今回は前回の続きと、鈴の過去のエピソードを書きました。
それではどうぞ。
〜照陽 side
その日の夜、いつものように夕食を作っていた。
献立は、雑穀米に、下ろし柚子ポン酢とレタスのサラダ、ほうれん草のおひたし、豚汁、生姜焼き、
生姜焼きは、権道家で最も好きな料理だ。
権道家は体育会系が多く、ご飯の量が恐ろしく多い。僕を含め5人で6合のご飯を炊くのが恒例なのだ。
「ハッハッハッ!しかし、照の作る生姜焼きは美味いっ!
お代わりっ!キャベツ多めで!」
権道家の大黒柱 権道 敬一 さん、豪快で漢らしい。
家に道場を設け、体術や道具を使った技を教えている。
しかしこの人、生姜焼きの肉12枚以上食べてもまだお代わりを求める、前々から思っていたが胃が20個有るのではないか?お代わりを作りながら考える。
「父さんは食いすぎです。もう少し食べる量を考えて下さい。あっ、僕もお代わり。」
長男の権道 頑太郎さん。文武両道で思いやりがあるのだが、スキンヘッドなのが少し残念な人だ。
スキンヘッドの理由を聞いたら、
中途半端に伸ばすくらいなら、全て切ってしまったほうがいい、らしい。
そんな彼も、生姜焼き8枚目を突破した。
「ありがとね〜、今日はリクエスト聞いてもらって、久々に食べたくなったの〜♪」
やんわりと笑いながら箸を進める権道家の母
権道 菊さん。
この人も、生姜焼き8枚をペロリと食べた。
…凄いな、この家族。
「東も食えよ。いつも通り美味いぜ? (モグモグ)」
同級生の、権道 銀平が言う。
「生姜焼き(モグモグ)食わねぇなら(モグモグ)オレが(モグモグ)貰うぜ。(ゴクン)いいだろ?」
全く、食うのか話すのかどっちかにしてくれ。
「食ってもいいけど、もし食べたらみんなの皿洗い代理よろしく♪」
「(モグモグ)⁉︎(モグモグ ゴクン)はぁ⁉︎もう食っちまったじゃねぇか!チクショー‼︎」
食ったんかい。
その後、風呂に入る。
先に頑太郎さんと銀が風呂に入り、僕と敬一さんが体を洗う。
銀が僕が体を洗っている時に水鉄砲を放って遊ぶから、シャワーで応戦するという、なんとも子供じみたことをした。るん
頑太郎さんは目を細めて様子を見て、敬一さんは、愉快そうに笑っている。その後、ぎんはゴーグルを取り出し、洗面器でお湯をかけてきた。
反則だろ。( ̄O ̄;)
こちらも奥の手を使おう。
「今降伏したら攻撃をしない。武器(洗面器)を捨てろ!」
何言っているんだという顔をする銀。
「もう一度言う。武器(洗面器)を捨てろ!」
どうやら、応答するつもりはないようだ。
ならこれを喰らえ!
シャワーの水を相手に振りまく。
銀が悶える。
「ちょっ!冷たい⁉︎ズルいぞ!うわっやめてくれっ!!」
シャワーの温度を低くした。
卑怯とか言うなよ?降伏勧告したからな。
その後、銀から降伏を受け、水合戦は終了した。
寝室は、銀と同じ部屋だ。
寝る前にポケットの中の『御守り』を握る。
昔からの癖でもあり、習慣でもある。
これをしないと、何故か不安になってしまう。
この御守りは昔、両親が亡くなる直前に貰ってきたらしい。文字はボロボロで見えない。
両親は僕が5歳の時に、交通事故で亡くなったと聞かされている。両親の顔や声を全く覚えていない。
いろいろと考えていたら、電気が消された。
また今度考えよう。そう思い、眠りについた。
〜 銀side
布団を敷いて、その上で大の字になる。
今日の昼に鈴の言った『博麗神社』について、考えようとする。が、本来頭が良くないのと、考えると眠くなってしまう性格で、もう寝ようと思った。
電気のスイッチを消そうと起き上がり、向かう。
東がいつものように、御守りを握っていた。
何故握っているのかは知らないが、いつもの事だからあまり、気にしない。
電気を消し横になる。
明日、また何か面白いことが起きる気がした。
そして眠りについた。
〜鈴 side
私は、基本親とは話さない。
家に帰ると逃げる様に二階の自分の部屋へ入る。そして自分の趣味の時間に費やす。
なぜ親から遠ざかろうとするか?
