横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

オリキャラ登場!!
124話から名前は出ていましたが、ようやくご本人登場です。

2話に分けようとしたのですが、話の流れ的に難しかったので、ちょっと長いです。
いろいろ徐々に真相がばれていきます。


179話 悪魔の謀略!!③悪魔の招待

霧に覆われ魔界化した井の頭公園の中で突如として現れた宇宙のすべての記録が収められている『全世界図書館』

 

この施設を守護するリビングアーマーに捕らえられた幹比古、レオ、エリカ、真由美、リーナは広い広間で1メートル間隔で置かれた木の椅子に縛られた状態であった。

達也はというと、完全に気配を絶ち、彼らの救出のタイミングを伺っていた。

 

 

そんななか、エリカ達が拘束されていた広間に、徐々に明かりが灯されていき、視界が広がると、エリカ達以外に誰かがいることが判明する。

エリカ達の10メートル先に、アンティーク調の高級感あふれる大きなソファーにちょこんと濃い紫のゴシックロリータ風の服を着た10歳前後の青い目をした人形のような美少女が本を読みながら座っていたのだ。

さらに、少女の足元には大きなライオンが眠り。後ろには顔の無い執事が紅茶を用意していた。

 

そんな、異様な光景ではあったが、この本棚と本で囲われた広間になぜか溶け込むようになじんでいる。

 

 

そんな中、どこからかバリトンが効いた渋い男性の笑い声が突如、広間に響く。

「ふふふはははははっ、はははははははっーーー、今日は実に気分が良い!」

 

皆はこの声がどこから聞こえるのか、目で追って探す。

 

「ギャラリー諸君!余はここだ!」

渋い声の主は居丈高に自分の位置を指し示すように声を張る。

 

しかし、皆はまだ、その声の主を見つけることが出来ない。

 

「ふははははっ、余のあまりの存在感におぬしら下賎の者には見えぬようだ」

 

 

「ん?……あの嬢ちゃんの頭の上になんかいないか?」

「なにか居るわね……」

「……何よあれ?」

「………うわ~、なんか気持ち悪い」

「ゴルフボール?」

レオ、エリカ、リーナに幹比古、真由美はゴシックロリータの少女の頭の上に何かを見つけたようだ。

 

 

ゴシックロリータの少女の頭の上には……何かが飛んだりはねたりしていた。

 

目を凝らしてみると……

 

目玉にマッチ棒のようなひょろっとした体が生え、そこに、これまたマッチ棒のような手足が申し訳程度生えている。目玉が直径5センチ、体が5センチの全長10センチ程度の奇怪な生き物が居たのだ。……いや、まんま目玉のおやじ……しかも偉そうに真っ赤なマントを背中に羽織っている。

ただ……その瞳は黄金色に怪しく色づいていた。

 

 

「恐れおののけ!!余こそが魔界四大王の一角にして、この世のすべての頂に立つもの」

どうやら、渋い声の主はこの目玉のようだ。その良い声と偉そうな物言いと、この目玉にマッチ棒な体とのバランスが著しく合っていない。

 

「余の名は!!ベリア……ぶっーーー!!」

その目玉がポーズを決めながら自ら名乗りを上げようとしたのだが……

 

「うるさい…です……館内では静かに…です」

ゴシックロリータの少女が自分の頭の上で暴れるこの目玉を、抑揚の無い口調でそう言って無造作に掴み、壁に向かって投げつけたのだ。

 

「ゴバッ!!」

壁に投げつけられた目玉は本棚の角に直撃する。

 

少女はそんな目玉に目もくれずに再び本に視線を戻す。

 

目玉は、ヨロヨロと立ち上がり、飛び跳ねて少女に怒り出す。

「グヌッ、……ダンタリオン!!何をする。余の頭が割れるところではないか!!」

目玉は目玉のサイズと同じくらいのタンコブがプクッと出来上がる。もはやどっちが本体か判らない。

 

