超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第十八話 プラネテューヌ、候補生交流編

プラネテューヌ教会と交代する形で新たに教会敷地中央に建設された建造物、プラネタワー。教会としての機能や設備は勿論、観光地としての限定的な一般開放やプラネテューヌの十八番である最先端技術の実験なども想定に入れたこの施設は、面積こそ他国よりも若干少ないものの、高さの関係から実際にはずっと広大な作りとなっている。

しかし、完成からまだ日の浅いプラネタワーは外見こそ完全なものの内部は装飾が未完成な場所や、そもそもまだ活用されていない空き部屋なども多く、おまけに女神や職員自身も内装が頭に入りきってはいない為、現状支障なく行き来出来る範囲は限られてしまったいる。

--------と、まぁさらっとプラネタワーの説明をした訳だけど…たった今、私はネプギアと一緒に居ます。察しの良い人か、これまでのお話を読んできた人達なら、もしかしたらどういう展開なのか分かるんじゃないかな?……うんそう!私達は今それに直面してるのです!…はぁ、後悔先に立たずとはこの事だよ…とほほ……。

 

 

 

 

私が監査の旅に出る前、一つの執務室で一緒に仕事(&教育)をしていたネプテューヌとネプギア。でもラステイションに遅ればせながら私が不在の間(というか私が帰ってくるちょっと前)にそろそろネプギアも一人で仕事をしても良い頃合いだろう、と判断されたらしくネプギアの執務室が用意された。

とはいえ用意したばかりの執務室に、同じく出来たばかりのプラネタワーという事もあって、ネプギアの執務室は質素この上ない状態だった。それはネプギアも早くなんとかしたいと思っていたらしく……

 

「ね、ここは模様替えしないの?人手が必要だったら手伝うよ?」

 

と、私が言ったら待ってましたと言わんばかりに手伝いをお願いされた。何でも、意見聞くのを含めて誰かに手伝ってほしかったけど、皆忙しそうだしすぐに終わる訳でもない事を頼むのは気が引けていたらしい。気を遣えるのは美徳だけど、ネプギアの場合は遠慮が過ぎるかなぁ…。

 

「じゃ、早速始めよっか。まずはお店行ってみる?」

「あ、いえ、いーすんさんに内装用倉庫にあるものは使ってくれて構わないって言われてるので先にそっちを見に行こうと思います」

「そっか。倉庫の場所は…」

「わたしが聞いてあるので大丈夫ですよ」

 

そう言って執務室を出るネプギアとそれに続く私。始め私は「完成したばかりのプラネタワーなのにどうして倉庫を用意する程内装用の物が余ってるんだろう…」と思ったけど、よく考えたらプラネタワーはプラネテューヌ教会から代わる形で出来た建物なんだから、荷物の入れ替えの中で使わなくなった物やずっと放置されていた予備がそれなりにあってもおかしくはないと気付く。

 

「…でも、倉庫の物で良いの?最新の物は少ないだろうし女神の執務室なんだから買ったとしても経費で落とせると思うよ?」

「それはそうですけど…ほら、掘り出し物ってあるじゃないですか」

「掘り出し物かぁ…確かに移り変わりが激しいジャンルなら、良いものだけどすぐ立場を取られた…みたいな物があるのかもね」

「はい!機械のパーツと同じで、新しい物や長く残ってる物だけが良い物とは限らないんです!」

「そ、その例えはちょっと伝わり辛いけど…言いたい事はよく分かったよ…」

 

熱意ある言葉に若干気圧されながらも納得する私。いちいちパロディで例えたりそんな経験するの貴女位だよ!って突っ込みたくなる様な例えを出したりするうちのパーティーも特殊だけど…機械で例えるネプギアもそれに負けず劣らずだった。しかも女の子な分、余計特殊さが引き立ってしまっている。

 

「……どうぶつの森のロボシリーズみたいな執務室にしたりはしないよね…?」

「そ、そこまで突飛な事はしませんよ…」

 

いき過ぎたレベルになるのでは無いかと一瞬心配になった私だけど…それは無いと否定されて一安心。……しかし軽く皆の事disった数秒後にブーメラン投げてる辺り、私も救えないなぁ…。

その後も雑談しながら進む事十数分。途中ネプギアが道筋を迷う事が時折あったものの、私達は無事内装用倉庫へと到着する。

 

「思ったより来るまでに時間かかっちゃいましたね…もう一回いーすんさんに確認しておけばよかった…」

「ここまで広いと逆に不便なものだね、過ぎたるは猶及ばざるが如し…ってやつかな?」

 

