横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

この話を始めて9ヶ月が過ぎました。
終着も見えてきたように思います。

感想ありがとうございます。
誤字脱字報告もありがとうございます。

今年一発目ですが………
ちょっとアレです。もり下がる展開です。



181話 悪魔の謀略!!⑤横島到着

 

「くくくくくっ娘よ。この魔人形28号で、陵辱の限りをつくしてやる。良い声で泣いてくれ」

ベリアルは巨漢の額にある第三の目の中にスッポリ埋まった状態で、深雪に迫る。

 

「な、なに?…これは夢ではないのですか?…お兄様……、お兄様はどこに?」

深雪はこの事態に困惑しているようだ。どうやら先ほどまでは夢だとでも思っていたようだ。

 

「くっ、深雪」

達也は床に転がったまま、身体を動かすことが出来なかった。

 

 

「タダオ!助けて!お願い!」

リーナは叫ぶ。

 

「横島!早く来て!」

幹比古も続いて横島が来てくれる事を願う。

 

 

 

ベリアルと魔造人間は、リーナと幹比古の叫びにピタっと動きを止める。

 

そして、ギャラリーと化したリーナ達を見据える。

「ふん、横島忠夫か……確かに厄介な存在だ。人間の分際で、余の計画を悉く邪魔しようとする。まあ、今さら来たところで、何も出来んがな。はーーはっはーーーー!」

 

「何よ!横島が来たら、あんたなんか!」

エリカはベリアルに向かって怒鳴る。

 

「くくくくくっ、まあ、しばらくは来る事はできんだろう。余はそ奴とこの娘が離れるタイミングを待っていたのだ。しかも、自ら傷つけるとはおろかなことよ。そのおかげで、時間が稼げ、この娘もうまく誘導することが出来た。運よく、この公園の近辺に居たのものだ」

 

「どういうことだ!」

レオが聞き返す。

 

そのベルアルの発言で達也とリーナは後悔の顔がにじみ出ていた。

達也とリーナが横島と対峙し喧嘩することで、ベリアルは深雪を誘導し、さらう事が出来たのだ。

 

「まあいい、……一つ言っておいてやる。奴は天界の大罪人よ……くくくくくくっ、ざまあない!」

どうやらベリアルは横島のことをよく知っているらしい。

 

「お前、横島の事を知っているのか!?」

「天界?……罪人ってどういうことよ!」

レオとリーナはベリアルに叫ぶ。

 

「奴は必ず滅してやる!!ありとあらゆる苦痛と屈辱を与えてな!!そうでなければ溜飲が下がらぬ!!人間の分際で我らに抗う愚か者めが!!貴様らの次は奴の番よ!!はーーはっはーーーー!貴様らを人質にすれば奴は必ず来る!!今なら、奴を屠るのも簡単だ。いくら策を弄しても無意味、ここでは力が使えないからな、しかも奴は今はどうやら文珠を使えない!!どうあがいても余にはかなうまい!!」

ベリアルは大声で叫ぶ!

 

 

 

 

「俺の事を知っている口ぶりだな目玉野郎、俺はお前を知らないがな」

 

このタイミングでエリカ達の後ろから待ち望んだ声がした。

 

「タダオ!!」

「横島!!」

「横島!遅かったわよ!」

「横島!助かった」

「横島くん……」

「横島……」

先ほどまで絶望の表情であったギャラリーと化した皆と達也は、喜びの声でその名を呼ぶ。

 

 

「ふん、意外と早かったではないか?貴様が横島忠夫だな………こうやって、会うのは初めてだが……余は昔から知っているような気がしてならんぞ」

 

「お前みたいな目玉は知らんな~、素っ裸にマントってどんな変態だ。ゲゲゲハウスに戻って茶碗風呂でも浸かってろ!」

横島は、皆に声も掛けずに、ベリアルにいつもの口調で挑発する。しかしその目は真剣そのものであった。

 

「ふはははははっ、いくら挑発しても意味が無いぞ。貴様はこの図書館内では力を振るえないだろうに……飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ!ダンタリオン!!こいつは侵入者だ!!拘束しろ!!」

 

「…………」

ダンタリオンは本を読んだまま沈黙している。

 

「ダンタリオン!?」

 

「残念だったな目玉野郎!俺はここのゲストなんだよ。昔、この図書館の常連だったんでな、俺はここをよく知っている。まあ、建物の形は随分違うがな」

横島は100年前、天界図書館(全世界図書館)に、斉天大聖老師の紹介で数度訪れたことがあった。

それは、世界分離を行うための知識を得るためであったのだが……

 

