超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第六話 ルウィー、候補生交流編

--------防壁を叩き付けられる白の弾丸。銃や砲台から火薬や電力によって放たれた訳ではない為、定義的には間違っているけど…威力や速度の面では実際の火器に何ら遜色ない。しかもそれが単発ではなく、寸分の狂いもない十字砲火となれば脅威度は尚更上昇する。対する私にそれ程の火力を出す手段も十字砲火を封じるだけの手数も無く、頼みの綱の防壁も弾丸に少しずつ削られていく。幸いにも防壁の数はそれなりにあるが、防戦一方で勝てる筈がない。

この防壁も崩壊は時間の問題、と見切りを付け、相手の隙を突く形で次の防壁へと走る私。雪原をかけながら私は思う。こんな過酷な事なら、引き受けなければよかった、と。

 

 

 

 

ブランとルウィー教会の監査を行なった翌日の午後、ブランが暇なら遊びに誘おうかな…なんて思っていた時に、その要望は訪れた。

 

「ロムちゃんとラムちゃんの遊び相手、ですか?」

 

ブラン探しの最中に廊下で出会ったのはミナさん。彼女は私を探していたらしく、私を見つけるとそんな事を言ってきた。

 

「はい。…も、勿論お忙しければそう言って頂いて構いませんよ?」

「忙しくはないですけど…何故私に?」

 

教祖ミナさんは頼み込む様な表情を浮かべている。彼女は一見気弱そうな人だけど、その実ルウィーでも屈指の魔法使い…だなんて事はこの場ではあんまり関係ない。

二人の遊び相手、か…と私は少し考える。ここに来た目的である監査は取り敢えず終わらせたし、二人と関わり合いたくない訳ではないけど…私が相手に選ばれる理由がよく分からない。あの二人の世話に人員を避けない程人手不足…って事はないよね?

 

「えぇとですね、これには深い事情…と言っても別にイリゼ様の頭を悩ませてしまう様な事ではないですが…がありまして…」

「深い事情…?」

「なんと言いますか…その、現在のお二人は教会の外や教会関係の人以外との接点があまり無くて……」

 

半端な事を言うよりはしっかり話した方が早く理解してくれるだろうと判断したのか、そこからミナさんは二人と二人を取り巻く環境について説明してくれた。

えー…で、その説明だけど…山も無ければオチも無く(ウケ狙いじゃないんだから当然だけど)、全文掲載するとただただ長くなっちゃいそうなので、私が最低限閲覧者の皆様に知っておいてほしい事だけピックアップすると……

・女神候補生の二人は候補生の中でも特に幼い為、つい職員は過保護になってしまう。

・幼さ故に女神の仕事の勉強や手伝いも満足に出来ず、女神としての職務に触れる機会が少ない。

・姉であるブランも双子という珍しい候補生に、姉として手探り状態(ネプテューヌやノワールもブラン程じゃないけどやはり手探り)。

・ロムラム間での中はすこぶる良く、殆ど常に一緒にいる。

…というのが今の二人の状態であり、それが原因で二人は狭い世界での生活が普通になってしまい、二人もあまり積極的に外部に関わろうとしないのが常になってしまっているらしかった。…うん、自分でも箇条書きにすると分かり易い!

 

「…そこで白羽の矢が立ったのが、外部の人間である私だという事ですね」

「イリゼ様はルウィー教会外の人間でありながら、それなりに教会に来る事があり、お二人の姉であるブラン様とも交友があり、そして立場上の問題も無い…という正にベストな人材なんです。どうか、宜しくお願いします」

「そういう事でしたら…はい、お受けしますよ」

 

そういう事でなくとも引き受けるつもりではあったけど、つい雰囲気的にそんな事を言ってしまう私。するとミナさんはほっとした様な表情を浮かべ、ありがとうございますとぺこぺこ頭を下げてきた。…ほんとに腰が低いなぁ、この教祖さんは…。

 

「して、私は二人とどんな感じに遊べばいいんでしょう?」

「それはお任せします。当のイリゼさんが決めた方が良いですし」

「じゃあ、二人に話聞いてから決めようかな…」

「では、お二人の部屋へご案内しますね」

 

