GOD EATER Reincarnation 作:人ちゅら
「この後どうするんだったっけ?」
拳銃片手にあのボルテクス界を走り回っていた
この神機のトリガーを引きながら、既に
それによってある程度はダメージを与えているように見えるが、シンは急所を狙って撃っているわけでもないし、
流石に相手も人類の天敵たるアラガミである。これだけで倒せるほどヤワではないだろう。
だが、だからといってバラ撒いている弾幕を止めると、逃げられてしまうかもしれない。それは業腹だ。シンはアラガミの性質をまだよく理解していない。より狡猾で生き意地汚い悪魔たちのご同輩だと思っていれば、なおさらだ。
なによりそれは
だからこの先にどのような手を打とうかと、シンは記憶を探っていた。
シンの手持ちの権能のうち、直接攻撃は【至高の魔弾】と【地母の晩餐】の二つのみ。
この内、前者はリンドウとアナグラに向かう道すがら、一度だけ試しに使ってみたのだが、マガツヒを直接撃ち砕く因果逆転攻撃はアラガミのコアを一撃で破壊してしまった。ゴッドイーターの任務はアラガミの討伐およびコアの摘出である。故に「すまんがそれは使わないでくれ」とリンドウに念を押されていた。
そして後者は発動すらしなかった。【地母の晩餐】はその土地の地母神に対して供物を捧げる一種の召喚儀式だ。どういった理由かは分からないが、召喚能力が使えない今のシンには同じ理由で行使できないのだろう。たぶん。
故にシンは、この戦法を使っていた黒マント男の戦いぶりを思い出そうとしていた。
「確か、ええと、ガーヂアンとか……」
【凶鳥ガーヂアン】。凶鳥モーショボーという悪魔を使役して魔法を放つ技である。
なぜか召喚魔法が使えない今のシンには使えない。
「乱舞系の……なんとか乱舞」
【ジライヤ乱舞】。地霊ツチグモを召喚してタッグ攻撃をする技。
なぜか召喚魔法が(以下省略)
「ヨシツネ……」
【ヨシツネ見参】。英雄ヨシツネを召喚(以下略)
「使えん!」
そりゃもう召喚できないのに召喚タッグ技なんて使えるはずがない。
いや、そもそもモーショボーもツチグモもヨシツネも、シンは仲魔にしていなかったのでどうしようもなかったりするのだが。
ちなみにこれらの
「他にもあったはず……」
そんな独り言をぼやきながら、シンは一人ぶつくさ言いながら記憶の海をさ迷っていた。
* * *
鼻歌を歌いながらご機嫌で強化バレットをばら撒くシンに、ヴァジュラはあっという間に防戦一方となってしまった。
最初はどうにか避けながら隙を窺って一撃を繰り出そうとしていたのだが、ばら撒かれる
アラガミも
そもそもこの時代、まだアラガミは単純な物理攻撃と、電撃、爆発くらいしか攻撃手段を学習していない。アラガミの攻撃手段は元々、野生動物や人間との戦いの中で学び、必要と思われたものを、喰った
その最新型とも言えるヴァジュラですら見たことのない攻撃が、デタラメに撃ち出され荒れ狂う大波のように押し寄せて来るのだから堪らない。
だが、それが自分に着実にダメージを与えているということを、また攻撃ごとの特性を、ヴァジュラは学習していく。無駄と切り捨ててきた
この力があれば、そしてこのエサを喰らえば自分はもっと強くなれるだろう。その予感と確信にアラガミは身震いがする思いだった。それはアラガミの本能、
故にヴァジュラは、逃げ出すことなど微塵も考えてはいなかった。
そして確信を得、覚悟を決めたその瞬間、何故かこの
好機だ。
ヴァジュラは硬い角を盾にして猛然と突撃し、弾幕を総身に受けながらも会心の一撃を繰り出した。
* * *
「ヂャッ!!」
低く枯れた奇態な音が、
シンがこの肉体の支配権を得て、初めてまともに攻撃を受けた瞬間であった。
と同時に、この
思考に意識を割かれ、わずかに気の逸れたシンに繰り出されたヴァジュラの突進に、仮初の肉体は貫かれ、そのままの勢いで大きく跳ね飛ばされた。
だがヴァジュラの硬い角のようなものが
――そうだ。あの黒マント男にも同じように殺されかかったではないか。
即座に立ち上がったシンは、再び左手の拳銃型神機を構えて弾幕を展開すると、自身の傷を【メディアラハン】で癒やした。角槍に刺された貫通痕も、大穴と言うほどではない。この程度の傷なら数え切れないほど受けてきたし、直してきた。どうということもない。
シンは記憶を手繰ってあの黒マントに受けた痛恨の一撃を思い出す。
銃撃による弾幕で身動きを封じ、たまらず相手の意識が無謀に傾いたその瞬間を狙い、全身を使った刺突の一撃を加える。弓矢のように引き絞られた肉体から繰り出されたその一撃は、もしも【食いしばり】が残っていなければ耐えきれないほどだったのだ。
残念ながら――あるいは当然ながら、
生憎と日本刀の持ち合わせはなかったため、自身の抜き手で代用した物真似の一撃は、真紅の閃光を放ちながら砕かれた角の跡から脳髄、そして頚椎までを貫き、彼の生命活動を刈り取ってしまった。
「テキサス……だっけ?」
技名までは思い出せなかったようだが。
本家は「的殺(てきさつ)」です。
ツッコミ役不在のため無意識に舐めプする人修羅さん。
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(20181119)修正 : "との【地母の晩餐】" → "と【地母の晩餐】の"
(20180817)修正 : "攻撃魔法" → "魔法" (凶鳥ガーヂアンの解説)
伊科礼悟様、ご指摘ありがとうございました。