ドキドキ Experience!!   作:トップハムハット卿

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第15話

すこし、昔話をしよう

 

俺が骨折した理由を順を追って説明するためにもね

 

 

あれは去年の冬。つまり半年前。

かなり寒い日だった。

 

 

 

 

 

「こんな寒い日にデートなんて正気か?」

「う、うるさいな!いいじゃんべつに」

 

そうです皆さん、この時はまだ絶賛交際中でした…。

 

「いつもみたいに蘭の家でデートで良かったと思うけどなぁ」

「全然良くないし。家だと拓弥が私に宿題やれってうるさし、私が宿題やり始めたら拓弥はコタツですぐ寝ちゃうし…あんなのデートじゃない!」

 

「それは……すまん。でも、コタツ入ると眠くなるもんだろ?」

「それはそうだけど、普通は他人の家のコタツで堂々と寝ない」

 

そんな、まるで俺が"非常識"みたいな言い方しなくても…

 

「暖かいから仕方ないだろ!それに、蘭だって俺に寄りかかって寝てるだろ!」

「私はいいの!自分の家だから!」

 

「そんなの屁理屈だ!…………はぁ、こんなところで言い合いしてる場合じゃないな。寒いし」

「そうだね…。行こっか」

 

付き合ってからも付き合う前も、俺と蘭は口論というか、言い合いをすることが多い。

原因の大半が蘭にあると俺は思うんだが……

 

 

 

蘭に連れられ、しばらく歩いていると大きなショッピングモールに着いた

 

 

「なるほど、イ●ンが目的地だったのか」

「うん、色々と買いたいものもあったし」

 

「ウィンドウショッピングか。……なんか珍しく女子っぽいな」

「普通、彼女にそういうこと言う?」

 

「彼女でも彼女じゃなくても、少なくとも蘭には言うぞ」

「あっそ」

 

あらま…拗ねちゃったか

 

「冗談だから機嫌を直してくれ」

「………」

 

「ごめんって。……お詫びになんか奢るから」

「ほんとに?」

 

「おう」

「なら許す」

 

現金なやつだなコノヤロー…

 

この後、昼飯を奢ることになって蘭に1番値段の高いパフェを奢ることになったのはここだけの話。

 

 

「それで?まずは何を買うんだ?」

「マフラー」

 

「は?今、身につけてるだろ」

「新しいのが欲しいの!」

 

「あー、そーでござんすか」

 

そんなにマフラーは何個も要らないと思うんだけど…

男女の考え方の差ってやつかな?

 

 

 

 

 

 

 

「どれがいいと思う?」

 

様々な色や種類のマフラーを眺めながら、俺に聞いてくる蘭。

 

「このピンクのやつなんかどうだ?」

「色が派手すぎる」

 

「じゃあ、このハート柄」

「ハート柄はちょっと…」

 

「白とかシンプルで良さそうじゃないか?」

「白は嫌」

 

なんでだよ。そんなに即答で"嫌"と言われたら白が可哀想だろ!

てか、どれがいいかと聞いておきながら全否定なんですが…

 

「この薄紫?みたいなのは?」

「…………」

 

じっと俺が手に持ったマフラーを見つめ、考え込むような素振りをする蘭。

 

「これにする」

 

やっと決まった……

 

「なら、買ってしまうか」

「うん、レジに行こ……って、なんで拓弥も同じやつ持ってんの?」

 

「俺もこのマフラー欲しくなったから」

「去年は『俺はマフラーよりもネックウォーマー派なんだ』とか言ってたくせに?」

 

「今年はマフラーな気分なんだよ」

「あっそ………好きにすれば」

 

「許可するんだな。『拓弥とお揃いのマフラーなんて嫌だ!』とか言われるかと思ってたのに」

「そ、そういう気分なの!悪い?」

 

そ、そんなに怒らなくてもいいじゃないか…

これだからツンデレは……

 

 

せっかく付き合ってるわけだし、ペアルックとまではいかなくてもお揃いの何かが欲しかったりしなかったり……

 

なんだかんだで俺も蘭のこと好きなんだよなぁ

 

お会計をする時、2人でお揃いのマフラーを買うことを店員に気付かれて、めちゃくちゃニッコリして「ありがとうございました」って言われた

めっちゃ恥ずかしかった…

 

 

 

「なぁ、蘭」

「なに?」

 

「これやるよ」

 

そう言いながらカバンから小さな箱を取り出す

 

「開けてもいい?」

「あぁ、少し早いけどクリスマスプレゼント」

 

喜んでくれるといいんだけど。

ちなみに中身は…

 

「凄い、ネックレスだ……」

「そんな高級なものでは無いんだけどな」

 

ネックレスと言っても小さなハート型のアクセサリーに銀の細いチェーンが付いたようなやつだ。

 

「裏側に刺繍をしてもらったんだ」

 

ハートの裏側に"Ran"ってカッコよさげな刺繍を小さく入れてもらった

 

「……ありがと、大事にする!」

 

「ば、ばか!急に抱きつくなって!」

「いいじゃん!こんな時くらい!」

 

喜んでくれてなにより。

蘭の笑顔が見たい、蘭に笑顔になってほしい。

そんな気持ちで選んだプレゼントだったから。

 

でも、さすがに人前で抱きつからるのは恥ずかしい!

