横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

遅くなりましてすみません。
ギャグ無しの込み入った説明回……つなぎ要素しかない回といいましょうか……

今日もう1話更新する予定です。



146話 横島、しぶしぶ提案を受け入れる!!

 

広めの会議室半分は、横島を雇う権利をめぐって、リーナ、真由美、エリカの言い争いの場…いやある意味修羅場と化していた。

 

 

「横島、そいつらはほっとけ、話を進めるぞ」

十文字克人は会議が始まった時と同じで、何時もの威圧感のある雰囲気を保ったままだ。

 

「す、すみません。……エリカはいつも通りの気がするけど、真由美さんまでなんで?」

横島はこんな事を平然と言う。真由美が言い争いの中に入っている原因は横島にあるのだが、本人はそんな事は欠片も思っていない。

 

「横島、我々でも、対抗手段があるような事を言っていたが、どういうものだ」

達也に悪霊が見えるか見えないかの質問をする前の横島の言葉を指して、十文字克人は質問する。

 

「見えなきゃ対抗手段も無に帰す可能性があるのですが………対霊障、対悪霊、対悪魔用の道具があるのですよ、氷室には多数あります。東京だと六道家なんかは持っていると思いますよ。また、古い神社やお寺なんかにその意味も分からずに持っているかもしれませんね」

 

「そんなものが存在するのか………」

達也は驚きつつ感心をする。

 

「なるほど、それを僕らが持つことによって対抗できるんだね」

 

「いや、多分難しい。お守り代わりや、防御が関の山だ。悪霊や……特に悪魔に関しては知識が相当必要だ。悪霊、悪魔の種類やその属性を正確に把握していないと、手痛い反撃を喰らう。一つのミスがそのまま死に直結するんだ」

 

「……確かにな。我々や、特に七草の家人は魔法師としてはレベルの高い人間が反撃も出来ずにやられていたからな。相手をよく知らずに戦うのは無謀という事か……戦闘の基本なのだが、俺も少々焦っていたのかもしれん」

十文字克人は横島の言葉に今までの十文字家、七草家の行動に反省している様だ。

 

「だから、俺に任せてもらえませんか?」

横島は再度皆に言う。

 

「………横島さん、もし横島さんが居なかったら、私達はそのまま、何もできずに吸血鬼、いえ悪霊にやられていたということですか……」

 

「いや……六道か、氷室が内務省または宮内庁経由で依頼を受ける可能性が高い。しかし、まだ動いていない事から見るとなにやら、国内部で縄張り争いがあるのかもしれませんね」

 

「ん……そうか。六道か……横島、六道もやはり、陰陽師なのか?」

十文字克人は唸る。その縄張り争いの一角を自分たち十師族がかんでいるからだ。正確には軍閥とエリカたちの警視庁がかんでいる。しかも、六道と十師族含む魔法協会は犬猿の仲で、特に七草家とはいつ小競り合いが起きてもおかしくない状況なのだ。

 

「はい、氷室より、ずっと昔から続く陰陽師の家系です。それこそ平安時代から続いているはずです。六道歴代当主は悪霊や悪魔に絶大な力を発揮します。今の当主には会った事は在りませんが、本気を出せば、誰も手が付けられない存在であることは確かです」

 

「でも、僕は六道は式神使いだと聞いているけど……あれで悪霊を倒せるんだったら、古式魔法師の式神でも、警察組織が抱えている古式魔法に精通した部署もあるし、それで戦えるんじゃない?」

幹比古は、六道の事を噂程度は知っているようだ。

幹比古が言う古式魔法師が使用している式神は、陰陽術の簡易式神の一種に分類される。現代魔法師からは化成体と呼ばれ、サイオン塊と幻影魔法を組み合わせ、肉体を持っているかのように見せたものだ。勿論戦闘や偵察、尾行にも使われる使い勝手の良いものではあるが、六道家当主が使用している式神はそんなものではない。

 

「式神…化成体が対抗手段となりえるのだな」

達也も化成体とは、何度も対峙している。

 

「確かに、簡易式神でも悪霊に対抗できる強力なものもあるが……六道家当主の式神は本物の式神だ……言い方を変えると本物の鬼を使役している」

 

