ドキドキ Experience!!   作:トップハムハット卿

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第5話

説明し忘れていたので説明しておこう

 

名字が"山崎"である俺が、なぜ沙綾の母親を"お母さん"父親を"お父さん"と呼ぶのか。

そして純と紗南はなぜ俺のことを"兄ちゃん"と呼ぶのか……

 

 

 

 

 

順を追って話そう

 

 

俺の本当の母親と父親の紹介から。

 

父親の名前は山崎浩二(こうじ)

元プロ野球選手で、俺が小学校に上がる頃に怪我をしてしまい、思うように結果が出せず若くして現役を引退してジムでスポーツトレーナーとして働いていた

 

 

母親の名前は山崎美妃(みき)

高校生の頃にガールズバンドを組んでいて、人気が出始めたころにスカウトされ、バンドのメンバーと共に学生のままプロデビュー。

ちなみに担当はギターボーカル。

妊娠をきっかけに引退し、彼女は専業主婦に。

 

 

わりと凄い父と母を持った俺は、両親の影響からか、野球とギターに興味を持った。

 

地元のリトルチームに入って野球をやり、休みの日は暇さえあれば母親にギターの弾き方を教えてもらっていた

 

 

 

幼い頃からやっていたおかげで、ギターは小3の時には暗譜で演奏できるまでになった。

 

野球は、遺伝のおかげか元々センスがあり、小3にしてスタメンを勝ち取った

 

 

とても充実した毎日を送っていたのに……

 

 

小4の夏、沙綾と一緒に遊んでいたら

 

 

「拓弥くん」

「どうしたの?さあやのお母さん」

 

「落ち着いて聞いてね。

 

 

 

 

 

──さっき、あなたの両親がトラックに轢かれて亡くなったそうよ………」

 

 

「………え?」

「とにかく、今から一緒に病院へ行きましょう。」

 

 

病院で亡くなっている両親を見た時は、言葉では言えないくらいショックだった。

ショックすぎて涙も出なかった………

 

 

 

両親を失くし、親族が誰もいなくなって一人暮らしを余儀なくされた俺に沙綾の母である千紘(ちひろ)さんが──

 

 

「拓弥くん、うちで一緒に暮らしましょう?」

 

 

 

この言葉のおかげで、僕は今こうしていられるんだと思う。

 

 

 

千紘さんには返しきれないほどの恩がある。

両親が死んで、これからどうやって生きて行けばいいのかわからない、生きていけるのかすらもわからない。

そんな絶望から僕を救ってくれた。

 

 

 

それから俺は山吹家で暮らすようになり、千紘さんも徹さんも我が子のように面倒を見てくれた。

 

そして俺はいつの日からか、千紘さんのことを"お母さん"、徹さんのことを"お父さん"と呼ぶようになった。

 

すると純や紗南も"兄ちゃん"って呼ぶようになってくれた。

 

 

 

そういう経緯があって今に至るというわけだ。

 

 

 

 

暗い話はここらへんにして

 

 

 

 

さて、蘭の相談とやらを聞きにいきますかぁ

 

『店番終わった』

 

・・・・・

 

 

 

 

まさかこれも既読スルーされたりしないよね!?

 

 

 

『家まで来て』

 

 

 

おいコラ、相談に乗ってもらう立場のくせに、相手を出迎せるだと?

これは一言物申す必要がありそうだな。

 

 

まぁ、文句を垂らしつつも家まで向かうんだけどもね。

 

 

 

 

 

 

蘭の家に着くと、家の前で蘭が待っていた。

 

「おっそ」

「この野郎、迎えに来させておいて"遅い"とはなんだ。てか、何でギター背負ってるの?」

 

「今から楽器店行くから」

「はぁ!?そのために俺を呼んだのか?」

 

「うん、弦を一緒に選んで欲しくて」

「そのくらい自分でやれよぉ。……はぁ、しかたねぇ、せっかく家まで来たわけだし、一緒に行くか」

 

