横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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誤字報告ありがとうございます。


フェイ兄弟との戦闘シーンです。



横島、恐るべしフェイ兄弟の実力!!横浜事変その5

牛の頭の巨人(但しブーメランパンツマッチョ)牛頭と馬の頭の巨人(但しビキニ雌?マッチョ)馬頭、二体のトンでも式神が、雫と幹比古にドスドスドスと大きな足音を立てながら突進してきた。

 

雫は衝撃波の魔法を次々と打ち込むが、二体の式神は怯むことなく前進を止めない。

 

幹比古はその間、呪詛返しの術を二体の式神にそれぞれ放ち、式神を使役しているフェイ兄に戻そうと(サイオンの還元)するが、フェイ兄の力の方が勝っているため、術の効力が発揮できなかった。

 

二体の式神は近づいてくると、猛然とタックルを仕掛けてくる。雫と幹比古は身体強化と加速魔法を掛け、左右に散り攻撃をかわす。

 

馬頭は素早く方向転換し雫の方に追いすがり、掴みかかろうとした。

「ポニ―――――ィ!!」

雫はその間、横島が雫のために考案し、達也が実現させた魔法を発動させる。

周りにある空気を特定範囲内に限定させ振動を段階的に与える事で、分厚い空気の層を形成させ、雫を囲む様に空気による物理障壁を形成させた。

 

そして、馬頭の掴みかかろうとした手が、雫が形成した空気の物理障壁に触れる。

触れた馬頭の指先から細かい振動が腕に伝わり、徐々に振動は激しくなり馬頭の体中に回る。そして体中廻った振動は共振反応をおこし強烈な衝撃として馬頭の全身に走り、体の形成を維持できなくなり、サイオン粒子と化して分解したのだった!!

 

雫の必殺技ともいえる共振破壊の応用だった。共振破壊は相手の共振点を探さなくてはならず、発動まで時間がかかる上、近接に向いていない。ならば、触れた場所から衝撃を与え、相手の内部で共振させてしまおうというのがそもそもの発想であった。

この魔法、細かな調整が苦手な雫でも容易に強弱が調整可能で、軽い衝撃や気絶させる程度の衝撃を与える事などもできる。

 

横島が近接戦闘の苦手な雫を守るために考えたものだが、マッドサイエンティスト(達也)の調整により、対物理防御兼カウンター攻撃が可能な、攻防一体型の強力な魔法へと変貌してしまった。

 

 

 

幹比古は牛頭と対峙する。

「ウッシッシーーー!!」

幹比古は元々運動神経も良く、吉田家に伝わる体術も習得しているのだが、自信の無さから近接戦闘をせず、これまで遠距離からの戦闘をメインにしてきてしまっていた。

 

前回のフェイ兄弟との戦闘以降、思う所があったのか近接戦、体術についても研磨し、家では門下と実戦さながらの訓練を行うようになる。

 

そして今、体術の体捌きで、牛頭の掴みかかろうとする攻撃をすべて避けきっていた。

幹比古は横島から習った霊気を見る事にも徐々に慣れてきており、霊気(サイオン)の塊である、この式神の動きが手に取る様に分かっていた。

 

しかし、札や精霊魔法などを使い少しずつダメージを与えているが、牛頭の霊気を削り落とすには程遠い。

幹比古は、横島同様絡め手を得意とし、必殺技と呼ばれるような、圧倒的な力を持つ術はない。

このような絡め手が効きにくい存在には相性が悪いのだ。

 

そして、幹比古は横島から渡された札を取り出す。

幹比古は横島から今回何かあったら使えと、氷室家の最上級の札の護符を4枚、無印札を2枚渡されていた。(実際は横島自身が鍛えた札)

 

折角の氷室家の最高級札を使いたくはなかったが、そうは言ってられない。取り出した無印札を牛頭に向けて飛ばし、雷光(雷童子)を召喚した。

 

ズガガガァーーーーーーーーン!!!!

