2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第102話 セットはお得感出るけどやだ

 

 

 ガチガチと歯を震わせながら服を何重にも羽織る。女子部屋から出ると顔に向かって風が吹いてきてひきこもりたい欲求に駆られた。寒すぎやしませんかヤダー。

 

 ……安易に選択肢の中に冬島を仕込むんじゃ無かった。

 

 くそー、セントヘレナや元フレバンスはあんまり寒く無かったのに。あー、でも元フレバンスはあんまり雪降らないところだったっけ。

 

 北の海(ノースブルー)偉大なる航路(グランドライン)の天候の差か。支部がある島って治安が元々悪い=(海賊も海軍も)活動しやすい気候の島が多かったから冬島慣れない。

 

「たいしょー雪だるま見たい」

「でも真っ黒よ」

「可愛くなくてスミマセンですたー」

 

 後ろから付いてくるミス・バレンタインとミス・マンデーに皮肉を言いながら船頭に腰掛けるルフィの元へ行く。

 

「元々可愛げは無いだろ」

「ゾロさんうるさい」

 

 元々キミの口は切れ味抜群でしたね。

 

「ルフィ〜〜〜…寒い」

「雪、こんなにいっぱい………幸せだ」

「あーはいはい……。本当にその格好ぞやめろ。見てるこちらが寒く感じるぞ」

 

 驚く事にルフィは袖なし半ズボンに草履、そしていつもの麦わら帽子だ。

 キチガイか。

 

「ん?おー…………………寒っ!?」

「「「「遅いわ!」」」」

 

 Mr.9やサンジ様、ウソップさんにミス・バレンタインのツッコミ得意組が声を揃える。

 

「ほら、これ着ときなさい」

「おう!ありがとうなオカン!」

「………麦わらまで言うか」

 

 服を持ってきたミス・マンデーがガクリと肩を落とす。オカンキャラが定着していってるね。

 

「ゾロの怪我治してもらえるかな〜」

「まだ治りきって無いのよね?」

「平気だろ、つば付けときゃ治…──おいリィン何してる」

「傷見るしてる」

 

 平気そうな顔をしたゾロさんの服を上半身ぬがして見てみる。塞がりかけてる状態だから包帯巻いてるけど少し熱持ってるな。これ、絶対しんどい。経験者が言うんだ間違いない。

 

「きちんと見てもらうしましょうね」

「俺は子供か」

「Mr.5ー!一応ゾロさん運ぶしてくれませぬか?」

BW組(俺たち)の中で1番力あるのオカンだ」

「つまり?」

「その筋肉質を運ぶのは嫌だ断る」

 

 見るからに重たそうだしね。

 

「オカン〜〜!」

「はいはい」

 

 自分の持ってる荷物をMr.9に持たせてゾロさんを俵担ぎにした。

 

「上陸か!?」

 

 ルフィが嬉しそうに言ったその時、カチャッと武器を構える音が聞こえた。

 

「そこまでだ海賊共」

 

 低い声が聞こえてそちらを向くと周囲に民間人であろう人達が銃を構えている。その中に声を出したであろう人も。

 

「キミ達を上陸させる訳にはいかないな」

「リィンさん交渉の時間でっせー」

「ウソップさんキミに任せるした」

「嫌に決まってんだろ」

「裏切り者!」

 

 ウソップさんに呼ばれたが断る。見るからに人の話聞かなそうな人相手はいやですもーん。仕方ないから渋々ルフィの前に立つ。

 

「分かりますた、上陸はしませぬ。その代わり仲間が怪我をしてる故医者を呼んでくれませぬか?後食料も底が見える状態です。購入したいです」

「………喋り方がおかしいな」

「黙るして!?お願いします黙るして!?」

 

 私泣いてもいい?

 

「海賊の要望など聞くか!」

「今すぐ帰れ!」

「……むぅ」

 

 予想通り過ぎる反応に私は振り返った。

 

「頑固が多いようで難しいです。多数決と言うは世界にとって1番厄介ですよ」

「言ってる場合か」

「どうしましょう…時間はあまり無いけれどゾロさんの怪我は治したいわ」

「うーん、ゾロさんは別の島で……。って事も可能ですが食料問題はやはり……」

 

 うーん、とビビ様と一緒に首をかしげてると男の人から声がかかった。

 

「ッ、キミ達!あのコンビか!」

「どのコンビだよ」

「「あ/げ……」」

 

 ウソップさんが男の人にツッコんだタイミングでビビ様と私の声が揃う。

 私達をコンビだとかセットで見る事が出来るのはアラバスタ関係者か──世界会議(レヴェリー)関係者。

 

