低いしそれぞれが持てるようになったらもっとリィンちゃんの写真を撮る機会に恵まれるだろう。悩ましい。

 その3、募金。在り来りだけど俺たちの利益には出来ないからガープ中将やクザン大将という伝手を使わせてもらい海軍の設備や海軍が抱える孤児院などに送って貰っている。今は微々たる金額だけどもっと発行数が増えれば……まぁ、使用用途のない兵士の給料ってほぼ娯楽に注ぎ込まれるから。遠い話では無いだろうな。

 

 

 

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「我らが天使の様子がおかしいと思わないか?」

「というより俺たちの理解に違和感を感じる」

「多分僕らはリィンさんの事理解出来ないんでしょうね。男女の認識差はもちろんどうにも理解度に壁を感じる」

「……簡単な話であって難しい話だな。あの子は汚い人間ではないがお綺麗な人間でもないから。というか他人を完全に理解しようとするお前ら純粋に気持ち悪いな」

「ここ近年お前かなり口悪くなってないかい?」

 

 

 

「…………そろそろ潮時じゃな」

 

 

 

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 ▇月◤日

 海軍を入隊してついにとうとう4年の月日が経ってしまった。

 リィンちゃんが世界会議へ向かう護衛船の雑用として長期任務に就いた。もちろんエリート雑用であるのは他にもいるので、リィンちゃんだけじゃなくて他のやつも乗ってたりするし、別の船だけど護衛船雑用任務はある。かく言う俺もストロベリー中将率いる護衛船雑用だ。同じ部屋からは〝外見最年長〟のポート、〝実年齢最年長〟のバンと一緒だ。この2つ名使ったら怒られるんだけど日記だから別にいいよな。

 リィンちゃんと一緒にアラバスタに向かったのは確かサム。賭け事に弱いやつだけど任務では真面目だから心配はいらない。まぁ月組で任務に対して不真面目なやつなんていないけど。これでも月組は海軍内のチームでも抜きん出た優等生だ。無駄に有能。……いや、有能にならざるを得なかったというか持てる活力を割り振ってしまったというか。

 プロデンス王国ってどんなとこなんだろうか。不安だ。

 

 

 

 ▇月☾日

 プロデンス王国の王様もしかして護衛要らないんじゃ………?

 

 

 

 ▇月◣日

 護衛の数日間、俺たちは慣れない任務ということもあって緊張……。することもなく、そもそも雑用だから船の清掃とか武器の手入れとか調理補助とかそういうのだからめちゃくちゃ忙しいせいですぐ近くに王様がいるとか考えずに済んだ。

 

 

 

 ▇月>日

 世界会議が行われる中、リィンちゃんはアラバスタ王国のお姫様と遊んでいるらしい。些細なことでも戦争になるらしいから流石にめちゃくちゃ気を使ってるんだけど、まぁリィンちゃんなら多分大丈夫だと思う……。絡まれる心配はあるけど。

 

 ところで死にそうなほど緊張してるのは今日の昼間たまたま起こった事で色々感情が大爆発してる。プロデンス王国のエリザベロー二世がファンクラブに入ったからだ。何を書いているのか分からないが………いや、突然話しかけられて『あのアラバスタの御息女と一緒にいる海兵はなんだ?』と。いや、俺もテンパってたし、もしかして子供の海兵が雑用とはいえ神聖な場に遠足気分で来たと勘違いして不快に思われたのでは!?と焦って布教してしまったんだ。何を言ったかぶっちゃけ覚えてない。だって、普通、王様と話せると思うか?普通に。無理だろ。陛下が懐の大きい軍人気質の方で良かった……。

 

 

 

 ▇月<日

 俺は悪くないだろ普通に考えて。

 

 

 

 ▇月✗日

 知ってた。リィンちゃんがただで終わらないって。

 細かい経緯は分からないけどジェルマ王国に目を付けられたらしい。アラバスタに送り届けたらジェルマ訪問だと。

 マジでどうなってんのあの子。……まさか、ご子息の嫁候補に……!?ダメだ!リィンちゃんはどこにも嫁にやらない!たとえそれが、王族に楯突いても!

 

 無理だな。無理です。多分リィンちゃんなら乗り切れるしそこまで心配しなくてもいいか。

 

 ところで俺を見習ってか知らないけどリックがまた王族をファンクラブに陥れたんだがあいつってなんなの?意図してはめ込めるの?

