超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第三十話 少女の実力

身元不明の少女、ケーシャを保護してから数日。ケーシャは体調を崩す事も、不審な行動を見せる事もなく、数日間を静かに過ごしていた。

 

「リーンボックスからの進展報告は?」

「無いね。けど順調に進んでいて特筆する事が無いからこそのものだろう」

「そうね。けど一応こちらからの情報には注意しておく事。ああ見えてベールはかなり強かよ」

「分かっているさ、ノワールもプライベートでうっかり口を滑らせないよう気を付ける事だね」

 

執務室から出ていくケイは、相変わらず余計な一言を言ってくる。けれど付き合いの長い私にとっては慣れたもので、普段なら軽く受け流せるというもの。…ユニに対しても同じ態度だし、ユニが悪影響受けないといいけど…。

それから数十分後。今日中に済ませる予定だった仕事を全て終えた私は軽く伸びをし、執務室を出た。

 

「……さて、まずは…」

 

私が向かったのは、ユニの使う執務室。でも別に仕事を頼むとか、何か用事を伝えるとかじゃない。

 

「入るわね。ユニ、調子はどう?」

「問題ないよ。…あ、これ頼まれてたやつをまとめたものなんだけど…」

「へぇ、もうやってくれたのね。助かったわ」

 

手渡されたのは、訓練も兼ねて頼んでおいた仕事の書類。これは本来女神じゃなくて職員が行う職務だけど…部下の仕事内容をきちんと把握してなきゃ適切な指示は出せないもの。その為には実際にやってみるというのも有りよね。

 

「……うん、よく出来てるわ」

「そ、そう?…よかった…」

「私はもう仕事終わったし、ユニも一通り出来てるならキリのいいところで終わってもいいわよ。じゃ、これは持っていくわ」

「あ、うん。もうちょっとで全部終わるから、アタシはもう少し頑張るね」

「そう?じゃ、頑張りなさい」

 

ユニが仕事に行き詰まった様子はないと分かった私は、表情はそのままに内心で安心しながら部屋を出た。ここのところはいつ来ても問題なく出来てるようだし、これなら見に来る頻度は減らしてもいいかもしれないわね。ユニだってしょっちゅう見に来られたら気が散っちゃうだろうし。

…と、いう訳で出た私は一度執務室に戻り、受け取った書類をしまって再び廊下へ。それから向かったのは、自室ではなく来客用の部屋。

 

「ケーシャ、いる?」

「あ、ノワール様」

 

ノックし声をかけると、すぐにその部屋の住人であるケーシャが出てくる。保護中のケーシャは来客ではないけど、体調悪くもない人間が医務室を使うというのもおかしいという事で、私は一時的にこの部屋を貸し与えていた。

 

「お仕事終わったんですか?」

「そうよ。貴女は……何していたか分からないわね…」

「テレビ見てたんです。点けっ放しでノワール様を迎えるのは失礼だと思って切ったんですが…」

「お互いプライベートの時間なんだからテレビ点いてる位問題ないのに…ケーシャってちょっと世間ズレしてるわよね」

「あ、あはは……」

 

当然の事だけど来客用の部屋はシンプルな内装をしていて、個性というべきものは特にない。しかも現在使っているのがあまり私物を持っていないケーシャという事もあり、部屋の中は殆ど変化していなかった。…ケーシャって趣味とかないのかしら…まだ趣味や娯楽に興じる事を遠慮してるだけかもしれないけど…。

 

「ま、いいけどね。…ケーシャ、今から貴女に話したい事があるんだけど、大丈夫かしら?」

「話、ですか?…大丈夫ですけど…」

 

中に入り、腰を下ろす私。ケーシャも前置きを入れるなんて何事かとそわそわしつつ、私と正対する位置へ腰を下ろす。

私がケーシャの使う部屋へ訪れた理由は二つ。一つはユニの時と同じく、様子を見る為。何か問題を抱えてないか、手助けを必要としてないか…そして、怪しい動きをしていないかを自分の目で確認しようとこの部屋に来ている。で、もう一つは……

 

「…単刀直入に言うわ。ケーシャ、貴女仕事探してるでしょ」

「え……な、何故それを…!?」

「何故って…だって貴女、昨日一緒に外出た時求人誌に目を通してたじゃない」

「……み、見てたんですね…」

 

