「蘭、おかゆ出来たぞー」
風邪の時は"おかゆ"一択ですよね(偏見)
金欠気味で大した食材は買えなかったけど、おかゆに最低限必要な食材は買えたので問題は無い
蘭の家の冷蔵庫から卵を貰って作ったのは"たまごがゆ"
食後にはリンゴをすりおろして食べさせるつもりだ
「お腹減ってない」
「そう言わず、少しでも食べといた方がいいと思うぞ?」
食欲が無いとしても、体調が悪い時は少しだけでも食事はした方がいい
そんなことを保健の先生が言ってたような……
てことで食べてもらおうか!
「もしかして、"アーン"して欲しいのか?」
「はぁ?」
ゴミを見るような目で睨まれた
ごめんなさい、冗談です。はい
「それは冗談だとして、不味くはなかったから味は大丈夫だと思う。不味かったら残していいよ」
「味を心配してたわけじゃないし。いただきます……」
スプーンでおかゆを掬い、フゥーと冷ましてから口へ運ぶ
パクリ
「……美味しい」
「そうかそうか!」
お口に合ったようでなによりだ
「もっと食べるか?」
「うん」
食欲が出てきたらしく、しっかりと食べてくれた
「ごちそうさま」
「おう、お粗末様。リンゴすりおろしてくるから待っててな」
この後、すりおろしたリンゴもちゃんと食べてくれた
「美味しかったよ。ありがとね」
「これくらい、いつでも作るさ」
「……………勉強会だったのに、ごめん」
「気にすんな。本当はさ、みんなもお見舞い来たがってたんだ。でも、テスト前ってこともあって俺に任せてもらったんだ」
「そうだったんだ。拓弥は大丈夫だったの?」
「なんとかなるさ」
珍しく俺の心配もしてくれるなんて……
今日の蘭はいつもより素直な気がする
風邪の影響かな?
「俺のことより、蘭の方は勉強大丈夫なのか?」
「………」
「聞いてるか?」
「眠くなってきた。寝るね、おやすみ」
そう言って、布団を被ってしまった
都合が悪くなると、すぐこうなるんだから〜
少しすると、蘭の寝息が聞こえてきた
「あら、ホントに寝ちゃったか」
蘭が寝たとなると、めちゃくちゃ暇だな……
「勉強でもやるか」
蘭の机を借りてテスト勉強をすることにした
☆☆☆
ふと目が覚めた
気分は悪くないし、もう熱も下がってるっぽい
治った……のかな?
まさか風邪を引くなんて思ってもなかった…
そういえば、拓弥はどこに行ったんだろう?
部屋を見渡してみると
「あ…」
何故か私の勉強机で突っ伏せて寝ていた
「拓弥?」
呼びかけても反応が無い…
マジで寝てるし
寝てばっかりも疲れるので、ベットから起きて拓弥の方へ歩いてみる
「ぐっすりじゃん……」
疲れていたのか、ぐっすり眠ってる
「拓弥……今日はありがとね。
拓弥には助けられてばっかり、いつも迷惑かけてごめんね」
拓弥が起きてたら"迷惑なんかじゃない"って言いそうだね
起きてたらこんなこと絶対言わないけど……
「もしさ…私が………。私が"また付き合いたい"って言ったら、拓弥はどう答えるのかな……」
でも、私はそんなこと言えない
なぜか?
それは素直じゃないから
素直じゃないのは自分でも自覚してるんだけど、直るものでもないってことも自覚してる…
そんな私だけど、"一緒にいて楽しそうで、私も一緒にいて楽しい"そう思えるのが拓弥なんだ。
だから好きになったんだと思う。
直接伝えては無いと思うけど、たぶんモカやひまり、巴とつぐみも拓弥のことが好きなんじゃないかな?
私たち、みんな拓弥に助けられて、その優しさに触れてきたから。
でも、バンドのためとは言え、自分のワガママで拓弥をフッたわけだし"また付き合いたい"なんてやっぱり言えないよ……。
「はぁ………。あれ?そう言えば、今何時?」
時計を見ると、夜の8時を指していた
「8時!?ちょ、拓弥!起きて!」
「……ん?どうした?」
「どうした?じゃない!もう夜の8時だよ!」
「え!?マジ?」
こんな時間まで帰ってこないと山吹さんも心配するだろうし…
「そんなに寝てたのか……すまん、帰るわ!」
慌てて拓弥は帰宅の準備をする
「じゃあな蘭。ちゃんと安静にして寝てるんだぞ?」
「わかってるって」
「それじゃあ、また!お大事にな」
「うん………。た、拓弥!」
「ん?」
「今日は、ホントにありがとね!///」
「いえいえ。少しは良くなったみたいでよかったよ」
珍しい、いつもみたいに"蘭が素直にお礼を言うなんて珍しいな?"って言うかと思ってたのに……
「珍しいね、素直にお礼を受け取るなんて」
「まぁ、そういう気分なんだ。それとも、"お礼を言うなんて珍しい"つて言って欲しかったか?」
「そ、そんなことないし!早く帰ればーか!」
「はいはい、そんじゃ、またね蘭」
「うん、またね」
私は、拓弥の背中が見えなくなるまで見送った
☆☆☆
すっかり遅くなっちゃったなぁ…
母さんも父さんも心配してるだろうな……
「ハックション!………。まさか、風邪
看病回でした!
人間、風邪だと素直になれるんですね…(※これは個人の感想です)