「ちっ、侮れん奴め」

 

「で、お嬢ちゃんがダンタリオンだったのか、図書館でよく見かける子だと思ったが……なるほど、お嬢ちゃんがここにいるってことは……天界図書館いや、全世界図書館の管理人というわけか……」

横島はダンタリオンに歩み寄り話しかける。

 

本以外に興味を持たなかったダンタリオンは本を膝に置き、不思議そうに横島を見上げていた。

「そう…です」

 

「そうか、本を読んでいるのに悪いな。すまんが彼らを解放してくれないか?彼らは君やこの図書館を害する意思は無いんだ。ただ、迷ってここに来ただけなんだ」

横島は達也が飛び出すタイミングでここに到着し、様子を伺っていた。

それまでは元始風水盤を探すために、霧の中とこの図書館の館内を駆けずり回っていたのだ。

しかし、元始風水盤を見つけることが出来なかった。直径15メートルはある石造りの大きな遺跡状の物なのだが……

そして、達也が深雪を助けるために飛び出したタイミングでここに到着し、気配をここの空間と同化させ、潜んでいたのだ。

 

 

「…………本を提供してくれたら…いい」

 

「だそうだ!目玉野郎!」

横島は振り返りベリアルを見据える。

 

「ぐぬ……ふははははっ、ダンタリオンそれでは、契約が違う、余は魔界化を解く事になる。となると、全世界図書館は存在が維持できなくなり、この場に長く留まる事ができなくなるぞ。この世界の情報収集はそれ程手に入れてないのだろ?……それは困るのではないか?」

 

「!…困り…ます…………解放できなくなり…ました」

ダンタリオンは困った顔をして、横島にそう告げた。

 

「そうか……だったら、君がこの世界に居られるように配慮するけど、それだったら、誰にも気兼ねなく君がしたいことがこの世界で出来るだろ?」

 

「ダンタリオン!奴に耳を傾けるな!!ブラフに決まっておる!!やつは人間だぞ!!人間にそんなことが出来るはずがない!!」

 

「目玉野郎!!俺は、誰かのためだったら何でもやる。俺の事を知っているのだったら分かるよな……この意味を!!」

横島はベリアルに鋭い視線を飛ばす。

 

「くっ!!人間風情が!!ダンタリオン!!だまされるな!!」

ベリアルは知っている。この男なら本当にやりかねないことを……なにせ人間と妖魔とを両方救うために、全宇宙の禁忌、世界分離を行ったのだから……

 

「……う……うう……」

ダンタリオンは困ったように、横島とベリアルを交互に見ていた。

 

「今すぐに答えを出さなくていいよ。とりあえずゆっくり考えてくれ、その間、俺を自由にしてくれたらいいから……俺の本でも見て考えておいてくれ」

 

「本当?……いいの?……ゆっくり考え…ます」

 

「ダンタリオン!!何を言っている!!」

ベリアルは焦りをあらわにする。

 

ダンタリオンは横島に向かって本を取り出すために手を翳しだす。

 

しかし、先ほどの達也の時と様子が違う……

 

なぜか、本が沢山出てきたのだ……横島の人生はそれほど濃厚であったのだろう……

 

いや、違う。本は全部39冊!!しかも全部コミックだ!!タイトルは何故か日本語で『GS横島極楽大作戦』と書かれている……

さすが横島!横島の歴史もギャグ仕様らしい!

 

「す…凄い!!凄いです!!……まだ、出てきそうです!!……」

表情の起伏がほとんどないダンタリオンが嬉しそうに横島の顔を伺う。

 

「続きは後で、先にそれをじっくり読んだらいいよ」

横島は優しい笑顔でそう言う。

 

「です!…後でまた続きを取りに…来ます」

ダンタリオンは足元に居たライオンに乗っかり、39冊分コミックを器用に両手に積み上げ、「ベットの上でゆっくり読む……です」と言ってどこかへ走り去ってしまった。

 

「ダンタリオーーーーン!!どこに行くーーーー!!」

 

 

 

「で、目玉野郎!!これで、この図書館のガーティアン(リビングアーマー)は俺を捕まえることが出来なくなった!!どうやらお前はガーディアンを扱う権限が無いようだしな!!」

 

この事態において、横島はまず、ダンタリオンと交渉することから始めたのだ。最良はこのまま皆を解放することだが、うまく行かないだろう事は折込済みだ。次には横島を完全にゲストとして扱い。ガーディアンを仕向けないようにすることだった。これで、横島はこの館内で自由に出来る。