そう言って歩き出すミナさんの横を着いて歩く私。うーん、引き受けたは良いものの…ロムちゃんラムちゃんって多分ネプギアより幼いよね。そこには気を付けて接しないと……。

 

「…ミナさん、二人に接する上で何か意識した方が良い事ってありますか?」

「意識した方が良い事、ですか…あくまでわたしは教祖や保護者として接しているのでわたしの知識がイリゼさんの役に立つとは限りませんが…それでも敢えて言うなら、女神候補生として接してあげる、ですかね」

「子供扱いしちゃいけない…って事ですか?」

「お二人はまだ仕事が出来る域に達してはいませんが、それでも女神としての意識が全く無い訳じゃないみたいなんです。だから…子供であり女神候補生、そう見てあげて下さい」

「…分かりました。お任せあれ、ですよ」

 

と、私がそう言った瞬間にミナさんが足を止める。何故だろう…と私は一瞬思ったけど、すぐにそれが部屋に到着したからだという事に気付く。

 

「ええと、じゃあ…お邪魔しまーす」

「ロム様、ラム様、お客様ですよ」

 

ノックの後、がちゃり、と扉を開けて中へ入る私達。するとそこには当然ながらロムちゃんラムちゃんが居た。…居たには居た。居るのは何もおかしくないけど……

 

「あ、み、ミナちゃん!ど、どーしたの…?」

「お、おきゃく、さん…?」

 

……何故か、二人共動揺していた。…あーうん、これは…

 

「……今、何か隠しましたね…?」

 

きらり、と眼鏡を光らせながら私が思った事と同じ事を言うミナさん。その瞬間、あからさまにびくっ!…っとする二人。幼いだけあって、とても分かり易い反応だった。……割と私達パーティーメンバーでも似た様な反応を時折見る気がするけど、それは悲しくなるので気にしない。

 

「な、何もかくして…ないよ…?」

「うんうん、わたし達はまっさらだもん!」

 

まっさらって…洗濯物じゃないんだから……と突っ込みたかったけど、予想以上にミナさんの『怒ってるお母さん』的雰囲気が強くて言うに言えない私。仕方ないので部屋を見回していると…テレビの裏から何かの箱…というよりも缶…らしき物がはみ出てるのを発見した。あー、そういう事ね……。

 

「本当ですか……?」

「ほ、ほんとう、だよ…?」

「そうそう!ほんとほんと!」

「…はぁ…すいませんイリゼ様、いきなり見苦しい所を見せてしまって…」

「いえいえ…それより本題入りましょうよ」

 

これ以上見苦しい所を見せたくなかったのか、私の意向を優先すべきだと思ったのか、私の意見にすぐ「そうですね」と賛同して私の事を二人に説明し始めるミナさん。一方の二人は乗り切った、と思ったのか安心した様な表情を浮かべている。…わざとバレにいってるんじゃないよね?子供だからだよね?

で、今日は私が遊び相手になってくれるってミナさんは言ったんだけど……

 

『えー……』

 

二人の反応はこんな感じだった。歓迎されてるかされてないかと言われれば…間違いなく歓迎されてない。

 

「なんでよく知らない人となのー?おねえちゃんかフィナンシェちゃんがいいー」

「知らない人…やだ……」

「なんて事を…!」

「ま、まぁまぁミナさん…えーと、何度か会った事あるんだけど、覚えてない?」

「…会ったことは、あるかも…」

「でもよく知らないもーん」

 

ロムちゃんはおどおどしながら、ラムちゃんは飄々と私と遊ぶ事を嫌がってくる。私は引き受けた時点で「そんな易々と話が進んだりはしないだろうなぁ…」と思っていたけど、こうもあっさり否定されるとちょっと残念。…じゃ、少し方向性を変えて……

 

「あのね、私二人と遊びたいの。遊んでくれないかな?」

「うーん……」

「…やっぱりやだ」

 

またも残念。少しばかり迷ったみたいだったけど、私とは遊んでくれないらしい。この誘い方はもう少し仲良くなってからじゃなきゃ通用しないのかな…。

……ならば、仕方ない…。

 

