すみません。お返事が遅くなっておりまして、休日にはまとめてお返事させて頂きます。
誤字脱字報告ありがとうございます。
遂に横島第一高校復帰!!
そして、千葉家へ!!久々にあの人登場!!
「横島、話があるんだけど」
「何だエリカ、改まって?」
レオを治療した翌日、横島第一高校復帰初日の昼休みである。
横島が学校に現れた際、当然クラスメイトは驚いた。いや、横島復帰は一瞬で学校中に広まり、学内生徒全員が驚いた。
横島が行方不明となって11月から、3か月半、横島死亡説はまことしやかに学校中で囁かれていたからだ。
それは不名誉にも新たな代名詞が付け加えられることになる。チカン、変態、ナンパ野郎……そして、ゾンビ横島と……
しかし、それだけではなかった。横島はこの後しばらく、男子生徒限定だが殺意の対象となる。
陰では「横島死ね!」「横島もげろ!」「横島呪殺!」「横島爆殺!」など、不吉な言葉が男子の間で何かの合言葉やキーワードの様に囁き続けられる事になるのだ。
「例の契約の件よ、ちょっと顔貸しなさい」
エリカは機嫌が悪そうだ。
「別にここでもいいんじゃない?まさか……いい返事がもらえなかったのか?」
ここには美月と幹比古とエリカ、横島が座って昼食を取っているのだ。契約の話を皆知っているメンバーしかここにいない。特に不都合が無いはずなのだ。………しかし、何時ものメンバーとは異なる、この場に似つかわしくない人物がここで、エリカをイラつかせるような行為を堂々と行っていたのだ。
「…………ちょっとあんた!横島から離れなさいよ!!私はそいつと話があんの!!」
エリカは遂にその人物に怒りを爆発させる。
「嫌よ!エリカに言われる筋合いはないわ」
リーナが昼食中も横島の腕に嬉しそうにべったりとくっ付いて離れないのだ。
いや、昼休みだけではない。始業前、さらには、授業の合間の休憩時間までも、一科生A組からわざわざ二科生のE組にまで来て、横島にこの時代にあるまじき過剰なスキンシップを行っているのだ。
男子達は涙を流しながら、その様子を見、横島に殺意を向けるのであった。
「横島!!あんたもニヤケてないで、どうにかしなさい!!うっとおしいのよ!!」
「何を言っているのかなエリカ君……決してニヤケて何て居ないぞ!柔らかいものが当たっているからとか、そんな事ではこの横島!心は動かない!!桃が二つ、いや、マシュマロが二つ、当たって気持ちいなどとは決して思っていない!!エリカより、立派なものをお持ちで何てことは決して思ってなどいない!!」
そう、リーナは横島の腕を取り、体ごと抱き寄せているため、胸部に実っている立派なマシュマロが二つ、横島の腕に押し付けられ、少し動くだけで形が変わって行く状態だった。
勿論、横島は我慢しようとしているのだが、ニヤケ顔は隠せていなかった。
その横島の発言で、周りで昼食を取っている男子生徒は一斉に立ち上がり、横島に殺意がこもった視線を送り、あるものは呟き、あるものは嘆き、あるものは悲しみ、そして皆、呪いと殺意と害意のこもった言葉を吐き続ける。
「横島ーーーーー!!そこに直れ!!」
エリカが切れて、横島に殴り掛かかる勢いで、怒鳴りつける。
「ちょ、エリカ!まったーーー!!リ、リーナも少し離れて」
「リ、リーナさん。さすがに、横島さんも困っているし、学校では秩序のある行動をしないと……一応、横島さんは風紀委員でもあるし」
「そ、そうなんだ。横島は風紀委員なんだ。だから、皆の手本とならないといけないんだ」
美月と幹比古はエリカの我慢の限界と、周りの殺意に耐えかねて、リーナを説得にかかる。
「郷に入っては郷に従えと言うものね。日本は堅苦しいところね」
二人の説得のかいもあり、リーナはそう言って横島の腕を離すのだが、ぴったりと横に付いたまんまではある。