 

「分かったから離れろって!周りの人が見てるから!」

「なに?照れてるの?」

 

こんな感じで楽しくデートをしていた

 

 

ここまでは良かった………

 

 

 

その帰り道のことだった

 

 

「今日はありがとね」

「おう。こちらこそ、今日はありがとな」

 

「さっそく明日から……ネックレス付けるから」

「それは嬉しいな、是非身に付けてやってくれ」

 

「それから、マフラーも」

「おう。あのマフラーは蘭に良く似合った色だと思うぞ」

 

「拓弥はマフラーしないの?」

「するつもりだぞ?明日も冷えるだろうしな」

 

「そっか……」

「なんでそんなにニヤニヤしてんだよ」

 

「べ、べつにニヤニヤなんかしてない!バカ!」

 

あーはいはいそうですかー

こんなこと言って、蘭もお揃いのマフラーを嬉しく思ってくれてたら良いな

 

「あ、拓弥。このビル工事してるんだね」

「ほんとだ。まぁ、俺らが小さい頃からあるからなぁ」

 

「なんか、懐かしいね…」

「そうだな」

 

 

「拓弥、そういえばs「あぶねぇ!!!」」

 

 

最初は夢かと思った。

 

だって、工事現場の組み立ててあった足場が崩れて自分の方向へ倒れてくるなんてマンガやドラマの世界だけの出来事だと思っていた。

 

しかも、気付いた時にはもう目の前まで迫ってきていた。

考えるよりも先に蘭を突き飛ばし、次の瞬間……

 

俺は鉄パイプやらなんやらの下敷きになり、意識が遠のいていった

 

 

目を覚ましたら、泣きながら俺の左手を握ってる蘭が目の前にいた

 

「蘭、今どこだ?」

「救急車の中!拓弥は喋らないで!」

 

「そ、そんなに重傷じゃねぇって」

「いいから黙って寝てて!」

 

すぐに救急車は病院に到着し、レントゲンなどの検査を色々と受けた

 

そして検査が終わり病室に移され、ベットに横になっていると

 

コンコン

 

ノックをする音が聞こえ、返事をすると蘭が入ってきた

 

「………」

「これは事故だ。蘭が悪いわけじゃない」

 

「そうだけど……、私を庇わなかったら…」

「"庇わない"なんて選択肢はあの時無かった。それに、俺は頑丈だからこんなので済んだけど、もし蘭が下敷きになってたらもっと重傷だったかもしれないだろ?」

 

「でも、その右腕……」

「折れてるらしい。でも、骨折ならすぐ治るし、心配することねぇよ」

 

とりあえず応急処置をして、検査結果が揃い次第、詳しく説明するらしい。

ということで、とりあえず右腕はギプスと包帯グルグル状態なわけである

 

「ホントごめん…」

「謝るなって。蘭が無事で良かった」

 

 

コンコン

 

またノック音が聞こえ、返事をすると扉が開くと同時に小さな少女が駆け寄ってきた

 

「うわぁーん!お兄ちゃーん!」

「紗南!?」

 

「お兄ちゃんだいじょうぶなの?」

「あぁ、少し怪我しただけだから。心配かけてごめんな」

 

続いて沙綾と千紘さんも部屋に入ってきた

 

「母さん、沙綾、心配かけてホントにごめん」

「私からも……ホントにごめんなさい」

 

千紘さんが俺たちに近づき、俺と蘭の手を優しく握りながら言った

 

「心配したのよ………」

 

この言葉を聞いた時、心が凄く痛かった

 

「でも、無事で良かった……!」

 

そして優しく俺を抱きしめてくれた

 

「ホントに………ホントにごめん」

「いいのよ…たまには心配かけたって。

だって、私はあなたの母さんなんだから」

 

「蘭ちゃんは私が家まで送るから今日は帰りましょう。お父さんも心配されるわ」

 

「わ、私は……」

「蘭、母さんの言う通りだ。親父さんが心配するだろうし、俺もこの通り元気だ。心配だったらまた明日お見舞いに来ればいいさ」

 

「そうだね…。それじゃあ今日は帰るね。また明日」




ホントに長い間お待たせいたしました!
長すぎて待ってくださってた方がいたかどうかわかりませんが、ようやく15話を投稿することができました

感想を下さった方々や評価をして下さった方々のおかげでここまでやれていると思うので、これからもよろしくお願いします!

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