「……上げてくれませぬか?」

「えぇ、構いません。──この人達は大丈夫です。私の信用している人でもあり素性もハッキリしています」

「…………何故家臣は賢いか…、この国、どうして今まで成り立つしてたのでしょう」

 

 悲哀感たっぷりの私の頭をそっと撫でたのは安定過ぎるナミさん。よく分からないって顔してますね。

 

「あぁぁぁぁ………。あ…あ………あぁ」

「お前はどこの怪物だよ」

「ウソップさんハウス」

 

 私が大将だとバレる前に口封じしなければ…今口に出してないところから見て少しは余裕ありそうだけど恐らくバレてる。ああぁぁぁぁぁぁあ!くそう!国王組が海にいるからって油断した!顔隠しておくんだったあぁああ!もう!なんでこの人ここにいるんだよ!

 

「ひとまず私の家に招待しましょう」

 

 男の人はチラッと船の上にいる人間を見回して苦笑いを浮かべた。

 

「少々、人が多いですがね」

 

 この人、食えなさそう。

 

 

 皆が錨を下ろして停泊の準備をしてる中ビビ様を箒に跨らせて陸に上げる。

 

「………どうも、海軍本部()()()リィンです」

「えっと、アラバスタ王国王女のネフェルタリ・ビビです……?」

「こうして面と向かって話すのは初めてですね、元ドラム王国守備隊長ドルトンと申します」

「ご協力ありがとうございます、とても助かりました……。ドルトンさんが居なければきっと上陸出来ませんでした」

 

 ビビ様が丁寧にお礼を言う中、私はドルトンさんへの警戒を強める。

 随分優しそうな人だけど馬鹿だと困る。それに国王不在の今、何とかしなければならないのは私。ハー、お仕事しんどい。

 

「お前ら早い!なぁリーぃ。後で俺も箒乗せてくれよぉ〜」

「いい子ですたらねー」

「よっし!」

 

 登ってきたルフィがガッツポーズをする。後ろから続々と人が登ってきて最後にゾロさん担いだミス・マンデー。お疲れ様です。

 

「案内させてくれ、寒いでしょうから我が家でお話しますよ」

「あ、聞きたい事沢山あるです。ワポル様の件、とか」

「………私はキミが苦手だよ、実力者という者はどうにも威圧感がある」

「む、どこをどう見るしてもか弱い普通の「ゴリラ」ですの…──おいゾロさん被せるするな」

 

 なんだ、担がれてるのが嫌なのか。屈辱なのかザマァ!!

 

「仕方ないさ、大将の笑顔は可愛いの比率より威圧感や恐怖の方が強い」

「Mr.5黙る」

「たい、しょう?」

「あだ名ですあだ名、気にするなかれですよ」

 

 やっぱり反応から私が大将なのバレてるか。

 海賊と一緒ってところで察してくれるかなー。

 

「医者、と言ったかな」

「ええ、あのバカ剣士が鷹の目にざっくりやられるしまして情けない」

「おい!仕返しかリィン!」

「言っておくが我が国には魔女と呼ばれる医者が1人いるだけだ」

 

 

 どうでもいいので暖かいところ入りませんか。

 

 

 ==========

 

 

 

 暖炉の前でニット帽と手袋を脱いで暖まる。ちなみに両隣に王族コンビ、無理やり座らせた。

 

「まァ医者が1人しか居ねぇのは分かった。でもその魔女って言うのは?」

 

 サンジ様が暖まりながらドルトンさんに疑問をぶつける。物騒な名前だよね、魔女って。

 

「窓の外に高い山が見えるだろう?」

「あぁ、確かに馬鹿みたいに高い山が…」

 

 視線を窓に向けると外には雪だるまさんがいらっしゃいました。

 

「………私ちょっと回収してくるわ」

 

 ミス・マンデーが自慢の怪力をブンブン回しながら外に向かって行った。

 頭にたんこぶつけた2人が部屋に現れるのはわずか1分後の話。

 

 

「──その高い山に城が見えるはずだ。魔女と言われる唯一の医者、Dr.くれはがそこにいる」

「うわ遠い。電伝虫ありまするか?」

「………あるが、無い」

 

 ドルトンさんが斜め上に視線を背けた。

 ほほう。つまり

 

「電伝虫はあるが番号不明故通信手段無し、と」

「くそ剣士の怪我治すのはまた次の島で決定」

「もしくは自然治癒力に任せるか」

 

 サンジ様とMr.5のゾロさん嫌いコンビがイキイキとしてる。

 

「じゃあどうやってこの国の患者を治して…」

「彼女は気まぐれに山を降りる。その際患者を探し処置を施せば法外な値段と欲しいものをありったけ奪っていくんだ」

「まるで海賊。ゾロ、諦めなさい」

「金とリィンが絡むとお前は人が変わるよな」

「私の優先事項は命>お金>リィン>(越えられない壁)>その他よ。勘違いしないで」

「勘違いする暇もねェわ」

 

