超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第七話 抱き始めた疑惑

--------あれから、暫くが経った。暫く、と言っても数時間程度ではなく、恐らく数日。…と言っても時計は無く、携帯の時計も狂ってるせいで正確な時間が全く分からない。一応タイマー機能は生きてるから、生活リズムが無茶苦茶になる事は避けられたけど…そもそも時間が分かっていないのだから、やっぱり正確な時間が分かる訳がない。

……けど、それはまだ楽な方の問題であった。一番の問題はそんな事ではなく…やはり、罠だった。

 

「うぅ、疲れた…」

「酷い目に遭いましたね…」

 

ぐったりとしながら拠点へと戻ってくる、墨汁塗れ少女と小麦粉塗れ幼女……もとい、私とディールちゃん。私達はもう言うまでもなく、酷い有様だった。……べ、別に馬鹿なお殿様の番組に出演してた訳じゃないからねっ!

 

「取り敢えずはお風呂入りましょうか…」

「同感……」

 

私は黒い跡を残しながら、ディールちゃんは白い粉を落としながら浴場へと向かう(因みにこんな状況でもディールちゃんは私と一緒に入ろうとはしなかった。何やら一人や大人数でお風呂に入るのは良いけど、数人でお風呂に入るのはとあるトラウマを思い出すから嫌らしい)。

そして約一時間後、お風呂と食事を終えた私とディールちゃんは向かいあう形でそれぞれのベットに座っていた。

 

「イリゼさん、今回はお怪我しませんでしたか?」

「大丈夫だよ、しょっちゅう壁に攻撃してたせいで腕はかなり疲れちゃったけど」

「それについては自分から提案した事なんですから諦めて下さい」

「…ディールちゃんって相手があんまり傷付かない程度に冷たいよね、ノワールみたいに」

「じゃあ、逆に妙な位優しくなってみましょうか。……よしよし、今日もよく頑張ったねイリゼちゃん。ほら、なでなでしてあげるからおいで〜」

「ごめんなさい今まで通りでお願いします」

 

何の躊躇いもなく深く頭を下げる私。幼女に頭下げるのは中々恥ずい事だけど…幼女に甘い声であやされるよりはずっとマシ、だってあんな話し方を始終されたら私の精神が持たないもん!…と思いながら頭を上げたら、ディールちゃんもちょっと「このキャラはキツい…」みたいな顔をしていた。……いや、だったら何故やったの君は…。

 

「…しかし、酷い罠のオンパレードだよね」

「製作者の顔が見てみたいです…」

 

基本的にこの部屋で私達が向かいあうのは、その日あった事や見つけたものから脱出や本に浮かび上がった文章を解く事の糸口を考察する目的があった。でも毎回有益な情報を得られるという訳ではなく、大概このタイミングにはお互い疲弊してるという事もあって、正直考察はぐだぐだになる事も多かった。それは今日も例外ではなく、話題は自然と私達を散々な目に遭わせた罠の事へと移る。

 

「頭から墨汁かけられるって結構嫌なものだね。物理的なダメージは無いけど精神ダメージは相当なものだよ」

「小麦粉もですよ。ちょっと汗かくと張り付いてきますし、被った直後はくしゃみが何度も出ましたし…」

「竹槍トラップもシンプルながら恐ろしかったよね、時代錯誤感は否めないけど」

「わたしはびっくり箱トラップが印象深いです。あれもう明らかに驚かせる事が目的でしたよね」

「他にも床傾きトラップとか…」

「床強力粘着テープ化トラップとか…」

「食べ物だと思ったら食品サンプルだったトラップ…」

「栗の抜けたイガグリ大量投下トラップ…」

「可愛い子猫による誘惑トラップ…」

「しかも誘惑に負けて触ろうとしたら実は立体映像だったという二重の罠仕様…」

「…………」

「…………」

『……ほんと、なんなのこの罠達は…』

 

二人、深いため息を吐いて項垂れる。利益があったり面白かったりしたらそもそも罠じゃない、というのは当然だけど、だからと言って私達が経験してきたトラップは全くもって納得がいかない。本当にふざけたトラップばかりだった。…これなら……

 