「鬼ですか。お兄様そんなものが本当に存在するのでしょうか?」

 

「……俺にも知らない事がまだまだあるという事だ」

 

「深雪ちゃん、現存する本物の鬼の力はすさまじい。日本で言う鬼は、西洋でいう悪魔と同義だ。ミアさんが半悪魔化してあの力だ。本物の鬼の力はとてつもない。それが一体だけじゃない、複数存在し同時に操る事ができるんだ。ミアさんに憑りついてた悪霊程度なら一瞬で退散できる」

 

「横島……それ、冗談じゃないよね……鬼を使役って」

幹比古はその事実を知り、身震いをする。

 

「ああ、六道家当主は代々凄まじい霊能力者だ。あの本物の式神『鬼』をまともに扱う事が出来る人間はほぼ皆無だ。超人的な霊力と精神力が必要だからな…………精神力が必要なハズなんだけどな……」

横島は幹比古にそう答えたのだが……最後は皆に聞こえないぐらいの小声でそんな事を言う。

何故ならば、横島が知っている100年前の六道家当主母子はとても強靭な精神力を持っている様にはみえず、その精神性は真逆であったからだ。

 

「………次から次へと、今日はなかなか刺激的な日だな」

達也はそう言いつつも、こんな状況なのだがどこか楽し気である。

 

「我々魔法師では、対抗手段は実質無いという事か」

十文字克人は腕を組んだまま顔を顰める。

 

「………」

 

「今回は横島さんが来てくれたから、横島さんが居てくれたから、今もこうして、皆と話すことができたけど、もし、横島さんが居なかったら………横島さんが行方不明のままだったら、私達は、いえ、第一高校の皆は、悪霊に殺されるか、悪霊に取り憑かれて悪魔になるかしていたという事ですよね……何もできずに、終わってしまうなんて、そう思うとゾッとします」

美月はモヤモヤしている胸の内を話す。

 

「横島……僕達にも何か手伝わせてくれないか?横島に頼ってはかりではいられないよ。僕自身でも対抗できる手段を持っておきたいんだ。この先パラサイトに出会う事が無いかもしれない。でも、今後会わないなんて保証はない。そんな時、自分が何もできないなんて嫌なんだ」

幹比古は自分自身でも、いざという時の悪霊と戦うすべを横島に協力しながら学びたいようだ。

 

「……横島、俺も幹比古と同じ意見だ。魔法師でも対抗手段を持っていた方がいいだろう。俺も協力させてくれ」

達也が幹比古に続く。

 

横島は美月の話、そして、幹比古と達也の申し出を聞き、ハッとする。

本来横島は、この世界、この時代に居るべき人間ではない。

今はいい、自分がここに居るのだから……しかし、ここにずっといられる保証はどこにもないのだ。

今後、悪霊に友人、知人が遭遇しても、その場に自分が居る可能性は低いのだ。

そして、小竜姫にUSNAで言われた言葉を思い出す。この時代の人間が自分たちで解決する問題だという事を………

 

「しかし……」

横島の心は揺れる。確かに、この時代の人間が解決しなければならない問題であるが……魔神が関わっているのならば別の話ではないのかとも……

 

 

「なに勝手に話を進めているの?あと、タダオは私が雇うけど、私も一緒に戦うんだから!」

「貴方こそ何をいっているの?横島くんは七草家で雇います。勿論私は横島くんと一緒に戦うのだけど」

「横島……あんた、また一人で戦う気?それで一人でどっかに行って、心配かけさすわけね。あんたを雇って、私も勿論一緒に行くわ。あんたがどっかに行かない様に見張らないとね」

言い争っていたリーナと真由美、エリカが席に戻って来て、横島にそれぞれこんな事を言う。

横島を雇っても一緒に戦う気満々なのだ。

言い争いはどうやら一時休戦したようだが、誰が横島を雇うかは決着ついていないらしい。

 

 

「横島、皆も聞いてくれ……内輪で争わずにすむ提案があるのだが」

達也は皆がギリギリ納得する折衷案を提案する。

 

 

 

 

 

 

