横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

来訪者編開始です。

一発目はやはりこの子登場です。


横島来訪者編
126話 横島、来訪者に戸惑う!!


USNAダラスの高級ホテルに未だ滞在している横島、魔神ネビロスの情報から、魔神ダンタリオンの手先である悪霊が人に憑りつきこの地に紛れ込んでいるという情報を得て、捜索をするが一向に見つからない。

悪霊に憑かれた人々は、1回目のマイクロブラックホール実験後に行方不明になっている可能性が高い、そして、ダラスで殺人事件を何度も起している疑いもあった。

USNA軍が誇る特殊部隊スターズもダラスの殺人事件を追っているため、スターズのカノープス少佐の協力を得て、マイクロブラックホール実証実験後に行方不明になっている人達のリストを貰うと同時に協力関係を築く。

カオスのマイクロブラックホール生成実験で得た結果から、USNA軍にはマイクロブラックホールで偶然空いた時空の穴から、サイオン生命体が侵入し、人々に憑りついたと説明している。

但し、魔神ネビロスや魔神ダンタリオンについてはさらに混乱をきたすため説明をしていないし、しない方がいいだろう。

 

横島は、クリスマス前にフォーマルハウト中尉から抜き出し封印した悪霊を調べる。

元々は本能のみで動くような低級な悪霊の様だが、その悪霊に憑かれた人間は悪霊に意識を乗っ取られるわけではないのだ。ただ悪霊が持っていた命令と目的をすり込まれるのだ。

憑かれた人間は自分の感情を持ち、自分の意思で自発的に悪魔から悪霊に悪霊からその人間にわたった命令を唯一の目的として動き出すのだ。傍から見れば、悪霊に憑かれているなどは到底思われない厄介極まりない存在だ。

もう一つ分かった事は、悪霊に憑かれた人間が、人を襲う理由だ。どうやら霊気を奪っている様なのだが、その手段として吸血行動をとるらしい。悪霊や妖怪にありがちな行動だ。

そうやって得たエネルギーで悪霊自体成長するらしい。

 

しかし、魔神ダンタリオンから、悪霊がどういった命令を与えられたかまでは分かっていない。

 

未だ、悪霊の手掛かりすらわからない。また、悪霊自体の霊気が小さく、近づかなければ分からないレベルのため、広範囲に捜索しにくいのだ。さらに、12月25日のクリスマス以降、ダラスでは悪霊の仕業だと思われる不可解な殺人事件は起こっていない。

フォーマルハウト中尉が捕えられたことから、他の悪霊に憑かれた人間は既にダラスから逃げたのではないかと横島は考えている。

 

悪霊捜索が難航している間。

どうやら、藤林響子は横島へ接触を図りに来ている様なのだ。

横島がマリアやカオスと一緒に居る時は全く、近くに来る気配がなく。

横島が一人で行動しだすと、後を付けて来ようとするのだ。ただ、横島がその気配を察知して、事前に煙に巻くのだが……

日本政府が本格的に横島を取り込もうと動き出している様だ。

カオスの所にも別ルートで接触を図って来ていたが、カオスは何時もの調子で取り合わないでいてくれた。

 

そして、1月7日、横島の記憶が戻ってから2週間が経とうとしていた。

 

 

 

 

 

 

雫は3日前にUSNAへ渡航し、現在はダラス郊外にある大学付属高校に通っている。

因みにダラス中心地の高級マンションを借り、勿論付き人が同行している……ちなみに黒沢氏と若い女性の二人だ。黒沢氏がいれば、荒事になったとしても難なく処理できるだろう。

雫は学校の授業終了後、横島を捜索している。

渡米初日には達也に教えてもらったカオスが宿泊しているホテルを来訪し……横島について聞くが教えてくれない。雫の父親潮氏の力を持ってしても話すら通してくれない様だ。

達也の情報ではカオスとマリア側の何かしらの理由で一緒に居るかもしれない。または軟禁、拘束されているかもしれないとの事なのだが。

仕方なしに、雫は街を歩き回り、横島の行方を捜しまわっていたのだが、ある作戦を思い付く。

横島ならきっと、カオスとマリアの拘束から脱出し、この街のどこか、女性が多い場所に出没するはずだと……絶対成功しないナンパを繰り返しているはずだと……命がけで…

雫はマンションに戻り、付き人二人と相談し若い女性が通る場所をピックアップする。翌日の放課後、雫は公園近くのお洒落な店が立ち並ぶ通りに行くと……

 

「マリアーーー!堪忍やー、離してくれーーー!!」

 

「横島さん・ナンパ・禁止・真面目に捜索・してください」

 

「これも捜査の一環、女性に憑いているかもしれないから、一人づつ丁寧に探していただけだ!」

 

「……横島さん・鼻の下伸びてます・目的と手段を・入れ違えています」

 

そこには漫才の様なやり取りをしながら、マリアに襟を捕まれ、引きずられる横島の姿があったのだ。

 

 