「…命の危険を直で感じる罠の方がむしろ楽かも……」

「……危険な罠の方がむしろ楽、ですか…」

「え?…あ、ごめん…軽々しく命の危険のある罠の方がなんて言うのは不謹慎だよね…」

「いえ、そういう事じゃないんです。わたしも同意見ですし。……変だと思いませんか?」

「変…って?」

 

そう問いかけてくるディールちゃん。何やら真面目に思考しているらしいその様子を感じとった私は佇まいを正し、質問の意味を聞き返した。

 

「罠が、です。一体なんの意図があるんでしょうか?」

「それは罠なんだし、敵の排除…と言いたいところだけど、それにしては殺傷能力が低いか全く無い罠が多いよね…敵を殺す気は無いけど、近寄ってはほしくない…とか?」

「食品サンプルや子猫映像に敵を遠ざけるだけの力があると思います?」

「……無い、だろうね…」

 

我が意を得たり、と言わんばかりに私の言葉に頷くディールちゃん。まぁ強いて言えば「こんな意味不明な罠作り上げる奴の所には行きたくない…」みたいに思わせる事は出来るかもしれないしそう考えた敵が離れていくかも…という考え方も出来るけど、それは最大限好意的に解釈した場合の考え方だし、こんな罠にする位ならそれこそ殺傷能力を持った罠の方がずっと楽且つ高効率な筈。少なくとも、本気で外敵への対抗策として罠を作ったとは到底思えなかった。

 

「…ディールちゃんは、ここの罠をどういう意図で作られたと推測してるの?」

「…分かりません。ただ……」

「ただ?」

 

私の質問を予想していたのか、頷いてまず分からないと述べるディールちゃん。彼女は一拍置き、言う。

 

「罠は外敵に対する物だとか、他者への攻撃を想定しているだとか……そういう『当たり前の事』があると思うべきではないと思います」

「……それって、罠以外にも言えると思う?」

「それは……そう、ですね。その通りだと思います」

 

ディールちゃんは一瞬驚いた様な表情を浮かべた後、こくりと頷く。

そして、この会議を機に私達は『当たり前の事』の洗い直しを始めるのだった。

 

 

 

 

「まずは壁の破壊を試みてみましょうか」

「わ、ワイルドだね…」

 

ぐっ、と上げた片腕の手を握る私。確かに我ながら脳筋思考気味だった気はするけど、正直ワイルドだという突っ込みは軽く心外だった。わたしディールは、ワイルド系幼女を目指してなどはおりません。

 

「さ、壁を破壊しましょうかイリゼさん」

「う、うん…ストレス溜まってるのかな?私一応女神だし、何か鬱憤があるなら聞いてあげるよ?」

「別に破壊衝動に駆られた訳じゃないですから…後わたしも女神です」

「破壊衝動に駆られた訳でもないのに壁を壊したくなるのは相当末期な気が…」

「いやですからそういう事ではなくて…」

 

何だかどんどん曲解していくイリゼさん。流石に説明不足過ぎたとわたしも反省し、一度手を下げて壁破壊の動機を説明し始める。

 

「と、言っても簡単な理由ですけどね」

「おっと私が地の文を見えている前提での台詞来たよ…まぁいいや、続けて。実際見えてるし」

「こほん。わたし達は物事を『○○なのは当たり前』とは考えない様にしよう、と決めたのは覚えてますよね?」

「うん、私トリ頭じゃないし覚えてるよ?」

「でも、それって難しい事ですよね?」

「それは確かに…何せ当たり前の事だもんね」

 

こくこくとイリゼさんはわたしの言葉に同意を示してくれる。

何故当たり前を疑うのは難しいのか。それは人は生きてく中である程度の物事を『当たり前』として処理しないとキリがないから。例えば林檎一つ取っても、何故皮が赤いのか、何故食べると甘いのか、何故種が入っているのか、何故林檎と呼ばれているのか…とこの様に色々な疑問が生まれる余地がある。これに対して林檎だからとかそういうものだからとかのざっくりした考え方をせずにいたら、それだけで思考が埋まってしまう。勿論一つ一つ考えるのは悪い事じゃないし、そういう事に疑問を持つ事で新たな発見に繋がる可能性もあるけど…総じてそれは『普通』にやる事ではない。そしてわたし達は今、その『普通』ではない事をやろうとしているのだから、一筋縄でいく訳がない。

 

