ゾロは傷付いたチョッパーの敵を討ち取り、神官は4人全員倒れた。生き残った一味は遂に合流する、途中現れた敵をなぎ倒しながら。
舞台は〝神の社〟が存在する
「どういう事だ…」
乱闘になっているその大地で無事生き残った、いや出遅れたが故に無事だった数人の戦士が。
「雷が効かない…?」
白海には存在しないゴム。
ルフィはその力でエネルを圧倒していた。
雷の力に絶望を覚えたシャンドラの戦士達も微かな希望を抱いて。
「青海人!お前ッ、セコイだろ!」
「ぶー!ぶー!」
「雷効かないとか反則だー!」
──居なかった。どうやら抱いていたのは怒りらしい。
「戦士のプライドとかじゃ無くてそこなのか…」
ウソップが遠い目をしてツッコミを入れるハメになった。麦わらの一味不動のツッコミ王、彼はどうやらボケから逃れられない運命の様だ。
「これ…終わるかな」
「ぶつくさ言ってる暇が有ったら!死にたくねぇなら!さっさとこのデカイ木を切り倒せ!」
「おいおいゾロ君勘弁してくれ〜!………お前みたいに化け物じゃねぇんだよ」
数十分後、空にはきちんと鐘の音が響き渡った。
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着替える時コアラさんに聞かれたんだ。
『どうして仕掛けてくるって分かってるの? それを前提として今晩出るんでしょ?』と。
凄く不思議そうな顔で私に化粧をしながら。
私は答えた。
『娘との因縁があるのに、まだ謝るしてない。それはつまり、挽回のチャンスは翌日に持ち込むするという事でしょう?』
食べ物の持ち込みが可能な二日目に。
「御機嫌ようファルシュ・リアスティーン嬢」
さぁ、勝負の始まりだ。
「御機嫌よう、えっと、モザブーコ、殿?」
「ヴェズネ王国男爵モザブーコ・イディエットです。昨日は娘のフールが大変ご無礼を致しました」
「あぁ!あの方のお父上でしたか…お気になさらず」
わざわざ生贄になりに来てくれてありがとう!非公式だけど国王の許可がある私の方が権力高いから気にせずボコれるね!自分より下の者に対して強気なの!ごめんね!
「ご迷惑をお掛けしましたので。ところで…リアスティーン嬢のお兄様はどちらに?」
「お兄様は…その…ご令嬢に捕まってしまい…」
「それはそれは!」
気まずげに教えるとイディエットは笑顔になった。そうか、私の方が御しやすいと思っているのか、正解だ。
サボにはわざと離れてもらった。警戒心の強い兄が居ては話にならない可能性もあるからね。
天候悪くならない内に支部に連れていきたいんだよなぁ。私、空飛ぶからとっても天候に左右される。……盲目のおじいちゃんが『遠くで雷鳴が聞こえる』って呟いてたんだ、怖い。
私はもちろん、聞こえてませんが、何か?
「こちら、我が家が贔屓させていただいている飴なのですよ。これがまだ美味でございまして、よろしければ…」
「貴方の家がお作りになっているのでは無いのですか。私、飴玉が大好物でして……貴族らしく無いので内緒にしているのですけど」
「おや、丁度よかった!お好きでしたらいくつかどうぞ。お察しの通り実はこれで経営を営んでおります」
最初は危険性を考えて敢えて話さなかったのねぇ。ふふーん?怪しい臭いがプンプンしますなぁー!