「ちっ、まあいいわ。今日の放課後、あんた家に来なさい。契約の件よ……当主があんたを見て決めると言っているわ」
「俺を見てって……なに?一昨日の内容と現状の説明をしたんだろ?」
「……説得しきれなかったのよ。千葉家ではあんたの事をよくわかっていないし……それに、私は……」
エリカはさっきとは打って変わって、自信なさげに横島に簡単に状況を説明し、最後は俯き様に小声になる。
エリカは現当主の妾の子だ。立場的にも弱いはずなのだ。
「わかった。取りあえず俺が行って、説得すればいいんだな」
横島はそんなエリカを見て、直ぐに返事をする。
「エリカの家って剣術道場なんでしょ?私も興味あるからタダオについて行く」
リーナは当然の如くと言う感じで横島について行くつもりのようだ。
「あんたは来なくていい!!」
「リーナ、流石にそれは不味い。今はまだ、協力関係に無い状態だ。今回は我慢してくれ」
横島は本日初の真面目な顔になり、リーナを説得する。
「……わかったわ。でも、タダオと今度、二人っきりで東京観光に行きたいわ」
「そ、そのうちな」
放課後、エリカは千葉家へと横島を連れて行く。
幹比古と美月、退院し午後から学校に顔を出したレオも状況が分からないまま連れてこられていた。
幹比古は、正式な協力者である吉田家の立会人としてという明確な立場がある。
レオは、一応千葉家の門をくぐった事のある門人扱いでエリカの同行者として……
美月は……
「エリカちゃん、やっぱり私なんかが来てよかったのかな?場違いだと思う」
「美月、そんな事を言わずにお願い!一緒に来て、私の部屋に居てくれるだけでいいから……横島とこいつ等だけだと不安で仕方が無いのよ」
「ふん、頼りなくて悪かったな」
レオは憮然とする。
「僕は吉田家からの正式な立会人だから、余計な事は言わないよ」
「たはははははっ、エリカ~心配し過ぎだって、何とかなるって」
横島は頭の後ろで両腕を組、鼻歌交じりにそんな事を言う。緊張感の欠片も無い。
「特に横島!!あんたが一番心配なのよ!!余計な事をしたり、言ったりしないでよね!!……なんでこいつにトップ何てさせる羽目になったんだろ?達也君め!」
エリカは何時もの調子の陽気な横島を見て、不安で仕方が無い様だ。ここに居ないこの協力体制の発案者である達也に恨み節である。
エリカは知らない。横島は交渉術も優れている事に……100年前、ドロドロと欲望が渦巻く人間社会や、刹那的な考えを持つ妖魔の社会を取りまとめようと数多くの交渉を行ってきていたのだ。結局は決裂してしまったが……
「でか!!しかもひろっ!!エリカんち超金持ちじゃん!!東京の一等地に何これ!!ぜったい悪い事している系だ!!」
エリカの家の前でその敷地の広さと巨大な門構えにはしゃぐ横島。
他のメンバーは何度かエリカの家に来ている上に、みなそこそこ金持ちなため、横島のようにはしゃぐことは無いのだ。
100年前の1990年代の日本の庶民感覚がしみついている横島とのギャップが激しいのは致し方が無いだろう。
「……」
エリカはそんな横島を澄ました顔でスルーする。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさいませ、エリカお嬢様」
「お客人をお連れしました。御父上様と兄上様方は、どちらに?」
「奥道場の客間でお待ちしております」
「ようこそ、お越しくださいました。吉田様、西城様、柴田様、横島様」
家人と思われる女性がエリカと挨拶と言葉を交わした後、横島たちに挨拶をする。
幹比古、レオ、美月は慣れた様に軽く会釈をするのだが……
「なにーーーーーーー!!エリカお嬢様!?お父上様!?兄上様!?ってなんだーーーーーーー!!レオ!!エリカがおかしいぞ!!拾い食いでもしたんじゃねーーか!?」
横島は何か得体のしれない物を見るような目で、お嬢様然と上品にふるまうエリカを見て、叫びだした!
