横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。


来訪者編の本編開始です。


130話 横島、まだ噂の留学生を知らない!!

2095年から2096年へと年号が変わり数日

八王子にある国立魔法大学付属第一高校では新学期(3学期)の初日を迎え、その放課後。

 

「噂の留学生、スゲー美人らしいぞ、お前こういう騒ぎが好きだろ、見に行かないか?」

 

「雫との交換留学の子よね。なんでわざわざA組まで見に行かないといけないのよ。人だかりができてるみたいだし、嫌よ、カッコイイ男子なら行くかもしれないけど、女の子でしょう?男連中で見に行ったらいいじゃない」

エリカはレオの提案をすげなく断る。

新学期早々に深雪やほのかが居るA組にUSNAから短期留学生が入って来たのだ。

しかも、金髪碧眼のかなりの美少女という事で、学校中の生徒がこぞってA組に行き一目留学生を見ようと人だかりが出来ていたのだ。

 

「魔法科高校にとって留学生など想定外の出来事だ。この十年以上このような事は無かったんだ、興味はわかないか?」

達也はレオのフォローではないが、エリカを促す。

 

「まあ、興味が全くないわけでもないけど、うちだけじゃないし、他の魔法科高校にも留学生が数人USNAから来ているんでしょ?一応同盟国だし有り得るんじゃない?」

エリカは達也にこう答えた。

達也は表面上は普通の会話のようだが裏の意味はエリカに『わざわざUSNAから留学生など送り込むなど、きな臭くないか』と言っているのだ。

それに対し、エリカは『USNAは同盟国だし、他校や大学にも来ている様だから、別に特別な事じゃないんじゃない?警戒しすぎじゃないか』と言っていたのだ。

 

周りにいる美月と幹比古はこの会話の意味を理解していたがレオには全く通じていない様だった。

 

「USNAは常々、日本の魔法技術を欲しがっているしね。その線が濃厚だよ」

幹比古はやはり、二人の会話の意味を理解していた。

幹比古は『その留学生達は日本の魔法技術を奪取するために送られたスパイだろう』と言っているのだ。

 

「何か?お前ら、A組の留学生はスパイだとでもいうのか?」

レオも幹比古の言葉でようやく、理解が追い付いたようで、直接的な言い方をする。

 

「……レオ君、そんな直接的に言わなくても……みんな分かっていると思うのだけど、それにそう言いきっちゃうと、留学生と話しづらくなっちゃいますよ」

美月はそんなレオに軽く注意をする。

 

 

そうこのUSNAからの留学生は公然の事実として、日本の魔法技術を持ち帰るためのスパイだという事は学生ですら理解しているものなのだ。

勿論日本政府はそんな事は百も承知でいる。十分対策も取っている事だろう。

なぜ、留学生を受け入れたのか?

それは裏取引があったからだ。日本からダラスへ高レベル魔法師を含む数人の魔法師の派遣と行動の自由を交換条件としているのだ。高レベル魔法師とは勿論、独立魔装大隊所属、藤林響子少尉の事だ。目的は、横島忠夫を日本に連れ戻すためなのだが、USNAはまだそこまで把握していない。

 

一方USNAは留学生を派遣し公然の事実としてスパイ活動、魔法技術を本国へ持ち帰る事。日本政府もそう判断しているのだが、実際には、10月末に鎮海軍港壊滅した『灼熱のハロウィン』を引き起こした戦略級魔法師の容疑者を洗い出し、確認。そして、状況によっては捕縛または抹殺も想定されているのだ。この事については日本政府も把握していなかった。

 

しかし、十師族、四葉家当主四葉真夜は、その事に気が付いており、既にUSNAから『容疑者』と認定されている自分の甥と姪である達也と深雪に注意勧告をしていたのだ。

さらには、USNAが誇る魔法師特殊部隊スターズが関与している事も探り当てていた。

 

達也も、留学生がスターズの一員である可能性が高く、また、自分と深雪を探りに来ている人物であることを把握していたのだ。

 

 

「でもよ、A組だろ?俺たちには関係ないんじゃねーか?」

レオは自分だけ蚊帳の外に居るような気分になり、少し口を尖らせて、ふてくされた様な表情をしていた。

 

「あんたバカね。A組には深雪が居るじゃない、しかも生徒会副会長よ、どうせ、付きっきりで案内やら世話やらやらされるに決まっているんだから」

「必然的に私達とも交流することになりますよ」

エリカと美月はレオの顔を見ながら半ば呆れた様に反論する。

 

「そうなるだろうな」

達也は平然と言うが、内心、厄介の種に必然的に飛び込まないといけない事に何か大きな意思が働いているのではないかと疑いたくなるような気分になっている。

 

「じゃあよーー、その留学生ってUSNAから来たんだろ?横島の事、知ってたりして」

レオは何気なしにそんな事を言ったのだ。

2ヶ月以上前から行方不明ではあるがUSNAに居る可能性が非常に高いと推測している、音信不通で所在も分からない状況である親友、横島忠夫の事を言っているのだ。

 

「やっぱあんたバカだわ、そんな都合のいい事あるわけないでしょ?……雫がきっと探してくれるって……」

エリカはレオの意見に反論しつつも、横島の事を気が気でないのだ。

 

達也はレオの適当な意見、いや勘なのだろうか、それは十分あり得る話だと思っていた。

達也の情報では留学生はスターズ、軍部の人間である可能性が高い。横島はドクター・カオスまたはUSNA軍に軟禁または拘束されている可能性が高いからだ。

 

 

 

さっそく厄介の種が達也に迫ってきた。

 

「みんな集まってどうなされたのですか?お兄様、風紀委員のお仕事はよいのですか?」

「こんにちは」

深雪とほのかがE組で話していた何時ものメンバーの前に現れるが、その後ろにもう一人いた。

 

