超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第十九話 プラネテューヌ、料理勉強編

女子力……文字通り、女子としての力の事。主に家事関連への能力や意欲について使われる言葉だけど…その最たる例として、料理というものがある。

料理…昨今では料理が得意な男子(というか男主人公)も多いけど、それでも料理の技術が女子の評価に大きく関わるという点は変わっていないし、男を掴むにはまず胃袋からなんていう位料理が上手なのは女子にとってプラスとなる。……まぁ、キャラ付け的な意味で逆に料理が壊滅的というパターンもあるけど…あれは好ポイントとしては扱われないからね。

そんな訳で…後最近誰かの為に料理(デザート作り)を何度かした事もあって、私はふと料理の勉強をしようと思い立った。その時私が頼りにしたのは……。

 

 

 

 

「まずは手をしっかり洗う事。当たり前の事だけど、絶対に疎かにしちゃ駄目ですよ?」

「はーい」

 

プラネタワーの一角、専ら女神姉妹やその友達が使うキッチンルームで私とコンパは手を洗う。やっぱり料理…というか女子力と言えばコンパだよね。お嫁としての能力なら私達パーティーの中でも頭一つ抜き出てるし。

 

「手の甲や爪と指の間もちゃんと洗わなきゃ駄目ですからね?」

「は、はーい」

「それに、手首もです。食材や料理器具に触れるかもですから」

「…あのコンパ、序盤からしっかり教えてくれるのは嬉しいけど…私幼稚園児じゃないからね?」

「あ…そ、そうですね…」

 

眠っていた時間の関係で産まれてからの時間が実質候補生組とそこまで変わらない私ではあるけれど、流石に手の洗い方から教えられなきゃいけないレベルではない。もうそのレベルだったら料理教わってる場合ではない。

 

「こほん…では改めて、ご教授宜しくお願いします」

「はい、宜しくお願いされたです。わたしもこうして教えるのは殆ど経験ないから不安ですけど、頑張りますです。じゃあまず…イリゼちゃん、今から何を作るか分かるですか?」

「え、っと……」

 

シンクに置いてあるのはチョコにバターにナッツに薄力粉に…とお菓子作りに使いそうないくつかの食材。初めて教わるという事で元々私が(比較的)得意なお菓子類を頼んだから、コンパが作ろうと思ってるのはお菓子類なんだろうけど…うーん……。

 

「……チョコクッキー、とか?」

「残念、今から作るのはブラウニーです」

「ブラウニー…ってケーキの一種の?」

「はいです。木槌持ってるモンスターさんじゃなくて、お菓子のブラウニーです」

 

この流れでケーキ以外のブラウニーを作る訳があるか、なんて突っ込みはせず、コンパは律儀に返してくれた。…ボケて突っ込んでが日常茶飯事だと、こういう反応すら新鮮に思えるんだね…。

 

「ケーキかぁ…何か難しいお菓子の筆頭みたいな印象あるんだけど、私にも作れるかな?」

「大丈夫ですよ。確かに難しいケーキもあるですけど…それは、ケーキなら手の込んだ事をやり易いから結果として料理慣れしてる人が難しいケーキを作るというだけで、実際は簡単なケーキも沢山あるんです」

「そうなんだ…うん、じゃあ私頑張ってみるよ」

「ふふっ、その意気ですよイリゼちゃん」

 

コンパからのエールを受けた私は、エプロンの帯びが緩んでたり何かに引っかかりそうだったりしないか確認して包丁を持つ。

最初に行うのはチョコとナッツの切り刻み。チョコは最終的に溶かしちゃうから雑でもそこまで影響はないけど、ナッツはサイズや切り口によって食感が変わるから自然と慎重になってしまう。

と、そんな中早速コンパのアドバイスが飛んた。

 

「…もう少し、思いきりよくやってもいいと思うですよ?」

「…そう?」

「サイズが気になるのは分かるです。でも分量や火の強さと違って多少の差なら然程問題にならないですから、最初は思った様にやった方がいい経験になるんです」

「そういうものなの?」

「そういうものです。それで、何回も料理していく内にどれ位がベストなのかは分かってくるんですよ」

 

コンパはそういうだけで、どういう感じでどれ位に切るのがベストなのかは教えてくれなかった。きっと、それも含めて自分で掴んでいけって事なんだよね。

 