扉を開いて中に入る私達二人。倉庫というのは得てして埃っぽくなる場所だけど…出来立てホヤホヤのプラネタワーの倉庫はそんな事なかった。

 

「…で、良さげな物はありそう?」

「うーん、見て回らない限りは何とも…」

「それもそっか、じゃあ私も見てみようかな」

 

早速保管されている物を見始めるネプギアを追って私も物色を開始する。別に私はそこまで部屋の内装に凝る方ではないけど…こうして多種多様な物が置いてあるとつい、『これを置いたら良いかもなぁ』とか『これは私の部屋のあれと合うかも…』みたいに想像してしまう。後で私もイストワールさんにここの物貰ってもいいか訊いてみてみようかな……って、

 

「こ、これは……」

「……?イリゼさん、どうかしました?」

「AMAZOOと書かれた段ボールとボロから最新まで色々の家具を発見しちゃったよ!?まさか入れ替えで表示されなくなった物はここに置かれるシステムなの!?」

「い、いやそんな訳無いですって…ある理由はさっぱりですけど…」

「…ポイント貯めてここの家具置いてってみる?」

「シムネプギア!?や、やりませんよ!?」

 

いきなりあり得ない物を発見して驚く私達。これはもう突っ込みどころがあるというか、むしろ突っ込みどころしかなかった。…突っ込みどころを無視して質だけを見れば、結構良さそうなのも割とあるけどね。

 

「気を取り直して……あ、このカーペット良いなぁ…」

「何だろうこれ……あ、骨つき肉型のペンケースか…」

「えぇ…何ですかそれ……イリゼさん、この基盤風ファイルとか良いと思います?」

「多分それを好き好んで使おうとするのはネプギア位だと思う…」

 

その後もちょいちょい変な物を見つける物色は続き、最終的にネプギアが満足いくまでは数十分かかった。…どうてでもいい事だけど、やはり次元を超えてきたと思われる家具類以上の衝撃を私達に与える物はなかった。

 

「……で、結局それだけでいいの?」

「いいんです、それにおっきい物は一度これ等を置いてきてからの方が効率良さそうですから」

 

空き段ボール(AMAZOOのじゃないよ)に数点ずつネプギアの選んだ物を入れて、私達は倉庫を出る。ネプギアの言った通り大きい物重い物は後回しにしたから重量的には辛くないけど…取っ手のない箱型の物って持ち辛いんだよね。左右から箱の底面に指をかけて、身体の前で持つ一般的な持ち方はちょっと手の負担が大きいし。

 

「イリゼさん…あの、申し訳ないですけど残りの物の運搬も後で手伝ってもらえますか…?」

「私はそのつもりだよ、忙しくも疲れてもないから手伝いを申し出たんだし」

「あ、ありがとうございます。このお礼は後に必ず…」

「それは、気持ちだけで十分だよ」

 

私は立ち止まり、首を横に振るう。

本当に、ネプギアは遠慮の過ぎる子だった。目覚めてからあまり日の経ってなかった頃の私もこんな感じではあったけど…ネプギアはそれ以上かもしれない。だとしたらそれは…多分、直した方がいい。私が言えた義理でもないけど、それもやっぱり『過ぎたるは猶及ばざるが如し』なんだから。

 

「何かをしてもらったらその分のお返しを…ってのは当然の事だけどさ、それは対等な関係である事が前提なんだよ。で、ネプギアからすれば私は対等な相手ではないよね?」

「そ、それはそうです。お姉ちゃんの友達で、女神としての先輩でもあるんですから」

「だったら、気を遣ってまでお礼をする必要なんてないよ。勿論、心からお礼をしたいって思ったなら止めないし、『付き合い』って形でする方が身の為になる場合もあるけど…私や守護女神、コンパやアイエフや別次元組の皆に何かしてもらった時はお礼を言うだけで十分だよ」

「そう…なんですかね…」

「そうだよ。少なくとも、私に対しては絶対にそうだよ。だって私が言ってるんだから」

「……分かりました。では、イリゼさん」

「うん、なあに?」

「手伝ってくれて、次も手伝ってくれるって言ってくれて、ありがとうございますっ!」

 

私の方を向き直り、わざわざぺこりと頭を下げてネプギアはお礼を口にする。その後顔を上げたネプギアは、少しだけといい顔をしていた。ネプギアは遠慮が過ぎるけど…素直な子だ。ネプテューヌと同じ、相手の言葉にいちいち裏を勘ぐったり曲解したりしない、素直な良い子。そんな子にこうして何かを教えられる、というのは誇らしいな…なんて思う私だった。

