GOD EATER Reincarnation 作:人ちゅら
つい先程まであの
いや、違う。
この感覚。また
しかし今回は、あの痩せ犬は姿を見せなかった。
これはあいつの仕業ではないのか。
わけが分からない。
……今はそんなことはどうでも良い。
遠くで何者かの咆哮が聞こえた。
知らず身体が動く。闘争の気配に心が踊る。
右手に持った
だが残念なことに、戦いは既に終わったあとだった。
そこに有ったのは二つの肉塊と、それに群がる数多の
あれは、前に
よく似た景色に、いつかの記憶が蘇る。
戦いに加われなかった憂さ晴らしか、あるいは過去の報復か。
一足で飛びかかると、その無骨な神機で次から次へとコンゴウたちを蹴散らしてゆく。
土と砂埃、瓦礫とわずかな水たまり。
そこに荒れ狂うのは、速度と重さで切れ味を補う、残酷な暴風。
この体は使いやすい。
きっと元から
アラガミと神機がコンゴウの皮膚を突き破る都度、オラクル細胞同士の反発で生まれる、赤や緑の光が閃いては消える。それを何度も何度も繰り返し、群れたコンゴウの殆どを潰し尽くして、ようやく一息ついた。
大きく息を吐いて目をやれば、戦いの最中に猿どもが群がっていた肉塊まで、踏み荒らしてしまっていた。
おそらく人間だっただろうことは、残骸のいくつかを見れば想像はつく。
それに近くに転がる二台の神機。
彼らはゴッドイーターだったのだろう。
なんとなくバツが悪くなってしまった。
この虐殺劇は、自分の気晴らしに過ぎないのだ。
それに巻き込んでしまった詫び代わりに、彼らに手を差し伸べることにする。
あの
ならばこれは有効なはず。
「【
飛散した血肉が、動画を逆再生するように戻ってくるのは、それらがより多くのマガツヒを蓄えているためだ。雲散霧消し大地に沈むように消えたはずのコンゴウのものも奪い取る。それでも足りなければ、更に他所から持ってくるしか無い。
そうして周囲のマガツヒを必要量だけ集めれば、その空間の記憶が、そこに在ったものの概念を模倣し形にする。
青褪めた肌の大悪魔が、そんなことを嘯いていたなと思い出した。
かくして甦ったゴッドイーターの瞳には、紺色のパーカーをまとった褐色の肌に白い髪をもった少年の姿が写っていた。
* * *
「……という光景を見たのだがね。ソーマ君、覚えはないかい?」
「なに言ってんだテメェ?」
あわや
偶然通りかかったカトールとエリック、それにソーマを呼び止めると、サカキは彼らの神機にその手にした円筒──万里の遠眼鏡──を向けて覗き込んだ。
「いやあ、ちょうどいいところに」
とか
「保管庫に行く手間が省けた」
とか言いながら。
で、唐突に「鳩場君。きみ、一度死ななかった?」とか言い出したのだ。
「いやあ、なんというべきかなあ。どう説明したものだろう。ねえ
「俺に聞くな。過去視の魔法を使う
「アクマだあ?」
「ああ、それはだね──」
もっとも、彼がその現象に見舞われた状況を調べれば、それが「使用者を失った神機」を万里の遠眼鏡で覗いたときにしか起こっていないことが分かったはずなのだが。シンは殊更その体験について口外しないため、誰もそのサンプルを取れてはいなかった。シンとアナグラの面々とのコミュニケーション不全が招いた結果であった。
誰もその事実に気づかないまま、シンの口にした「悪魔」という言葉に反応したソーマと、嬉々として
アナグラの外では、閉ざされた世界の
* * *
「人口が減っている?」
フェンリル極東支部支部長、ヨハネス・フォン・シックザールの居室に届いた報告書は、この
その報告で、都市の人口が明らかに減少していることに言及された。
ただし姿を消したのは、元より無気力な単純消費者だった者たちとのこと。要は“
この段階で「要調査」と返答しつつも、シックザールはそのことについて、まだそれほど重要視してはいなかった。
あるいは「無駄飯食いが消えたのなら都市の運営上、良いことじゃないか」くらいに考えていたかもしれない。
だがそれからも、ネストの人々は次から次へと姿を消していった。
それに合わせておかしな報告が混じるようになっていく。
曰く
「
「向こう側の透けた人間がいた」
「胸から上しかない青白い人間が浮かんでいた」
そんな中でもサカキ博士はシンが持ち込んだ宝重の数々について、リッカはシンをはじめとする新型ゴッドイーターの専用神機について研究に勤しみ、それぞれ一定の成果を出すに至る。
原因のわからない人口減少が急に止まるまでに約一ヶ月。
たったそれだけの期間に、ネストの人口は最盛期の七割程度まで減少してしまった。
* * *
──
──わずかな人を救えるか人修羅
──この世もまた道連れか人修羅
──大地は既に死んでしまった
──次に人が死ぬだろう
──それまでにコトワリは拓かれねば終わりだ人修羅
──終わるのだ人修羅
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(20200428)誤字訂正
Lomiass様、誤字報告ありがとうございました。