保護された環境で外出禁止じゃ息が詰まるだろうと思って、ケーシャを外に連れ出したのが昨日の話。気分転換狙いの外出だったけど…まさか求人誌を見るとは思っていなかった。…でも、いい事よね。保護されてる現状に甘えないで頑張ろうとするのは。

 

「…で、一つ訊いておくけど…身分証明の当てはあるの?真っ当な仕事をする気なら、身分証明が出来なきゃ話にならないわよ?」

「…ですよね…分かってます……」

「…話してくれる気には?」

「……すいません…」

「そう……まぁそうだろうと思ったわ」

 

数日経った今も、ケーシャは育ててくれた人達の事を言おうとしない。でももうこれは絶対話してくれないか、長い時間を費やすかしないと無理だと私は分かっていたから、用意しておいた書類(ユニに頼んだのとは別よ?)をケーシャに見せる。

 

「これは…?」

「戸籍登録及び身分証明にまつわる書類よ。書けるところだけ書いてくれれば、後は私が処理してあげるわ」

「そ、それって……」

 

目を見開き、書類と私の顔を交互に見やるケーシャ。その顔は信じられないと言いたげな…って言うか、その内言うんじゃないかしら…。

 

「…い、いいんですか…というか、大丈夫なんですか…?」

「私は女神よ。現代は女神が法…つまり、私が法なのよ」

「えっ……そ、それは…なんと言うか…」

「…なんてね。職権濫用するんじゃなくて、ちゃんとした手順を踏んで進めるつもりだから安心しなさい」

「そ、そうですよね…でも、本当にいいんですか…?」

「いいからこうして書類を持ってきてるのよ。貴女を信用しての事だし、これが順調に進めば『やる気があって健康体なのに、環境や経歴のせいで身分証明が出来ず社会参加出来ない』って人への支援方法確立に繋がるもの。…だから、受け取って頂戴」

 

もしケーシャが禄でもない生き方をしていて、その結果生活が立ち行かなくなったというなら保護はしつつも厳しく接していただろうけど、彼女はその逆。事故に非がない中で燻らず、現状を変えようとしている人がいるならそれは支援してあげるべきだし、そういう人に道を示してあげてこその女神よね。

私がそう言って笑みを浮かべ、ケーシャの前へと差し出してから十数秒。ケーシャは迷って、考えて、私の目を見つめて……それでも最後は、ゆっくりと書類を受け取った。

 

「…私、数日前までは家も仕事もなくて、その日過ごすのだけでも大変だったのに…こんな幸運、信じられません…」

「天は貴女を見放さなかった、って事よ。私女神だし(ほんとに言った…)」

「そ、そうですよね…これは幸運じゃなくて、ノワール様が私にくれたもの…ノワール様、私一生ノワール様を信仰します!」

「あ、う、うん…えっと、一応覚えておいてほしいんだけど、一般的な戸籍とは扱いが別だから定期的に役所に行かなきゃいけなかったり、身分証明の際にも場合によっては手間がかかったりする事もあるんだけど…それは大丈夫?」

「その位得られるものに比べれば軽いものです!本当に、本当にありがとうございますノワール様…!」

 

私の右手を両手で握り、ぺこぺこと何度もケーシャは頭を下げる。人一人の戸籍位冗談抜きに仕事の片手間で何とか事だから、私からすれば「そこまでしなくても…」って事だったけど……一ヶ月以上浮浪者として先の見えない生活をしてきたケーシャにとって、これがどれだけ救いとなるのかは理解出来る。だから私はケーシャの感謝を、黙って受け入れた。

そして、すぐにケーシャは記入を行い書類を返してきた。私も客室を出た後執務室に再び戻って残りの部分を記入し、私の承認を得たものだという判子を押して然るべき部署に回す。そうして数日後……ケーシャは、身分の分からない『誰か』から、公的な保障のされた『ラステイションの国民』となった。

 

 

 

 

「こんにちは、中々達成されてなかったり放置されてたりするクエストはあるかしら?」

「そうですね、その条件ですと……って、あ…の、ノワール様…?」

「そうよ。だから難易度は高くても構わないわ」

「わ、分かりました。少々お待ち下さい」

 

ギルドの窓口で、受付員にクエストの見繕いを頼む私。ケーシャの身分証明が出来るようになってから一週間。私はある考えがあってギルドに来ていた。

 

