横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


時は飛んで、論文コンペ前日です。
何時もよりチョイ長いです。


横島、京都に行く!!

横島は論文コンペ前日に京都国際会議場警備のために、京都に発った。

 

出発前、雫は横島に一緒がいいと、ついて行く気満々だったのを横島に説得され渋々断念するという一幕があったものの、その他は何事もなく無事京都に到着したのだが。

 

「きょ ・ う ・ とーーーー!!フハハハハハッ、京美人とレッツパーティーじゃーーー!!」

駅に下りた途端これだ。早速地元の方々と観光客に醜態をさらす横島。

 

しかし、そんな横島に複数の監視の目が光っていた。

 

そのうちの一人、七草家が使わせた諜報に優れた監視者がいた。

その様子を高級車の中からライブ映像で見ている中年の男が、七草家当主七草弘一、真由美の父である。

「……真由美の報告の通りだな」

監視者から送られる映像を見て、頭痛がするかの様な表情をする七草弘一。

真由美からの冗談の様な横島の普段の行動について報告を聞き、そんな奴はいるものかと、にわかに信じがたい思いをしていたのだが、実際見るとそのまんまだったのだ。

 

 

そこに九島烈が家人と共に駅前に現れる。

 

「よお、じいさん、久々だな!元気だったか?」

横島は気軽に九島烈に挨拶をする。

 

「うむ、君も元気そうで何よりだ。早速だが行こうか」

それに九島烈も何時もの様相と違い気軽に対応していた。

 

七草弘一は九島烈が現れると、念のため監視の者が気づかれないように、彼らから大きく離す。弘一にとって、九島烈出現は想定内であったのだが、

「老師と仲がいいとは聞いていたが、これ程とは。ため口ではないか……九島家に既に取り入られたか……今から密談か?」

 

しかし、弘一の考えとは違い、

近隣ホテルのレストランで昼食を取っただけで、出てきてそのまま別れたのだ。

話している内容は分からなかったが、彼らを見るに終始楽し気で笑いなどがまじっていた。

 

「どういうことだ?」

弘一には密談や何やら重要な話をしている様にはとても見えなかった。

 

実際に横島は九島烈とただ単に昼食を取っていただけだ。

ちょろっとフェイ兄弟の事件の話はしたのだが、ほとんどが世間話だった。

 

その後横島は、歩いて今日宿泊するホテルに一度入り、少しレトロな私服(Gジャン・Gパン)に着替えて出てきた。

そこから、ブラブラと四条木屋町まで歩いて行く。

 

そこで、またしても、弘一は衝撃の風景を目撃する。

 

 

「そこの着物が良く似合うおねーーーさん!!ボクとお茶しない?」

 

「そこの色の白い肌のきれいなおねーーさーーーん!!ボクとそこでお茶しない?」

 

八王子駅前では見慣れた風景だが、この地でも横島は懲りずにナンパをしていた。

横島は何時にもまして気合が入っている。実は横島は10月に入って八王子駅前でナンパを行っていない。妙神山に帰る回数が増えたこともあるが、この頃、常に雫がくっ付いており、美月、幹比古コンビが休日でも横島と行動を共にしていたからだ。

しかもめちゃくちゃナンパ下手な上、変に気合が入っているため、余計にダメダメなのだ。めげずに何度も何度もトライするのだが、成功率は未だにゼロパーセント。

 

「……これも報告通りだな……しかし、本当にこの小僧は氷室家の人間なのか?しかも真由美の最近の報告では、あのルゥ・ガンフゥをほとんど魔法を使わずに圧倒したとあるが……とてもそうは見えん」

弘一は額を手で押さえている。実際に頭が痛くなってきたようだ。

真由美からの話のほとんどが、横島の普段の様子だったのだが、たまに受ける明らかに優れた能力を擁する報告にばかり目が行っていたため、この現実にかなりまいっている様だ。

 

「……しかし、氷室は氷室だ。真由美の報告でも優秀なはずだ……一度戻る。監視は続けろ」

弘一はそう言って、高級車を出し、宿泊先のホテルに戻った。

 

 

 

そしてナンパ成功率ゼロパーセントのゼロの横島は

「何故だ――――!!この本の通りだったら、違う土地から来た空気を纏う男はモテるって書いてあったのにーーーー!!」

涙をチョチョきらせながら、そんなアホな叫び声をあげていた。

横島はどこに行っても横島なようだ。

 

 

 

 

 

 

弘一は七草家の情報網を駆使して九校戦後から司波兄妹を探っていた。その結果、四葉家の家人若しくは一族である可能性が非常に高いと判明、達也については沖縄海戦で勝利に導き、大亜連合から摩醯首羅、沖縄の悪魔などと呼ばれた人物と同一ではないかと疑っていた。

 

もしそうならば、四葉に力が集中するのではないかと危惧をしていた。これは奇しくも九島烈と同じ考えであった。

 

七草弘一は氷室の力を欲し、この折角のチャンスを物にしたいと考えていた。

 

弘一は監視の者から報告を受けながら、考え込む。

自分たち以外の十師族も監視の者を送り込んでいる事とはわかっていた。

しかし、そんな事は気にしていられないのだ。ただでさえ、九島家には先んじられている感があるのだ。

「車を出せ」

七草弘一は再び車に乗り、横島の元に走らせたのだ。

 

 

そして、夕刻に差し掛かる頃横島は

「うーーん、舞妓さーーーん、グッとくるーーーー!!着物もやっぱ素晴らしい!!」

携帯端末でパシャパシャと写真を撮りまくっていた。

 

そんな横島の姿を見た弘一は咳ばらいをして、気を取り直し後ろから声を掛ける。

「ん、んぅ、君、もしや第一高校の横島くんじゃないかね」

 