さらにダンタリオンと呼ばれたゴシックロリータの少女は自分の履いている赤い靴を目玉に投げつける。

「館内では静かに…です…」

 

ゴンッ

「イタッ!」

 

目玉は赤い靴が直撃し吹き飛ぶ。目玉のタンコブから、さらにプクッと目玉と同じサイズのタンコブが出来上がる。目玉にタンコブが二つ連なる姿は、もはや、みたらし団子。……どこかの団子三兄弟のようだ。

 

「ぐぬぬぬぬッ、調子に乗りおって、余がこの世界を手中に収めたら、見ておれよ。真っ先にあやつを、辱めてやる……」

目玉はその小さな身体で、目玉とタンコブを支える様にヨロヨロと立ち上がり、声を小さくしてぶつぶつと何か喚いていた。

 

 

 

そう、このゴシックロリータ風美少女こそが、ダンタリオン。横島が危険視していた36の軍団をすべると魔界の公爵『魔神ダンタリオン』だったのだ!!

 

そして、彼女こそがこの『全世界図書館』管理者であった。いわば宇宙意思の一端を担っている存在なのだ。

なぜ、その管理者が悪魔の上、悪魔の最高位である魔神を名乗っているのか……

実は彼女自身は悪魔でも、ましては神でもない存在である。

 

彼女は『全世界図書館』の管理者として、宇宙にあるすべての情報を集め、この図書館に記録管理することが使命であった。

そのため、情報を集める事自体が、彼女にとって最優先すべき行為であって、その過程の善悪の考慮などはまったく無い。神の側からすると、時には規律違反になるような行為も行っていた。宇宙に存在するすべてを記録するために、そうでなくては遂行できないものも多くあるからだ。

そして魔神という立場であれば、彼女の行為は特に問題には問われない。何も知らない神に付け狙われる可能性もあるが、彼女自身、他者を害したり、破壊などの行為は一切行わず、めったに姿を現さないことから……穏健派の魔神として扱われ、討伐の対象外となっていた。

 

そんな経緯から彼女自身、自分が魔神などと言う立場に居ることも、さして興味が無い。ただ、『全世界図書館』に情報を記録するために、行動する……

 

さらに彼女は魔神として36の軍団を率いているとある……確かに、彼女の元に軍団にも見える規模の悪魔などが集まっているが……あれは軍団などではない……

彼女のそのゴシックロリータ調の幼い姿、そして立ち振る舞いに心奪われた………その手のマニアが狂信的に付き従っているだけの話なのだ。いわゆるアイドルの私設ファンクラブみたいなものだ。

それぞれの集団(ファンクラブ)の名は、それぞれの趣味指向を掲げた旗を掲げている。靴跡をモチーフにした集団は、彼女に靴のまま踏んでほしいと願う集団。その下位集団旗は、顔に靴跡、尻に靴跡、手に靴跡などをモチーフにしたものがある。………そんなのが36集団あるのだ。

しかも、この連中、下手な軍団よりも結束が固いのだから困ったものだ………

 

彼女本来の支配下のものはまったく別物で、36の軍団はただのファンの集まりに過ぎない。

 

斉天大聖老師がジークに受けた報告にあったダンタリオンの軍団が狂信的に見えたのは……こんな経緯があったからだ。

 

 

このことは、神の最高指導者と魔の最高指導者、その側近の一部しか知らないことだ。

 

 

では、なぜ彼女、ダンタリオンがこの世界に侵入したのか?