(今日もギルドは賑わってるわね。…これが良い事なのか悪い事なのかは分からないけど)

 

多くの人が利用してるという事はつまり、ギルドというシステムが上手く回っているという事。それは間違いなく良い事だけど…依頼内容の傾向によっては、ラステイションの治安や流通に問題があるとも言えてしまう。社会への不満の皺寄せがギルドに来てる、とかだったら嫌よね…。

そんな事を考えながら待っていると、隣の受付から声が聞こえてくる。

 

「あの、クエストの受注をしたいのですが…」

「おや、貴女は…ここのところ連日来ていますね。お身体の方は大丈夫ですか?」

「は、はい。これでも丈夫なので…」

(へぇ、あの子はよく来てるのね)

 

少し気になってちらりと見ると、隣で受付員と話しているのは黒髪ロングに翡翠色の瞳を持った少女だった。…うちのパーティーメンバーは常識的な身体能力をかなぐり捨ててる人ばっかりだから比較対象にならないとして…ぱっと見まだ大人とも言えない感じなのに、連日来てるなんて珍しい子ね……

 

「……って…え、ケーシャ?」

「へ?……え、ノワール様!?」

 

隣にいた少女が知り合いどころかまさかのケーシャであった事に驚いて、つい二度見をしてしまう私。その声で気付いたケーシャも私とギルドで鉢合わせするとは思ってなかったらしく、こっちもこっちで二度見。意外と現実にはない二度見が、この瞬間は二回も発生していた。……二度見だけに。

 

「ど、どうしてケーシャがここに?」

「そ、そういうノワール様こそどうして…?」

「私はクエストを受ける為よ。貴女は…いや、ケーシャはさっき受注したいって言ってたわね…」

 

訊いておいてアレだけど、ここの職員でもなければギルドへくる用事なんてクエストを受注するか依頼するかの二択。性質上色々な情報も集まるから情報収集の為来る人もいるけど、それを含めたって三択でしかない。で、それぞれの行為の理由も幅なんてないんだから、考えてみればナンセンスな質問だったわね。

 

「…毎日クエストしてるの?」

「あ、はい。あんまり女の子らしくないって思うかもしれませんけど、私身体を動かすのはそこそこ得意なんです」

「じゃあ、採取とか配達とかを?」

「いえ、主に討伐を」

「へぇ、討伐を……と、討伐?」

 

ケーシャの返答に、私は自分の耳を疑う。目の前にいるのは、学校でなら図書委員とかやっていそうな少女のケーシャ。そのケーシャが…討伐を……?」

 

「ね、ねぇ貴方…この子が言ってる事って、本当なの…?」

「え、あ…そう、ですね。初めは僕も驚きましたが、彼女は毎日討伐系クエストを受けてはすぐに達成してくるんです。登録してから日が浅いので、彼女が受けられるクエストはまだ低難度のものばかりですが…能力的にはもっと高難度のものもこなせるのかもしれません」

「そうだったのね……あ、そうだ。だったらケーシャ、今日は私と一緒にクエストやってみない?」

「ノワール様と、一緒に…ですか…?」

「えぇ。私は報酬目的じゃないから分配は貴女が決めてくれていいし、複数人で行うのもいい経験になると思わない?…まぁ、ケーシャが嫌なら無理強いはしないけど…」

「い、嫌だなんてそんな!ご同行させて頂けるなんて光栄です!」

「じゃ、決まりね」

 

それから十数秒後。受付員から提示されたクエストを二人で確認し、私達は受注。一度依頼主と落ち合う必要があるという事で、早速ギルドを出るのだった。ケーシャの実際の強さは見てみない限り分からないけれど、性格からして慢心や油断はしない筈だし、私が気を付ければいいわよね。

 

 

 

 

受注したクエストは、とある私有地の森林に住み着いたモンスターの群れを倒してほしいというもの。出来るならば木に擦り傷一つ付けないで討伐してほしいという、一般の人にとっては結構な無理難題なせいで、これまで中々受注してもらえなかったんだとか。

 

「ケーシャ、新生活はどう?上手くやれてる?」

「はい。ノワール様が色々手配してくれたおかげで、不自由なく暮らせていますよ。…お料理とかお掃除はまだまだ下手ですが…」

 