「…切り終わったよ」

「それじゃあ次は混ぜていくです」

 

バターやらチョコやらをコンパに指示された順に入れて混ぜていく。勢い余って零さない様に、入れ忘れしない様に…と頭の中で自分に言い聞かせていると、段々ボールの中の見た目が変わってきた。……しかし…これはアレかも…。

 

「…ねぇ、これ途中でネプテューヌが乱入してきたりしない?」

「さぁ…でもねぷねぷはギアちゃんと遊んでましたから、多分しないと思うです」

「そ、そっか…」

「……?」

「あ、何でもないから大丈夫…」

 

私の意図が分からない、と言いたげにコンパは首を傾げる。この最中にネプテューヌが来たら料理の進展は遅れる事間違いだから、普段なら乱入しない方が良いんだけど……この場は一つ、大きな問題がある。

 

「……イリゼ&コンパのアトリエ…」

「ほぇ…?」

 

ぼそり、と食材混ぜから思いついたネタを言ってみるも…相手がアイエフやノワールではなくコンパであった事とネタとして無理があった事が原因で空ぶってしまう。……やっぱり…やっぱりここにはギャグ成分が足りない!

 

(本来こういう状況は描写外でやるべきだよね!?淡々と私がブラウニー作るシーンが続いたって何も面白くないよ!?ど、どうしましょうこれ!)

 

ボウルとへらを手に、心の中であたふたと慌てる私。もうどう考えてもメタいし私の気にすべき範疇を遥かに超えてるし、更にメタいけどそういう事じゃなくてブラウニーの事を考えた方が良い気がするし…まーもう私はパニックだった。こうなったら……

 

「こ、ここで唐辛子と青汁とカラフルなキノコを投入するとか…?」

「な、何を言い出してるんですかイリゼちゃん!?駄目ですからね!?特に最後のは絶対駄目ですっ!」

「ええぃ!ならばへらの代わりにドリルを使ってやるぅ!」

「ボウルが壊れちゃいますよ!?せ、せめて使うなら泡立て器に…」

「…そうだよね、料理である事を忘れちゃいけないよね…」

「そ、そうです…イリゼちゃんが落ち着いてくれた様なので一安心……」

「料理の原点と言えば焼く事!ファイアー!」

「わぁぁぁぁっ!?」

 

謎のテンションでコンロに片っ端から火を付けていく私!ビビりながらもすぐに全部消すコンパ!数秒後、私は我に返って反省する!

 

「うぅ、イリゼちゃんが壊れちゃったです…」

「ごめん、本当にごめん……」

 

冷静さを取り戻した私は、本来の目的の過程である食材混ぜに戻る。あわや大火事…って程ではないものの、決して良い子は真似しちゃいけない所業をしたにも関わらず、コンパは特に私に怒ってくる様子はなかった。……というか、引いていた。

 

「…後でお熱、測った方がいいですか…?」

「え、遠慮しておくよ…熱に浮かされてた訳じゃないし…」

 

これ以上ボケるとナースであるコンパに確実に診察を受ける事になるし、それ以上にパーティーメンバーの中でも特に付き合いの長い一人にドン引きされてしまうという事で、私は料理中のボケを封印する事にする。……はぁ、今作始まってからドンドン私が変な子化してる気がする…。

 

「…で、これをクッキングシートに乗せれば良いんだっけ?」

「その通りです。その後オーブンに入れて、後は待つだけで完成です」

「…ほんとに簡単だね」

「ブラウニーはクリームを塗ったりフルーツの盛り合わせをしたりしないですからね。でも、ブラウニーも凝ろうと思えばもっと凝れるですよ?」

「あはは、それはまた別の機会にするとしようかな」

 

より凝った料理を作れるのなら作ってみたいけど、そんな凝った料理を作れる程の技術はまだ私にない。それに私は今指導してもらってる身なんだから、どうしても作りたければこの後でもいい。出来る事しかしないのは成長に繋がらないけど、身の丈に合わな過ぎる事をするのもまた得るものはないってね。

 

「オーブンに投入〜時間を設定して〜…ポチッとな」

「…イリゼちゃん、ちょっとご機嫌ですね」

「そう?…んー、だとしたらそれはもうすぐ完成だから、かな?」

「だったら、いい匂いがしてきたらもっとご機嫌になるかもですね」

 