それは……この世界の情報を手に入れたかったからだ。さすがの彼女も、神の最高指導者と魔の最高指導者が外郭に結界を張ったこの世界に侵入することは出来なかったのだ。

 

それを何者かの手引きにより、今それが果たされたのだ。

その何者かというのは……やはり、あの目玉……金色の瞳をした目玉なのだろう。

 

彼女は、目玉の手引きにより、彼女の配下のものが、あのUSNAの実験でこちら側の世界に侵入にすることに成功し、そして、配下のものが特殊な専用の召還術儀を用い、全世界図書館ごと召還することで、この世界に侵入を果たしたのだ。

しかしながら、この世界にあのような大規模召還をなせるはずが無い。先ほど語ったとおり、この世界には神の最高指導者と魔の最高指導者が外郭に結界を張っているのだ。

恐らく、この霧で隔絶し、魔界の瘴気に満ち溢れた『場』を用いることで、もしくは、そのような場を作ることが出来る何らかの手段を用いたのだろう。それが横島が語った『あんなもの』でなのであろう。

 

 

その目玉は、立ち上がった後に、近くの本棚によじ登り、2メートルぐらいの高さの場所からエリカ達に向かってマントをひらめかせ、ポーズをとる。すでにタンコブはなくなっていた。

 

「ふふふふっははははははっ、余こそが、魔界の四大魔王が一柱!!魔王ベリアルなり!!余の存在に恐れよ!!絶望し!!そして平伏せよ!!いずれはこの世界の王となるものぞ!!」

 

目玉は改めて、居丈高に名乗りを上げる。どうやら、先ほどのダンタリオンとの一連の喜劇的なやり取りは、無かった事にしようとしているようだ。

 

 

「……なんだあの目玉、偉そうに……魔王?魔界?何言ってるんだ?」

「なんか、誰かに似てない?……あっ!ドクター・カオスに似てるんだ!」

「そうよ!それよ!たぶん、紅公と同じで、きっとドクター・カオスが作った訳がわからない玩具よ!」

「よく、できた玩具ね。でも、好きになれないフォルムね。ちょっと気持ち悪いわ」

「……うーん。意外にストラップとかにすればいいかもしれないわね」

レオ、幹比古、エリカ、リーナ、真由美は魔王ベリアルと名乗った目玉に、全然恐れも絶望もしなかった。

目玉とゴシックロリータ少女が織り成す喜劇を、唖然と見ていただけである。

しかも、あの目玉をドクター・カオスが作った悪趣味なおもちゃか何かと思っているようだ。

 

 

 

「ぐぬぬぬぬっ、何たる無礼!」

こんなエリカ達の態度に目玉はプンスカと怒り出す。

 

「いや~、目玉の玩具に恐れろって言われてもね~」

「目玉に魔王を名乗られても……」

「魔界とか魔王とか漫画やアニメの中だけにしてよ」

「かわいくない」

「なんで、目玉がマントしてんだよ?」

エリカ、真由美、幹比古、リーナ、レオは口々に軽口を言う。

 

「貴様らーーーー!!許さん!!」

目玉なので表情はわからないが、相当お怒りなのがわかる。

なぜならば、目玉だけなのに青筋を立てていたからだ。どういう構造なのか、実に器用である。

 

そして、目玉の頭部?から湯気が立ち上り、目玉の金色の瞳がよりいっそう輝きだし、ビームが発射されたのだ!!

 

ビームはエリカとレオの間を通る。

 

エリカ達の後ろにあった本棚はめちゃくちゃに破壊され、ビームの余波でレオの頬には一筋の傷が出来る。

 

その光景に幹比古と真由美は青ざめる。

 

「何すんのよ!!」

「いてーじゃねーか!!」

「あんたなんか、タダオがきたら一ひねりなんだから!!」

エリカとレオとリーナは逆に目玉に睨み返していた。

 

 

しかし

 

「本を傷つけるのは禁止…です……騒音も禁止…です」

そう言って、ダンタリオンは容赦なく目玉に向かって、フォークやらティーカップにポットなどそこらじゅうの物を投げつけた。まあ、当然の結果ではある。

そしてそのすべてが目玉に直撃する。

 

「イタッ!何をするダンタリオン。こやつらに教育していたまでだ!イタッ!うくくくっ、もうせぬ。だからやめろ!グボン!!」

 

目玉は言い訳を言うが、ダンタリオンには通じない。ついにはフォークが目玉に突き刺さる。

 