森林の中を歩く私とケーシャ。自立したいというケーシャの意思を汲み、私は住居の手配もしておいた。あんまり色々し過ぎるのは所謂『依怙贔屓』になっちゃうのかもしれないけど…ケーシャはそもそものマイナスが大き過ぎだったんだもの、これ位は大丈夫よね。

 

「そういうのは慣れよ。一足飛びに上手くなろうとせず、出来る範囲で一歩ずつ進んでいく方が結局は近道なんだから」

「そ、そうですよね。勉強になります。……ノワール様も、よくクエストを行うんですか?」

「うーん…そうと言えばそうだけど、ギルドで受ける事は少ないわ。普段行うのはギルドから教会へ委託されたクエストだもの」

 

それ以外にもモンスター討伐はする事あるけどね、と私は付け加える。普通の人にとってクエスト対象外のモンスターを倒す事は利益にならないけど、女神はそもそも利益の為にクエストをやってる訳じゃない。……正直、普通に女神の職務を全うしていればお金なんて一生困らないし。

 

「教会へ委託…あれ、じゃあどうして今日はギルドで受注を?」

「それはね、委託されるクエストは大きく分けると二種類しかないからよ」

「二種類、ですか?」

 

私の言葉に小首を傾げるケーシャ。…こういう反応されると、つい色々教えてあげたくなっちゃうわよね。

 

「そ。一般の人には危険過ぎて任せられないものと、内容やそのクエスト進行において一般の人が関わるのは不味いものの二種類よ。…でも、それは一般の人に『やらせられない』クエストであって、『やってもらえない』クエストではないのよ。どういうクエストがやってもらえないか分かる?」

「え、っと…報酬が少ないクエストとか…?」

「それは確かにそうね。けどそれは、依頼主がきちんと報酬を指定すればいい話。…私がやるのは、内容が複雑過ぎるとか報酬はそれなりでも時間がかかり過ぎるとかで割りに合わないと判断され、何日も放置されてるクエストなのよ。ちゃんと報酬を用意してるのに、何日も放置されるのは可哀想でしょ?」

「そういう事ですか…そんな人達の為にわざわざギルドに出向いて受けるだなんて、やっぱりノワール様はお優しいんですね」

「ふふっ、ありがと。けど女神なんだからこれ位当たり前よ」

「優しい上にご謙遜までするなんて…私、ノワール様を尊敬しま……」

「しっ、討伐対象がいたわ」

 

戦いのプロたる女神にとって、一瞬で思考を切り替えるなんて造作もない事。ケーシャの口の前に人差し指を立て立ち止まった私は、視線の先にいる、大型犬や狼を彷彿とさせる四足歩行のモンスターへ意識を移す。…今は気付いてないようだけど…下手に動けば音か匂いで見つかるわね…。

 

「…ケーシャ、あいつは私が片付けるわ。貴女は他の個体が近くにいないか警戒をお願い……」

「いえ、ノワール様。あのモンスターは私にやらせて下さい」

「え?」

「まずは私の実力を知っておいてもらいたいんです。それに多分、あいつなら私一人で倒せます」

「……貴女…」

 

素早く倒すお手本を…と思って前に出ようとした私だったけど、ケーシャの言葉は私の意に反するものだった。そして私は気付く。ケーシャの顔から、それまで私が感じていた『普通の女の子らしさ』が消え去っている事に。

 

「…これは一撃必殺、悪くても暴れられる前に討伐する事を求められているクエストよ。…出来るの?」

「出来ます。…私にとっては、そちらの方が得意ですから」

 

懐から銃を抜き、気配を消して木陰伝いに接近するケーシャ。気配を消すなんてサブカル界隈じゃよく出てくるけど実際には難しい事で、特に本能で生きるモンスター(や動物)を欺くのは相当な技術と経験が必要となる。…けれどケーシャは、さも当然かのようにその領域の気配遮断を行なっていた。

獲物を探すようにゆっくりと歩くモンスターに対し、ケーシャは少しずつ距離を詰めていく。そうしてケーシャはあっという間にすぐ側まで近付き、木の裏側で息を殺し……数秒後、モンスターの背後へ回り込むが如く襲いかかった。

 

「ガルルゥッ!?」

「──散れ」

 