「ん?おっさん誰?」

横島は振り返り訝し気に弘一を見る。

 

「すまん、すまん、私は七草弘一、第一高校三年の七草真由美の父だ。真由美が世話になっている。偶然、君を見かけてね。真由美にも話を聞いていたし、九校戦の活躍の君を見ていたから……もしやと思い声を掛けたのだ」

弘一は偶然を装い横島に接触を図る。

 

「え?真由美さんのお父さん!!いやー、俺の方こそいつも真由美さんに迷惑かけっぱなしですんません」

横島は笑いながら答える。

 

「どうだい、ここで会ったのも何かの縁だ、これから食事でも行かないかい?」

そして弘一は横島を夕食に誘う。

 

「え?いいんすか?」

 

「じゃあ、せっかくだいいところに行こうか」

弘一は横島が釣れたことに内心ほっとする。

 

 

 

弘一は京都祇園の一見さんでは行けない老舗料亭に横島を連れて行く。

 

「舞妓さーーーーん!!こっちにも笑顔よろしくーーーー!!」

横島は大きな和室に通され、そこでは明らかに高級そうな料理と、目の前には舞妓が踊っていた。

 

「はっはっはーー、横島くん楽しんでいるみたいだね」

 

「お父さん、素晴らしいっす!!あのゲームないんすか?おねちゃんの帯引っ張って、ぐるぐる回してっ、あーーーれー――ってやる奴、そんで、いいではないか、いいではないか、ってお決まりのセリフを言うアレっすよ!!」

横島は弘一にこんなことを言った。どこぞの越後屋や悪代官のいかがわしい遊びの事を指している様だ。

 

「……ははははっ、君は高校生だよね?それは流石にないね」

弘一は乾いた笑いをして答える。

ここまでは順調に行っているのはいいのだが、ますます、この横島という少年が、氷室家の人間で、真由美の報告にあった素晴らしい能力を持った人間なのか、疑いたくなるのだ。

 

 

弘一は楽し気な横島に此方が聞きたい話題に引き込んだ。

「ところで横島くん、君は将来は魔法大学か防衛大学どちらに行くのかい?」

 

「いやー、まだ全然決めてないっす。大学もいければいいなーって思うっすけどね」

 

「将来は氷室に戻るのかい?」

 

「いや、全然決めてないんすよこれがまた。取りあえず高校卒業を目標っすかね」

舞妓さんの踊りに集中しながら軽く答える横島。

 

弘一は横島が将来を全然決めていない事に驚くが、それよりも、氷室家に戻る事自体未定だという事実に、注目した。

真由美の報告によると、横島自体、かなりの能力者だという事だ。その中でも治癒能力、弘一が今まで聞いたこともないぐらい高性能かつ高い能力だった。それが事実であれば、氷室家関係なしで横島単体でも十分価値があるのだ。

 

横島が氷室直系ではないにしろ、横島には相当価値がある。完全に取り込みつつ、氷室とのパイプを持つことが可能ではないかと頭を巡らせる。

心の中では本当にこの少年なのか?と疑問があったものの、そんな葛藤を抑える。

 

 

そして、弘一は次の一手を出す。

「君は恋人はいるのかい?」

 

「いないっすよ!だって見てたでしょ?ナンパも上手く行かないっすからね」

横島はやはり舞妓さんに集中しながら軽く答えたのだが、弘一は内心驚いた。

横島に監視の目を見破られていたのだ。

弘一が付けた監視者は、七草家でも3本の指に入る者だった。それをいともあっさり見破り平然と言ってのけたのだ。弘一にとって横島の評価を見直すに十分な事柄であった。『本物だと』

 

弘一はとぼけながらも、さらに踏み込み攻勢を強める事にする。

「いや、よくわからないが、君は今特定の女性が居ないのか……君みたいな優秀な人間がもったいない」

 

「そうすっかね?」

 

「ふむ、私には息子二人と真由美の他に君の一つ下に、双子の姉妹がいるのだ。どうだね?真由美とは仲がいいと聞いているが、付き合ってみては?」

弘一は核心に迫る。

 

「……真由美さんを道具にするつもりっすか?……にしても双子姉妹か~、真由美さんに似て美人なんでしょうね、羨ましいっす」

横島は一瞬弘一を鋭い目つきで睨むが、直ぐに正面を向き楽し気に会話を続けていた。

 

弘一はその視線に寒気を感じたが、それよりも今のはこの少年にとって悪手であったことを反省する。

 

「まあ、当人がいいと言えばだがね。ははははははっ」

そうやって誤魔化すように笑う弘一。

 

「そんなわけないっすよ!!たはははははっ!!」

横島もそう返した。この頃の真由美は横島を見れば逃げ出すのだ。横島が声を掛けようとすると、そそくさとどこかに隠れるように行ってしまい。明らかに避けられている事に横島は横島であの時の事を謝らなければと思っていたのだ。

当の真由美はいろんな意味で未だに横島が気が気でない様子なのだが……

 

 

 

こうして、七草弘一と横島忠夫のファーストコンタクトは終わる。

 

弘一は、

「流石に老師(九島烈)が見込んだ少年だ。なかなか手強そうだな、しかし、崩せない事はないか」

と横島攻略に手ごたえを感じていた様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横島は弘一と別れ、宿泊先のホテルへ戻る。

 

そして、ホテルの前で……

 

横島は常闇に映える深紅のドレスを着こなしている女性とすれ違う。気にはなっていたがその時は歩みを止めずそのまま通りすぎた。

 

その女性はすれ違った後に妖艶な笑みを湛えていた。

「フフフフフ、見つけたわ」

 




最後のは今は、アレだけな感じです。

と言うわけで次は、論文コンペ当日の京都

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