ドルオタだけどトップアイドルになれますか?   作:凪紗わお

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lesson.3 自分が出来ることを精一杯

 

「私たちが、アイドルを……ですか?」

 

何を突拍子もないことを、というようになほちゃんが繰り返す。私も同意見

 

「セイラ、怒るよ?先輩の話聞いてた?」

 

「聞いてたよ。だからこその提案さ」

 

ますます意味がわからない。果てしない努力の果てにアイドルは輝く。それはさっきの涙先輩のお姉ちゃん、明日香さんのお話で分かったはずだ

 

その上私達はSTAR☆BLUEのように芸能事務所に所属していて、ほぼ専属の作詞曲、振付師、衣装デザイナーがついているわけでは無い。やるなら曲作りから何から自分たちでやらないといけない

そして何より私だ。数分大きな声を出すだけで過呼吸気味になるのに、レッスンの段階で『お迎え』が来てしまうのではなかろうか

 

「自分はやってみたいッスけどね」

 

美玖ちゃんはいつも通りか。涙先輩は多数決には参加しない様子。発育の暴力なほちゃんは恥ずかしがり屋だしこっち側かな

ある人物以外同意見なようで、自然と視線がその人に集まる

 

「……ボクの意見が聞きたいのかい?」

 

ロリ僕っ子な生徒会長で、自分のファンクラブがあって、花咲このはファンクラブ会長。そんなライトノベルのような肩書きを持つ彼女の決定が気になってしまう

 

「玲奈の言う通り、涙の話を聞いていたなら決して賛成は出来ない。美玖は運動部の助っ人があるし、玲奈の体調管理、ボクだって生徒会の仕事がある。問題は山積みさ」

 

「反対ってことっスね」

 

「いや、だからこそ賛成だよ」

 

『はあ!?』

 

「いやいや、さっき現実的ではないって言ったわよね!?」

 

「ってセイラ、何写真に収めてんの」

 

「いやー涙先輩の珍しいモノを見れたからね」

 

「ふふ、ボクが言いたいのはつまりそういうことさ」

 

「えーっと、話が見えないんですが」

 

「なぜボクがこのはさんのスカウトを断り続けてきたと思う?」

 

「メンバーのひとりとしてではなく、ファンとしてこのはさんを好きだからじゃないんスか?」

 

「それもあるよ。でもセイラの提案のおかげでそれより強い想いに気付いたのさ」

 

「想い、ですか」

 

「STAR☆BLUEにドル研として挑戦したい。その想いがね」

 

「ドル研として?」

 

「借りにスカウトに応じたとして、次にボクは誰をスカウトするだろう?そんな妄想を何度もしたわけだが、真っ先に浮かんだのは君達ドル研。涙はもちろん、玲奈、セイラ、美玖になほ。全員の顔が浮かんだんだ。皆可愛いから」

 

私含め耳まで真っ赤になってしまう。そんなストレートに告白しなくてもいいじゃん!

 

「それに玲奈。生き急ぐ君にはピッタリだと思うよ」

 

はい?

 

「言葉を選ばないけど、君は数年のうちに死んでしまうのだろう?それなら後悔が残らないようにやれることはやってみようよ」

 

それを言われると弱いんだよねぇ

 

でも確かに沙織先輩の言うことには一理あったし……うむむ

 

「ねぇみんな、この決定は玲奈に委ねようよ。沙織先輩が言ってた問題もあるけど、あたしは玲奈に決めて欲しい」

 

「そういうことなら賛成です」

 

「ウチも賛成ッス」

 

「やって後悔するのか、せずに後悔するのか……私達にはわからない覚悟だと思うけど」

 

「しっかり考えるんだよ、玲奈。君の英断はここにいる皆が支持するから、遠慮なんかしなくていい」

 

一介のアイドルオタクが、とんでもない決断を委ねられちゃった。でも、この決断がドル研の未来に繋がるとしたら。そして何より私は、どうすれば後悔しないのだろう

 

「ごめん、ちょっとだけ時間を貰ってもいいかな?」

 

「ああ、勿論」

 

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中庭にて。自販機で買ったコーヒー牛乳を嗜みながら色々思案する。でも『答え』はなかなか出てこない

 

「やっぱここか」

 

「セイラ?」

 

「……ごめんね。こんなことになって」

 

「え?」

 

「実はね、沙織先輩と話してたんだ。玲奈に最高の思い出を残してあげたいって」

 

「……馬鹿じゃないの」

 

「玲奈?」

 

「バイトやって、アイテム三つ買いして、部活して!私はもうそれだけで充分だったの!」

 

なのにどうして

 

「なんで皆私なんかに!」

 

「皆、玲奈のことが大好きなんだよ」

 

「なっ!?」

 

「病気のこととか抜きにしてさ。自分に正直で、ひたむきで。そういうのちょっと憧れたりして。それに――」

 

「玲奈がやってること、あたし達も楽しんでるから。自分に素直になりなよ。じゃあね」

 

言いたいこと言って帰りやがったアイツ。マジか。

……素直になれ、か

 

 

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部室に戻ると、下校時間が迫ってるというのに皆が私を待っていた

 

「やぁ、結論は出たのかい?」

 

「うん」

 

机に手を置いて、私の考えを発表する

 

「ポエマーな私が歌詞を書くから、なほちゃん作曲お願い!」

 

「は、はい!」

 

「セイラ、あんた実家仕立て屋なんだから衣装は任せた!」

 

「了解!」

 

「涙先輩!貴女の知識で振り付けをお願いします!体力に自信のある美玖ちゃんはダンスレッスンの指揮を!」

 

「任せなさい」

 

「オッケーッス!」

 

「ボクはどうしようか?」

 

「生徒会長という立場をめっちゃ使わせてください!屋上とか使えるところの確保とか、イベント会場を抑えるとか!」

 

「くく、お易い御用だよ」

 

「さぁ、忙しくなるよ!当面の目標はホームページに載せるドル研紹介動画の作り直しだ!げほっげほっ」

 

『玲奈(先輩)!』

 

「だ、大丈夫大丈夫。ごめんごめん」

 

前途多難なスタートダッシュ。ちょっと不安だけどきっと大丈夫だよね。

 

ここから私達のアイドルとしてのドル研ライフが始まるよ!

 

ドルオタだけどトップアイドルになってやる!


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