 

 

 

 

「……で、そこから十数分後が冒頭のシーンって訳ですよ……」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい…」

 

とぼとぼと歩く私とぺこぺこ謝るネプギア。…はい、お察しの通り私達は迷子になりました。あっはっは……はぁ…。

 

「謝らなくていいよネプギア、ネプギア任せで道覚えようとしてなかった私にも責任はあるし」

「でも、わたしが『実は居場所が分からなくなってしまいました…』ともっと早く行っていればここまで訳の分からない場所に来る事は…」

「それは…まぁ、うん……」

 

なんて雑なお茶の濁し方をしつつ、私は周りを見回す。

私が普段利用する範囲も、私達が倉庫に行くまでの道のりも、倉庫周辺の廊下も、全部壁には壁紙が貼られ床にもカーペットが敷かれていた。でも、今私達がいるのは壁紙もカーペットもなく、まるで地下通路や点検用通路の様な場所だった。

 

「ほんと、どうしてこんな所に…」

 

流石に一度プラネタワーを出たり異次元に繋がる扉を潜ったりはしてないからここがプラネタワー内である事は間違いないけど…そんな事が分かったってしょうがない。ここはプラネタワー内だ!ってだから何なの!?今の問題には何の効果も示さないよ!

 

「イリゼさん、こういう時ってどうしたらいいんでしょうか…」

「いくら私でも、こういう時にどうしたらいいかなんて…」

「ですよね…ここは頭を捻るしか……」

「うん。よく分からない内に謎の迷宮に誘われ、そこで知り合いに似た子と戦闘を繰り広げその後逃走した挙句色々あって仲間になってふざけたり真面目に考えたり探索したりした結果思わぬ激戦と出会い、そして奇跡に触れたひと時の思い出とかはあるけどね」

「そうですか…って、それ今よりずっと過酷且つ壮大な経験じゃないですか!それに比べたら今の問題なんてイージーモードみたいなものですよ!?絶対その時の経験今に活かせますって!」

 

あ、確かにその通りかも…と私は言われて初めて気付く。状況の危機度も同行者も違うけど…難度で考えれば断然あの時の方が高い。そう考えるとちょっと気も楽になって来たかも…。

 

「よし、それじゃあその時の再現をしてみようか」

「分かりました、わたしは何をすればいいですか?」

「えっと、私と勝負を繰り広げて、途中ピンチを機転で脱して、その後女神化して私に優勢になってくれれば再現になるかな」

「いやあのイリゼさん…多分そこは再現しても意味ないんじゃ…」

「そうかなぁ、その時の戦闘で負った傷からの血痕が色々役に立ったんだけど…」

(…お姉ちゃんが前にイリゼさんを『しっかりしてる様でしっかりしてない』って言ってたけど…それはこういうところなのかな……)

「…うん?ネプギア?どしたの?」

「何でもないです…」

 

何故かネプギアはちょっと「駄目だこの人…」って顔をしていた。何でだろう…。

 

「……って、あ…」

「ん、何か名案でも浮かんだの?」

「名案というか…そもそもの話として、ここは圏外じゃないんですからお姉ちゃんやいーすんさんに電話すればいいだけでは?もしかするとお姉ちゃんは分からないかもしれませんけど」

「……それ、本気で言ってる?」

 

頬に人差し指を当てて提案するネプギア。その通り、文明の機器を使えばこの状況を容易に脱せられるなんて事は私でも分かっている。でも、それは……

 

「本気…ですけど……」

「じゃあちょっと考えてみて。仮に電話するとして、なんて説明するの?」

「そんなの迷子になったって言えば……あ…」

「ね、分かったでしょ?」

 

暫くきょとんとした様子のネプギアだったけど、私の意図を理解した様で顔を曇らせる。

道を教えてもらうにはまず状況を説明しなければならない。そして、それはつまり『普段生活してる、家と言っても差し障りのない場所で迷子になった』という大変恥ずかしいカミングアウトをしなければならないという事。そんな事をしたら…ねぇ?

