はい、現在進行形でお通夜ムードの比企谷隊のオペレーター仲町千佳です。まぁ言うまでもないのですが、まさか防衛任務のシフトの都合で対戦カードが組まれたとはひどい話である。
私が入隊したのが1年前。当時はまだ近界民の驚異で町が不安定な時期だったのを記憶している。私と折本は運悪く近界民の襲撃に遭ったところをまだ出来て間もない界境防衛機構、通称ボーダーの隊員たちに救われた。
私達を助けてくれた隊員が新人だった比企谷八幡と本牧牧人。この人達に救われなかったら今ごろどうなっていただろうか。
とまぁ色々あってボーダーに入って私はトリオン能力が低かったためオペレーターへ、かおりはトリオン能力が高いことから戦闘員へとそれぞれの道を歩みだした。
程なくしてかおりは比企谷の弟子となって着々と力をつけつつあった。私はと言うと先輩オペレーターからオペレーター業務や情報処理業務に明け暮れる毎日が続いていた。
おっと話が脱線したのでこの話はまた今度、私は今他の隊のオペレーターの子達とお昼を食べに食堂に向かっていた。ちょうど防衛任務上がりの嵐山隊の綾辻遥とB級1位の風間隊の宇佐美栞と出くわして行くことなったのだが。
「浮かない顔だね」
今日は何を食べようかとメニューとにらめっこしていると不意に綾辻から声をかけられた。
「えっ?」
「顔見ればわかるよ。眉間にシワよってるときは難しいこと考えてるなって千佳の癖よ」
「はぁー遥にはなんでもお見通しだなぁ」
まぁ入隊してから一緒に色々教わってきた仲だから付き合いは長い。私の事よく知ってるし、私も遥の事知っている。隣の眼鏡は何食わぬ顔してお昼の羅んちを頼んでいるけど。
「いやーそれにしてもなんといいますか、大変だね仲町ちゃんの所」
「大変なんて他人事みたいに言わないでよ。あぁ思い出しただけで憂鬱」
「まさか東隊と太刀川隊が相手とは御愁傷様だね。まぁA級に上がれば嫌でも当たるんだから今のうちにね」
「何よそれ。自分の隊は既にA級だからって余裕ってこと?」
「違う違う!!私なんか毎回毎回当たる度に色々やらかして隊に迷惑かけて四苦八苦してるんだから」
「まぁあの人達変人ってくらい強いからね。私達もうかうかしてられないよ」
「風間隊はたしか遥の所と草壁隊とだっけ?」
「そうなの。お手柔らかにね綾辻ちゃん」
「こちらこそ。手加減しないからね」
「手加減なんかしたら風間さんが黙っちゃいないよ」
そりゃそうだ。風間隊の風間蒼也隊長は、高いプライドを持ち常に冷静。だが中々に熱い男で数々の壁を知恵と鍛錬で乗り越えてきた強者。
油断と言うものは一切せず常に全力で向かっていき、自分の考えをはっきりと口に出す辛辣さがあるが、その分受け入れるに値する発言であれば上下を問わず受け入れる上、役目を果たせばその分きちんと報いる。
「はぁーいいねぇ栞とこの隊長は頼りがいがあってさぁ。うちの隊長なんかいつも働いたら敗けだとか云って面倒臭いとか言ってるのに」
「そう?何だかんだ言って仕方ねぇなって言ってちゃんとやってるじゃない。現に今だって弟子つれて稽古に行ってるみたいだよ」
「「?」」
「さっきあっちの方で言ってたよ。比企谷君が珍しく訓練所で模擬戦やってるって」
明日は雨か、いや槍が降るか。
場所は変わって比企谷隊の作戦室には今比企谷と折本が残って今までのランク戦のログチェックを行っていた。本牧は師匠である玉狛支部の木崎レイジのもとへアドバイスと師事を受けに玉狛支部へ出掛けている。
「あぁ、何度見ても勝てる気がしねぇな」
「強すぎなのよね東隊。特に東さんの隙のなさ。撃ったと思ったらすぐ次の狙撃ポイント目指して走ってるし」
「唯一ある撃った後の隙さえ与えねぇとか変態過ぎだろあの人。本当に大学院生かよ。まぁボーダーいる時点で一般人でねぇのは確かだけどよ」
狙撃手の本分である援護や隠密ではボーダー内トップクラスの能力の高さを誇り、攻守において狙撃手として完璧な人物。
また、狙撃技術だけでなく、状況判断や指揮能力などにも非常に優れ、現場指揮官を請け負い、戦場で直接戦いながら隊員たちを率いる出来る男、それが東春秋である。
「さすがは『ローテンションロングレンジロン毛』と言われるだけあるわぁ」
「なにそれウケるんだけど。東さんそんな風に呼ばれてるの?」
「いや今咄嗟に思い付いた」
「それ東さんの目の前では言わないことね」
「大丈夫だ、全部佐鳥の責任だから」
「それはそうと、どうするの?ぶっちゃけ東隊だけでも厄介なのに更に太刀川隊なんて目茶苦茶なのがおまけで着いてくるなんてどんだけ私ら運に見放されてるのよ」
太刀川隊をおまけ扱いする折本にむしろ恐怖を覚える八幡だった。確かに運は無いだろう。なんせ隊長がこのやる気ねぇで通ってる俺だからな。って何自分で自分をディスってるんだか。アレメカラアセガ
「本来なら東隊と太刀川隊をかち合わせて横から掠めとるってのがセオリーだろう。だが今回に限ってはそれは通用しねぇ。何故ならこれは俺らを試験する模擬戦だからな。太刀川隊は確かにおまけみたいなもんだろう。たぶん太刀川さんは趣旨わかってなくって普通にランク戦してくるだろうよ。でも東さんはちげぇな。あの人は人を見る目がある。俺らがA級で通用するかを確かめる意味ではあの人相手に見てもらっ方が今の俺らがどうなのかわかるはずだ」
そう、これはあくまでもA級に上げてもやっていけるかどうかを判断するための試合だ。東隊は試験官のようなもので勝ち負けが全てではなく、今までの全てを出しきって如何に印象を残すかが鍵となってくる。我々比企谷隊のコンセプトは本牧が敵を釣り、比企谷が削り、エースの折本が止めを刺す戦い方かメインである。普段通りにやればいいのだが、何か隠し玉でもあれば面白くもなかろうか。
「ねぇ、比企谷」
「あん?」
後ろのソファーで寝っ転がりながら端末を弄くる比企谷に折本は真剣な眼差しで言う。
「稽古をつけてください」
折本の意思は堅かった。その目には一切の曇りもなく一点のみに注がれる。虚ろで濁った目の奥を見つめている。
「仕方ねぇな。ちょっとだけだぞ」
訓練室につくまで二人は終始無言のままだった。
~嘘予告~
次回、師弟による奥義伝授。そして本牧君、筋肉の洗礼を浴びる。
おまけ「きな粉餅禁止令」
太刀川「国近!悪い、お前のゲームにきな粉こぼしちまった!!」土下座
国近「太刀川さん、きな粉禁止」
太刀川「えっ?」
国近「禁止」満面の笑み+額の青筋
太刀川「あっあの…」
国近「き・ん・し♪」般若の形相
太刀川「( ´・3・)」
出水「由宇さんこえぇぇぇ」((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
出水はこれから国近には逆らわないと学んだ。