「ロムちゃんラムちゃん、ちょっと耳をこっちに向けてくれない?」

「どうして…?」

「二人に内緒の話があるの。ミナさんは聞き耳立てないでもらえますか?」

「……?えぇ、いいですけど…」

 

内緒という言葉に惹かれたのか、不審そうにしながらも耳をこっちに向けてくる二人。そんな二人に私は軽い調子で三度目のアタックを仕掛ける。

 

「ね、私と遊ぶのどうしても嫌?」

「だからやだっていってるでしょ、わたし達の気持ちはかわらないもんね」

「そっかぁ、それは残念。私と遊んでくれるなら……テレビの裏の缶については黙っててあげるのになぁ…」

「おねーさんあそぼう!」

「あそぼう…!(ぎゅー)」

 

ぎゅっ、と私の左右の手をそれぞれで握ってくる二人。私のとっておきは効果てきめんだった。……やっぱりこういう反応見てるとパーティーメンバー思い出す…部分的ながら幼女二人と同レベルってヤバいでしょうちのパーティー…。

 

「い、イリゼ様…一体どんな方法で……イリゼ様?」

「あ、はいはい…すいません、内緒なので教えられないんです。だよね、二人共」

 

私がそう言って二人に目をやると、二人はこくこくとすぐに首肯した。こういう様子は可愛いかも…別にそれまでは可愛くなかった訳じゃないけど。

 

「ふふ…ならば仕方ないですね。ロム様ラム様、イリゼ様に無茶を言ってはいけませんよ?」

『はーい』

「では、後はお願いしますね」

 

内緒の言葉で私達が仲良くなったと思ったのか、後は若い者同士で…みたいな感じに部屋を去るミナさん。そしてミナさんが出て行った事で完全に安心した様子の二人。…一体そこまでして何を隠したかったんだろう…。

と、いう訳でテレビの裏を覗き込む私。

 

「…ってこれ、お菓子の缶?」

「え?知ってたんじゃないの?」

「缶の端っこだけ見えてたから…お菓子食べるの禁止なの?」

「ううん…でも、食べすぎちゃダメって…」

 

ははぁ、そういう事か…と中身が殆ど残っていない缶を見ながら私は苦笑を浮かべる。こういう時、ミナさんに教えるのが二人の為かもしれないけど…遊んであげる時位、見逃してあげても良いよね。監査中とかでもないし。

 

「さて、じゃあ何して遊ぼうか」

「んと…おねーさんは外であそんで…」

「わたし達はここであそぶのはどう?」

「よぉし、二人の悪事をミナさんに教えなきゃ!」

「わぁぁまってまって!」

「な、なにして…あそぼっか…?(あせあせ)」

 

二人が『私との』遊びに前向きになってくれた事に満足した私は扉の方へと向かうのを止め、手近なクッションの所に腰を下ろす。今日が終わるまでにこんな下りを後数回はやるかもなぁ…。

 

「くっ、わたし達としたことが弱みをにぎられるなんて…」

「いっしょーの、ふかく……」

「そ、そこまで…?で、何がいいかな?」

「うーん…」

「きゅうにいわれても…」

 

腕を組んで(見た目的にあまり様になってない)考え始める二人。実のところ、「何して遊ぶ?」なんて質問は漠然過ぎて私も良くないとは思ったけど…二人の趣味も二人の出来る事も知らない私じゃ、二人が喜びそうな遊びの提示なんてやり様がない。だから私は先にそこら辺ミナさんに聞いておくべきだったなぁ…なんて思いつつ、選択肢をこちらから出すのではなく、二人の選択肢を上手く狭めるという方向性を模索し始める。

 

「…じゃあさ、外と中ならどっちがいい?」

「外と中?…ロムちゃん、どっちがいい?」

「えと…さっきまで中だったから…外…?」

「そっか、じゃあ外よ」

「へぇ…ラムちゃんはロムちゃんの遊びたい方にしてあげるんだ、優しいね」

「ふふん、とーぜんよ!」

 

得意げな様子を一切隠す事なく胸を張るラムちゃん。その横でロムちゃんは、ラムちゃんが得意げにしているのを嬉しそうに見つめている。…そういえば、ロムちゃんの方がお姉さんなんだったっけ?