「ああ、この後行くことになっている」

「深雪にほのか、ちょっとしゃべってただけ」

「こんにちは、深雪さんにほのかさん」

達也、エリカと美月は挨拶をかえす。レオは手を上げて挨拶、幹比古は軽く会釈して返していた。

 

 

「噂の留学生ね」

エリカが深雪とほのかの斜め後ろにいる金髪碧眼の美少女をみてそう呟く。

 

 

「みんな、紹介するわ、USNAからの留学生、アンジェリーナ・クドウ・シールズさん」

 

「はじめまして、アンジェリーナ・クドウ・シールズです。リーナって呼んでください」

その金髪碧眼の美少女は笑顔を振りまき、自己紹介をする。

そう、噂の留学生とは横島が記憶をなくしていた際、何時も一緒に行動していたあのリーナなのだ。

 

「俺は、E組の司波達也、深雪の兄だ。深雪と区別がつきにくいから達也と呼んでくれ」

「私は、E組、千葉エリカよ。エリカでいいわ」

「同じく、柴田美月です。美月って呼んでください」

「俺は西城・レオンハルトだ。レオって呼んでくれ。よろしくな」

「僕は、E組、吉田幹比古、……幹比古って呼んでくれたらいいよ」

何時ものメンバーはそれぞれ自己紹介をする。幹比古だけは少し顔が赤い。

 

「タツヤは深雪のお兄さんなの?」

 

「そうよリーナ、素敵なお兄様です」

多分深雪はリーナが言いたい事が分かっていないだろう。

リーナは似ていない兄妹だと思っていたのだが……深雪には通じていなかった様だ。

 

「……と、エリカにミヅキ、レオとミキヒコ……よろしくね」

そんな回答する深雪に戸惑いながらも、自己紹介したメンバーを顔を見ながら復唱していく。

 

 

「……ところでリーナ…アンジェリーナなのに、何故、愛称がリーナなんだ?普通であれば『アンジ―』だと思うのだが」

達也はワザとそんな言い方をする。

 

「ああ、それね。学校で、アンジェラって子がいて、その子と被るから私の方がリーナになったの」

リーナは笑顔でそれに答える。

 

達也は知っていた。スターズ最高の魔法師であり戦略級魔法師アンジ―・シリウスの名をそれでカマを掛けたのだ。リーナには動揺は見られない様だが……達也は疑っていたのだ。

 

「あと、さっきも言ったけど、リーナと交換留学したのは私の幼馴染でみんなとも友達、北山雫って子がいるの、とても可愛らしい子なのよ」

ほのかは達也の思惑などに関係なしに、話を進め、雫の名前を嬉しそうに言う。

 

「そう。こんどその子の写真見せてね」

リーナは笑顔でほのかのにそう答える。

実際リーナは達也にばれるのではないかと内心、ハラハラしていたのだ。

頭の中ではほのかに感謝をしている。

リーナの正体は、USNAが誇る最高の魔法師の一人、スターズの総隊長アンジ―・シリウス少佐その人なのだから。

リーナは軍の任務で、『灼熱のハロウィン』を引き起こした容疑者である達也と深雪を潜入捜査で探るために、学生の身分でこの地に居るのだ。

そのターゲットにしている本人に自分の身元が初日でいきなりバレる事態は避けたいのは当然だろう。

しかし、既に達也にはほぼバレているだろうが……

 

 

「ああ、あともう一人居るんだがな、面白い奴で……」

レオはそんな事を言っていた。

 

「あんた、それは今言う事じゃない!!」

エリカはそんなレオの言葉に割って叱る。

当然の事だ、初対面の人間に行方不明の親友が居るんですなんてことは、言うべきではないだろう。空気が読めない事に定評があるレオならではである。

 

「??」

リーナはそんなエリカとレオの会話を疑問に思うが聞き流す。

 

 

 

こうして、奇しくもリーナは横島の日本の友人達と出会う事になる。

これはリーナにとって良い事なのだろうか?

 

 

 

 

 

リーナは八王子内に借りている広々とした2LDKのマンションに戻る。

「お帰りなさい、リーナ」

 

「ただいま、シルヴィ、先に戻っていたのですか?」

リーナの帰りを待っていたのは20代中頃の女性、今回のリーナの任務を補佐するシルヴィア・マーキュリー・ファースト准尉であり、この部屋でリーナと寝食を共にしている。

 

「お邪魔してます。少佐」

もう一人、テーブルで紅茶をたしなんでいたのは、日系アメリカ人のミカエラ・ホンゴウ。愛称はミアと呼ばれている。

彼女は軍の魔法研究員なのだが、USNAの諜報員として、リーナ達より一足先に、日本へ渡り、USNA外資系の会社のエンジニアリング本郷美亜として魔法大学へ潜入しているのだ。

また、ダラスのマイクロブラックホール生成実験にも参加していた才女である。

因みに隣のマンションで今は住んでいるがこうして、年の近いシルヴィの所にお茶をしに来ているのだ。

 

「あら、ミアも来ていたのね」

 

リーナを紅茶を入れてもらい。その輪に入る。

 

 

その後、今日の出来事をシルヴィに報告をする。

特に達也にばれそうになった事について、偶然ではないかとシルヴィは言うのだが、リーナはそうは思えなかった。

 

 

 

リーナは自室のベットで……

「タダオの母国日本……タダオと話したい……今は任務中………もっとちゃんと話せばよかった」

 

 

 

 

 

一方横島はこの頃、USNAでまだ、カオスとマリアと平穏な日々を過ごしていた。






この頃の横島はまだ、雫とも、小竜姫様とも、訪問を受けてません。

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