fate/kaleid liner ~転生の士郎~   作:kimito19

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書きたくなったので書いてみました


プロローグ

キーン!キーン!そこは荒れ果てた大地だった、草や木、もちろん水だってありはしない、その草も木も生えない土地には無数の剣が無雑作に刺さっていた。

その土地で剣を交え、撃ち合う二人の男が居た。一人は高身長で金髪、赤い瞳には野心と慢心そして怒りを宿した男。もう一人は、先の男より背は低く髪は赤身の茶髪そして黄色がかった黒い瞳には、正義感と義務感そして怒りを宿した瞳をしている少年だ。

男たちは剣を交え、剣を撃ち合った一人は己が欲望のため一人はもう誰も死なせないために。その戦いは一見すると金髪の男が優勢に見えるのかもしれない、だが実際は男は少年に押されていた、力でも武器でもそして気持ちでさえも……

 

「雑種風情が…おのれ…おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ……」

 

金髪の男は少年が手に持っている夫婦剣である中華剣干将・莫耶のラッシュをくらい、唯々防戦一方だった。

 

「バカな、この(オレ)が、この様な贋作に!」

「どうして俺がお前と戦うことを決めたか分かるか?いくらこんな世界を作ったところで、他のサーヴァントたちの様に究極の一を極めた奴には、無限の一を撃ったところで敵うはなかった!けれどお前は無限の一を手にすることで究極の一を極めることをしなかった!つまりお前と俺は同じ半端者だ、そしてこの世界でお前より先に剣を用意している俺が、お前の一歩先を行く!」

 

少年は交えていた剣を一気に振り下ろすが、男は剣を振り上げそこから剣を射出し少年は勢い良く後ろに下がり剣をよけた。

 

「この我が、貴様如きに本気を出さねばならんとはな!」

 

男は空間に今まで以上の数え切れない剣の銃口を開き少年に発射した。少年は発射された剣と同じ剣を手にし、自分に当たるガードしなければならない物を相殺し、自身の身を守りつつ男に向かって筋力を魔術で強化しつつ向かった。男も少年を近寄らせまいと、更なる物量で場を圧倒する。少年に向けて放たれた剣を回避できないと踏んだのか少年は一気に上空へ飛び上った。剣は地表に着弾し、男も一瞬安堵の表情を浮かべたのも束の間、少年が上空に居るのを悟った男はすぐさま上空にいる少年へ剣を放った。少年の眼前には大きな七つの花弁の盾熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)が展開されていた。このままでは勝てない負けることを悟った男はすかさず彼の最強の一振りを繰り出そうとした。だが、躊躇ってしまった。彼には英雄として、王としての絶対的プライドがあるそれが彼を一瞬の躊躇いをスキを生んでしまったのだ。

 

「させるかああああぁぁぁぁ!」

 

少年は上空で夫婦剣を造ると上空から一気に男の剣を握ろうとしていた腕を切断した。

 

「認めよう…今はお前が強い!」

「逃がすかあああぁぁぁぁぁぁ!」

 

少年はとどめを刺すため、この戦闘に終わりを告げるためそして偽善たる彼の夢のために最後の一太刀を振り下ろしただが……………

 

 

地に跪いていたのは勝負に勝ったはずの少年だった。風景も変わっており、いいや元に戻っており男の最強の一振りにより崩壊した寺とその衝撃で荒れ果てた土地だった。そして真夜中だった空には東の空からゆっくりと朝日がのぼろうとしていた。先程まで少年は"人間"衛宮士郎は"英霊"ギルガメッシュとの戦闘で無謀だと思われた戦いに勝利した。はずだった、だが彼にはギルガメッシュとの歴然とした大きく致命的な差があった。それは魔力量だ。ギルガメッシュは英霊だ、英霊は魔力を糧に生き現界するさらに彼は過去の戦いで受肉しておりその恩恵で無限ともいえる魔力がある、これが聖杯で受肉した英霊と三流の魔術使いの差だ。

 

「魔力切れとは下らん幕切れだ、貴様の勝ちだ満足して死ね贋作者(フェイカー)

 

ギルガメッシュはある左腕で剣を握り、士郎に近寄ると失った右腕から小さな黒い球体の穴が出現すると一気に大きく膨れ上がりギルガメッシュを飲み込むと、黒い穴から鎖が飛び出し士郎の足に巻き付いた。

 

「あれは、聖杯の穴!?」

「あの出来損ないめ!同じサーヴァントでは核にすらならんという事が分からんのか!踏みとどまれ下郎、我がそこに戻るまでな!」

 

だが、そこからは呆気ない幕切れであった。そうとても呆気なかった、単純にギルガメッシュが出した鎖が足に巻き付かせたお陰で、士郎は足の踏ん張りがきかずそのままギルガメッシュと共に聖杯の穴に吸い込まれていったのだ。