「カペペ…ペペ…ぐぬっ、覚えておれ、ダンタリオン。いつかはそのきれいな顔を羞恥と恐怖の色で染めてやる……」

目玉はダンタリオンに聞こえない位の小声でそういいながら、フォークを目玉からズボッと抜き放つ。

華奢な外見の割りに意外と丈夫な奴である。

 

そして、ぜぇぜぇと息を切らしながら、エリカ達を見据える。

 

「これでわかったか、余の恐ろしさを!」

 

……ビームの威力は分かったが、それ以上に、この目玉の恐ろしさより、ダンタリオンに逆らわないほうが良いことがよく理解できただろう……

 

「貴様ら、自分の立場がよく分かっていないようだな。貴様らは捕まり、一方的に虐げられる存在だ。……ここはな、見ての通り図書館だ。魔界…いや『全世界図書館』……すべての存在がこの図書館に入った瞬間、貴様ら人間のような虫けら同然のような霊力や魔力、気も制限される。……この図書館内では本を読む程度の力しか発揮できなくなるのだ。そう、神や魔神ですらもだ。

……但し例外がある。ここの管理者であるダンタリオンとその配下のもの、そして、ここの司書官に任命されたものだ。まあ、階級によって力は制御されるが……余も、涙をのんで、司書官の立場に甘んじている……これがどういうことかわかるか?……貴様らの存在は!!この余の気分しだいでどうとでもなるということだ!!そして助けなどこない!!来たとしても貴様ら同様、霊気が制限され、余の前に傅くことになるのだ!!ふふふふはははははっはーーーーー!!」

 

この目玉が言ったことは事実だ。

この『全世界図書館』の中に入った存在はその霊気、魔力、気を著しく制限される。本を読むだけの力しか残らないように……それは宇宙の理と同じく、そう言う法則になっているのだ。

強力な神であろうと、魔神だろうとそれにはあらがえない。

但し例外はこの全世界図書館を管理しているダンタリオンとその配下、この図書館の関係者にダンタリオンに認められたものだ。

 

エリカ達が魔法を使えなくなったのも、身体が重く普段のように動けなかったのもこの影響だ。

 

ちなみに全世界図書館の外で魔法が使えなくなったのは、霧の中の魔界の瘴気で、プシオンがコントロールがうまくいかなかったからで、全世界図書館とは関係が無いまったくの別の要因である。

 

「目玉のくせに何言ってるのよ!」

「意味がわからねー事言いやがって、こんな縄さえなければ」

「なによ。それがどうしたというのよ」

エリカとレオとリーナは怯むこと無く、目玉を睨みつけていた。

彼女らは目玉が語った話が理解できていないからだ。

それは致し方が無い事だろう。神や魔神、魔界、そして、世界図書館などという、人智をはるかに超えた内容の話なのだから。

かろうじて理解しているのは、自分達がとらわれの身で立場的に弱い事だけだ。

 

「なんだ。その反抗的な目は……うむ、愚鈍な貴様らには、言葉だけでは理解できないようだな」

目玉はマッチ棒のような手をパンパンと2回鳴らす。

 

 

するとすっと暗闇から人間の男がすっと現れ、手のひらを上にする。

そして、その目玉がちょこんとその手のひらに乗っかり、エリカ達を見据える。

「このものはかつての貴様達の同胞よ。余の力で、この者は既に余の忠実なしもべにして余の手足となった。そして貴様らの未来の姿よ!……これで理解できただろう。ククククククッ、貴様らをどう料理してやろうかと、今から血が滾る……しかしまだだ」

 

その男は目玉を自らの頭の上に載せる。

 

そして、ようやく、エリカ達に焦りの色が見え出してきた。既に先ほどのような余裕は一切見られなくなっていた。

特にリーナはかなり狼狽していた。

 

「ジョン?…ジョン少尉………」

その男はかつて、スターズでリーナの部下だった男だ。USNAの実験後行方不明になっていた人間のひとりだったのだ。

しかも、ジョン少尉の額には金色の第三の目が開かれていた。

そう、エリカ達はようやく理解しだしたのだ。今まで戦ってきた悪霊の親玉が、この目玉であることに……悪魔の長、すなわち悪魔の王と名乗ったのも、あながち、冗談ではないことを……

