2度目の人生はワンピースで   作:恋音

122 / 280
第111話 熱中症には気を付けろ、本気で

 ジリジリと焼けるような太陽の光が砂漠に降り注ぎ、大小様々な砂丘が足元から身体を温める。

 

「あ゛ァ〜……」 

 

 ルフィが先程からアーアー言ってダレる。

 ナミさんはパタパタと手で仰ぎながら止めようとするけれど止まらない。

 チョッパー君は雪国育ちということもあってゾロさんに引き摺られている。

 

「俺らがこんなにバテバテなのに…その化物達は」

 

 ウソップさんがチラリ、と私側を見る。

 

「箒って最高!」

「乗せろよ!」

 

 いい笑顔でサムズアップすると怒られた。

 

 それぞれの手荷物は少なめにして1,2食分の食料と水を。残りのテントやら細々とした物や予備の水は私がアイテムボックスに放り込んだ。

 荷物を全部私が持たないのには理由がある。一つはいつでも手軽に水分補給が出来る事。そしてもしも遭難した場合1日は持つという事。そして第三者から見て不自然に見えない(アイテムボックスがバレない)という事だ。

 

 アイテムボックスは適当に流してもらってる。これも能力能力と言っているけど。

 

 だから荷物が少ないのでマルコさんは空を飛び回って警戒。助かる、流石長男。

 私も同じく飛ぶが高いところが無理なので皆の体調を確認したりする補助員的な感じ。

 

 やっぱり暑さにバテバテだな、と思う。私は水蒸気で周りを包むようにして熱気を防いでるから平気なんだけど本当の化け物は革命軍だと信じてる。

 

 マルコさんやエースは元が炎だったりするから除外するにしても(ただしマルコさんの炎は熱無し)生身の人間のサボとコアラさんが平気な顔して先頭と殿を務めている。

 意味がわからん。

 

 

「やー、暑いねぇ〜」

「暑そうに見えないんだけど」

「そう?ナミちゃん程じゃないにしろ暑いよ〜?」

 

 ケラケラと笑いながら先頭を進むコアラさん。

 

「ほら頑張れ」

「……さんぼーそーちょーに言われなくても頑張る」

「おお、そんな口叩けるなら上等」

 

 時々スピードが落ちるルフィや常に後ろにいるウソップさんに軽口を叩く殿サボ。

 

「まるで山登りみたいだな」

 

 エースの隣まで行くとそんな言葉が聞こえた。

 

「やー、砂漠って経験ないから面白いな」

「砂丘は300mくらいのものもあるからエースさんがそう思うのも仕方ないわ」

「へぇ、流石この国のお姫さんだけあるなぁ。っと、ルフィ、水飲みすぎだ、気をつけとけよ」

「…………あい」

 

 ちょっとした疑問に答えてくれるビビ様マジでビビペディア。心の中でだけ呼ばせてもらいます。

 

「ふふ…リィンちゃんが荷物の軽減と水の確保をしてくれるから砂漠越えがとても楽に感じるわ」

「どうも」

「リィンだもの」

 

 私の話題になると目敏く反応するナミさんはマジでナミさん。もはやナミさんが変態の代名詞。

 

 初期ナミさんの方がすきだなぁぁぁぁ…どこからこんなに残念になっちゃったの……ウソップさんの故郷か!?

 

「体力の消耗が激しいからなるべく休めるところで休んだ方がいいと思うけど。王女さん、あんたはどう思うよい?」

「……そうね。ルフィさん、次の岩場を見つけたら休憩しましょう?」

「よーし!岩場!岩場を探すぞ!リー頼んだ!」

「マルコさん頼むますた」

「堕天使…指名だよい」

「ぬぅぅわぁぁあ!私は二つ名が大っ嫌いですぞ!」

 

 やめてくれぇ!と叫ぶと大笑いされた。

 私の中で嫌悪度は女狐<(越えられない壁)<堕天使だ。冗談じゃない全ての元凶たるクソジジイめ。

 

「おい、岩場をみつけたよい。あと10キロくらい先」

「視界が悪きですが良くぞ見つけるますたね……マルコさんの視力何事?」

「見聞色の覇気、の方な」

 

 渋々とマルコさんが調べてくれる。

 覇気でも地理は分かるのか、便利だな。

 

「なぁリィン」

「はい?」

「時々出てくる〝はき〟ってのなんだ?」

 

 ゾロさんがチョッパー君を引っ張りながら聞いてきた。例え偉大なる航路(グランドライン)でも機会が無ければ知らなよね。

 

「ルフィ!覇気、説明可能?」

「え…っ」

 