 

「……ちゃんとお姉さんしてるね、ロムちゃん」

「ほぇ……?」

「何でもないよ。外なら…動き回ってみる?私教会の職員さん達よりは動き回れるよ?流石に女神状態のブランには劣るけど」

「うごきまわる…あ、ラムちゃん…!」

「え?……あ!」

「わたし達、やりたいあそび…ある…!」

「えーと、雪がっせんみたいなあそびよ!」

 

なにを思い出したのか、いきなり乗り気になる二人。雪合戦『みたいな』という点は少し気になったけど…それよりも二人が乗ってくれた事に安堵した私はそれを特に気にせず、二人の後を追って教会の外へと出る。

二人に案内されて辿り着いたのは、教会の敷地内の一角。そこには結構な人数で雪合戦が出来そうな広間が出来上がっていた。それを見て、呑気に本格的だなぁ…とか思っている私。

 

 

--------私が引き受けた事と確認を怠った事を後悔するのは、それから十数分後の事だった。

 

 

 

 

「あっ、出てきたわロムちゃん!」

「こーげき、再開…!」

 

私が防壁…もとい、雪を固めて作った壁から出たのを見るや否や、魔法で即座に固めた雪を同じく魔法の力でもって射出してくるロムちゃんとラムちゃん。私は次の防壁へと飛び込みながら叫ぶ。

 

「これ普通の雪合戦の域を超えてるよねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

防壁の後ろへと入った私の背後を駆け抜けていく雪弾…じゃなくて、雪玉。それが別の壁や木に当たる事で起きる、明らかに本来の雪合戦ではならない様な音を耳にしながら私は考える。確かに、二人は子供であっても女神候補生だった……いや絶対ミナさんはこういう意味で言ったんじゃないんだろうけどね!

 

「ふ、二人共…雪合戦ってこんな遊びじゃないんだよ…?」

「うん、知ってる…」

「こっちの方がおもしろいんだもん」

「いや死者出るから!下手したら死者出るからね!?分かってる!?」

「だからふだんはやってないわ」

「おねえちゃんが言ってた…おねーちゃんのお友達は、すっごくつよいって…」

(だからあの時俄然やる気になったのねぇぇぇぇっ!)

 

ぼすん!ぼすん!と雪玉が壁に叩き付けられる音に否応なく冷や汗が垂れる。

はっきりと分かる。まともな手では勝つどころか無事に終わらせる事すら出来ないと。魔法を使ってる分威力も連射性も射程距離も段違いな相手に一体どうやって正攻法で勝てと言うのか。せめてもの救いは魔力温存の為か、常に撃ち続けたりはしない事だけど…だから、その程度の救いで一体どうやって勝てというのか。そしていつも思うけど、私は誰に現状の説明と心境の吐露をしているのだろうか。

 

「おねーさん、かくれてばっか…」

「そーそー、これじゃつまんないー!」

「私はドキドキだけどね!恐ろしさでドッキドキだけどね!」

 

そこまで親しくない幼児二人にこんな強めの口調で言うのはあんまり宜しくないと思うけど…そんな事気にしていられる余裕はない。はっきり言おう…これはもう遊びじゃない。

 

「…………」

「もうおわりなのー?」

「ぶー……」

「…ねぇ、私も本気出していいかな?」

『ほんき?』

「そう本気。二人もさ、本気の勝負の方が楽しいでしょ?」

「…うん、ほんきのしょーぶ…したい…」

「ほんきのしょーぶでかった方がうれしいもんね!」

「そっか、じゃあ……」

 

足元の雪を簡単に踏み固め、雪の壁に正対する私。子供相手に本気を出すのは正直大人気ないけど…よく言うじゃないか。遊びだって本気でやるからこそ楽しいんだって。それに…そもそもの話、この勝負において二人は侮れる格下なんかじゃない。だから……

 