仮にもエリカは東京でも大家である千葉家のご令嬢である。家ではしっかり猫を被っているのだ。
「横島、落ちつけって、エリカはああ見えて千葉家の次女なんだよ。そりゃ、作法もちゃんとして当然だよ」
「えーーーーっ!!でも、アレ?その?えーーーーーーっ!?」
エリカの余りの豹変ぶりに横島は混乱している様だ。
エリカは、上品にふるまっているが、口端をヒクヒクさせている。
美月は、その様子に苦笑するしかなかった。
レオは笑いを我慢しているが、完全に漏れている。目には涙まで溜めていた。相当ツボに入ったようだ。横島ナイスという声と潜み笑いが交互に聞こえてくる。
エリカを先頭にその後に美月、幹比古、横島、レオと大きなお寺のような作りの家の長い廊下を歩くのだが、横島は先ほどのショックから立ち直っていない様で、ブツブツと「エリカがお嬢様」と繰り返し、その後ろでレオが腹を抱えて、「横島、笑い殺す気か」と笑いをこらえている。
廊下の角に差し掛かると、剣道着袴姿の若い女性がお辞儀の体勢で待っていた。
「お客人。少々此方でお待ちください」
「私は着替えてくるから、そこで待っていて……美月行こ」
そう言って、エリカはその女性を気に食わなさそうに一瞥してから美月を後ろに、この場から立ち去る。
若い女性はお辞儀を解き横島に気軽に声を掛けてきた。
「久しぶりだな。横島。元気そうで何よりだ」
「あれ?摩利さん?なんでここに?」
「私も千葉道場の門人なのでな、こうやって、出迎える役を仰せつかったのだ」
「摩利さんの袴姿めちゃ似合ってますね!なんだろ?なぜか艶めかしい……」
若い女性は道着袴姿の渡辺摩利だったのだ。
「お前は相変わらずだな。まあいい、取り合えずそこの部屋に横島は入ってくれ。吉田と西城はちょっと待っててくれ」
「うーん、わかった!確か道着と袴の下って、下着を履かないんだ!という事はパ、パンツも!?………摩利さはーん~~僕は僕はもう!!」
横島は摩利の話など聞いていない。久々の摩利、しかも道着袴という出で立ちに興奮し遂に暴挙にでる。ルパンダイブよろしく、横島ダイブで摩利に飛びついたのだ。最早摩利に対しての恒例行事と言っていいだろう。
「ちょうどいい、お前はその部屋にでも入っていろ!!」
摩利はそう言って、横島ダイブをかわしながら、襖を開け横島をその部屋に蹴り入れた。
「ぐへっ!この感覚久々っ!!やっぱり摩利さん!!」
横島は摩利に蹴られ6畳ほどの和室に放り込まれ、畳の上にうつ伏せで潰れたカエルのような恰好になる。横島ダイブは摩利への挨拶みたいなものだ。漫才のボケとツッコミの関係に近いものがある。
しかし恒例はこれだけではなかった。
横島がうつ伏せ状態からふと上を見あげると、この狭い和室に、2mはあろうかというガタイがいい大男が二人並んで腕組をし、仁王立ちで横島を見下ろしていた!
二人共この道場の家人なのだろう。道着に袴を着ている。しかし何故か道着は引きちぎられたように両袖が無く、そこからはムキムキの腕が……そして、どう見ても道着のサイズがそのガタイに比べ小さく、ピチピチなのだ。中にはインナーを着ていないため、ムキムキ黒光りした胸筋腹筋がピクピク蠢いているのが見える!
「たははははっ、部屋間違えちゃったかな?たはったはははっ、しっつれいしましたーーー!!」
横島は大男たちの怪しい威圧感に顔面から血の気が引くのを感じ、この場をうつ伏せのまま、カサカサとゴキブリの様に放り込まれた襖から逃がれようとしたのだが……
「ふっふっふーっ、どこに行かれるお客人。服を脱いでもらおうか!!」
物凄い低い声で右のチョビ髯マッチョ家人がそう言いながら、逃げようとする横島の制服襟首をムンズと捕まえ、持ち上げられたのだ。
横島は襟首を掴まれたまま、ギギギと首を回し、襖入口先、部屋外にいる摩利に涙目で助けを乞う様に訴えかける。
「ままままま、摩利さん?こ、これは?」
「うむ、着替えが済んだら呼んでくれ」
無慈悲にも摩利は一瞬ニコッ笑い襖をぴしゃりと閉めたのだ!!
