普通なる俺の生活記録。   作:久谷見志乃

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どうも。

今回なのですが。

話、進めようと思ったら
思ってた以上に進まず
ただの掛け合いとなっております。


なので
ボリューミーなのですが
サクサクと読めるかと。

それではどうぞ。
マイワールドへ。


3話:ただの夫婦漫才回。

 

 

四緒「私が彼女になってあげましょうか?」

 

 

 

それはとても

上からの物言いだった。

 

 

だというのに俺はというと

それを真に受ける程に。

 

 

疲れ窶れ

心がボロボロになるほどに

誰かにすがりたがるように

藁にもすがる思いで。

 

 

五羅「なってほしいです。」

 

 

なんて下からの物言い。

そう思うもやはり俺は多分その言葉しか出なかっただろう。

 

 

受理の意を答えると

俺は四緒に倒れ込むように体を預けて。

というか全体重54㎏を支えてもらい

 

 

気を失った。

 

 

 

◆◆◆

 

 

五羅「…んー…。」

 

 

体を起こすと状況把握のため周りを見渡し

自分の部屋ということを認識すると

次は時間の確認のため

部屋に唯一ある目覚まし時計を見た。

時計は22時37分を表示していた。

 

 

これだけの情報を取り込むと

ある程度自身の置かれている立場というのもわかると思う。

 

 

いやまぁ。

起きたらどこぞと知れぬなにもない空間に

時間を指すものがなければ

それはもう圧倒的謎感であるのだが。

 

 

ただ今回の場合は

いとも容易く理解をしたわけで。

 

 

五羅「…まぁ、4時間は寝たのか…。」

 

 

ということはさっきのあれは夢で昔のことを見ていたのか。

そう納得もさせつつも

夢が夢であるときのリアリティーは

どんなに現実離れしていたとしても

どんな現実よりもリアルに感じてしまう。

 

 

五羅「…夢ってすげぇよなぁ…。」

 

 

四緒「あら?あなたにそんな大それた夢なんてあったのかしら?」

 

 

五羅「なぁ。ビックリするからナチュラルに会話に入ってくるのやめてくれね?」

 

 

四緒「それ言うなら私だってビックリするからスッと起きて独り言言うのやめてくれるかしら?」

 

 

五羅「まさかの切り返しだが独り言だと思ってるなら返してくるのやめろよ。」

 

 

四緒「で。あなたの大いなる夢とは?」

 

 

五羅「なんでそこは返してくれねぇんだよ。」

 

 

四緒「大いなる夢とは?」

 

 

五羅「そんなに気になるのかよ。ていうか四緒が思い言ってる夢じゃない方の夢だ。」

 

 

四緒「あぁ。そっちね。で、大いなる夢とは?」

 

 

五羅「なんだ四緒お前のその食い付きは。」

 

 

四緒「あらいけないかしら?愛する彼氏の夢を聞くことの何がいけないのかしら?」

 

 

五羅「それは別にいけなくねぇけど俺の独り言を拾うならちゃんと拾ってほしい。なんでそんな自分本意なんだ。」

 

 

四緒「自負してる。」

 

 

五羅「チャームポイントが多くて何よりです、とはいかねぇぞこの彼女めが。」

 

 

四緒「で、大いなる夢とは?」

 

 

五羅「なんでお前そんなに意固地なんだよ。」

 

 

四緒「えっへ♪」

 

 

五羅「くっそ可愛いなこいつ。」

 

 

 

なんだよ。

いつもそんな風に笑ってくれねぇくせに。

こういうときだけあざとく笑いやがって。

 

 

 

五羅「そうだな…。まぁとりあえず何事もなく平和に暮らすことかな。」

 

 

四緒「それは凄い大それた夢ね!悪いこともなければ良いこともなくただのほほんと腑抜けた生活をするのね!」

 

 

五羅「確かに俺が悪かったがそこまで揚げ足取るなよ。」

 

 

四緒「えっへ♪」

 

 

五羅「嫁にほしいわど畜生。」

 

 

四緒「ありがとう。そんな新妻からのご飯が出来上がってるわ。ほかほかよ。」

 