「--------もう一人の原初の力、見せてあげるッ!」

 

固めた雪を蹴り、跳躍する。一瞬で壁から姿を現した私は……雪の壁の上部に足をかけ、それを踏み台に更に跳躍する。

身体能力的にも発想的にも常人には真似出来ない芸当に、目を丸くする二人。その間に私は着地…と同時に前転を行い、勢いはそのままに衝撃だけ殺して即座に前進を開始する。

 

「わ、わっ…!」

「びっくりしてるばあいじゃないよロムちゃん!」

 

一連の行動により私が二人との距離を三分の一程縮めたところでやっと動き出す二人。魔法により複数の雪玉を同時に作り出し、それを矢継ぎ早に放ってくる。

速度もさる事ながら、ここは私にとって慣れない雪の地面。走るにも跳ぶにも足を取られてしまって、どうしても普段より動きが鈍くなってしまう。だから私は雪玉を回避する事なんてしない。回避する代わりに……

 

「はぁぁっ!」

 

手元に顕現させたバスタードソードで、両断する。

 

「えぇっ!?何それズルい!」

「ズルい…!(ぷんぷん)」

「ズルいって…二人だって初っ端から魔法使いまくりじゃん!」

『うっ……』

 

 

飛来する雪玉を次々と斬り裂く私。いくら魔法で射出されているとは言っても所詮は雪玉。女神クラスが放つ斬撃や冗談無しに一発即死の威力を誇るビームを何度も経験してきた私からすれば、本気で対応しようと思えば対応出来ない事はない。気分は完全にGGOのキリトさんかUBWのしろうさん。既に雪合戦感が無くなってる気もするけど…それは気にしない。

 

「残念だけど…もう私に雪玉は通用しない!」

 

当然、二人に近付けば近付く程雪玉の斬り払いは難しくなる。けど、これは銃弾や光弾でなく雪の塊。真っ二つになれば崩壊するし、雪玉もバスタードソードも結構な勢いでぶつかってるから斬られた雪玉は周りに雪を散らして二人の視界を遮る事になる。

そして……

 

「……ふぅ、こんなに熱い雪合戦は初めてだったよ」

 

二人の眼前へと辿り着き、にこっと笑いを浮かべる私。対するロムちゃんは目をぱちくりさせて、ラムちゃんは悔しそうにしている。もう完全に雪合戦とは違う遊びになってるし、更に言えば遊びと言っていいかすら怪しいけど…いい勝負では、あったと思う。

そんなすっきりした気持ちを胸に私は、次の遊びを考える為に口を開こうとする。次は、もうちょっと安全な遊びの方がいいか--------

 

「…まだ、わたし達雪だま当たってないのに…おしまいなの……?」

「…………」

「…………」

「…………」

『……あ』

 

声がハモる私とラムちゃん。そっか、確かに私は追い詰めただけで雪玉当ててはいないから、雪合戦のルールに則って考えればまだ終わってないよね。あっはっは、私もおっちょこちょいだなぁ……うん。

 

「ま、まぁそれはともかく次は何をする?次は室内の遊びとか……」

「そうよまだわたし達はまけてない!こうなったらわたし達もほんきのほんきだもんね!」

「ぜんりょく、出す…!」

「いやだから一旦決着は置いといて…ってなんで女神化してるの!?え、本気の本気、全力って女神化含めての事!?私女神化出来ないのに!?」

 

とんでもない展開に慌てふためく私。さっきまでも既に遊びの域を超えていたけど、女神化まで使ったら本当にただの戦闘になってしまう。女神は皆多かれ少なかれ好戦的だけど…そういう問題じゃないよね!?