コンパの言葉に私はうん、と首肯。料理が食材の集まりの様な見た目から、完成した状態に近い姿に変わっていく過程も楽しいけど、いい匂いがしてきたり味見の結果が良好だったりした時もまた嬉しい。きっと、何かを作る趣味や仕事をしてる人の中にはこういう楽しさ嬉しさの為にやっている、って人も多いんだろうなぁ。

 

「さーって、後はお皿とフォークを用意して…」

「イリゼちゃん、それもですけどまだ忘れちゃいけない事が残ってますですよ?」

「え、まだある?」

「お片付け、です。まだ全部は出来ないですけど、まな板やボウルはもう洗えるです」

 

完成するまでじゃなくて、綺麗にしまうまでがお料理です、とコンパは自分の言葉を締めくくった。作る段階よりも地味だし面白味もないけど…だからってコンパに押し付けたり放置したりする訳にもいかないという事で、私はオーブン待ちの間の時間で洗い物を始める。すると……

 

「洗った物はわたしが拭くからここに置いて下さいです」

「あれ、コンパは今回手を出さないつもりなのかと思ってたけど…違うの?」

「お片付けの内容には教える要素がないです。だからですよ」

「そういう事ね…助かるよ」

 

二人で洗い物をしていると、ふと私は思い出す。皆で旅をしてた時はコンパや誰かが料理作ってくれた時は皆でテーブル拭きや食器洗いなんかの手伝いをしたなぁ…って。

 

「……皆、旅の最中の女の子の一人ではなくなっちゃったんだよね…」

「イリゼちゃん…?」

「何でもないよ、ただちょっと感傷的になっちゃっただけだから」

 

そう、私は呟いた。全員が元からの旅人だった訳じゃないし、もっと言えば今の生活が出来る様にする為頑張ってきたんだから…それは仕方のない事。だから前の方が良かったなんて言う気はないし、今も良い日々だけど…偶に、こうして思ってしまう事がある。けどそれは欲張りな思いなんだよね…と苦笑いを浮かべて、重ねて否定をしようとコンパの方を向いたら……

 

「なくなって、なんかないですよ」

「え……?」

「確かに旅人の最中の女の子ではなくなっちゃったです。でも、わたしは今もわたしで、イリゼちゃんもイリゼちゃんで、ねぷねぷはねぷねぷ、あいちゃんはあいちゃん、皆前も今も皆です。だから…えっと……」

「……うん、ありがとねコンパ」

「…伝わった、ですか?」

「勿論。今も前も私達は友達だからね」

 

立ち位置や目的は変わってしまったけど、私達が誰か別の人に変わった訳じゃないし、私達が皆に抱く気持ちが変わってしまった訳でもない。そう、その通りだ。だから私は監査の旅の中で皆に会って、その度楽しいと思えたんだから。……だったら、こんな寂しさを抱く必要なんてないんだよね。

私は、コンパに見せる表情を苦笑いから笑顔に変える。オーブンが音を立てたのは、それから数分後の事だった。

 

 

 

 

「ふぅ…出来たーー!」

 

切り分けフォークを用意したブラウニーを前に、つい私は声を上げてしまう。当然その場にはコンパもいる訳で、声を上げた瞬間それを思い出した私がちらりとコンパの方を見ると……コンパはただ微笑んでいた。…うぅ、そういう大人な反応はそれはそれでキツい……。

 

「お疲れ様ですね、イリゼちゃん」

「そこは笑って!子供っぽいって笑ってよ!優しい天然はこういう時怖いよ!」

「あ、あの…どうしてわたしは軽く怒られてるです…?」

「それはごもっともです…ほんとお世話かけました…」

 

またまた謝罪する私。ここまで来るともう本当に大人な反応されても仕方ない気がする。

 

「…っとそうだ、一応味見はしたけど…コンパも食べてみて評価してくれない?最低限ヤバい味にはなってないと約束するよ?」

「最初からそのつもりですよ。それに、今回はせっかくだからと普段は食べてもらえない人にも食べてもらえる様呼んでおいたです」

「あ、そうなの?誰呼んだの?」

「マジェコンヌさんです」

「へぇ、それは確かに普段は食べてもらえないどころか旅の最中で会う事もままならないから良い機会…ってマジェコンヌさん!?」

「はいです。早速呼んでくるですね」

「説明は!?まさかの説明なし!?…っていやいや、ノワール達とか別次元組の皆ならともかく、流石にこんな事でマジェコンヌさんが来たりは「ほぅ、中々良い匂いじゃないか」したぁ!?」

 

マジェコンヌさんの登場で私は目を剥く。え、いや…まさか私のブラウニー欲しさに来たの!?嘘でしょ!?