 ま、国に医者が一人しかいないのがおかしいんだよな。とサンジ様が小さく呟いた。

 ドルトンさんは聞こえていたのか答える。

 

「昔はいたんだよ」

「医者独占政策が無ければ」

「……。知っていましたか」

「もちろん、ただ、昔の事ですたのでもう無くなってるとばかり」

「残念ながら…アレが国王ですから」

「ワポル国王。──海で出会いますたあのブリキング海賊団の船長ですね」

「「「「「!?」」」」」

 

 全員口をぱくぱく開閉せせる。

 

「アレが!?と言うよりリィンちゃん良く気付いたな……」

「まぁ、それなりに、注目する国王ですた故」

 

 言えないよなーーー、キミの父上に忠告されましたー、とかさーーー!!

 

「それは本当か大将殿!」

「やめるして!?そのあだ名やめるして!?」

「……! すまない」

 

 あっぶねぇ!BW組のあだ名付けに初めて感謝した。怖、怖い。ドヤ顔してるミス・バレンタイン丸見えです。

 

「何故ワポル様は海賊などに?」

「……国が滅びかけたのです」

「はへ?その様な情…ンン゛、その様な大逸れた事ぞ合ったのですか?」

 

 情報が回ってきてない、と言おうとしたけど普通の一般的な子供に情報なんて来ないわ。

 

「たった5人、その海賊にやられました。名は──黒ひげ」

「黒ひげ!?」

 

 思わず立ち上がる。

 

「何故黒ひげが、何故、夢だと、実在して…!嘘だ、嫌だ、白ひげ海賊団は!?黒ひげとは一体誰です!?」

「お、落ち着いてください…。黒ひげの正体は分かりません。無名の海賊団ですがとても強い、この国にとってはワポルが居なくなった事に喜びを覚えていますが」

 

 クソ、こんな所で予想外の名前を聞くとは…。黒ひげさえ現れなければあの夢はただの夢だと割り切れたって言うのに。

 

 最後に見た夢の記憶は白ひげさんにトドメを刺す姿。あの姿は狂気を覚える。

 

「……今は医者のお話ですたね、取り乱すました。山を降りるという事は何かしら交通手段はあるという事ですよね、なるべく時間をかけるしたく無い故教えてくれるとありがとうです」

「それが、私達にも分からないんだ」

 

 ドルトンさんは目を伏せて首を横に振った。

 

「ソリに乗って空を走る姿を何度も目撃されているが…」

「それは、なんというか」

「うん、その……なんつーか」

「あ、あはは…」

 

 全員が苦笑いを浮かべる。うんうん、分かる。分かってる、みんなの言葉私が代弁しましょう。

 

「空走るとか意味わからん」

「「「「「お前が言うな!」」」」」

 

 同時にツッコまれた。解せぬ。

 

「ハッキリ言わないのがいけなかったのよね、たいしょーそっくり」

「え……本気です?」

「箒に乗って空飛ぶ奴が何を言うか」

 

 Mr.5ペアの理不尽過ぎる罵倒が私に飛ぶ。

 そんな正体不明な人と同じ扱いして欲しくない。

 

「なぁリー。箒って何人乗る?」

 

 ルフィが唐突に聞いてくる。

 

「は?試した事は無きですが恐らく何人でも」

 

 イメージで浮かせてるから重い物が乗ることによって生じる負荷は無いと思う。認識の差だよね、『箒で人を浮かせる』じゃなくて『浮かせた箒の上に人が乗る』って感じだから。

 どうしてそんな事を聞くので───

 

「ゾロと俺、乗せてってくれ!」

 

 ───細かく聞きたくないです。

 

「………………………………いやです」

「あの山登るぞ」

「嫌!絶対嫌だ!私高い所無理!嫌です!」

 

 それに絶対痛い!雪って痛いんだぞ!?

 絶対他に方法があるはず!

 

「その魔女さんの特徴とは何です!?わずかでも宜しき故!」

「え…、あー。もう140いくらしいが」

「身長が?私と同じくらいでは…」

「いや、歳が」

「化け物かよ!」

「「「「「ちょっと黙ってろ!」」」」」

 

 お前が言うなって厳しい言葉を頂いた。

 

 この場に居たらヤバイ、絶対山登る事になる。

 よし、逃げよう。

 

 

 

 そ…っと扉を開けた。

 

「リィン!?どこに行くつも」

「ぎゃあ!バレるの早い!さようなら!」

 

 箒に乗って慌てて逃げた。

 ついでに食料買っとこう。

 

 

 

 隣町辺りで。この街だとバレる。


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