と思うかも知れない。
物心ついた時から、両親は私を男の子の様に育てた。その育て方は『ボーイッシュ』とは大分かけ離れたものだつた。女物は一切触れさせて貰えず、やがて周りからも『男』というレッテルを貼られた。毎日の様に「お前が男だったら良かったのに」と言われた。
自分が何なのか解らなくなった。
そんな自分も嫌で嫌で堪らなくなった。
高校に上がっても孤立し、噂される。
そんな高1のある日の事、学校で席替えを行った。
隣には、東 照陽 がきた。
周りの男女はから、
「お前も残念だったな、ボッチの『男』鈴の隣だなんてさ、クジ運ないね〜。」
「だよね〜。」
「お前、本人の前で言うなし(笑)」
みんなそういう風におもってたんだ…。
「何言ってるんだ?それは、個人の事だからお前らがどうこういう問題じゃない。つかさ、寄ってたかって女子いじめるお前らが、女々しく見えるぜ。」
⁉︎ …えっ?
「チッ。ああそうか、確かお前の両親死んじゃったっけ。
それで正義ヅラか 、うぜぇんだよ。」
男子の1人が東の胸倉を掴む。
「お前さ、マジウザいからさしn(バキッ ブグッ」
胸倉を掴んだ男子が殴り飛ばされる。
机に激突し、床に倒れる。
横を見ると鬼の形相をした権道 銀平がいた。
「テメェら!俺の友人になにしてんだ!ああ⁉︎ゴラァ‼︎東の前で謝れクソが‼︎」
銀が怒鳴って言うが、男子はピクリとも動かない。
多分気絶しているのだろう。
「あぁ⁉︎ゴラ テメェ 無視してんのか⁉︎いい度胸じゃねぇかクソッタレ!」
男子の胸倉を掴む。
慌てて周りが止めに入る。
「やめろ!あいつ完全に気絶してんだよ!」
「この野郎!なに勝手に気絶してんだ!ボケが面出せ!ぶん殴ってやんぞ ゴラァ‼︎」
いや、気絶させたのは銀だろ⁉︎ 全員思った。
清々しい逆ギレだった。
その後先生達が止めに入って、指導室に連れてかれた。東も、参考人として呼び出された。
その後、帰ってきた時にお礼を言った。
「庇ってくれてありがとう。でもなんで、なんで私を庇ったの?何でそこまで言ってくれたの?」
ついでに、心の中の疑問も伝えた。
「自分がしたかったからだ。『女の子』が虐められているのにこのままでいるのがなんか嫌だったから。…じゃだめかな?」
東は、顔を少し赤らめて言ってくれた。
簡単な理由だった。 それでも嬉しかった。
「うん…。ありがと…うっ。」
気が付いたら少し泣いていた。
女性として見てくれていた。
嬉しかった…。
その後も孤立はしたけど、東が昼食を誘ってくれたりした。銀が話しかけてくれた。
それだけで充分過ぎるのに…。
「この気持ちは、贅沢…なのかな?」
恋をしてしまった。 東に、
東 照陽に。
もし、神社に行ったら、つたえられるかな?
あと、…3日後…。
そう思いながら、眠ってしまった。
少しベタ過ぎましたか?
次回は、博麗神社に行きます。
それでは、また
ありがとうございました。