 

「貴様らが、今まで戦っていたのは、余が遣わせた下っ端悪霊どもよ。余はそやつらの主である!!……くくくくっふははははっ、その表情……ようやく理解してきたようだな下等生物ども。その顔よ。そう言う顔が余はみたかったのだ!!」

目玉はエリカ達の余裕の無い表情を見て、高笑いをする。

 

そして、目玉は改めて名乗りを上げる。

 

「余は貴様ら人間が遠く及ばぬ存在。貴様らが言う高次元生命体……数多の悪魔の頂点に君臨する魔神にして、魔界四大王の一柱!!ベリアルである!!この世界の王になり!!貴様らの主となる存在だ!!」

 

この目玉、ただの悪魔ではなかった。ベリアルと名乗ったのだ。

 

もしそれが本当であれば最悪だ。

 

ベリアル……あのルシファーに次ぐ堕天使であり、悪魔としても強力無比な存在。魔界では王の権限を持つ存在。……そして、人間が思い浮かぶ悪魔の所業をすべて行ってきた悪魔中の悪魔なのだ!

関わった人間をすべて犯し、辱め、蹂躙し、人としての尊厳を徹底的に壊し、それを自らの快楽とし殺していく。

ベリアルについて、こんな伝承が残っている。

自らの娯楽、快楽のために、とある村を獣姦だけしか出来ないように、精神コントロールをかけ、その村は子孫が残せず全滅。とある村は男同士でしか快楽を得られなくする精神コントロールを掛け、男色の村にし、子孫が残せず全滅させたのだ。もはやありとあらゆる目をふさぎたくなるような所業を積み重ねてきた最悪の悪魔なのだ。

 

しかし、本来のベリアルは一見美青年であったはずだ。それがなぜ目玉だけに?

 

それはさておき、この魔王ベリアルがこの世界にダンタリオンを手引きしたのは間違いないようだ。

ダンタリオンはこの世界の情報を欲していたのを利用したのだろう。

 

しかし、この魔王ベリアルは、なぜダンタリオンを手引きしたのか?

どうやって、これほどの魔界化を起こす場を作ることが出来たのか?

なぜ、このタイミングで仕掛けてきたのか?

最終目的はこの世界の支配なのだろうが……なぜ、ダンタリオンを必要としたのか?

まだまだ、なぞが残る。

 

 

 

「ふふふふっ、困惑した顔、実に良い。徐々に恐怖を植えつけてやろう。……しかし、それはまだだ。今日は実に良い日である。貴様らはそれを目撃するギャラリーとして、ここにいるのだ。喜べ、貴様らにはまだ手だしはしない」

目玉…いや魔王ベリアルはジョン少尉の頭の上に乗り、エリカ達の正面やく12、3メートル付近の明かりがともっていない場所へ移動する。

 

そして、その場所に明かりがともりだす。

すると、石で出来た大きなテーブルの上に人影が仰向け寝かされている姿が見えてきた。

 

その人影は……深雪だった。

深雪は、石のテーブルの上で、足枷と手枷をはめられ鎖で引っ張られるように大の字状態で拘束されていたのだ。

 

「深雪!!」

「深雪さん!!」

「くっ、目玉野郎!司波に何をした!!」

 

 

「ふふふっ、くくくくっ、安心しろ、今は寝ているだけだ。……今はな」

目玉もベリアルは嗜虐的な笑い方をする。

 

 

「深雪をどうする気!」

「……くっ」」

 

 

 

 

達也は先ほどから、この広間で繰り広げられる目玉とゴシックロリータ美少女の喜劇に似た何かと、仲間の状況を、気配を消し、彼らを助ける算段をしながら様子を伺っていたのだが……

 