 

「…私は食べてみてくれと言われただけで、ここに来たのは元々近くに寄ったからだぞ?」

「あ、あぁ…びっくりしました…」

 

私が目を剥いていたのを見て気付いたのが、マジェコンヌさんはすぐにフォローを入れてくれた。まぁ、よく考えればブラウニー作りは大々的に公表してたりはしないんだからブラウニーの為に寄った訳ないんだけど…。

 

「それじゃあイリゼちゃん、食べてみてもいいですか?」

「うん。マジェコンヌさんもどうぞ、お口に合うかは分かりませんが…」

「すまないな、私も頂いてしまって」

「いえいえ、元々自分で食べる用として作った訳じゃないですから」

 

小皿に切り分けたブラウニーとフォークを渡すと、二人はブラウニーを口に運ぶ。

口に入れ、咀嚼し、飲み込む。その一連の行動を見つめる私はちょっと緊張していた。人に料理を振る舞う経験が少ないからか、どうも毎回緊張して落ち着けない。命の獲り合いは何の緊張もなく出来るのに…慣れって凄いものだね。

そして……

 

「…ど、どうでしょう……?」

「…うん、私はあまりこういうのを食べる訳じゃないが…美味しいと思うぞ」

「わたしもそう思うです。頑張ったですね、イリゼちゃん」

「……!…よかったぁ……」

 

にこり、と二人は美味しそうな顔を浮かべてくれた二人を見て、私は胸を撫で下ろす。完成に近付いてきた時も気分が良かったけど、やっぱり料理においては美味しいと言ってもらえた瞬間が一番嬉しい。だから自然と私の顔もほころんでいた。

 

「イリゼちゃんも食べてみたらどうです」

「ん、そうだね……あ、ほんとに美味しい…」

 

フォークで刺して一つ口に運んでみると、ナッツの食感とチョコの甘さが口に広がった。自分で言うのもアレだけど…やはり美味しい。上出来と言っても差し支えない出来だった。ただまぁ……

 

「…もう少し柔らかい方がナッツとの組み合わせもあって良かったかな…」

「わたしはこのままでもいいと思うですけど…そういう反省を重ねる事で、料理が上手になるんですよ」

「そっか、じゃあまた見てくれる?」

「勿論、です!」

 

ぐっ、と両手を胸の前で握ったコンパに改めて感謝を伝え、もう一つ私は口にする。これ単体でも美味しいけど、この甘さに合う紅茶でもあれば更に……と考えた辺りで、私はある事を思い出す。

 

「そうだ…マジェコンヌさん、最近新興宗教について耳にしたりはしましたか?」

「む……あぁ、犯罪組織の事か…」

 

私は具体的な名前を出してはいないけど…マジェコンヌさんは既に知っている様だった。更に言えばコンパも初耳ではない様子をしていた。マジェコンヌさんは旅の中で耳にしたんだろうけど…コンパは教会でかな。ネプテューヌやイストワールさんと接する機会が多い訳だから、そこで聞いていてもおかしくないし。

 

「どうやらマジェコンヌさんの行ってきた事を曲解して、貴女の意志を継ぐ…なんて考えているみたいですが…」

「私の意志を継ぐ、か…それはつまり、犯罪神の負のシェアに汚染された人間の真似事をするという事。全く、笑えないな…」

「そう言っていたのは勧誘担当なので、中核はどう考えているか分かりませんが……その、大丈夫ですか…?」

 

あの時犯罪組織の存在を知ってから、ずっと気がかりだった。マジェコンヌさんは、自身の事をよく知らない人達に勝手に崇められ、勝手に名前を利用される事に心を痛めてるんじゃないかと。世界の為に先代の女神に協力していたマジェコンヌさんにとって、この次元を崩壊させようとしていた事は自身にとっての恥辱であり、今も負い目に感じているに違いないんだから。