「だからわたしは思ったんです。当たり前と思って処理している事を探すのではなく、明らかに当たり前じゃない事をした方が上手く有力な手かがりを得られるのではないかと」

「逆転の発想、という奴だね。流石幼女思考が柔軟!」

「…それ、褒めてます?」

 

発言だけ聞くと何やら皮肉っぽいけど、イリゼさんの顔はニヒルさとはかけ離れた明るいものだった。イリゼさんは性格悪い訳じゃないみたいだし…これほんとに褒めてるつもりで言ってるのかも…。

 

「……で、壊すといってもどこ壊す気?ヒビが入ってる所とか剣で攻撃すると周りの壁とは違う音がする所とか?」

「そんなリンク的思考で壁探したりはしません……壊す壁はどこでも良いと思ってますよ?壁壊した瞬間周りの壁も天井も崩落して生き埋めになりそうな場所は嫌ですけど」

「…頑丈かどうかを調べる方法は?」

「威力を調整した爆発魔法を段々に撃ち込んでどのレベルで壊れるか確かめれば……」

「その作業中に生き埋めになる可能性大だよ!ならなかったとしても二度手間だよ!……行き当たりばったりなんでしょ、ほんとは」

「……はい」

 

残念、イリゼさんは騙されてくれなかった。まぁ、騙されてくれたらくれたで軽く罪悪感残りそうだけど。

 

「もう…あんまりボケるとそのうちキャラ崩壊って言われちゃうよ?」

「ご心配なく。そうなったとして責められるのはわたしじゃありませんから」

「それはそうだけどさ!……いいや、これは…こほん。じゃあまぁせめて拠点からは離れた場所にしようか」

「そうですね。では移動を…」

 

と、いう訳で移動するわたした「カチリ」

 

「わぁぁぁっ!?」

「え、ちょっ……ぐふっ!?」

 

イリゼさんがわたしの方に吹っ飛んできた。わたしとイリゼさんはぶつかってひっくり返った。……いや、はい?

 

「痛た…悪いねディールちゃん…」

「…………」

「何今の…バネトラップか何か?」

「…………」

「……ディールちゃん?」

 

何やらイリゼさんの声っぽいものが聞こえてくるけど…正直それどころではない。重いし、前が見えないし…何より息が出来ない。妙に柔らかいものが顔に被さってるせいでもう全然息が出来ない。

取り敢えずわたしは何かに乗っかられてるか押し潰されてるかみたいなので、適当に手をばたつかせてみたけど…こんな時に限って上手くいかず、イリゼさんにわたしの状況を伝える事が出来ない。…ええぃ、かくなる上は…!

 

「む、むぐ…むぐー……!」

「ひにゃっ…!?…ってあぁ!?ご、ごめんね!」

「ぷはぁっ…!……こ、殺す気ですか…」

「ぐ、偶然だよ!?万が一殺す気があったとしても、こんな痴女紛いな手段は取らないよ!?」

 

空気に喘いで思いきり息を吹き出すと、やっとイリゼさんは退いてくれた。荒い息で呼吸を整えようとするわたしと、顔をちょっと赤らめ胸元を押さえつつぺこぺことわたしに謝るイリゼさん。この段階になって、やっとわたしはイリゼさんが罠を発動させてしまった事とそれによってわたしは床とイリゼさんにサンドされてたという事を理解した。

…いや、うん…あれだよね。もしわたしが男の子だったり百合百合な子だったりしたのなら少なからず歓喜してたかもしれないね。イリゼさん結構見た目良いし。けど、まぁ…それのせいであわや窒息、となるとやっぱり……

 

「…隙あらば削ぎ落とせというブランさんの教えは正しかった……」

「何を!?何を削ぎ落とすの!?ねぇ!?」

「……聞きたいですか?」

「いえ結構です!全力で遠慮しておきますっ!」

 

完全にビビってしまったイリゼさん。そんな教え受けた事も無ければそこまでブランさんは過激な訳でもないし、仮に教えを受けてたとしても実践する気は無いけど……それはちょっと黙っておく事にした。

因みに、この件以降イリゼさんは一緒にお風呂に入るそぶりは全く見せなくなった。

 

 

 

 

どぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!