 

ドガーーン!!

 

「へ?うわっ!!」

 

札から超巨大な雷が召喚され牛頭に直撃し、その衝撃により半径5メートル程のクレーターがアスファルトに穿たれる。

近くにいた幹比古もその衝撃で足が浮き、後ろに転がって行った。

 

牛頭は跡形も無く霧散し、サイオン粒子に戻っていく。

 

「何これ?ひ……氷室の最上級の札って……え?えーーーー!!」

幹比古は立ち上がりその光景を見て、自分で放っておきながら、その威力に驚きを隠せないでいた。

 

 

牛頭、馬頭は雫、幹比古の手で粉砕されたのだった。

そして、二人は、フェイ兄、真由美、深雪の元へ駆けつける。

 

 

 

 

 

フェイ兄と対峙していた深雪は、真由美の援護を受けながら戦闘をしていたが、攻撃が悉く避けられるか、防がれるのだった。

深雪自身、こうも自分の魔法が無効化されることが今までなかったため、イラつき始めていた。

 

「フフフフフフッ 冷凍ミカン娘の攻撃なんて、効かないわよん!!甘ーーーい、甘々よ!!ミカンにハチミツを掛けて、生クリームを塗りたくるくらい甘いわ!!」

フェイ兄は深雪の攻撃を避けながら、執拗に挑発していた。

 

「ミカンにハチミツなど非常識です!!」

深雪はまともにそんなフェイ兄の挑発に乗っていた。

 

「深雪さん相手の思うつぼよ、あの人の言葉をまともに聞いてはダメ」

真由美はそう言って深雪をなんとか落ち着かせ様とする。

 

 

 

攻防自体は一進一退で一見、膠着状態に見えなくもないが、精神的にはフェイ兄がこの場で上回っていた。

 

 

 

そこに、トンでも式神を倒した幹比古と雫が駆けつけてくる。

「先輩たち、お待たせしました!!」

「深雪お待たせ」

 

 

 

「フーン……私の華憐なる牛頭馬頭(ゴズメズ)を倒すなんて、やるじゃない。雫ちゃんと吉田君、前は力を出し切っていなかったってわけね?」

2人を見据え感心した様に言う。

 

 

真由美は2人が合流した事にホッとし、フェイ兄に降伏勧告をする。

「これで4対1よ、降伏しなさい!!」

 

 

「牛チチ娘~、あんたね。数で決着なんてつかないのよ?脳みそまで鈍重な牛になっているのかしら?」

手に平を上に上げ、首をすくめ、呆れた様に言う。

 

 

そして、フェイ兄は指をパチンと鳴らし、

「もういいかしら……五素怨縛結界!!」

唱える。

 

 

4人が立っている場所の地面に突如、五芒星を描いた円陣結界が現れ、皆を薄暗い光が包み込んだ!!

 

そして

「なに……これ……うぅううう」

雫は耳を抑え座り込み苦しむ。

「ぐっ……ぐぐっ」

幹比古は頭に手をやり、片膝を付き呻く。

「ううっ、これくらい……」

深雪は苦しみに耐える顔をしてCADを操作しようとするがまともに指が動かない様だ。

「ああっ……あああああっ!!」

真由美はこの攻撃に耐性がないのか額を両手で押さえ、叫び声をあげていた。

 

 

「フフフフフフっ、苦しいでしょう?辛いでしょう?これはね。音、触覚、平衡感覚、温度、視覚を不快なレベルで断続的に偏重させるの、魔法師とも言えども所詮人間。この中ではまともな思考も出来ないわ。勝つのは、天才でも、膨大なサイオン量でも、優れた演算能力でもないのよ、フフフフフフフ!!ハハハハハハハ!!苦痛に歪んだ顔!!いいわ!!あなた達!!」

フェイ兄は苦しんでいる4人を見やり、その顔から狂気を覗かせる。

 