 

~~~☆~~~☆~~~☆~~~

 

ここはどこだ…確か俺はギルガメッシュとの戦闘後にギルガメッシュから発生した聖杯の穴に吸い込まれていったんだ…俺は藤ねえを、桜を一成や美綴たちを救えたのだろうか…遠坂は、俺が居なくなったら悲しむかな?悲しむあいつの姿は見たくないな…悲しむと言えば、藤ねえも親父が死んだときに俺の前では平気そうな顔をしてたけど、陰では泣いてたっけ…親父、ごめん爺さん…爺さんの夢受け継ぐことが出来なかったよ…

俺はこんな時にも他人の事ばかりだ、こんなんだから遠坂には壊れているって言われたり、アーチャーの奴には偽善者呼ばわりされるのか…アーチャーの奴、今の俺を見たらきっとまた誰かを小馬鹿にするような笑みを浮かべながら、文句の一つでも言うんだろうな…

俺はしばらくの間ずっとそんなことを考えていた。聖杯の穴に吸い込まれ、感じることはまるで水中に居るかのような感覚だ。息苦しさはない、ただ自分が無くなっていき今自分が上を向いているのか下を向いているのか方向感覚まで失ってきた。それから流れ込んでくるものがあった、頭というよりも魂にだろうか?その中に聖杯から怒り、憎しみ、悲しみ、嫉妬という人間の悪感情と呼ばれるものが流れ込んできた。それは今にも吐き出しそうな気持ちの悪い物だった、だがそんな物を俺は感じたことが二回あったこれが三度目だ。一回目は俺があいつに衛宮切嗣に助けられるまで、焼かれた家や人の中を生きようと必死に歩いていた時だ。二回目は、アーチャーとの戦闘の時だ。俺の剣があいつの剣と交えた時にあいつの記憶を見た時だ。二つの共通点は地獄を見たという事だ、だからどうしたというのだろうかただ地獄だっただけ、そして今は感情が魂に流れ込んでくるだけの事だ。地獄を見ているわけではないのだから……

 

「フゥフゥフ、本当に君は面白い人間だね衛宮士郎君」

 

空間を浮遊していた魂に誰かが囁いてきた。ギルガメッシュではない、もっとそう俺よりも幼さを感じる声だ。お前は誰だ?

 

「僕かい?誰だっていいさ僕の事なんて、それよりも君に良い物を観せてあげるよ」

 

観る?一体何を?

 

「フフ観れば分かるよ」

 

すると俺の中に先程まで流れていた悪感情とは全く違う物が流れ込んできた。それを一言で言うならそう、記録だ。俺にセイバー遠坂にアーチャー、藤ねえに桜、慎二にライダー、その他にも第五次に出たマスターにサーヴァントと俺の友人たち…そして第四次のことも、これは一体何だ?

 

「君がさっき言ったじゃないか、記録だよ。第四次に参加した君の親がどんな戦いを繰り広げたのか、衛宮切嗣は聖杯戦争が終わってなお一体何を探し続けたのか、そしてこの第五次聖杯戦争であったかもしれない物語とその後の物語。どうだい?とても面白いものだとは思わないかい?」

 

確かに面白いものかもしれないが、覗き込んでいるようで趣味が良いとは言えないな。

 

「ハハハ、その感想は実に君らしいね。でも本当にそれだけかい?」

 

どういう意味だ?

 

「どう意味もないさ、これを観て君には何も欲しいものは無いのかい?」

 

そんな物はない。俺は聖杯にお前に飲み込まれて死んだんだ、今更願いや望みなんて存在しない。

俺はきっぱり言った。すると謎の声いいや聖杯は不敵に笑った。

 

「フゥフゥフ、死んだ?そうかい望みはない?そうかい、ならば僕は聖杯として勝者衛宮士郎に生きるチャンスを与えよう」

 

な!?

俺にはこいつの言っている意味が分からなかった。いいや、その言葉の意味がもしそのままならば…

 

「そう、君を蘇らせてあげるよ衛宮士郎君。ただ、別世界の肉体()に今の君の魂を(中身)を入れるだけだから生き返るというよりも、転生させるというのが正しいのかな」

 

どうして俺にそんな事をしようと思ったんだ?

 

「簡単だよ、僕はとても気紛れなんだ。時には悪魔の様になったとしても今みたいに天使の様な事もするのさ。さあ君は一体どんな未練があるんだい?」

 

未練、そう言われれば無いわけではなかった。自分でも驚きだ、周りからは欲が無いだの機械的だの散々言われてきた俺にも未練なんてものがあるなんて…いいや、あんなものを見せられたら未練だって湧いてくる。藤ねえや桜の事も気になるし、セイバーも救ってやりたいイリヤだって出来る事なら救ってやりたい遠坂とだって一緒にいたい、そして爺さんから受け継いだ正義の味方になるという夢を叶えなければならない。それらが俺にとっての未練だ。

 

「ハハハ!本当に君は筋金入りのバカみたいだね、いいよその未練叶えてあげるこれまでの世界とは違う世界だけどね♪ついでに死ににくくしておいてあげるよ、さあ僕の為に最高のピエロになっておくれよ衛宮士郎君」


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