イディエットは持っていた袋から紫色の包装がされた飴玉を取り出して、私に渡した。
「今すぐいただいても?」
「えぇ!勿論!」
大胆だなぁ、この人も。
現行犯逮捕って言うのを考えなかったのだろうか。
いや、害を加えられないと社交界では護衛が踏み込めない。例え毒殺しようしていても。命の重さがとっても軽いこの世界なんてそんなものか。
それに麻薬って害を加えたか加えてないか分からないし。
「わぁ、美味しい」
口の中に放り込み、勝利の笑みを浮かべる。利益に拘ったか知らないが、貴族に手を出して私は被害者になった。
「甘くて、何度も食べたくなる味ですね」
「そうでしょう」
否定もしなかった。
さぁて、チェックメイトだ。
「そう、昨日の娘の事なんですが…」
「──ところで!」
ニッコリ笑顔で会話を遮る。
「私とっても
壁際にいるペルさんとチャカさんが動く。
驚いた、のは攻撃開始の合図。
頼んだよぉ…アラバスタのお二人さん。私は囮役がまだあるからね。
「は?どうされました?」
「貴方は非常に珍しい材料を使っているのですねぇ、飴玉にオカを使うとは!何度も食べること、したくなる味」
──チャキッ…
「そうだ、これご返却しますね」
呆然としているイディエットに紙をプレゼントする。
それを見て驚いた顔をした。
「これは我が家のリスト…!何故貴様が!窃盗だ!」
「ん?窃盗?私の手にはありませぬし、そちらにありますよね?どこをどう見て窃盗と?」
おいこらニジ様。いけしゃあしゃあと…、ってその言葉が聞こえてないとでも思ってるのか。
「そして認めましたねぇ〜、それが貴方の物だと。飴玉には麻薬、リストの所有者は貴方」
「ッ!」
「あぁ!目撃情報もあるんですよ?今日の昼、貴方の手から直接受け取ったと証言する方がいますし!現に私も食べましたし!」
「……麻薬?なんの事を言っているのかわからないな、小娘が。侮辱するのも大概にしろよ」
あくまでもシラを切るつもりか。
「……では何故護衛が動かないのでしょう」
は?という顔になった。
「実際剣を向けられて主の命の危機だと言うのに、貴方の護衛は余計な事をすまいと動かない。それは、騒ぎを大きくしたくないから?いいや、違う」
「……………1からやり直しか」
「守る為の護衛では無く、殲滅する為の駒なのでしょう?」
ペルさんとチャカさんがわざと開けた隙間、それが身動きできる事に繋がった。あぁ、目的はキミだけじゃなくてその護衛もだから。身動き出来て、自分の安全が確保されるなら、標的を私に差し向けるでしょうし。
「…───皆殺しだ!こいつから狙え!」
イディエットの護衛、薄い紫のボサボサな髪と、上半身が大きい魚人体型の男の鋭いつり目が私睨む。そして殴り飛ばす為におおきく振りかぶって殴ろうとする。
「フンッ」
──ドゴォンッ!
が、しかし。戦闘スタイルを特定されない様にしながらサボが蹴ると、敵は地面に埋まった。
……サボって、腕力がゴリラだけじゃなくて脚力もゴリラだったんだね。
「さすがお兄様」
「……リーの話を聞いてなかったのか?俺たちは『自己防衛程度出来る様に努力した』んだから。当たり前だよな?」
クスッと口角を上げて腰を抜かした元貴族様に笑いかけるとリオ様と目が合った。『それは自己防衛の域じゃない』と遠い目をしてる国王に。
それは私も思います。
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まだ仕事は終わってない。
一番の大仕事、
イディエットと護衛は牢獄の中でキレながら、ただ時を待ってる様な気がした。見張りは居ない。物陰に隠れてる私と、革命軍くらいなものだ。
捕まる時に何故か余裕ぶった様子だったので気になったんだ、そして思い出した。取り引きは今夜の0時。何かしらのトラブルが合ったとしても大丈夫なように打ち合わせ、例えば『捕まったとしても武力行使で助ける』とか約束してたんじゃないかって。
にしてもあの護衛の輩、見た事あるような無いような…。
「ヘマをやらかしたのね」
「…っ! あんな化物がいるなんて聞いてなかった!」
「中で何があったのか分からないけど、ジョーカーの名を貶めるつもりなの?」
記憶の蓋を開けている内にどうやらイブが現れた模様。
ジョーカー確定、ならあの貴族様達は──
「まぁいい、ここから早く出してくれ」
「貴方達が情報を漏らさない、と考えられない」
──消される。
「おい!約束が違うッ!」
人の口に戸は立てられない、ならば壊してしまおう。
ドフィさん達ならそう考えるはず。
私は絶対そうする。
……実際、BW組は海軍って言う牢獄に入れて口封じしてるし。『口に出せばキミらの前科も露見するよ?いいの?口、閉じてた方がお互いの為にならない?』ってね。
「ジョーカー…!裏切ったな!」
「裏切る?先に裏切ったのもバレたのも貴方」
「た、助けてくれよ!女ァ!このまま死ぬのはゴメンだ!俺はただ雇われただけだってのに…!」
護衛まで命乞いをしだした。
「………私が、必要なのね」
あれれ〜?おっかしいぞ〜?なんだかリィン、とっても嫌な予感がするのー!