 ルフィはいきなりの名指しにビクリと肩を震わせて視線をグルグルと回し始める。

 あ、覚えてないな、こいつ。

 

「おい………」

「だ、だってよ、もう10年くらい前の話だ!俺が覚えてられるわけねぇ!」

「威張るなかれ!」

 

 スパンッ、と音を立てルフィの頭を叩く。

 

「覇気には全部で三種類。一つは見聞色、こいつは敵の動きを予測したり人の大体の位置が分かったり、まぁ読む力だ」

 

 仕方なし、と頭を押さえながらサボが説明を始める。教えられていたのに覚えてないということを察してしまったのかとっても深いため息を吐いていた。

 わぁー、便利。

 

「もう一つは武装色。流動体、つまりクロコダイルみたいな自然系を掴むことが出来るし純粋に攻撃力が上がる。岩を砕けたり島を斬ったり、まぁ色々だ」

 

 ゾロさんは小さく感嘆の声を漏らした。

 

「最後、こいつは素質が無いと使えない覇王色。威圧したりすると雑魚ならぶっ倒れるし喰らうと少し動きが鈍くなってしまう」

 

 素質があったとしても使えない人はいるよ。多分沢山。

 

「他二つは人間やりゃ出来るが覇王色に関しては全くだ。使える人間や歴戦の名将達が見ればある程度素質があるか分かるらしいが……俺には無かった」

 

 サボは首を横に振りながら肩を竦める。

 ドラゴンさんが見抜いたか?

 

「ちなみにこの場には素質ありと確定するが3人」

 

 びしーっ、と指を3本出すと名前と共に一つずつ折っていく。

 

「一人目、エース」

「俺か、まぁ使ったことあるからなぁ…。たったの3回だけど」

「マジか、どこでぞ」

「リーのシャンクス人攫い事件。ルーキー時代のクソ海兵相手。んでティーチに向けて1回」

 

 やっぱり使うの難しかったのか。

 うんうん、仕方ない仕方ない。

 

「二人目、ルフィ」

「え?俺か?」

「血筋的にもこの2人は合っておかしく無き、うん」

「そっか〜!なんか教えられたことある気がするけどまぁいっか!もうけもうけ!」

「この楽天家……!」

 

 興味深げに聞いていたゾロさんやサンジ様は呆れた目で船長を見ていた。

 

「三人目、私」

「えっ、リィンちゃんが?」

「剣帝に言われるますた…そして父親に覇王色を浴びすられた時に使えると分かるした故、更に母親も使えると聞くしたのです」

「あぁ……使えるねい………」

 

 何故か遠い目をするマルコさん。

 でしょう?血筋的に絶対入ってるでしょ?使えたことないし前兆もないけどな!!!!

 

 エースが使えないんだから私も使えなくていいの!うんうん私出来損ないじゃないよー!とても優秀な海兵さんだよー!

 

「あとこの場以外では……白ひげさん、シャンクスさんは勿論……」

「おい、めちゃくちゃ四皇じゃねぇか」

 

 えーっと、ドフィさんは使えるって言ってたな。それと対抗してか海賊女帝も使えてた筈。それと海賊王とそのクルーの冥王と戦神で。

 

「5人ほどのみ…」

「「「十分すぎるだろう/よい!?」」」

 

 ………私多分一般とかけ離れすぎて常識が乖離したと思うんだ…。あれ、でも私生まれからずっと一般的なを味わってない…?よーし!まだセーフ!大丈夫大丈夫まだイケルイケル…イケ、いけねぇよ!!!!いけるわけないだろ!!!???

 プリィィイズゥゥ一般常識ぃいいい!

 

 

 

 ==========

 

 

 

 約3時間歩いて休憩出来る岩陰までやってきた。

 岩陰が見えた辺りから私とエースが先行して安全確認。一応王族が二人も居るからね、リィン責任問題チョー怖い。

 

「ゴァ…」

「鳥?」

 

 岩陰にはピクピクと倒れる鳥が居るだけだった。

 

「なぁ、妹よ」

「何事ぞ兄よ」

「……………食えると思う?」

「多分」

 

 

 

 

 

「エースぅ〜?あ、いたいた──なんだその鳥の山」

「捕まえた、これで腹ごなしだ」

「食料には限りあるですから現地調達大事ぞ。これ、食べる可能の様ですし」

 

 パラパラと本を捲りながら鳥の種類を調べる。エースと確認した結果砂漠には確実に居るワルサギって鳥だそう。

 (サギ)なら食べれる。

 

「荷物取られる心配が殆ど無いとは言えど良かった…ワルサギは旅人を騙して荷物を盗むの」

 