横島は、ベリアルとダンタリオン達をもっと観察していたかったのだが、深雪がピンチに陥ったため、出てきたのだ。その間の情報で、この事態の収拾をするために、横島はここまでの交渉は可能だと踏んだのだ。

 

「ぐっ、人間風情がーーーーー!!………まあ良い、貴様は、この図書館では能力は使えん、霊気も使えん状態だ。それで、余をどうするつもりだ?余には自身の配下が居る。まだ、余の方が圧倒的有利だぞ」

目玉のベリアルは目を血管を浮き上がらせカンカンに怒っていたが!!ふと冷静に戻り横島に余裕の態度を見せる。

 

横島はそんなベリアルを無視して、エリカ達の元に歩み寄る。

 

「皆、遅くなった!」

横島はここで漸く皆い笑顔を向ける。

横島はダンタリオンとの交渉の際、飽く迄も、中立な立場を保つため、エリカ達とはつながりが無い程を装っていたのだ。

 

「「「横島!!」」」

「横島くん!!」

「タダオぉ!!」

 

 

「後は任せろ……といいたいところだがな、ピンチには違いない……」

横島はそう言って、床に転がり身体の自由を奪われている達也を引っ張り、エリカ達の方へ、床を滑らすように投げる。

 

横島はこの事態をどう打開するかを模索するが、どう考えても不利なのだ。

『全世界図書館』の影響でこちらは力をほぼゼロ近くに制限され、相手には、戦力がある上に、切り札である元始風水盤まであるのだ。

 

 

「ふん、貴様も捕まえてギャラリーに加えてやろう……、この娘が陵辱されるところでも見ておけ、そして余が身体を奪う様もな……魔人形ども!!そやつをひっとらえろ!!」

すると、ベリアルが乗っている魔造人間(魔人形28号)の後方から、わらわらと、身長2メートル程度の魔造人間が10数体現れ、横島に襲い掛かる。

 

「そうか、魔造人間が出てきた先に、元始風水盤があるのか……」

横島は、魔造人間の攻撃を体術でかわしながら、ベリアルと石テーブルにとらわれたまま深雪の下に歩んでいく。

さすがは霊気が一般人並に抑えられているとはいえ、斉天大聖老師の直弟子である。

パワーはあっても下級悪魔未満の魔造人間程度の攻撃はしのぐことが出来るのだ。

 

「ふん、元始風水盤を知っていたか、知っていたところで意味は無いがな」

 

「こんな出来損ないの死体に頼っているということは、配下の魔族を召還できないからのようだな、おまえ自身は力を失っているのか?………それともベリアルと名乗っていること自体が嘘か?」

横島はそう言って、魔造人間の攻撃を捌きながら徐々に近づいていく。

 

「くくくくくっ、さてな………どうだろうな?」

ベリアルは近づいてくる横島に余裕の態度を崩さない。

 

「深雪ちゃん、今、助けるから、ちょっと我慢してね」

横島は魔造人間達を突破して深雪が拘束されている石テーブルの上に飛び乗る。

 

「………横島さん?これは一体?卑猥なことばかり言うこの気味の悪い着ぐるみはなんですか?お兄様は?」

どうやら、深雪は今の現状がさっぱり分かっていないようだ。

 

横島は、リビングアーマーが先ほど落としていった剣で、深雪を拘束している鎖を鋭い斬撃で素早く斬っていく。

 

最後の鎖が切れたところで……

 

横島に激しい電撃が襲う。

「ぐっ!」

 

「きゃーーっ!」

その余波が深雪にも届く。

 

「くくくくくくっ、横島、貴様が立っている場所は、元始風水盤の端のパーツだ。今、風水盤を制御し、お主に雷を降らした」

 

「「「横島(くん)!!」」」

「ダダオぉ!!」

皆の悲鳴がその後に続く。

 

横島の背中の一部が焦げ、プスプスと煙を上げ、ゆっくりと深雪に覆いかぶさるように倒れる。

 

「おーっと、こんなので死ぬなよ。くくくくくっ、貴様にはいろいろと礼をしなければならないからな……、とりあえず、この娘の身体を奪うまで、おとなしくしていろよ」

魔造人間達が横島を捕らえようと近づいていく。

やはり罠だったのだ。深雪を助けようとする横島を狙っていたのだ。

しかもあの、石テーブルと思われた物は原始風水盤の外縁の一部だった。

原始風水盤の中心はちょうど図書館の中庭に当たる部分となり、外延部は部屋の中へとまたいでいたのだ。中庭への敷居はガラス張りのアコーディオン式の扉となっている。

 