「は?」
「私が、必要なのね!」
「ひ、必要だ!」
「この私がどうしても必要なのね!」
「どうしても必要なんだ!」
「分かったわ!今すぐ助けて…──」
──ドゴォンッ!
地面が抉れた。
……何やってんスか。サボさん。
「我慢の限界だ。お前だけは俺の手で殺す」
どうやら因縁がある模様で、護衛の方をギロリと睨んでそう言い放った。
イブが腕を銃に変えて警戒している。
「ッ、邪魔をしないで!」
「イブ、ストップ!」
私は咄嗟に腕を別の方向に逸らさせた。
無鉄砲なのはサボも私も同じ。感情を昂らせて判断ミスするなんてらしくない。
「あのさ、何の為にぞ隠れるすてたと…!」
「悪ぃ。お前こいつら2人の身元分かるか?」
「ご存知ない」
「分かった。……約束通りこいつらはお前に渡す、けど少し時間くれ」
あ、離れてろって事ですね。
仕方ないから混乱してるイブを連れて牢獄の前を離れる。
「リ、リィン!え、私、何故」
「イブ、まず聞くして。私はイブの判断がとっても必要…。あの2人を見捨てるして」
「わかったわ」
返事に一秒も無かったぞ。この人本当に大丈夫かな…。
「リィンはどうしてここに?」
「七武海の…あ、元七武海のクロさんと現七武海のドフィさんとが頭痛い事を引っ掻き回すしてくれたお陰で、ね」
「……? よく分からないけど分かったわ」
あれ…?
「イブ、私が海軍でどの地位だったかご存知?」
「え?雑用、だよね?もしかして三等兵とかになってた?」
「………ううん、雑用ぞ」
女狐の事教えてないなら教えてないって言えよクソミンゴ!!!!私はてっきり幹部全員にばらしてるものだとばかり思ってた!!!
心の中で罵倒しながら遠い目をする。
「ひとまず、この国から手を引くように進言頼む。イブのみが頼り」
「…分かった、ジョーカーのクズ野郎を殺せばいいのね」
「個人的にはいいぞもっとやれ。しかしながら一体何が起こるした、とりあえず辞めるして」
組織的に気になる。若様ラブのイブがどうしてドフィさんを罵倒する様なハメになったんだ。
反抗期?かなり遅いけど反抗期?
「…………たの」
「え?」
「…ッ婚約者を殺されたの!町ごと!」
マジかよ。それは反抗期入るわ。
しかし婚約者を町ごと潰すって…どれだけシスコンなんだドフィさんは。この場合親バカとシスコンどっちだ?
「最初に若様に報告したら…突然立ち上がってどこかに連絡して…!ッ、う!こ、婚約者を…ッ!」
──何故だろう。凄く、とても凄く嫌な想像が生まれてしまった。
そう言えばドフィさんから電伝虫掛かって来たなー…。内容何だったっけー。まさか!適当に返事した私の意見を…取り入れたとか……ない……よね?
……気にしないことにしておこう。心の平穏の為にも。
「リー、すまん、時間助かった」
「いえ、大丈夫ぞ。こちらも説得の時間をしようしたのみ故、に゛ィッ!?」
「どうした?」
キラキラエフェクトがかかりそうな程笑顔のサボ。すいません、目が笑ってません。
「一つ疑問よろしき?」
「ん?」
「……サボの手袋は元々何色ですた?」
「どうだろうなぁ」
少なくとも、貴族のフリしてる人の手袋が赤黒い筈無いんですけど。
「彼は?」
「…私、『リアスティーン』の心強きゴリッ………兄」
イブの質問に答えかけて止め、別の答えにする。
ゴリラとは言わないので無言で手をパキパキして力を入れるのやめてくださいゴリラさん。
……手袋は白でした。