その日、達也が提案した折衷案を皆は一応了承し、話し合いを終了させた。

その後横島は直ぐに第一高校から無人タクシーで数時間かけ氷室まで寝ているミアを連れて行き預ける。

リーナをはじめ、真由美やエリカもミアを引き渡す様に言うが、横島は断固拒否した。

引き渡したところで、非人道的な検査や人体実験などをさせられるが目に見えていた。

本人たちにその意志がなくとも、組織にとってミアは調べるべく貴重なサンプルにしか見えないからだ。

回復したとしても、元の居場所に戻れる事は無いだろう。

 

 

(結局、皆が直接かかわる事になったか……そうならない様にしたんだけどな…達也の奴……まあ、これはこれで有りかも知れないな……俺が居なかったらか…)

横島は学校の会議室での話し合いと、達也が最後にした提案を思い出す。

 

達也の提案とは、リーナのUSNA軍、真由美達の十師族側、エリカ達の警察組織は横島と契約を結び、横島を通じて事件解決をするというものだ。

契約内容は、横島が各組織の代表者数名に実地教導を行う事。各組織は事件解決のため横島の指示に従う事などが盛り込まれている。

 

横島一人で事件解決をするのではなく、この事件の最高指導者として横島を置き、横島を通じて各組織に指示する形て実質協力体制をとり、事件解決に乗り出すと言う事なのだ。

 

横島と契約を結ばなければ、戦うすべを得る事も、事件解決の功績も残らない可能性が高い。お互いの組織はけん制する意味も含め、横島と契約せざるを得ない。

 

横島はその方が都合がいいかもしれないとその時は思った。勝手にされて、悪霊を逃がしたり、手痛い被害を受けるよりも、自分の目が届く範囲で動いてくれるならその方が良いだろうと、さらに、実地指導や戦うすべを教えることができるのなら、今後、彼らだけでも対処できるだろうと考えたからだ。

もし、不測の事態になったとしても、皆を逃がしやすいとも考えていた。

 

達也は最後に自分は横島のオブザーバーとして、三つの組織が公平に契約が満たされているかを常に同行して確認すると言い出したのだ。

達也はタダで、しかも三つの組織より優位な立場で、この件に参加しようとしたのだ。

 

横島はその意図を正確に把握し、「お前も、契約しろ。いいだしっぺだろ」と達也に呆れた様に言う。

達也も「いいだろう」とシレっと返答する。達也自身もあわよくばと言う程度だったのだろう。油断も隙もあったもんじゃない。

 

大きな組織との契約のため。達也は横島の後ろ盾として、氷室はどうかと言ってきたが、横島はドクター・カオスの名前を出す。

USNAがこの件に難色を示すのは分かり切っていた。元々日本組織と協力する前提などないからだ。しかし、ドクター・カオスの名前が出れば別だ。

ある意味脅迫に近い。ドクター・カオスは現在USNAに滞在中だ。しかも、吸血鬼事件の発端であるマイクロブラックホール生成実験とパラサイト(悪霊)との関連性をUSNAの依頼の元、実証させ、完遂させた人物でもある。USNAにとって不都合な情報を多数持っているのだ。

さらに、天災錬金術師ドクター・カオスと戦略魔法師魔女マリアがUSNAで暴れでもしたら………それこそ、吸血鬼事件の被害どころの騒ぎではない。国力をどれだけ消耗させるか分かったものではない。

 

とりあえず、リーナ、真由美、エリカには最終決定権が無いため、それぞれ持ち帰って検討するようだ。

リーナのUSNA軍は日本組織に今回の事件がバレてしまった上、ドクター・カオスの名前を出されたら、従わないわけにはいかないだろう。

七草家は、たぶん、当主の七草弘一が二つ返事をするだろう。まあ、策謀は巡らせるだろうが……

問題は千葉家だ。横島の事をよく知らない上に、エリカの話を父である現当主が聞いてくれるかである。普通に考えれば……この話に乗った方がいいのだが……

 

 

 

横島は一晩氷室に泊り、翌日には八王子の第一高校に戻る事になる。

氷室家では祝い事が好きな14代目当主恭子が急遽宴会を開く。

彩芽が横島にべったりしていたのを、恨めしそうに見る要がそこにあったとか……






次回はそれぞれとの組織との契約するにあたってのお話です。
少しはギャグが出るはずです。

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