……と、近くに爆弾を利用した採掘場でもあるのかなと思ってしまう位の爆発音と破砕物が吹き飛ぶ音が聞こえてくる。

そこで嫌な感じのした私がふと天井に目をやると、爆発現場から勢いよくヒビが伸びてきて……いたりはしない。嫌な感じもしたりしない。…良かったぁ……。

 

「ディールちゃーん、成果はどうー?」

「けほけほ…思った以上に煙いです…」

 

確かにディールちゃんの言う通り、通路からはかなり砂煙の様なものが舞ってきている。これはあまり肺にはよろしくなさそうだった。…と、そこで急に突風が吹いてきてその砂煙を吹き飛ばす。恐らくディールちゃんが風魔法を使ったのだろう。

危ないから、という事で少し離れていた私がディールちゃんのいる爆破現場に向かうと…そこには予想通り、大きく穿たれた壁があった。

 

「これはまた…がっつり抉ったね」

「がっつり抉らないとやる意味ありませんし」

「まぁね。……で、何か発見はあった?」

「いえ、特には」

 

と、会話は片手間だと言わんばかりの簡素な返答をしつつ壁をぺたぺたと触っているディールちゃん。ぱっと抉れた壁という珍しいものに好奇心を抑えきれない幼女っぽくもあるけど…ディールちゃんに限ってそんな事するとは思えない。そう思って何しているのか聞いたら、拠点の時と同様に魔力や結界の反応がないか調べてるとやはり簡素に返してくれた。……何かにつけてディールちゃんとディールちゃんの魔法頼りな気がするけど、気にしない。…ほ、ほら、その分私は精神的な面で支えとなる、お姉ちゃん的な役割担ってるし?……に、担えてるよね?

 

「…何急に思い詰めた様な顔してるんですか?」

「ううん、何でもない…」

「そうですか…もう一度爆破してみるので、また離れて下さい」

「あ、うん…ってまた爆破しても大丈夫なの?」

「断言は出来ませんが…もう一度か二度なら生き埋めになる事はないと思います」

 

私は建設業や地質(壁質?)系の専門家ではないし、爆破を担当するのはディールちゃんだという事もあってその言葉を素直に信じ、再び近くの十字路の曲がった先まで退避する。

そして数十秒後、先程と同じ様に大きな音が聞こえてきた。その後砂煙が舞ってきて、更にその後突風が吹いてくるのも先程と同じ。

 

「更に抉れてるねぇ…当然だけど」

「また特に何も無しです。一応案外ここは崩落し辛いという事は分かりましたけど…」

「そっか…でも、この調子で壁爆破し続ければどこでもいけるね!」

「そんなあくういどうみたいな事したくないです…」

 

成果無しだった事に落ち込まない様ちょっとボケてみると、ディールちゃんもそこまで成果を期待してなかったのかボケで返してくれる。……え、意味が分からない?いつもの様に最後に説明するから大丈夫!

 

「こほん。ところでディールちゃん魔力量は問題無い?爆発魔法って燃費がいい訳じゃないんでしょ?」

「それはそうですが、まだまだ余裕です。前も言いましたが魔法は得意ですし、これは魔力タンクとしても機能してますから」

 

そう言ってディールちゃんはグリモワールを持ち上げる。あぁ、だから魔法を使う時はよく杖と一緒にグリモワールも持っていたんだ…と思うと同時に、何の気なしに私はとある欲求を抱く。

 

「…私も魔法学ぼっかなぁ、便利そうだし女神化出来なくなっちゃったし」

「どうしてもと言うなら止めはしませんが…あまりお勧めはしませんよ?」

「え…魔法はそんな甘いものじゃない、って事?」

 

別に魔法を気軽に始められる趣味感覚で学ぼうと思った訳じゃ無いけど…我ながらそう取られても仕方ないと思う様な言い方だったし、趣味ではなく戦闘目的で学ぼうとしているのだから軽い気持ちで学ぶべきではないと言うのも分かる。

……けど、ディールちゃんがお勧めしないのはどうやら別の理由の様だった。

 

「そういう事じゃありませんよ。私が危惧しているのは、イリゼさんが思ってる程使い易くはならないという事です」

「あ、そういう事……」

「元々魔法…と言ってもルウィーのものですが…は気候の関係で科学よりも魔法の方が良いとなって研究が進められたものですから、サブではなくメインとして使う事で真価を発揮する事が多いんです。でも、イリゼさんはあくまでも剣術とそれによる近接格闘をメインにするつもりですよね?」