 

五羅「そこに辿り着くまでにここまでの下り必要だったか?」

 

 

 

 

そう言うとベッドから身体を離して自分の部屋から去った。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

そしてリビングについたのだが。

 

 

 

 

五羅「…。」

 

 

四緒「なにかしら?召し上がれ♪」

 

 

五羅「いやさ。お前さっきなんていったよ。」

 

 

四緒「なにかしら?召し上がれ♪」

 

 

五羅「リビングに来る前なんていったよ。」

 

 

四緒「ほかほかよ。」

 

 

五羅「だよな。ほかほかだよな。」

 

 

四緒「えぇ。」

 

 

五羅「じゃ、この料理名は?」

 

 

 

 

すると四緒は一拍おいて

 

 

 

 

 

 

 

 

四緒「冷やし中華、ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

五羅「どこがほかほかだ。」

 

 

 

きっぱりと突っ込んでやると

四緒はムスッと頬を不機嫌そうに膨らませると

 

 

 

 

四緒「貴方が遅いから冷えちゃったんじゃないの。」

 

 

五羅「遅いから!?」

 

 

 

普段省エネのため

無駄なエネルギーの放出を控えるため

基本ローテンションであるが。

 

 

少し。

いや、学校やよそいきのテンションになるくらいに。

声をあらげてしまった。

 

 

 

五羅「えっえっ?待って。この冷やし中華をお前はあろうことか元は普通の中華そばだというのか?それで自然に冷えてこの清涼感を感じるガラスの器に盛り付けられて普段入れられることのないキュウリやらミニトマトやらが飾られたというのか?」

 

 

四緒「俗にいうラーメンというものよ。」

 

 

五羅「ラーメンに命乞いして土下座しろ。」

 

 

四緒「ラーメンに跪くのなんていやよ。私は人間様よ。」

 

 

五羅「出たよ。人類を高尚な存在だと勘違いしてるやつ。」

 

 

四緒「勘違いなんかじゃないわ。事実よ。」

 

 

五羅「どうしようもねぇ。」

 

 

 

はぁ…と溜め息を漏らしていると

自分に非はないと言わんばかりに、

 

 

 

四緒「それでどうする?温め直す?」

 

 

五羅「え。それ温め直すって言ったらラーメン出てくるのか?」

 

 

四緒「そしてこちらが温め直したものです。」

 

 

五羅「3分クッキング。」

 

 

 

コトッと音を置かれた龍が描かれた器には

煌めく醤油ベースのスープに

細ちぢれ麺が浸るように盛りつけられ

メンマ、ホウレン草、チャーシュー、渦巻きなると、煮卵

からなる具材が飾られていた。

 

 

 

いや。

 

 

 

五羅「ラーメンじゃねぇか!」

 

 

四緒「そう言ってるじゃない?」

 

 

五羅「いやお前はこれからこの冷やし中華になったというんだよな?」

 

 

四緒「何を言ってるの?冷やし中華とラーメンは別物よ?」

 

 

五羅「は?」

 

 

四緒「五羅を驚かせるためにどっちも作ったに決まっているでしょ?」

 

 

五羅「…は?」

 

 

 

寝起きだからか?

ちょっとうちの彼女が何を言わんとせんか

分からないのだが。

理解ができないのだが。

 

 

 

五羅「…なに?お前は冷やし中華とラーメンどっちも作ったのか?」

 

 

四緒「丹精と血と涙と汗を込めて作ったわ。」

 

 

五羅「後ろ3つは含めんな。」

 

 

四緒「あら?彼女の体内で生成されたものよ?」

 

 

五羅「『好きでしょ?』みたいなニュアンス込めんな。」

 

 

四緒「好きでしょ?」

 

 

五羅「挙げ句には言っちゃったよ。」

 

 

四緒「さぁ。私の分泌物の込められたこの冷やし中華そばを食べなさい。」

 

 

五羅「なんでそんなに食欲なくすこと言うんだ?あと冷やし中華と中華そば繋げんな。」

 

 

四緒「なにかしら?召し上がれ♪」

 

