ホワイトデードッキリのお話です。色々伏線回収??
時を遡ること数年前。
「ホワイトデーだな」
それはドフラミンゴの一言で始まった。
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「バレるしたらどうするつもりぞ?」
「コスプレって言っとけよ」
個室でこっそりとドフラミンゴと企むのは我らがリィン。その手に持つのは真っ白い何かの布。
「ドフィさんが海兵とか…流石にバレる気が」
「お前は実際女狐なんだ、なんら問題ないだろ?」
その布、実は海兵の制服だ。
リィンが持つのは自前の将校服…つまり女狐の正式な制服。なかなか着る機会が無い為袖を通すのは久しぶりだが未だに視界が狭くなる服にやる気は全く起きてない。
対してドフラミンゴが持つのは一般的な一等兵の制服だ。敢えてこれをチョイスしたらしいが正直違和感しかないだろうというのがリィンの本音であった。
「と言うより制服何故何処にて入手すた?」
「スパイ」
「………我大将ぞ?我、大将、ぞ?」
「知ってる」
思わぬカンミングアウトに頭を抱えた。胃も痛めた。
「今日の会議どこでだっけ?」
「マリージョアです。計画したはドフィさん、私関係無い巻き込まれるした可哀想な美少女。仕方なく、仕方なーーく付き合う」
「オーケーだ、フフフ…」
七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴは今日の会議に出席しない。出るのは女狐とその部下だけだ。
「キッツ!」
「ドフィさんがデカすぎるです!」
リィンは筋肉に圧迫される制服が可哀想だなと思った。破れないことを願おう。
「安いお返しですね」
「ワニちゃんの驚いた顔をホワイトデーのプレゼントに選んだ。安上がりだろ、ビックリするくらい」
「まことに」
フード付きの白いマントを被り仮面をつけながら言葉を交わす。丁度1ヶ月前のバレンタイン、リィンは七武海の野郎共に箱ごと手作りと見えるお菓子を贈った。
………それが海賊女帝ハンコックに押し付けられた事は黙っていようと心に決めたが。
「(ハハハー……私が作ったら吐くもんなぁ…。雑用部屋の皆には悪いことをした)」
実験済みだったらしい。
嫌がらせには最適だったのかもしれないと考えながら準備しているともうそろそろ出発の時間になってしまった。
「行き方は?」
「空」
「チッ………わかるました!」
部屋の窓を開けてそれぞれが飛び立った。
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マリージョアにて二人の海兵(?)に呆れ果てていたのは元帥でもあるセンゴクだ。
「何をしているそこのアホ2人」
「「女狐/ドフィさんが」」
「「濡れ衣を被せるな/なかれ!」」
「よぉ〜く…分かった………」
ニヤニヤと笑う髪を黒く染めたドフラミンゴを見て厄介事の気配を感じ取り、深くため息を吐いた。辛い。
「クロコダイルが癇癪起こさない程度なら許す」
「(わぁ、ターゲットがクロさんだってバレてーら)」
「(ま、バレるだろうな。この組み合わせじゃ)」
それぞれが指定の席に付きおそよ10分後、ターゲットは現れる。……クロコダイルだ。
「おい鳥野郎!!!あれほど空き瓶片付けろっ……て……あ?居ねぇ」
バン!と扉を蹴飛ばしながら入ってきて叫ぶが普段いる筈の席にピンクのもふもふが居ない事で怒りは急速に静まる。
「………クロコダイル。今日はドフラミンゴは来ない、と連絡があった」
ミホーク(協力者)が告げるとクロコダイルは舌打ちをして席にドカッと座った。
「ちなみに…この会議が終わってもリィンは来ないらしい。お茶は無しだ」
「…は!?なんでだ!?」
「知らん」
『やべー、気付いてねぇ、気付いねぇですぞドフィさん。流石に海兵席にいるとバレないのですかね!?(アイコンタクト)』
『マーマー黙ってとりあえず待ってろ、絡まれたらアドリブでいくぜ?フフフ…』
『イエスマム!』
『誰がマムだ』
チラチラと目だけで会話(ただしリィンは仮面を付けてる)出来る2人。傍から見れば仲良しかもしれないがつい数分前までお互いの足を引っ張って罪を押し付け合いをしていたのはこいつらですおまわりさん。
「見ねぇ顔だな……? おいセンゴクこいつらは?」
「………」
見るからに『話題を振るな』と顔をしかめるセンゴクにドフラミンゴが思わず吹き出す。
「どうもお初にお目にかかります七武海クロコダイル様ァ? フフフ…最近海兵になりましたどうぞ宜しく」
具体的には約三十分前だが嘘は言ってない。
ドフラミンゴがわざとらしく会釈をするとクロコダイルはフンと鼻を鳴らした。
「新米海兵か…せいぜい励むこったな」
「え…」
「んだよ」
「な、んでもありません」
ここでドフラミンゴの容姿をおさらいしよう。
短髪は黒く染めてはいるが普通の倍はある身長の人間など早々いない。しかし誤魔化せるものでも無いためピチピチの制服を着た図体のでかい怪しい男へと変貌している。
「(バレてない、だと……!?)」
リィンはバレずともドフラミンゴはバレる事を前提にこの場にいる。
興味無さげに、あくまでも普通に過ごしているのだクロコダイルという男は!