頭部の毛を掴まれ、モンスターは驚きの叫びを上げる。続けてモンスターは身を振るい、ケーシャを振り払おうとするも…それより早くケーシャは後頭部へ銃口を突き付け、三連射。乾いた音が木霊する中、モンスターは身体を震わせ……ぱたり、と倒れる。…それは、数秒にも満たない間の出来事だった。

 

「ふぅ…どうでしたか、ノワール様」

「……驚いたわ、まさかここまでの実力があるなんて…もしかしてケーシャ、アサシンのサーヴァントだったり?」

「あ、アサシン?……流石に英雄や反英雄と比べられる程じゃありませんよ…スキルで例えるなら、せいぜいD−位ですし…」

「あ、気配遮断スキルに該当するレベルだって自覚はあるんだ…じゃ、ケーシャの実力も十分みたいだし、テキパキ進めるとしようかしら…ねッ!」

 

ぱたぱたと駆けてくるケーシャの顔は、いつの間やら普段のそれに。一瞬前まで冷徹さすら感じる雰囲気だった彼女が嬉しそうに戻ってくる中、私はひょいと後ろを向き……瞬時に手元へ顕現させた片手剣を投擲。それにケーシャが驚く中、片手剣は風を切りながら飛び…私達を背後から狙っていたモンスターの頭を貫いた。

 

「…貴女には言うまでもないかもしれないけど、油断大敵よ?」

「は……はい!」

 

モンスターの消滅により落下した片手剣を拾い、ケーシャに合流。ケーシャが私へキラキラと輝く視線を向けてくれる事に内心気分が良くなりつつも表情を引き締め、次のモンスター討伐へと向かった。

 

 

 

 

あれから約一時間。私達は依頼主から頼まれてた全六体(一通り回ってみたけど七体目以降は見当たらなかったし、多分知らぬ前に増えてるって事はなさそうね)の内の五体を倒し、残すところは現在補足している最後の一体となった。

 

「まだ少し距離がありますね…ゆっくり近付きますか?」

「いいえ、この距離でもう大丈夫よ」

「へ……?」

 

きょとんとした顔を浮かべるケーシャ。確かにまだモンスターまでは距離があって、ここから仕掛けようものなら気付かれるのは必至。……でもそれは、普通に考えたらの話。

 

「私なら出来る、って事よ。少し下がってなさい、ケーシャ」

「……?は、はい…」

「…ケーシャ、貴女私の女神としての姿を見た事は?」

「テレビでなら、何度か…」

「そう。だったら、見せてあげるわ。女神の本気を、ねッ!」

 

そう言いながら女神化する私。ケーシャが目を丸くする中、私は大剣の斬っ先をモンスターに向け、地面を強く踏み締め、翼を広げ……一瞬で、モンスターの眼前へと迫った。

モンスターからすれば、それは瞬間移動も同然の現象。だからモンスターは驚愕に目を見開き、本能からか飛び退く動きを見せるけど…もう遅い。だって、私の大剣はもう頭どころか胴体にまで突き刺さっているんだから。

 

「……これが、女神の本気よ」

 

大剣を振り払い、軽く髪の毛をかき上げながら振り向く私。見ればケーシャはまた私へキラキラした視線を向けながらこちらへ来てくれていて、そんなケーシャへ私は二つの感情を抱く。

一つは、本当にケーシャは純粋な子なんだなって思い。世の中には録でもない人やしょうもない人、或いは私や私達パーティーのようにぶっ飛んだ人が多い中、この純粋さを保ってるケーシャは凄いって気持ち。そしてもう一つは……助けたあの日からずっと、ほんの少しだけど私の中に残っているケーシャへの疑惑。

今日見たケーシャの動きは、どれも卓越した技術によるもの。彼女が最初に言った通り、速攻で敵を討つ事に適したもの。……そんな技術を有するケーシャは、一体何者なのか。…今日の事でまたケーシャへを高く評価する感情が強くなりつつも、同時にそんな思いが、私の中で燻っていた。




今回のパロディ解説

・アサシンのサーヴァント
Fateシリーズに登場する要素の一つの事。とはいえ基本サーヴァントは現代の銃火器なんて使わないもの。となるとこの場合は衛宮家的アサシンになりそうですね。

・気配遮断スキル
上記と同じくFateシリーズに登場する要素の一つの事。アサシンのクラス特典スキルな訳ですが、これって大概のアサシンならば生前からもってそうですね。

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