 

「もしネプテューヌに聞いたら大笑いされるよ?しかも多分その後もこの事で弄られるよ?」

「いーすんさんはそんな事しないと思いますけど…多分、呆れられちゃいますね…」

「という事で電話は本当にどうしようもなくなった場合の最終手段にしよう、おーけー?」

「おーけーです。あー後最終手段といえば、窓さえあればそこから脱出出来ますね。わたしが女神化すればイリゼさんと段ボールとをまとめて運べますし」

「それはそれで情けないけどね…」

 

迷子になってる時点で情けないし恥ずかしい事だけど、恥の上塗りはしたくない。後更に言えば、友達の妹兼女神としての後輩に抱えられると言うのも勘弁したい。

その後も考える私達。でもその後もナイスなアイデアは思い浮かばなかったし出なかったから…私はベストではなくベターな案を口にする。

 

「…仕方ない、壁伝いに動いてみようか」

「壁伝い、ですか?」

「そう。きちんとした建物なら無駄な作りになってる部分なんて無いだろうし、時間はかかるけど闇雲に動くよりは確実に進展する筈だよ」

「確かに…それならば一度行った場所に気付かず何度も同じ所うろちょろしちゃう危険はないですもんね」

 

満場一致(二人しかいないけど)の賛成という事で、私達は早速向かって左側の壁伝いに移動を始める。迷宮の時は迷宮の作りも建設目的も分からなかったから使うのは避けたけど、プラネタワーなら奇妙な作りはしてない筈だからこれならいつかは分かる場所に出られる筈。……なんかさっきから筈が多い気もするけど、とにかく動いてみる。

 

「…………」

「…………」

 

とことこ、てくてく、ぽてぽて。

 

「…………」

「…………」

 

とにかく、静かだった。ただ壁伝いに歩くだけだから頭を使う要素なんて全くないし、同時に意思疎通を図る要素も全くない。その結果がこの沈黙だった。

そして、その沈黙は私の携帯端末がある通知を出すまで続いた。

 

「……っと、もうそうなのか…」

「今度はどうしました?」

「あ、ごめんね。ちょっと時間経過でスタミナがフル回復したから…」

「げ、ゲームですか…」

 

そういうネプギアの声音は、なんというか…その、若干残念そうだった。……不味い、ネプテューヌとの対比もあってかこれまでまぁまぁ信頼と尊敬を得てたのに、ここにきてしょうもない言動ばっかりだったせいか下落を始めてる!っていうかもしかしたら下落は少し前からだったりするの!?さっきの何故か分からない顔はそれなの!?不味い、それは非常に不味い!『お姉ちゃんの友達の、頼れる(・・・)イリゼさん』というポジションは手放したくないもん!

 

「……っ!」

「ど、どうしましたイリゼさん!?目付きが戦闘中のお姉ちゃんみたいになってますよ!?」

「当然だよ、今の私の置かれた状況は戦闘中のそれと何ら変わらない…!」

「変わりますよ!?何がどうしてそうなったかは分かりませんけど、絶対同じじゃないですって!」

 

鋭い目付きで視線をせわしなく周囲に向ける私に、ネプギアはかなり驚いていた。だけどそんな事はどうでもいい!私は、私は何か見つけなくては…………あ、あった!

 

「ふっ……見て、ネプギア…」

「へ?……あ、あれは…!」

 

すっ…と天井の一角を指差す私。そこにあるのは勿論天井だけど…ただの天井ではない。不自然に入った四方の線とその内側にある取っ手のようなもの。そう……

 

「もしかして…隠し通路!?」

「どういう目的のものかは分からないけど…そうだろうね。そしてその下の壁に凹みがあるのは…」

「そこに登り下りする為のものですね…!」

 

ネプギアの返答にゆっくりと首を縦に降ると、ネプギアはキラキラした目で私を見つめてきた。これは、間違いなく羨望の瞳。凄い、って思ってる人の瞳。……イリゼさん、これだけで満足です。

 

「では、早速登ってみましょうか…」

「それは任せてネプギア。私が言ったんだから、私が行くよ」

「い、イリゼさん…」

「大丈夫。この段ボールは頼んだよ」

 

段ボールを床に置き、一層強くなったネプギアの羨望の目線を受けながら私は壁の凹みを使って登る。よくよく考えたらこんなよく分からない天井の隠し通路なんて使わず無難に壁伝いを続けた方が良さそうだけど…そんな事は気にしない。迷子からの脱却から信頼&尊敬の回復に目的が変わってるけど、それも気にしない。

隠し通路の扉に手が届く位置まで行った私。そこで一度振り向き、ネプギアと視線を混じらせ、そして……

 

 

 

 

--------ガツンっ!