「(ツッコめよ!ちょっと恥ずかしいだろ鰐野郎が!)」
「ブフッ」
「笑うなテメェ…」
あくまでも死角で小刻みに震えるリィンに肘鉄を食らわせた。失礼な奴だと思いながら協力者を見る。
「ぐ、ブッ…ぐぅ……ッ」
机に突っ伏して震えていた。
「(あの野郎絶対殺す)」
この会議の終わりが命の終わりだと殺気を飛ばすがプルプル震えるだけで態度が変わらなかった。畜生。
「そっちの仮面は?」
視線がリィンの方に向き、本人は少し焦る。
「(ヤベェ標準語喋れねぇええ!!)」
盲点だった。
確実に文を喋るとボロが出る。間違いない。仕方ない、と考えリィンはゆっくり喋った。
「……………女狐」
「…! ヘェ、お前がもう1人の大将って奴か」
「……………どーも」
「え、女狐ってそんなキャラなの?」
「黙って」
ドコッと鳩尾辺りから容赦ない音が聞こえる。
普段と180度違う態度にドフラミンゴが驚くとリィンが拳を握りしめて女狐らしく妖艶(物理)に口を塞いたのだ。
「……………仏、会議」
「……あぁ」
何故かげっそりと疲れた表情のセンゴクにリィンが『質問から逃げたい』催促すると流石は賢い上司、察した様で会議を進行し始める。
「(よく考えれば七武海定例会議に参加するのは初めてだなぁ…ナワバリ以外に何話してるんだろ、ていうか私ここにいてもいいのか?)」
今更な疑問が頭をよぎるがセンゴクが何も言わないので何ら支障はないだろう。
せっかくの機会だ、と会議を見学することにした。
「議題その1:会議の出席数を上げるためには」
「(小学生かよ!!!!)」
どう考えてもこの場に居ないハンコックやモリアの事を言っているに違いないと察する。そして低レベル過ぎる議題その1にため息を吐いた。
「リィンを当てようじゃないか」
ほけほけと天然魚ジンベエが手を上げる。
「却下!」
「なぜじゃい女狐殿。現にここにいる殆どが…まぁ今回は
「…………海峡、それ本気で言ってるのか?」
「うむ!」
リィンならまだしもドフラミンゴの事を気付いて無い男その2が発掘した。思わぬ展開にミホークが机に頭をぶつけ始めたが小さい事だろう。
「……………奴は雑用」
「だからと言っても実際早い」
「……………迷惑。良くない」
「それは今更な話じゃろう?」
そうかもしれないけど!負担は増えるんです! と叫びたかったがあくまでもリィンはバレない路線を突き通すつもりなので押し黙った。
「ならば女狐の名の通り魅了させちまえば解決だろ、リィンに頼りたく無いならお前がやれ」
「……………何故」
「あぁ? こっちはな、グラッジの件含めてテメェが手を汚してねぇのが腹立ってんだ。テメェは大将ってご偉い肩書きを持ってんだ……負担しろ」
「(んんんんん、私の負担が増えるんです!雑用のリィンを気遣ってくれてるのは分かるけど、なんかごめんね!?)」
「………どっちにしろ地獄だな、女狐ちゃん」
「本当に黙って?」
ポロポロと軽い口に軽く恐怖を覚えながらも
「……………悪魔の片腕、それは過去」
「分かってんのかよ、アイツが居なくなった理由」
「……………勿論」
悪魔の片腕グラッジ。
唯一リィンが直接手を汚し、その命を終わらせた男の名だ。
クロコダイルとジンベエには一部始終を伝えているので、『秘密裏に片付けられるのにそれをせず、手を汚さなかった大将』に嫌悪感を抱いているのかもしれない。
クロコダイルよ、それは御本人だ。
「胸糞悪い…」
「会議中はいつも機嫌が悪いなクロコダイル…少しは態度を改めたらどうだ」
「嫌な事ばかり思い出すんでね!悪かったなセンゴク様よ!」
ニヤニヤと笑うクロコダイルばかり見てきたせいでどうにもイメージがピタリとハマらないがリィンは気にせず言葉を続けた。
「……………海の屑」
「はぁ?」
「……………藻屑」
「……何が言いたいんだ、テメェ」
「……………煽る」
「あー…、つまりリ──女狐。屑共を煽って来させればいい、と?」
センゴクの改訂にコクリと頷けば言うことは無いとばかりに背もたれにもたれかかって腕を組んだ。
女狐のキャラ付けも大変なものである。
「では議題その2:治安維持の為にどうすべきか」
「(中学生かよ!!!!)」