「そりゃあね。でも、そうなると魔法戦士みたいなタイプはどういう扱いなの?」

「魔法戦士は…多分、どちらかがメインとして身体に染み付く前に両方を学んだか、完全に我流の魔法を使っているかだと思います。でもそのどちらも大半は万能ではなくどちらかに寄ってる場合が殆どなので、イリゼさんの考える魔法戦士は滅多にいないかと…」

 

説明、という事もあって普段よりも饒舌になるディールちゃん。コンパやアイエフみたいに我流魔法を使う訳でもなく、そもそも今まではそこまで魔法に興味を抱いた事も無かった為にディールちゃんの話は新鮮で、つい私は聞き入ってしまった。

するとそれにディールちゃんは気を良くしたのか、それとも最初からそのつもりだったのか、私にフォローを入れてくれた。

 

「…それに、わざわざイリゼさんは魔法を学ばなくても良いと思いますよ。ずっとわたしが圧倒していたとはいえ、イリゼさんは女神化無しで女神化したわたしから生き延びたんですから」

「生き延びる事が出来たのは殆ど偶然みたいなものだけどね…」

「運も実力のうち、という事ですよ」

「…私の実力は認めてくれてるんだね」

「……不当な評価はしたくないだけです」

 

ぷい、と横を向きながらもそう言ってくれるディールちゃん。この瞬間「素直じゃないなぁ」と弄りたい衝動に駆られたけど…ついさっき随分と恐ろしい事を言われたことで衝動をぐっと我慢する私(私があの言葉が冗談だと教えてもらったのは拠点に戻ってからだった。……もっと早く知れてたら弄れたのに…)。

そんなこんなで爆破作業は一度中断し、場所を移動する私達。適宜壁に傷を付けて目印としながら進む途中、私は見覚えのある付着物を発見する。

 

「……あ、私の血痕だ」

「いつの間にか拠点周辺に来ていた訳ですね」

 

最早安定の目印と化してしまった私の血痕に苦笑する私達。付着の仕方を見るに、どうやら私が待ち伏せしていた所のすぐ近くの様だった。

 

「ここ雨も降らなきゃ清掃員もいないから全然血痕消えないよね。…私達が脱出した後も残るのかな…」

「誰も何もしなければ、そうなるでしょうね」

「なんかやだな、それ。かと言って今消したら拠点の場所分かり辛くなるし、もう暫くは放置…する、しか……」

「……イリゼさん?」

 

今はそれなりに仲良くなれたディールちゃんとも、少し前まで戦ってたんだよね…なんてしみじみ思いながら行き止まり側の通路に目をやった私は--------そこで、ぴたりと止まる。

数秒後、私の言葉も歩みも止まった事に気付いたディールちゃん。彼女は私に声をかけてくるけど…私は記憶の手繰り寄せと記憶の再検証に意識を持っていかれて反応が遅れてしまう。

一見なんの変哲もないただの通路。血痕が残っている事以外は、何かおかしな事がある訳ではない、至って普通のT字路。でも、私はそれに違和感を感じて仕方がない。だって、明らかに記憶とは食い違っているから。だって、ここは……

 

「……ねぇ、ディールちゃん」

「…何ですか、イリゼさん」

「ここってさ…行き止まりへの直通だったよね?--------T字路じゃなくて、L字路だったよね…?」




今回のパロディ解説

・馬鹿なお殿様の番組
志村けんのバカ殿様シリーズの事。頭から墨汁を被ったり小麦粉塗れになったりするといえばその番組だと思います。…場所が場所じゃなきゃ鰻もやったんですけどね…。

・リンク
ゼルダの伝説シリーズの主人公、リンクの事。壁を破壊するゲームは色々ありますが、謎解きしつつ壁を爆破するゲームといえばゼルダの伝説シリーズじゃないでしょうか。

・どこでもいける
ポケモン不思議のダンジョン 青・赤の救助隊における壁破壊能力の事。あれどうやって壊してるんでしょうね?まさか爆破ではないでしょうが…。

・あくういどう
ポケモン不思議のダンジョン 時・闇・空の探検隊における壁破壊能力の事。覚えるポケモンに合わせた名前なのでしょうが…壁は亜空と言えるのでしょうか…?

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