 

俺たちが毎度お世話になっているのは"江戸川楽器店"である

品揃えもなかなか豊富で、中学の時は俺もかなり通ってた。

 

 

 

 

「いらっしゃいませー」

「こんちは、リィさん」

 

「お?拓弥くんと蘭ちゃんじゃ~ん。今日はデート?」

「んなわけないでしょう。蘭が弦張り替えたいって言うからついてきたんですよ」

 

この人、別れたの知っててこういう事言うから止めてほしい…。

 

「おっけー、ちょっと待っててね」

 

 

「ありがとねー。また来てねー」

「こちらこそっすよ」

「リィさん、ありがとうございました」

 

 

 

「良いの見つかってよかったな」

「うん、ありがと」

 

「あそこの品揃えは相変わらず凄かったな」

「そうだね」

 

「なぁ、蘭」

「なに?」

 

「ちょっと、寄り道して帰ろうぜ」

 

 

楽器店からの帰り道には小さな公園がある。

小さいころはみんなでその公園で鬼ごっこやらかくれんぼやらをして遊んでたんだよなぁ

 

 

「突然、公園なんか来て、どうしたの?」

「まぁ、座ってゆっくりしようぜ」

 

「はぁ?意味分かんないんだけど」

「まぁまぁ。んで、相談って何?」

 

「それは、さっきのギターの弦のこt「ばーか」」

「2人の時くらい、嘘つくんじゃねーよ」

 

「べ、べつに嘘なんか!」

「いいや、嘘ついてる。何年一緒に居たと思ってんのさ」

「っ!!…」

 

蘭は"新しい弦を選んでほしい"なんて理由でわざわざ呼び出すようなことはしない。

きっと、あのLINEをくれた時はかなり悩んでたんだと思う

 

 

「あいつらには言いにくい事だから、俺に『相談がある』なんて言ったんだろ?今さら遠慮してんじゃねぇ」

 

 

「あのさ……

 

──お父さんと……喧嘩した」

 

「まじか。なんとなく話の先が見えるような…ちなみに、原因は?」

 

「華道を継げってうるさくて、私は継がないって言ってるのに!」

「なるほど、そこから口論になったのか」

 

「うん。お父さん、私らのバンドを"ごっこ遊び"とか言ってくるから、それでついカッとなって…」

「それは、あいつらに話しづらいわな」

 

 

「どうすればいいんだろ…」

「俺に聞かれても……」

 

「はぁ…」

 

 

 

"蘭のやりたいようにやれ"とか、"それは自分で答えを探すべきだ"とか、そんな無責任なことは言えない

 

 

やりたいようにやって何とかなる問題じゃない

蘭は自分なりに悩んで、なんとか答えを出そうとした結果、俺に相談するという手段を選んだのだと思う

 

 

「できる限り、力になってやるよ」

「……ありがと」

 

「ばーか、こんなこと礼を言われるまでもないな。

素直に礼を言うなんて、蘭らしくないじゃん」

 

 

「素直に感謝したい時だってあるの!!」

 

「なるほどな。でも、俺だけでなんとかできる問題じゃない。

あいつらと一緒にバンドを続けたくて悩んでるんだろ?

なら、巴やモカ、つぐみやひまりにも一緒に悩んでもらおうぜ。

話が話なだけに、言いにくいのは分かる。

でも、蘭の家庭の問題だとしても、お前1人で抱える問題じゃない。

同じ仲間で、ずっと一緒だった幼馴染みだろ?1人でも悩んでるやつがいるなら、力になってやりたいに決まってるだろ。

 

──俺らを信じろ」

 

「でも………」

「でもじゃない。それを話して喧嘩になるようだったら、また俺が仲裁してやるよ」

 

「また入院したいの?」

「いや、出来れば入院はしたくないな」




5話でした!

相変わらず蘭は可愛いですねw

ゆっくり更新して行こうと思いますので、今後ともよろしくお願いします

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