それを見た雫は遠方からいきなりマリアに向かって氷の礫を飛ばし魔法攻撃を仕掛けたのだ。

「横島さんを離して!!」

 

しかし、マリアは片手を掲げただけで、いとも簡単に雫が放った氷の礫を打ち消す。

 

雫は漸く見つけた横島がマリアに乱暴な扱いをされているのを見て、怒りのまま、いきなり街中で攻撃魔法を放ったのだ。

雫が短銃型特化型CADを携帯していなくてよかった。破壊力満点のフォノンメーザーなど街中で放った日には、とんでもない事件となっていただろう。流石に付き人二人に同盟国とは言えUSNAの街中でそんなものを持ち込んだとバレればタダでは済まないというわけで特化型CADは取り上げられ、携行できなかった様だ。

しかし、街中で魔法を放った時点それだけで十分事件である。

 

雫は達也から事前に横島は何らかの理由で記憶を消されカオス一派に捕まっている可能性がある事を聞かされている。そしてこの状況だ。瞬時に横島がマリアとドクターカオスにUSNAまで連れ去られ、ひどい扱いで拘束されていた所を、隙を見て逃げ出した横島を発見し、軟禁しているホテルへと連れ戻そうとしている最中だと勝手に妄想し、この暴挙に出たのだ。

 

マリアはマリアでその攻撃で雫を悪魔の手先が横島を狙っていると

「横島さんを・狙う・悪魔の手先・排除開始します」

そう判断し、雫にロケットアームを構えたのだ。

 

 

「へ?雫ちゃん?なんでここに?って、わーーーーーー、マリアまったーーーーー!!攻撃やめーーーーーー!!知り合い!!あの子は俺の知り合い!!だからやーーめーーてーー!!」

横島は30m先から腕に巻いているブレスレット型のCADを操作しながら走ってくる雫を一瞥してから、慌ててマリアを止めるべく、ロケットアームの前に立ちふさがるが……

 

しかし時はすでに遅し、雫が次に放った魔法、大きな氷の礫は横島のケツに突き刺さり、マリアが放ったロケットアームは横島の顔面にぶち当たったのだ。

 

「ぶふぉっ!!やっぱりかぁーーーーぁ」

 

横島はきりきり舞いと上空に吹っ飛び、回転しながら無残な姿で地面に落ちてくる。

 

「横島さんに何をするの!!」

 

「あなたこそ・横島さんに・危害を加える・悪い人」

 

雫とマリアはお互い無表情だが、睨みあう様な形になる。

 

「……ちょ…ちょっとま…って……」

横島は血だらけのまま、地面を這いつくばり、二人を止めようとする。

 

「横島さん、こんなになって、直ぐに病院に……」

「横島さん・直ぐホテルに・戻って治療を」

二人は横島の状況に気が付き、横島を助け起こそうとするが……

 

二人は顔を突き合わせ、無表情だがいがみ合っているようだ。

「魔女マリア。あなたは横島さんを監禁して何をするつもり?」

「あなたこそ・横島さんに・何をするつもりですか?」

 

「私は、横島さんを日本に連れ戻すために来た!」

「マリアは・横島さんと・ずっと・いっしょにいる」

 

「横島さんは私の大切な人!」

「横島さんは・マリアの・大切な人」

 

「………」

「・・・」

 

二人が無言のいがみ合いをしている中、横島の怪我は既に治っていた。

「たはったはははははっ、二人共落ち着いて……」

 

「横島さんは黙っていて!」

「横島さん・沈黙」

 

「……はい」

 

「無理矢理監禁しているのに!」

「マリア・そんな事はしない・横島さんの・嫌がる事はしない」

 

「………」

「………」

 

そんな重苦しい空気の中、雫は横島の左腕を抱き寄せ問いかける。

「横島さん、説明して……なんで連絡をくれなかったの……なんですぐ日本に帰ってきてくれなかったの……なんで魔女マリアと一緒にいるの……私探したの……横島さんをずっと探していたの」

雫はマリアが横島を無理矢理監禁している様ではなかったため、さらに記憶喪失と聞いていたが、雫の事を覚えていた事で、横島に対し悲しみがあふれ、遂に涙を流し横島に抱き着くのだ。

 

「し……雫ちゃん……ごめん」

横島は素直に謝る。

 

「マリア……ごめん、雫ちゃんは日本の学校に居た時の友達なんだ……二人で話す時間をくれる?」

 

「イエス・横島さんの友達・理解しました・帰りは遅くならない様」

マリアはそう言って泣き崩れる雫を一瞥してから立ち上がり、ホテルへと先に帰っていた。

 

「雫ちゃん、ここではなんだから、公園のベンチに行かない?」

「……うん」

横島は雫を立ち上がらせ、すぐ近くの公園のベンチへと行く。

その間雫は横島の腕にしがみ付いたままだ。

 

横島は雫が落ち着くのを見計らって、雫と膝を向けあい話し出す。

「雫ちゃん、ごめん。連絡しなくて……実は俺、去年の末まで記憶喪失だったんだ。この数年の記憶が飛んでいた……それで連絡が取れなかった」

 

