この小説を覚えてくれてる人がいるのでしょうか……
とりあえず、24話です
「そういえばー」
ふと思い出したかのように、モカが口を開く。
「蘭とたっくんって、付き合ってる時どこまでいったのー?」
モカの唐突な、とんでもない質問に4人は飲み物を吹き出してしまった。
「お、おいモカ!そういうのは2人のプライバシーに…」
「ともちんも気になるでしょー?」
「き、気にならないって言ったら嘘になるな…」
モカと巴のやり取りに、苦笑いをしながらも、つぐみとひまりも興味があるようで蘭の顔を見る。
「お、教えないから!」
「ちゅーはしてそうだよねー」
モカの言葉に対して、無言を貫く蘭。
無視しているけど、耳は真っ赤になっている蘭。
どうしてか、昔からそういう蘭を見るとモカは少しからかいたくなる。
「もしかして、その先もー?」
「ば、バカじゃないの!? そんなことするわけないじゃん!」
((((あ、したんだ……))))
真っ赤な顔で必死に否定する蘭を見て、密かに確信した4人だった。
「いや〜、蘭は大人ですなぁ〜」
「………モカ、嫌い」
すっかり拗ねてしまった蘭の機嫌を4人が戻そうとあれこれしたのは、言わずもがな……。
☆
私、青葉モカは知っています。
たっくんと蘭がどれだけラブラブだったのかを。
あれは中学の時、屋上で二人きりの場面を偶然目撃しちゃったんだ~。
最初は普通に話してるだけだったんだけど、急に蘭がたっくんに寄りかかって抱きついちゃった。
普段の蘭からは想像できないよね。
蘭はたっくんに対しては凄く甘えんぼで、くっつき虫なんだ~。
アタシ達の前ではイチャイチャしないけど、2人の時はとことん甘える。
やっぱ蘭って可愛いよね~。
そんな蘭とたっくんを見てて、少し胸が痛かったし、少し羨ましかった。
ううん、凄く羨ましかった。
アタシだってたっくんに、蘭みたいに甘えてみたいし、たっくんにくっつき虫したい。
アタシだけじゃないね。
ともちんも、つぐも、ひーちゃんも。
みんなたっくんのことが大好きだから。
幼馴染で頼りになって、それでカッコよくて。
これで好きにならない訳がないよね~。
ホント、罪な男だな~たっくんは。
たっくんはアタシのことどう思ってるんだろうね?
きっと聞いたらどうせ、"家族"って言うと思うから聞かないけどね。
今になっても、あの時のことを少し後悔してる。
もし、蘭が告白する前にアタシが告白していたらどうなっていたんだろう。
今はたっくんは誰とも付き合ってない。
だからアタシにもチャンスがあるってことだよね?
そうだ。今度、久しぶりにたっくんと一緒に出かけてみようかな。
デートってやつですな。
これは名案。やっぱりモカちゃんは天才だねぇ。
いや~、そんなに褒めなさんな。照れる照れる。
バンドに集中したいからって蘭は別れたけど、そのせいで最近は蘭の調子がおかしい。
今の蘭には、たっくんパワーが足りないのです。
でもそれとこれとは話が別。
今度こそ、アタシだってたっくんと付き合いたい。
だって大好きだもん!
この恋心に気がついたのは、この小学生の時。
そんなアタシの初恋は、簡単には諦めれないのだ~。
みんなは大事な仲間で、幼馴染で、家族だけど、同じ人を好きになったライバルでもある。
これは負けられませんな~。
というわけで、さっそくやまぶきベーカリーに寄って帰りますか。
ガラガラガラ
「いらっしゃい。あら、モカちゃん」
「こんにちは。お母さん。たっくんいます?」
「拓弥なら、沙綾たちと朝から出かけちゃったけど…」
「愛するアタシを置いて、ひどい…」
「あらあら、モカちゃんを泣かせるなんてひどい子ね」
「いいんですよお母さん。それでも私は健気に想い続けるのです」
たっくんと沙綾のお母さんはノリが良い。
だからこんな芝居でもノってくれるから、ついやってしまう。
「それで、実際のところどうなの?」
「はぇ?」
「拓弥とどうなのよ、モカちゃん」
目をキラキラと輝かせて、聞いてくる。
「まぁ、相変わらずですよ」
「そっか~。私は拓弥のお嫁さんがモカちゃんになるのは大歓迎よ?もちろん、巴ちゃんやつぐちゃん、ひまりちゃんに蘭ちゃんもね」
相変わらず、アタシ達のことが大好きなお母さんなんだから~。
「その座は私が頂いちゃいますよ~」
「ダメだもん!さーながお兄ちゃんのお嫁さんになるの!」
あ、紗南ちゃんだ。相変わらず可愛いなぁ。
「紗南ちゃんもたっくんと結婚したいの?」
「うん!もう約束したの!」
なっ…!?