 

「しかも二人共何考えてるの!?ねぇ!?それキラーマシンとかドラゴンとかそういう人並外れたサイズに叩き込むべき大きさだよ!?」

 

私が一体何に突っ込みを入れたのか。それは勿論二人が協力して作り出している雪玉に対して。……明らかに私より数倍デカい雪玉に、対して。もしあれを喰らったら…本当に、洒落にならない。

 

「わたし、まけたくない…!」

「うん女神化した時点でそれはよく伝わってきたよ!っていうかそんなの持ち出さなくても十分勝てるよね!?」

「ゆだんたいてき!」

「油断どころかオーバーキルだよ!?」

 

そう言う間にも雪玉は大きくなり続け、いよいよ回避も出来るかどうか怪しいレベルに達する。私は必死に説得を試みたけど…二人はもう完全に本気になってしまっている。

そして私に向かって動き出す雪玉。それに私はもう殆ど戦闘時の思考で「せめて少しでも可能性にかけて避けなきゃ…」と思って後ろへ跳躍しようとする。

その時だった。私の後方から白の一閃が駆け抜け、巨大な雪玉を粉砕したのは。

 

『え……?』

「間一髪だったか…大丈夫か、イリゼ?」

『(ブラン・おねえちゃん)!?』

 

一撃の元雪玉を粉砕した戦斧を片手に、ブランはゆっくりと舞い降りる。その姿は、正に守るべき者の前へと駆け付ける、女神のそれだった。

 

「悪ぃなイリゼ、こっちの都合で二人の相手させちまって…」

「そ、それはいいけど…どうしてここに…?」

「ミナから聞いたんだよ。で、嫌な予感がするから来てみれば…これだ」

 

戦斧を降ろし、二人の方を見るブラン。その瞬間、私とミナさんが部屋に来た時と同じ様に動揺する二人。

 

「…さっきの雪玉、あれお前達だよな?」

「そ、それは…」

「こ、これにはじじょーがあるのじじょーが!」

「そうか。……で、お前達だよな?」

「は、はい…(こくこく)」

「そうです……」

 

ブランに問い詰められ、雪玉の事を認める二人。立ち位置的に私からは見えないブランの表情は、一体どうなっているのだろうか…多分怒ってるんだろうなぁ……。

…と、思いきや、ブランは優しげな声になって二人を撫で始める。

 

「やっぱりか。…凄ぇじゃねぇか、やっぱりお前達には魔法の才能があるな。これからも鍛錬をサボるなよ?」

「え……う、うんっ…!」

「うんっ!」

 

ブランに褒められ、ぱぁぁと顔を輝かせる二人。三人の間に幸せそうな雰囲気が流れ、そのままこの話は終わりに……

 

 

 

 

「…けど、今のは遊びでやって良いレベルじゃねぇだろうがッ!」

 

ならなかった。なでなでの後は、げんこつだった。頭を押さえて涙目になる二人を相手に、強い口調で…でもちゃんとした説教を始めるブラン。……今感じるのもどうかと思うけど、ブランもしっかりお姉さんをしていた。

 

「え、えーっと…私にも非はあるからあんまり怒らないであげてくれないかな…?」

「だとしても二人はやり過ぎだ。そこはしっかり叱らねぇと、いつか二人も二人と遊んだ奴も後悔する事になるからな」

「そ、そっか…じゃあ私、邪魔みたいだし書庫にでも行っていいかな…?」

「おう、まぁ二人も悪気があった訳じゃねぇんだ。許してやってくれ」

「それは勿論」

 

半ば蚊帳の外になり始めた事もあり、その場を離れる事を決意する私。ブランもブランで外で叱るのは得策じゃないと思ったのか、二人を教会の中へ連れていく。そんなこんなで、私とロムちゃんラムちゃんによる過激な遊びは終わりを告げるのだった。……あ、ある意味ミナさんの要望通り教会外の人とのいい経験になったよね…?




今回のパロディ解説

・GGOのキリトさん
ソードアート・オンラインシリーズの一つ及びその主人公、桐ヶ谷和人の事。弾道予測線はありませんがサイズ的には雪玉の方が楽なので、どちらが上かは分かりません。

・UBWの士郎さん
Fateシリーズの一つ及び主人公の一人、衛宮士郎の事。飛んでるのは宝具じゃない上イリゼは剣一本なので、流石に迫力の観点から言えば本作中の方が劣りますね。

最後のやりとりで気付いた方もいると思いますが、『創滅の迷宮 蒼の魔導書編』は本話(第六話)と次話(第七話)の間の出来事となっています。

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