 ビビ様がホッと息を吐く。

 

「ルフィなら確実に騙されてたよな。リィンとエースのお陰で助かった」

 

 ドサッと腰を下ろしゾロさんが零す。

 うーーん、否定しきれない。

 

「ハック、大丈夫かな」

「アラバスタの河はそうそう危険は無い筈だ。魚人空手の使い手なら余裕だろ」

「結構危険なんだけど……心配するだけ損しそう」

 

 ゾロさんと同じく腰を下ろそうとするサボが心配するコアラさんに声をかけていた。

 革命軍2人のセリフにビビ様が思わず視線を背ける。うん、正解。心配するだけ損ですよ。君は自分の事を心配しようね。

 

「チョッパー君チョッパー君」

「なんらぁ…?」

「幻覚剤を作るメスカルサボテンの群生地、らしい。これ、液状に可能?」

「ん〜…どうだろう。でも数はかなり要ると思うぞ……。まだ足りない」

「そうか…」

 

 ぐでん、とダレてるチョッパー君に確認すると作れない事は無いみたい。よっしゃ貰った。

 

──ズドドドドド…

 

 遠くから地響きみたいな音が聞こえてきた。

 

「ちっ…何かいるな」

 

 サボが頭を抑えながらボソリと呟くと全員が警戒し、武器を手に持つ。見聞色の覇気はお手の物ってやつですか?そうですか凄いですね私覇気とそれなりに関わってきたのに未だにうんともすんとも言わないよ!

 

 全員の視線の先には紫のトカゲが土煙をあげながらラクダを追いかけていた。

 こっちに来るな!!

 

「サンドラ大トカゲ!」

「でけぇな」

 

 ビビ様が叫び声をあげると近付くトカゲの大きさに思わずと言った様子でサンジ様が言葉を漏らした。

 あー…こりゃ確かにデカイわぁ…。

 

「お、飯追加」

「エース俺が倒すから待ってろよ」

「バーカ、お前に負けてたまるかよ」

「ッルフィ!エース!」

 

 拳を握りしめて飛び出して行くのは我の兄ズ。

 呑気にエースが呟くと競走みたいに走り出していった。バラけて迷子になるのも厄介だし不安なのでサボが追いかけてくれたみたい。助かる。

 

「雑魚が…〝火拳〟!」

「〝ゴムゴムのムチ〟!」

「あぁもうこの2人は!〝竜爪拳〟」

 

 ………………怪物が可哀想。

 

 ズドォンと重たい音を立ててトカゲが倒れた。

 どうしようまさか人間以外に同情してしまうとは…。悲しい。

 

「何もそこまでしなくても…」

「こっちはまだ襲われてないのに…」

「うわぁ……瞬殺って結構引くかも」

「一味の化け物3人組より鬼畜だな」

 

 あ、よかった!私だけじゃなかった!

 安堵してると騒がしい声が耳に入ってきた。どうやらトドメが誰だか話してるみたいだ。アホか。さっさと肉をバラせ、時間がもったいない。

 

「俺がトドメだったな!」

「バカ言うな!俺だって!」

「リー、どっちがトドメだった?」

「は?知らぬぞ!?私にその様な判断が可能と!?」

「絶対俺だって」

「いーや、俺だね」

「お前ら少しは落ち着…──」

 

「「──()()はどっちだと思うんだ!?」」

 

 エースとルフィは今なんて言った?

 

 お互い口に出した言葉に気付いて口を閉じる。苦々しい顔をして私の視線から逃げた。まだサボの事は地雷なのか……。

 じゃあ、肝心のサボは?名前を教えてないのに名前を言われてしまったサボ。

 

「………ッ」

 

 近くに行って顔を見ようとした瞬間、サボの身体がグラリと大きく揺れた。

 

──トサッ

 

 私に覆いかぶさる様に倒れるサボ。支えきれずに私はそのまま巻き込まれた状態で尻餅を付いてしまう。

 成人男性めっちゃ重い、焼けた砂漠めっちゃ熱い、サボの身体も熱い。

 

 

 

「チョッパー君!!熱中症!!!!」

 

 

 

 

 時々頭を押さえていた。ぼうっとどこかを見ていた。何かを考え込んで深いため息を吐いていた。

 信用出来ない奴は絶対馴れ合わないマンが後ろにいた理由の一つに顔色を見られたくないってのがあったら?

 

「騙しやがるした…!」

 

 

 

 

 

 体調不良を黙ってやがったこの馬鹿な兄を運んで日陰で長めの休息に入ることになった。正直聞かれてなさそうでホッとしたけど。もしやこれが怪我の功名???




(違う)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。