「やっぱり、達也さんが言っていた通り……でもなんで記憶が戻ったのに連絡してくれなかったの?横島さん居なくなって悲しくて悲しくて仕方なかった。皆も心配してる」

 

「……雫ちゃんをみんなを危ない目に合わせたくなかった。俺が記憶を取り戻したきっかけに、連続殺人事件が絡んでいるんだ。今その犯人を追っている」

横島は雫には魔神や悪魔、悪霊の事を話すわけにはいかないため、ここまでの話に抑える。

 

「………連絡欲しかった……でも横島さんが生きてて本当に良かった…」

雫は横島の手を握り涙ぐむ。

 

「ごめん」

 

「でも、なんでUSNAに?…横島さんその時の記憶が無い……なんで、魔女マリア、あとドクターカオスと一緒なの?」

 

「マリアとドクター・カオスは古くからの知り合いなんだ。俺が記憶をなくして倒れていた所を拾ってUSNAまで運んでくれたらしい。なぜ記憶をなくしたのかは……分からない」

横島はマリアとカオスが100年以上前からの知り合いとは言えない。また、済州島で達也の戦略級魔法マテリアル・バーストを喰らった事を言うわけにはいかない。さらに記憶の封印についてはルシオラの魂が関与しているらしいが、詳しくはわからないため、このような答えとなった。

 

「魔女マリアと天才錬金術師が横島さんの知り合いなの?」

 

「学校に入る前からの」

 

「……横島さんやっぱり凄い……でもその前に記憶をなくす程の何かがあった……今は大丈夫?」

 

「今はこの通りピンピンしてる」

横島は雫に笑顔を向けてガッツポーズをする。

 

「でも雫ちゃんはなんで、ここに?」

 

「横島さんを探すため」

 

「雫ちゃん……ありがとう」

 

「魔法師は海外に渡航するのが難しいから、留学扱いでここに来たの、一応3月までの短期留学、でも、横島さんが日本に帰るなら、私も帰る」

 

「ごめん、雫ちゃんには一杯迷惑かけて……事件が解決するまで、ここに残る予定……だから、皆にはまだ、俺が見つかった事は内緒にしてほしい」

 

「それはダメ!みんな、みんな心配していた。みんな横島さんを探していた。達也さんなんて……横島さん居なくなって、元気なくて、何時も下向いてた。私と一緒。だから、連絡はして、学校とかにはいいから」

雫は力強く横島にそう言い聞かせた。

 

「みんなが……達也も……そうか、俺皆に心配かけっぱなしだな……分かった。決心付いたら連絡する。ちょっと数日まって……だからその間、雫ちゃんも……」

 

「わかった。でも私は明後日には連絡する。それまで待てない」

 

「……わかった」

 

「……横島さん、私も、横島さんが関わった事件、手伝う」

 

「それはダメだ!」

横島は強めに拒否をする。

 

「なんでダメなの……マリアはいいの?」

 

「雫ちゃん。俺が関わっている事件は普通じゃない。雫ちゃんも俺の力知ってるでしょ、それでも危険を感じざるを得ない事件なんだ。軍も追っているようだけど、多分無理だ。マリアは結構有名なはずだからわかると思うけど、マリアレベルの力が無いと危険なんだ」

 

「……私じゃまだ…力不足……わかった……でもその間に横島さんには会う。横島さんは目を離すと直ぐにナンパするから……悪い女にひっかかるかも」

雫はシュンとなるが、理解をし了承してくれた。

 

「たはったははははっ、……ああでも、なんで俺がここに居ることが分かったの?」

横島はごまかし笑いをしながら、質問をする。

 

「吉田君が、ダラスのテーマパーク事件の映像を解析していたら、横島さんらしき人影が映ったの、その後、達也さんがどこからかハッキングして、横島さんが魔女マリアとドクターカオス、UANAの軍人らしき人物と関わっている情報を手に入れた」

雫は横島を見つけた経緯を話す。

 

「……達也、ハッキングってあいつ、終いに捕まるぞ」

横島のボヤキも分かる。何せ達也の行った行為はれっきとした犯罪行為なのだから。

 

「横島さん……今日は、私のマンションで食事しない?黒沢さんが横島さん見つかったって言ったらきっと美味しいもの作ってくれる」

 

「く……黒沢さん…、ま、また今度でいいかな、たはははははははっ」

横島は夏休み北山家別荘での出来事を思い出してたいた。黒沢さんいや、黒沢氏には色々と世話になっていたのだが……主に悪い意味で……

 

「せっかく、2ヶ月ぶりに会えたのに……まだ、話したい」

雫は上目使いで横島に訴えかける。

 

「う……、行かせていただきます」

横島はこうして、雫のマンションで夜を過ごすのであった。

 

横島は必死になって自分を探してくれた雫や達也、日本の友人達に感謝しつつ、今回の事件には関わらせないでおこうと決意するのだった。

 

 

 

 

 

しかし、横島を訪ねる来訪者は雫だけではなかった……




次回もUSNA編です。

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