 

五羅「振り出しに戻るな。」

 

 

 

なんかループしそうで怖かったので大人しく

ほかほかのラーメン…。

熱々のラーメンから食べることにした。

 

 

四緒から箸を受け取り

それを一回置いて

両手のひらを合わせ、

 

 

 

五羅「いただきます。」

 

 

 

と、日本独自の挨拶をした。

 

 

因みにこれ。

英語にはこれに当たる言葉とかないらしい。

 

だから日本人である以上。

日本語を話してる以上

この食事前後の挨拶は必ずしている。

 

これを言わなければ日本人引退みたいな気がするからな。

 

 

 

五羅「ズルルル…。」

 

 

 

…。

うん。

 

 

 

四緒「どうかしら?」

 

 

 

覗き込むように

上目遣いで心配そうに

味の感想を求められた。

 

 

 

五羅「店を開くか。」

 

 

四緒「そこまでいう必要ないじゃない。」

 

 

五羅「いやそこまで言うほどだ。」

 

 

四緒「そんなに不味かったのね…。」

 

 

五羅「なんで貶めてる方と捉えた。逆だ。」

 

 

四緒「ギャグだ?それは面白いジョークね。あはは。」

 

 

五羅「ぎゃ『く』だ。あとだから貶めてない。なんなんだお前の勘違いオンパレードは。勝手にへこむな。」

 

 

四緒「ひ、冷やし中華は自信作よ!」

 

 

五羅「一人でひとしきりへこんで開き直ってんじゃねぇよ。ラーメン旨かったっつってんだろ。」

 

 

四緒「あら。なら始めからそう言ってくれたら良かったのに。へこんで損したわ。」

 

 

五羅「むしろなんで店を開くことを誉め言葉ではなく貶し言葉として受け取った?」

 

 

四緒「『店を開いて率直な感想を抱くお客様からその味の悪しを思う存分味わうがいいぞ。てめぇが味わうのはお客様が味わったものよりもっとひどいものだろうなぁ!がっはっはっ!』みたいな?」

 

 

五羅「俺回りくどい上に陰湿だな。」

 

 

四緒「ほんとね。」

 

 

五羅「もう少し彼氏信頼してくれよ。」

 

 

四緒「はっ。」

 

 

五羅「鼻で笑うなよ…。」

 

 

 

なんでこの流れで俺がへこんでんだよ。

普通ならどっちもが上機嫌になるようなシチュエーションだろう?

おかしくないか?

 

 

 

四緒「ラーメンが美味しいのは分かったわ。自信作だから当然よね。さ、それじゃ冷めないうちに冷やし中華も。」

 

 

五羅「四緒の開き直りの早さが音の早さ並みに早く感じるな。それと冷やし中華はすでに冷えてる。」

 

 

 

まぁいい。

そう言って目の前に置かれた清涼感抜群の料理に手を付けることにした。

 

 

 

五羅「チュルルル…。」

 

 

 

…。

うん。

 

 

 

五羅「やっぱりお店開くか。」

 

 

四緒「なんで!?自信作だったのに!そんなにまで必要ないじゃない!」

 

 

五羅「だからなんでそっちの方で捉えるんだよ!」

 

 

 

 

もう勢いのあるツッコミをしざるを得なかった。

ホントなんなのこの彼女。

天の邪鬼の域を越えている。

 

 

 

四緒「さ。夫婦漫才はここまでにして早く食べておしまい五羅。」

 

 

五羅「あ、なんか俺嵌められてたのか。」

 

 

 

衝撃の事実を突き付けられ。

圧倒的な演技に踊らされて。

ようやくとして静かに食事をとれるようになった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

四緒「ふぅ。」

 

 

 

五羅が食事を終え

絶賛シャワータイムである。

 

食器もすでに片付けており

特にやることもないので

仕方なくあまり興味もないニュース番組をみることにしているのだけど。

 

 

 

四緒「なんでこうもこの頃のニュースってのはテンションが下がる内容なのかしら…。」

 

 

 

最近ホントにめっきり

心踊るニュースを見ない。

 