「……深雪ちゃん、ごめん」

覆いかぶさった横島は耳元で深雪に苦しそうな小さな声でそういった後、なぜだか深雪と唇を重ねる。皆やベリアルには見えない角度であった……

 

「ん!?……横島さん…な、なにを!?」

 

「それを飲み込んで……皆にはまだ最後まであきらめるなって言って………」

横島はボロボロの顔で半目ではあったが笑顔を作り、深雪に微笑む。

深雪に何かを口移しで飲ませたようだ。

 

 

そして、横島は魔造人間に捉えられ、深雪からひっぺがされ、ベリアルの元に引きずられる。

 

「くくくくくくっ、さすがの貴様もここでは手も足も出ないようだな!!気分がいいぞ!!実に愉快だ!!」

 

「ぐっ」

 

「ふふふふふふっはーーはっはっーーーーーー!!ついにやったぞ!!余があの横島忠夫を倒したのだ!!はーーーーっはっはーーーーー」

 

「横島が……」

「そんな……」

「横島くん……」

「タダオ……」

皆は絶句する。

 

ベリアルはギャラリーと化した皆に向かい。

 

「ふふふふふふっ、貴様らは実に良い囮であった!!貴様らのおかげで、この男を捕らえることが出来たのだ!!この喜びは貴様らにはわからんだろうがな……くくくくくっ、あの魔界を支配する三大魔神のアシュタロスさえ手玉に取り滅し、さらには魔神72柱内、3柱をも葬った!あの横島忠夫をこのベリアルが捕らえたのだ!!はーーはっはーーー!!」

喜びを全快に高笑いをする。

 

しかし、皆は横島が敗れたことへの絶望の方が大きいため、このベリアルの言葉は耳に入っていなかった。

 

「よぉ、……目玉野郎……俺の負けだ。……俺の事はいい……あいつらを逃がしてくれないか?」

魔造人間にとらわれた横島は僅かに目を開け、ベリアルに懇願する。

 

「ふん……いいだろう。……気分もいい。くくくくくっ逃がしたところで後で絶望の世界が待っているだけだ。……しかし、あの娘は別だ。あれは余の身体とするのだからな」

 

「……なら、俺の身体を使え…、あの子も逃がしてくれ……」

 

「何を戯言を、貴様のような奴の身体など使えん! ……ん?貴様……極わずかだが魔の魂が混ざっているな………くくくくくっはははははっ!!いいぞ、いいぞ!!貴様ーーー!!魂の器も魔神並か!!これならば、直接貴様の身体を頂戴し、我が身と出来る!!あの娘の身体を一時的に支配し、我が身体を産ませるなどと、まどろっこしいことをしなくてもいい!!我が計画が20年は早まる!!

しかも、この身体、うまくいけば文珠をもつかえるかもしれん!!

あのサタンを滅し!!三界制覇も現実味に帯びて来よう!!

……いいだろう!!その娘も逃がしてやる!!但し……貴様の苦しむ様を見せ付けてからだ!!男だとギャラリーが居ないと、いまいち燃えないからな……」

 

どうやら、ベリアルが欲していた身体は魔の魂が混ざっているまたは、血が混ざっている人間を探していたようだ。四葉家は歴史の中で悪魔または半魔などの血がどこかで入っていたのかも知れない。

横島は魔の魂が混ざっている。それは魔族であったルシオラの魂だ……彼女は自分のすべてをなげうって死にかけた横島を助けたのだ。その時から横島の魂には彼女の魂が癒着した状態となったのだ。

 

 

 

そして、深雪は解放され、達也と共にエリカ達と同じように椅子に括られ、エリカと真由美、レオと幹比古の間に置かれ、ギャラリーと化したのだ。

 

 

そして、横島は元始風水盤の一部だった石テーブルの上に寝かされ、杭で手足を貫かれ磔にさせられる。

 

 

「貴様ら喜べ!!こやつの精神を崩壊させ、我が身となった暁には貴様らを解放してやろう!!その前にあの横島忠夫が精神崩壊する様を存分に楽しむが良い!!」

 

「いや!タダオを離して!!」

「横島!!」

「やめて!横島くん!!」

「横島……」

「くそっ、横島!!」

 

 

「くくくくくっ痛みでは無理そうだな……どうやって貴様の精神を崩壊させてやろうか!!仮にも神の罰を受けて、戻ってこられた奴だ!そう簡単にはいかないだろう!!くくくくくくっ」

 

ベリアルは楽しげに横島を見下ろしていた。




横島が今度ピンチに!!

次のサブタイトルは決まってます。
『横島忠夫』です。

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