「いいいいややーーーーーー!!摩利さ――――ん助けて!!もうしないから、横島もう飛びつかないからーーーーー!!幹比古、レオーーーーー助けてーーーー!!」
数分後……
部屋は最初の頃は叫び声などが響いていたが、途中からは静かになっていた。
幹比古とレオはただの着替えだと摩利に言われていたため、その場で苦笑しながら待つしかなかった。
再び、横島が放り込まれた部屋の襖が開く。
「しくしく、横島穢されちゃった」
涙を流している横島が立っており、その後ろに満足そうにマッチョズが仁王立ちしていた。
「ほう、馬子にも衣装だな……なかなか似合っているではないか」
摩利は道着袴姿に強制的に着替えさせられた横島を見て感心したように言う。
「グスッ、摩利さん酷いやーーい!せめてその胸で泣かせてーーーー!!」
部屋から廊下に居る摩利に横島ダイブで再び飛びつく。さっき自分でもうしないと言っていたが早速、破っている。
「いい加減にしろ!」
摩利の肘打ちが横島の脳天にさく裂。
「ぐへっ」
横島は廊下の床に叩きつけられる。
「……たく、お前は本当に、変わってないな」
摩利はそんな事を言いながらも、楽しげだ。
そこに、若い男の声が聞こえてきた。
「摩利、あまり当家の客人に手荒な真似をしないでくれよ。いくら仲がいい後輩だからといって」
そして、そっと摩利の肩に優しく手を置く。
「シュウ!その……これは、その」
摩利はその男の顔を見て、明らかに顔を赤らめて動揺している。
「!!……なんだこの爽やか系超イケメンは!!」
横島はガバっと起き上がる。
「横島!!騒ぎを起こすなって散々言ったのに!!…………修次兄様……ちっ、渡辺摩利」
そこにこの騒ぎを聞きつけ、道着袴に着替えたエリカが戻って来た。
「エリカ、口が悪いよ」
摩利にシュウと、エリカに修次兄様と呼ばれた若い男は、エリカに注意をする。
そう、この爽やか系イケメンこそ、千葉家当主の次男、現在20歳にして、「千葉の麒麟児」「イリュージョン・ブレード」の異名を持つ、世界的にも名が通っている達人、千葉修次(なおつぐ)その人なのだ。
そして、エリカの腹違いの兄にして、渡辺摩利の恋人でもある。エリカは兄修次を慕っており、摩利が恋仲であることに苛立ちを隠さず、摩利自身を毛嫌いしていたのだ。
「あの摩利さんがなんか乙女みたいになってるぅーーー!!やい、そこのイケメン!!摩利さんのなんなんだ!!」
「始めまして、横島くん。君には感謝を何度言ってもたりないぐらいだよ。何度も摩利の窮地を救ってくれてありがとう。……僕は、エリカの兄で千葉修次……摩利とはその、恋人どうしなんだ」
修次はさわやかにそんな横島に頭を下げた後、照れ臭そうにそう言った。
「シュウ、皆まで……」
摩利は顔を真っ赤にして照れている。
「うが―――――!!摩利さんがデレてるっ!!なぜだーーーー!!摩利さんに恋人だとーーーーゆるさん!!」
「横島、ちょっとは落ち着けって、修次さんは若くして、免許皆伝なんだ。指導者としても一流なんだ」
幹比古は横島を苦笑しながらも止める。レオは横でこの光景をみて笑いを我慢している。
「くそっ、やはり世の中はイケメンで回っているのかーーー!!なにか?指導者の立場を利用して、摩利さんにその毒牙を!!ゆるさーーーーーん!!」
横島の雄たけびは留まる事を知らない。
「そうよ!修次兄様を弟子の立場から誘惑するなんて!!この女は許せない!!」
何故だかエリカはそんな横島に呼応して、同じような事を叫ぶ。
「エリカ!摩利にそんな言い方は無いよ!!」
修次はエリカに間髪入れずに注意をする。
「だって、修次兄様……この女に騙されてます」
「落ち着け!!お前に許されんでもいい!!」
摩利は横島の頭に拳骨をかます。
「くっ、だって~~~イケメンがイケメンがオラの村から娘っ子を奪ってくだ~~」
もはや、収拾がつかなくなっていた。
「おーい、お前ら~なにやってんだ?おやじ殿が痺れ切らしているぞ~」
そこに、へらへら顔の20代中頃の男がやってくる。
しかし、そんな言葉は誰の耳にも届いていなかった。
「おーい、聞いてる?」
うだつの上がらないこの男こそが、千葉家次期当主にして、現当主の長男。警視庁の警部千葉寿和なのだが……威厳が全くない。
「修次~、エリカ~、摩利ちゃんに、幹比古君と西城君~、あとそこの君~、って……聞こえているよね~……まさかの無視??」
まだ、千葉家に来て、少ししか経っていないのにこの調子だ。この先どうなる事やら……
この頃、ほのかは……
今回の事件の蚊帳の外に居た。
横島復帰を聞いていたのだが、この日も生徒会が忙しく、横島とまだ会えていなかった。
そして、不穏な噂を聞いていた。
横島は行方不明中にナンパをしまくり遂に恋人が出来たとか………
さらに、クラス男子が全員、横島に殺意を持った言動を繰り返し、口にしていたのだ。
「横島さんに恋人?……調べなくっちゃ!!雫があっちで頑張ってるのに、私も何とかしてあげないと!」
ほのかは張り切って、この件を調べようとしたのだが、翌日には早々に事の真相が発覚するのだった。
ちょい、長くなっちゃいました。
次は千葉家その2です。
修次め!!ついに登場(泣)
マッチョズは人情派鑑別官と同一人物なのだろうか?