でも……マジェコンヌさんは達観した様な、少し自虐気味の顔でこう言った。

 

「仕方のない事さ。仕方のない事であり…これは、私が背負うべき業だ」

『業…ですか……?』

「私はやりたくてやった訳でも、世界を破壊しようとする意志があった訳でもない。だが…私が崩壊させる為に行動し、君達がいなければ確実に壊していただろう。その事実は、何があろうと変わらない。…これは、理由や原因どうのこうので言い訳がつくレベルではないのさ」

 

マジェコンヌさんは、受け入れていた。諦め、卑屈になるのではなく…自分のした事は自分のした事なのだと受け入れていた。

それは難しい事だ。諦め卑屈になるのは簡単に出来る。似ている様だけど、諦め卑屈になるというのは「俺はこんな悪い事をしてしまったと自覚してるんだ。俺は悪い人間で、救いようなんてないんだ」と言っている様なもの。自ら批難してるから、という事で周りから悪く言われるのを避けられるし、同時に同情もしてもらえる。更に言えば、『取り返しのつかない事をした経験者』なんて本来褒められるべきではない事柄で、上から他人にものが言える。

でも、たた事実を述べるだけのマジェコンヌさんは多少の同情はされても、批難される事を回避なんて出来ない。それでも尚、卑屈にならず受け入れているマジェコンヌさんは……やっぱり、凄い人だと思う。

 

「…だからせめて、私は犯罪組織の動向に気を付けていようと思う。罪滅ぼしなどとは言わない。ただ、自分の尻拭いをするだけという話だ。…心配してくれた事、感謝する」

「…一人で背負わないで下さいね、マジェコンヌさん。女神は人と国を守るもの。罪だとか尻拭いだとか関係なく、私とマジェコンヌさんと目指すものは同じなんですから」

「そうです。わたしは普通の人ですけど、わたしも…皆もマジェコンヌさんに協力するです」

「……ふっ。本当に私は君達に救われるな。…もし、何かあれば私も協力を惜しまない。…これからも、宜しく頼む」

 

そう言ってマジェコンヌさんは頭を下げた。それは心からの行動だと思ったから、私もコンパも慌てて頭を上げる様に言ったりはしない。

パーティーメンバーと違ってマジェコンヌさんは一緒に旅をした友達ではないし、敵であった期間の方が長い。でも…あの最終決戦で本当のマジェコンヌさんに触れて、今も話して再確認する。皆とは関係が違うけど…間違いなくマジェコンヌさんも英雄で、同じ様に守りたいものの為に戦う仲間なのだと。

 

「…さ、重い話はこの位にしようじゃないか。イリゼ、早くそれを分けにいかなくては、ブラウニーが冷えてしまうぞ?」

「あ、そうだった…コンパ、ちょっと行ってきていい?」

「はい、行ってらっしゃいです」

 

ブラウニーを乗せた大皿を持って、私は立つ。多分冷えてもまぁまぁ美味しいんだろうけど、せっかくの出来たてが今あるんだからこれを食べてほしいよね。

ネプテューヌにネプギアにイストワールさんにライヌちゃん。アイエフはまだ帰ってきてないから保存しておくとして…職員さん全員に配るだけの数はないから、匂いを嗅ぎつけて来た食いしん坊な職員さんがいたら、その人に位はあげようかな。

そんな事を思いながら私は廊下を歩く。久し振りにマジェコンヌさんに会えて、気がかりだった事が杞憂だと分かった事もあって、私の足取りは普段よりもちょっと軽かった。ふふっ、皆も喜んでくれるといいな。




今回のパロディ解説

・イリゼ&コンパのアトリエ
アトリエシリーズの一つ、エスカ&ロジーのアトリエのパロディ。複数の物を一つの釜(ボウル)に入れて混ぜるという点だけを見たら、料理と錬金術は似てる…かもですね。

・ポチッとな
タイムボカンシリーズ(特にヤッターマンのボヤッキー)で使われる台詞の一つのパロディ。タイムボカンの他にも色々な所で使われてますよね、この台詞は。

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