興味のないニュース番組の最近の事情を知ってるということはつまり今日みたいな日が多くあるからなのだけど。

 

 

 

四緒「ホワイトタイガーとかブラックタイガーとかの可愛い赤ちゃんが産まれました!みたいなのはないのかしら…?」

 

 

 

言ったところで気づいたけれど。

 

 

 

四緒「ブラックタイガーは海老よね。確かに可愛いかもしれないけど私たち人間様からするとただただ美味しそうしか出てきそうにないわね。」

 

 

 

それにしてもブラックタイガーはとんだ被害を受けてるわよね。

ホワイトタイガーを初めて知った子供とかが『もしかしたらブラックタイガーとかもいるんじゃない!?』

みたいな感じの好奇心で調べたら海老でした。

ってことになるわけよ。

 

びっくりのがっかり感よね。

別にブラックタイガー何もしてないのに。

 

 

勝手に人間に品種名付けられて

勝手に人間にその名前でがっかりされてるだなんて。

 

 

ブラックシュリンプとかにすれば勘違いとかもなにも生まれない気がするのだけれどね。

 

 

 

五羅「はぁー。リビング涼しいな。」

 

 

 

ほんとどうでもいいことを

長々と考えていると

五羅が上半身裸。

つまり半裸の状態でリビングに現れた。

 

 

 

四緒「毎度毎度その醜い腹筋を見せるように出てこないでくれるかしら?」

 

 

五羅「何を言っている。引き締まってるだろ?」

 

 

四緒「誰もだらしない何て言ってないわ。ただ私が不快に感じてるのよ。醜いって意味辞書で調べたらどうかしら?」

 

 

五羅「やめろ。正論を並べるな。」

 

 

四緒「認めたわね。」

 

 

五羅「だがな。醜いってのは美しくないという意味も込められてるんだぞ?」

 

 

四緒「それもまた然り。」

 

 

五羅「なんだその腹立つ納得の仕方。」

 

 

四緒「さぁ早く着替えなさい。そろそろ時間でしょう?」

 

 

五羅「なに…?…。うぉ。もう11時半回ってるじゃねぇか。準備しねぇと。」

 

 

四緒「そしてこれが五羅が着替える服と持っていく荷物になります。」

 

 

五羅「3分クッキング再び。ありがとう。」

 

 

 

我ながら良くできた彼女だな。

と、捨て台詞を吐いて五羅自身の部屋に姿を消した。

 

 

 

四緒「良くできた彼女なのよ私。」

 

 

 

姿を消した後にそう呟いた。

特に意味はないけれど。

 

 

 

 

 

間もなくして

着替え終えた五羅が三度姿を現した。

 

 

 

五羅「それじゃ行ってくるわ。」

 

 

四緒「今日も私を置いて行くのね…。うぅ…。」

 

 

五羅「変な言い方するな。」

 

 

四緒「さ。いってらっしゃい五羅。」

 

 

五羅「芝居をするならもう少し続けろよ。まぁいい。行ってくる。」

 

 

四緒「ええ。」

 

 

 

 

 

そう言葉にすると。

 

 

 

 

 

私は五羅の首もとを鷲掴みして。

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の方に引き寄せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唇と唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

四緒「好きよ五羅。」

 

 

 

 

 

 

 

 

五羅「っ。」

 

 

 

 

 

 

そう怯んだところで

私は柔らかく微笑んだ。

 

 

 

 

 

五羅「…。…あぁ。俺も好きだ。」

 

 

四緒「あら嬉しいわ。それなら早くお行きなさい。」

 

 

五羅「なんでそこで急かすんだよ。」

 

 

四緒「時間だからよ。」

 

 

五羅「そうだった。行ってくる。」

 

 

四緒「えぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言うなり五羅を夜の街へと送り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょう?
この世界観。

もうほんと自分の世界を押せ押せで推している気分です。

楽だし楽しいのですが。

皆さんも楽しんでいただけたら幸いです。

それではまたね。


あ。
そうそう。
それと今食べてる?飲んでる?
クーリッシュが美味しい。
久しぶりに食したら旨かった。

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