フェイ兄は、深雪たちの攻撃を避けながら、小石などで五芒星を描く頂点を描き、腰を振り深雪や真由美の攻撃を避けながら足さばきで、術式を追記させ、術を完成させていたのだ。

 

この術は、結界内の人間の感覚を物理的に変化させる。具体的には音や振動、光、温度、湿度などで五感に不快感を与え、更にそれを断続的に変性させる事で不快度が常に最大になるようにする術だったのだ。一つの感覚だけならば耐えられるかもしれないが、ほぼすべての感覚が最大限に不快と感じるため耐えられるものではない。

魔法師であれば魔法が無効化され、精神もすり減り、体力も奪われ、動けなくなったところを捕縛される。下手をすると精神崩壊を起こす危険な超高等術だった。

 

特に真由美はこの手の攻撃に耐性が無いのか、早くも精神崩壊を起こしかねないほど衰弱していた。

 

幹比古は何とか手を動かし札を取り出そうとする。

精霊魔法師である幹比古は横島の修練もあって、まだ辛うじて動くことが出来ていた。

 

「いいわ!!吉田君!!あがきなさい!!魔法師は脳で演算するの、こんな状況でまともな術なんて発動できるわけないでしょ、フフフフフフッ!!」

フェイ兄は幹比古が辛うじて動いて何か使用するのを見たが、そう言って捨て置いた。

 

「ぐぐぅ……よ…こしま、こなくそ……」

幹比古が手にしていたのは氷室製の護符、実際には横島が鍛えた護符だ。幹比古はありったけの霊力を注ぎ込む。

 

 

ピカッ!!

 

そして、護符は周囲に一瞬で閃光をまき散らし、あたりを光で満たした!!

 

 

フェイ兄の五素怨縛結界は消滅し!!新たに4人の周りに防御結界が張られた!!

 

 

「な!?……わたしの華麗でグレートな結界が破られるなんて!!何よその護符!!いくら出したらそんなめちゃくちゃな護符が作れるのよ!!何人の霊力を注いだらそんなものが出来るのかしら!?金持ちのボンボンはこれだから嫌よね!!」

フェイ兄は結界が破られたことで驚愕を顔に出していたが、直ぐに何時もの調子で毒づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイ弟と対峙している、エリカ、レオ、摩利、そしてその三人を支援しているほのかは、苦戦を強いられていた。

 

「なんなのよ!!こんなのを氷室の子は一人で倒したの?」

「まだ軽口が出るようなら大丈夫だな」

「でもよ、正直きついぜ」

エリカの軽口に答える摩利、そして、レオ、それぞれ疲弊しており、何か言っていないと心が折れそうなのだ。

 

フェイ弟は攻撃力も高いが、その防御力が厄介なのだ。とことん固い。対戦車ロケット砲すらも防げる防御力は攻撃手に何をやっても無駄だと絶望を植え付ける。

そして距離を取ろうとすると、突進力と、自ら砕いた瓦礫やコンクリート片が魔法により飛んで襲い掛かってくるのだ。

 

今のところ、要所要所でほのかが遠距離支援魔法でけん制しているおかげで、フェイ弟の攻撃をまともに喰らわずに済んでいた。

 

 

「俺、凶暴な女は嫌いだ。だから、お前ら嫌いだ。でも、そこの男、意外といい奴かもしれない。凶暴女の尻に敷かれている。だから俺にも尻を貸してくれ」

フェイ弟の訳が分からない変質的な解釈で、どうやらレオはフェイ弟のターゲット入りを果たした様だ。

 

 

「あんた良かったじゃない?モテて!!」

 

「……お前、後で覚えていろよ!!」

レオは身震いしながらもエリカに怒鳴る!!

 

 

 

 

 

 

 

一方、横島は漸く、京都、横浜間の中間地点まで来ていた。

 

「……達也、皆を守ってくれ……」




大亜連合の凄腕工作員とは偽りなし

フェイ兄弟との戦闘は意外な形?で終わります。

またしても主役が居ない感じで進んでます。

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