突如として思わぬところで深雪が見つかったのだ。

深雪は魔王ベリアルに意識の無い状態で皆とは明らかに異なる待遇で拘束された状態であったのだ。

達也は深雪のこの状態に憤りと焦りで今にも飛び出したい感情を必死に抑えていた。

 

同じ広間で、ちょこんとソファーに座り、本を読んでいるゴシックロリータ美少女、ダンタリオンは魔王ベリアルとエリカ達との会話にまったく興味がないのか、見向きもせずに手元の本に視線を落としたままであった。

 

 

 

 

 

少し前……霧の外では……

 

(神と魔の最高指導者が結界を張り、封印を施したこの隔絶した世界で、魔界化が起こるなんてことはありえない。……が、実際起こっている。しかも、霊能力者の血と霊気を悪霊たちは奪っていた。あれはあの装置を機動するために必要なもの……間違いない『元始風水盤』だ。あれであれば隔絶した世界だろうが、魔界化現象を起こせる。……100年以上前に、二度と起動しないように破壊されたはずだ。……そう思っていた。しかしどういう経緯か分からないが修復され、日本にある……これは相当、手の込んだ準備と戦略が練りこまれている。……非常にまずい………)

 

『元始風水盤』

次元や時流、気の流れを変更できる古代遺跡のような巨大な風水盤状の装置。

宇宙の造物主が作成したとされる。宇宙創成に関わる装置といわれている。

100年前、一部の魔族の策略により、アジア全体を魔界化するために起動された事件があった。

当時の横島達の仲間やドクターカオスとマリアの活躍で事なきを得たのだ。

あの後、元始風水盤は神の勢力によって、封印または破壊されたはずだったのだ。

 

これを利用すれば、世界の理すらも書き換えることも可能なのだ。

 

但し、起動には霊能者の血と霊気が必要なのだ。

造物主は何をもってそれを起動キーとしたかは分からないが……神や魔ではなく、人間のものが必要だったのだ。

 

霧の中で、エリカ達を拘束し、いろいろと暗躍していた目玉、いや魔王ベリアルが、元始風水盤を手にいれ、修復し、設置したことは確かだろう。

 

 

横島は目を瞑ってから、決心したような顔をし、携帯端末を取り出し、伝言を録音する

現在、この周囲は通信できない状態だ。横島は携帯端末を自らが作った式神に乗せ飛ばす。

通信可能範囲に式神が到達すると携帯端末から録音した伝言を誰かに発信するつもりなのだ。

 

 

そして、横島は夜空を見上げ、力いっぱい叫ぶ!

「小竜姫様!!見ておられるのでしょう!!お願いします!!俺に力を貸してください!!俺はこれから、霧の中に入ります!!霧の外の事をお願いします!!」

 

その後、横島は十文字克人の下に歩み。

「十文字先輩、六道家にこの事を、緊急事態だと伝えてください。きっと助けになってくれます。それと、これを渡しておきます……この玉は、先輩の守りたいと思う心に、反応し……先輩の防御魔法を寄り強固にしてくれるでしょう。いざというときに使ってください」

横島はそう言って、記憶喪失時に作り、ストックしてあった劣化文珠の一つを十文字克人に渡す。

 

「わかった。横島……やはり行くのか」

 

「はい、皆を連れ戻しに行きます。後はお任せします………『解禁』」

横島は十文字にそう言ってから、静かに自らの封印を解く。

霊気の嵐が横島を中心に吹き荒れる。

 

「くっ……なんて気迫だ。……これが横島の……本当の力か…」

 

横島は劣化文殊を空に6つ飛ばす。文殊は霧の外郭を六芒星を描くような配置に飛んで行き、地面へと落ちる。霧が広がると起動する強力な結界陣を準備したのだ。

 

そして……

「行ってきます」

 

横島は霧の中へと消えていった。




ついにダンタリオン登場!!
そして……ダンタリオンを裏で操るベリアル登場!!

そして、話は進んでいきます。
喪失編、来訪者編、さらには横浜騒乱編で、回収されていない事項を次々と明らかになっていきます。

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