 たまたまそばにいたノーランが悔しそうに「あいつ……やるな……」って改めて呟いてた。海軍入隊前から知り合いだったらしいグレンが疲れ気味で「あいつ『やる』から手が付けられないんだよ」と愚痴っていた。間に挟まれた俺可哀想。ちなみにバリウッド王国のハン・バーガー王らしい。議長じゃねーか馬鹿野郎。

 

 

 

 ▇月▲日

 ただいま久しぶりの我が家────

 

 

 

 ▓月◥日

 もうすぐ5年が経とうとしている。流石にずっと雑用でいることに苦言を漏らされているがここまで来たらやれるだけやってやろうとかいう気持ちが出てきている。

 ただチラホラ海軍ではなく別の道に進もうとしている奴らがいるのも確か。特にノーランなんかそうだ。あいつは確実に辞めるんだろう。仕方ないんだ、子供の仲良しこよしじゃあるまいしそれぞれ生活だって夢だって持ってる。俺たちの勝手な尺度で止めることなんて難しい。なんならモリスだって酒屋開きたいとかブツブツ言ってるし夢を追うのは自由だ。

 ただやっぱり別の道を進むって言うのは寂しくもある。

 

 は?新聞か雑誌社を設立したら情報操作もしやすいし布教もしやすい?お前が布教してる真犯人か。確かに口も上手いし頑として譲らないお前なら出来るだろうけど。

 はいい?居酒屋とかなら情報入ってきやすいから将来出世した俺らの為になれる?まぁ海軍本部の海兵の弱味やらなにやら握るのはお前が1番得意だし聞き専だけどさ。

 流石に自分のために生きろよ。

 ……リィンちゃんの役に立つことが生き甲斐?わかる。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 初めてリィンを見た。

 俺たちが、俺が今まで見てきた姿は『リィンちゃん』だった。

 

 

「──なんかやべぇの居る!」

 

 寝起きながらも危機感を抱かせる叫び声で目が覚めた。

 怪しいやばい奴。

 

 その存在と対峙するのは最年少。危ない、とか下がってろ、とか。そういう注意をしようとしたのに、ゾッとした。

 リィンちゃんから溢れ出る殺気って言うのかな。背筋に氷を入れられたみたいな冷たい空気。でもリィンちゃんはマグマみたいに荒々しくて、たまたま見えた瞳は鋭く光を放っていた。

 

 既視感。

 

 その既視感の正体を探り当てる前にリィンちゃんが能力を暴走させた。これが本当だ。これが真実だ。その目に焼き付けろ。

 

「──海の底にて沈むし足掻くしろ」

 

 迷わず俺たちを背に庇い啖呵を切る姿。

 

 かっこいい。

 リィンちゃんは息をする事と同じくらい可愛いんだけど、今のリィンちゃんは俺たちが将校に抱く様なかっこよさと同じだった。

 

 部屋のほとんどを吹き飛ばす様な爆発と共にリィンちゃんは気絶した。

 

「襲撃者は……消えたか」

「くっそ、何も出来なかった!」

 

 月組のパパ的ポジションにいるリアンがリィンちゃんを抱きとめ抱え上げる。外敵から身を守るように。

 

「……それにしても、あれが素か」

「天使が天使じゃなかった……! どっちかって言うと戦乙女とか戦神って感じだった……!」

「そりゃー理解出来ないはずだわ。こんな荒々しい一面……というかこれが全面か。俺ちゃんリィンちゃんの思考回路全然的はずれな予想してたわ」

 

 メンタルが強めのラークスですらショックを受けている。いや驚くよなこれは普通に。

 すっごいかっこよかったし女の子になるかと思ったし子供と同じくらいの子相手にときめくとか情けないし推すしかないし庇護欲が一気になくなったしその代わりに崇拝が生まれたしなんかもう色々漏れ出す前に複雑な感情をオリジナルブレンドした何かを飲み込んだ。

 

 

「ッ、無事かリィン! お前ら!」

 

 不眠番だったらしいスモーカー大佐が駆け込んでくる。サムは思ったより足が早かったらしい。リィンちゃんに指示されてからそこまで時間が経ってない。

 ひぇ……指揮もできるの……? もしかしてリィンちゃんしゅごい人……? はわ、女の子になっちゃう……!

 俺もしかしたら庇われた瞬間に生まれたのかもしれない。一生着いてく。無理。推します。

 

「スモーカー大佐……どうしよう……俺ちゃんと男の子?」

「……お前の思考回路どうなってるんだ?」

「思考回路はショート寸前です」

疑う(ダウト)ん゛ッん、……既にショートしてるだろ」

 

 息子よ、今お前はどれくらい大きくなっただろうか。パパは海軍に来て王様と出会いました。俺たちの王様はお前と同じ歳の可愛くて可憐で笑顔が素敵な、痺れるくらいかっこいい王です。




リィンは多分この後くらいにこの日記見たと思う。それで信用から一気に信頼にジョブチェンジするってやつ。

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