微妙にフワフワと浮いた議題その2に机を叩きたくなる衝動に襲われたがグッと堪えた。
ここは我慢だリィン、と己に言いつける。
「……………海賊壊滅」
「お前は時々とんでもない脳筋になるな」
「……………手始め、は、七武海」
「やめ、ろ!」
バァンッ!とどこからか取り出したハリセンでドフラミンゴがリィンの頭を叩いた。
思ったより痛かったのか頭を抱えている真っ白い塊を無視して今度はドフラミンゴが案を出す。
「リィンを使おう」
「お前は馬鹿か」
センゴクが容赦なくその案を却下した。
「あー…なら女狐使っちまえば?」
しかし似たような案を出したのはクロコダイル。
どういう事だと視線が向かう。
「
やけに刺々しい言い回しだったがセンゴクはふと考える。知らないことは恐怖じゃないか、と。
「いいかもしれんな。謎の膨大な力を海軍が保持してるとなると実力も伴ってない頭の緩い海賊程度なら牽制になる、雑魚対策だな」
「……………嫌」
「文句を言うな女狐」
「……………飛び火、恐怖」
「表立って出る事など無い癖に」
本人らを知っている上層部では4人の大将の仕事にちょっとしたイメージが付いている。
『海賊』を相手にする赤犬。
『治安』を維持する青雉。
『天竜人』の護衛が多い黄猿。
『王族』と縁強い女狐。
女狐は世界会議にてその姿を表しているので今している格好を進んでする必要性は無いのだ。
「……………はぁ」
「クッハッハッハ!せいぜい頑張るこったな」
「(禿げろクロさんこの恨みは忘れない)」
ちょっとした呪詛を送りながら舌打ちをする。
ここでミホークがまさかの発言をしてきた。
「ところで、だが。女狐とは誰なんだ?」
「「「「…………」」」」
事前説明で『ドフラミンゴが化けるのは海兵』と『リィンは来ない』としか言わなかったのは悪い事をしたと考えている。
だがしかし大将の二つ名を知らないとはどういう事だ、と全員の視線が注がれた。
「つーか普段って何してんだ?」
「(私が聞きたい)」
女狐は正直仕事をしていない。
するとしたなら部下(少数)の集めた資料に名前を書いたり雑用でも紛れるように備品の管理程度だ。
特別な時を除いて功績が無い。
「……………仕事」
「だからその仕事ってのがなんなのか」
「……………交渉、拷問、首、潜入」
「……お前のどこが『平和を愛する(と噂の)守りの大将』だってんだ…。海賊でもドン引きだわ」
「(私もそう思う)」
これもまた嘘は言っていない。
革命軍の顔写真を手に入れたのは確かに交渉だ。エースに特攻を仕掛けて思い出させたのはある種拷問だ。グラッジを殺したのだって首を落とした。潜入はこれから予定だがそれっぽいのは何度か経験している。
「はぁ、萎えた。センゴク、俺ァ帰る」
「え、は、あ!?」
ドフラミンゴが慌てて立ち上がった。
ターゲットにネタバレもせぬ間に帰られては困ると思ったのだろう。
「なんで帰っちまんだ鰐野郎!」
「……お前新米海兵だったな。雑用と関わりあるな?」
そう言うとクロコダイルは懐からガサガサと一つの箱を取り出した。
「第一雑用部屋のリィンに渡しとけ」
会議が途中だがそのまま背を向けて去っていったのを全員見つめる。
え、この空気をどうしろ…!?という雰囲気がありありと見えるが突如ドフラミンゴが崩れ落ちた。
「(バレンタインのは私が作ったやつじゃないんだけど。海賊女帝に押し付けられたやつだし。……心が痛い)」
「ブッ、ハハハ!!アイツ、最後まで気付かなかった!」
「びぃ…ッ、胸とお腹痛い」
ホワイトデードッキリは仕掛けクラッシャークロコダイルの勝利に終わった様だ。
お返しは【どっかの誰かと結婚出来るならしてみやがれ幼児体型の貧乳】とメモが書かれたペアの指輪だったのでパイを
この時点ではミホークは女狐=リィンと知らない。
くまは『女狐』も『新米海兵』にも気付いてる。
ジンベエ?クロコダイル?知らない子ですね。
指輪プレゼント=婚約と考えない。あくまでもペアの指輪なので単なる嫌がらせですね。ほら、ぼっち諸君、分かるだろう?友達が「これお土産ね!」って渡した物が何故かピンクと青の二つセットのおそろいキーホルダー、とか。辛くない???(経験者)