 

「……あらっ?」

 

取っ手に手をかけたまま止まる私。取り敢えずもう一回開こうとしてみる。

 

----ガツン。

 

「あ、やっぱり無理なのね…鍵がかかってるというより…何か上に乗ってる?」

 

ガツガツと音が鳴るばかりで一向に開かない扉。全く動かない訳じゃないから、何かがこれの上に乗っているせいで開ききらないだけだと思われる。うーむ、どうしたものか…。

 

「よっと…ごめんネプギア、あそこは開けられないかも」

「え……?」

 

天井付近から飛び降りて私はネプギアに説明する。その段階になると流石に私も冷静になって、「ここで道草食ってないで真面目に壁伝い再開しないと…」なんて思っていた。でも…ネプギアは違った。

 

「……分かりました。だったら、わたしが開きます」

「いや、だからあれは開けようがないんだって…」

「大丈夫です。上に乗ってるのが何かは分かりませんが…屋内の一室に入ってる様なものなら、女神が動かせない筈がありません!」

「無駄にガチ!?ちょっ、ネプギア!?」

 

どこで火がついたのだろうか、ネプギアは女神化してしまった。もうさっきの私以上に戦闘モード全開だった。

 

「…確かに何か乗ってるみたいですね…」

「ほんとにやる気なんだ…私が言うのもアレだけど、ちょっと考え直して見た方がいいと思うんだけど…」

「いえ…お姉ちゃんが前に言ってたんです。『悩むな、迷うな、立ち止まるな』って…」

「えぇー…何ネプテューヌは堂々とパロディネタを自分の格言みたいに伝えてるのさ……」

 

登るのではなく飛んで隠し通路の扉の元まで行くネプギア。軽く手首を振るってる辺り、明らかに本気だった。…これはもう、ネプギアに任せて見守った方がいいね。

 

「…ふぁいと、ネプギア」

「はいっ!ネプギア…いきますっ!」

 

私が見守る中、ネプギアは扉に手を付ける。そして次の瞬間ネプギアの背の翼が輝き、女神の全力パワーで扉は……

 

「ちょちょ!誰々わたしの用意していた通路使おうとしてるのは一体誰--------」

「え、お姉ちゃ--------」

 

 

 

 

 

『い"っ…………たぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?』

 

 

 

 

「ぐすっ…痛いよぉイリゼぇ……」

「ぐすん、わたしも痛いですぅ……」

「よしよし、氷嚢持ってきてあげたからこれ当てて静かにしてようね」

 

漫画みたいなたんこぶを作って涙目になっているネプ姉妹と二人の世話をする私。私が氷嚢を渡すと二人はソファで仲良く横になる。

何故こんな展開になったのか。それは簡単、あれネプテューヌの執務室に繋がる隠し通路の扉だったから。で、上に乗っていたのは丁度二人が横になっているソファ。私がガツガツやってた事でネプテューヌが気付き、ソファとカーペットを退かして開いたその瞬間が、ネプギアが開こうとした瞬間と被って……二人の頭がごっつんこ。そして今に至るという訳である。

 

「でも、どうしてこんなものを?」

「えーと、それは……緊急用?」

「緊急って…まさか、イストワールさんと仕事から逃げる為?」

「…の、ノーコメントで。てか、そういう二人こそ何故あそこに…」

「…の、ノーコメントですよね?イリゼさん」

「うん、私達もノーコメント…」

 

三人…私とネプギアは同じサイドだけど…全員ノーコメントで、この話は終わる。だってほら、下手に追求したらお互いに自分の首絞める事になるもんね。互いに触れないでおくのが一番平和だもんね。

こうして私とネプギアの迷子騒動は大事にならない内に終わるのだった。そして、それから暫く私はネプテューヌとネプギアの頭をなでなでする事に追われるのだった。……ネプテューヌは勿論、ネプギアも可愛らしかったからちょっとだけ役得だったのかも、しれない。

 

 

 

 

 

 

……因みに、大きい物についてはイストワールさんにしっかり、しっかり、しっかり道すじを聞き直して取りに行った。うん、大事な事だから二回どころか三回も聞いたんだよね。




今回のパロディ解説

・どうぶつの森のロボシリーズ
どうぶつの森シリーズに登場する家具のシリーズの一つの事。ネプギアならこのシリーズを好んで集めるかもしれませんね。女の子の部屋っぽくはなりませんが。

・AMAZOO、シムネプギア
ネプテューヌシリーズの一つ、超女神 信仰ノワール 激神ブラックハートのパロディ。本作の世界は信次元ゲイムギョウ界なので、これ等は本来ない筈です。……多分。

・『悩むな、迷うな、立ち止まるな』
PTAグランパ!の主人公、武曾勤の代名詞と呼べる台詞の事。あのシーンだけならいいですが、迷子の最中に悩まず迷わず立ち止まらずは…どうなんでしょうね?

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