そんな手強いライバルが潜んでいたとは…。
「こらこら。紗南はあと10年待たないと結婚できないのよ?」
いや、お母さん。
指摘するところが違う気が…。
それに対してとても残念そうに駄々をこねる紗南ちゃんがまた可愛い。
これは、10年後には恐ろしいライバルになってそうですなぁ。
「それにしても、ほんと、あの子はこんなに可愛い女の子たちから同時に好意を寄せられるなんてねぇ。そこも母親譲りかしらね」
「そうなんですか?」
それは初知りだなぁ。
小さい頃の記憶しかないけど、たしかにたっくんのお母さんは凄い美人さんだった。
「えぇ。中学の時なんて、毎日のように告白されてたわね」
「す、凄い。 そういえばたっくんも、中学の頃はラブレターをいっぱい貰ってた気がする」
恐るべし山崎家の遺伝子!
「あ、お会計お願いします」
「はいはい」
今日は少なめで、10個だけにしようかな。
お小遣いが少しピンチだし。
パンのためにも、バイトしないとダメかな~。
「それじゃあ、帰りますね」
「えぇ。またいらっしゃいね。それと、これからも拓弥と沙綾をよろしくね」
「もちろんです!沙綾は大事な友達ですし、たっくんはアタシ達がいないとダメですから~」
そう言うと、とても優しい笑顔で応えてくれた。
帰り道。
アタシは考え事をしていた。
そりゃあ、アタシだって考え事くらいしますとも。
何も考えてなさそうに見えて、実はいろいろ考えてるのです。
「はぁ………たっくんに告白なんてできないよぉ」
考えただけでも恥ずかしい。
さっきはお母さんにあんなこと言っちゃったけど、実際にたっくんの前に立つとどうしてもふざけちゃうんだよね。
でも、もし告白したら……
「受け入れてくれるのかな~?」
そんなことを帰り道でずっと考えていた。
☆
「ただいまー」
「ただいまー!!」
「いや、香澄の家じゃないだろ。ただいま」
「お、おじゃまします…」
母さんが出迎えてくれる。
「あらあら、賑やかね。みんなおかえりなさい」
どういう状況かだって?
沙綾と香澄、有咲との買い物から帰る途中、香澄がうちに来たい!と言うから、こうなった。
「あ、兄ちゃん、姉ちゃんおかえ……げっ!」
「あ!じゅんじゅん!」
純は香澄を見るなり、嫌そうな顔をする。
「こら待てー!」
「うわっ、こっち来んなー!」
香澄と純は顔を合わせる度に追いかけっこをしてる気がする。
まぁ、楽しそうだからいいけどさ。
「あなたたち、晩御飯まだよね?」
「うん。まだ」
そう答えると、母さんは嬉しそうに微笑んだ。
「そう。それなら、香澄ちゃんと有咲ちゃんも晩御飯一緒にどう?」
「食べます食べます!!」
「じゃあ、私も……」
そんな気はしてたけど、みんなで晩御飯を一緒に食べることになった。
「あ、拓弥!スマホ貸して!」
「いいけど、何するんだ?」
「いいからいいから!貸して!」
何をするのか気になるが、とりあえず貸してみる。
「ほい」
「ありがと!ちょっと待っててね」
なにやらゴソゴソとしている香澄。
そしてすぐにスマホを返してくれた。
「じゃーん!!」
よく見ると、イヤフォンジャックに小さな松盆栽の形をしたストラップが付けられていた。
「おぉ!これどうしたの!?」
「気に入ってくれたみたいだね。じつはこっそり香澄と一緒に買ったんだー」
沙綾が説明してくれる。
「有咲のもあるよ!」
そう言って、香澄は有咲から無理やりスマホを強奪してストラップを付けていた。
有咲は恥ずかしがるかもしれないけど、盆友としてお揃いのストラップを、しかも盆栽のストラップを付けられるなんて嬉しい!
「ありがとな、二人とも」
「それだけじゃないよ!カバー開いてみて!」
そう言われて、手帳型カバーを開く。
「これ……」
そこには、今日撮ったキラプリのシールが貼られていた。
「これもお揃い!」
沙綾と香澄、そして有咲のスマホカバーにも貼られていた。
「なんか、ちょっと恥ずかしいな」
「まぁ、今日の思い出ってことで」
「まぁ、それもそうか」
シールを見て嬉しそうな沙綾。
有咲は、シールとストラップを見ながら嬉しいような恥ずかしいような表情を浮かべていた。
「有咲、ニヤけてるよ」
「べ、べつにニヤけてねー!!」
パシャッ
「撮んな!」
「えー、ニヤけてる有咲の顔を見せてあげようかと思って」
「見たくねーし!わざわざ画像送ってくんな!」
やっぱ、有咲をいじるの楽しいな~。
リアクション芸人顔負けの反応してくれるから、ついやっちゃうんだよね。
そんなこんなで有咲をいじっていたら、キッチンからいい匂いがしてきた。
どうやら、晩御飯が出来たみたいだ。
さて、今夜は楽しい晩御飯になりそうだな~!
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