GOD EATER Reincarnation 作:人ちゅら
新章のタイトルは、次話更新と同時に開示します。
分かりにくいですが、「整備班」は部署名、「整備局」は設備(部屋)名として使い分けています。
#026 生きた神機
気が付けば犬だか狼だか分からない、赤茶けた毛並みの獣が荒野に行儀よく座っていた。
――この地は黒いのだな。
獣が喋った。
それが人語であるのかどうか。いや、そもそもそれが音であるのか、あるいは
倒壊したビル群を見上げ、獣は淡々と語り続ける。
――
赤茶けた獣は膨らませた頬から、ぷう、とビル群に息を吹きかける。
ビル群はサラサラと崩れて砂と化した。
――大地に黒い石で線を引いていたのか。
今度は地面を這うように敷かれた、朽ちかけたアスファルトの路面に視線を落とす。
――これでは息苦しかろう。だがそれもいずれは朽ち果て、大地へ還るのだ。
獣が前足でアスファルトを軽く叩けば、それは見る間もなく崩れ去っていった。
――万物は
――喰らい喰らわれ、いずれは大地で一つになるもの。
――なのに
――なのに何故、今さら人の世に帰ったのか
――なのに何故、今さら人に目を向けるのか
――何故……
――何故……
一言ごとに獣が増えてゆく。
いつの間にか、見渡す荒野を行儀よく座る獣が埋め尽くしていた。
――なにゆえに いまさら ひとのむれにかえった ひとしゅら
* * *
ひとまず神機のメンテナンス――というか新造――が終わるまで、整備班への
整備班の面々には床に
シンは特に意識しているわけではない。ただ座るとそうなってしまうだけのことだ。
眠るでなく、起きるでなく。
何者にも気を奪われず、されど何者を拒むこともなく。
あるがまま、
だが、外から見れば、ただ眠そうにしているようにしか見えない。
それでも彼は放置されていた。
神機をオーバーホールに出したゴッドイーターが、そうして手持ち無沙汰にしている光景は、アナグラでよく見られるものだったから。
決して近寄りがたいとか、たまに体を揺らしてなんか不気味とか、そういう理由ではないはずだ。
ないはずだ。
* * *
神機を振り抜き、超音速で分解した瞬間の光景は、なかなかの見ものだったと思い出す。
音速の壁を突破し、あの悪趣味な処刑道具めいたコクーンメイデンに当たるまでの間、神機のコアは、神機の崩壊を防ぐべくその形態を自ら変えて刀身を包み込もうとしていた。
だがコクーンメイデンの頭部(?)に当たった瞬間、コアはアラガミによる侵蝕を防ぐために刀身の接触面に集中し、それまで刀身の分解を抑え込んでいた力が消失、刀身はバラバラに飛散してしまう――ちなみに一番大きかった刃の部分は、コクーンメイデンを一刀両断にしてもなお止まらず、超音速の衝撃が巻き上げた砂埃の中、大地を切り裂きながらその亀裂へと消えていった。
多大なマガツヒを消耗した神機のコアは、次の瞬間、これまた自ら勝手に切断したばかりのアラガミのコアを捕食し、一瞬でその周囲に飛び散ろうとしていたアラガミの肉片まで、蜘蛛の糸のように細い食指を、全方位に投網のように伸ばして食らいつき、瞬時にコアへと戻ってゆく。
全てをやってのけるまでにかかった時間はほんの数秒のこと。だが刹那――即ち七十五分の一秒の動きすら認識しうる
シンの訓練はビデオ録画すると言われていたので、今頃はきっと黒い
爆心地に居た彼には克明に見て取れたその光景は、外からは砂塵の壁に遮られて録画できていなかったというのに。
これまでシンは、神機と腕輪は合わせてマガタマのようなものだと思っていた。
だがしかし、どうやら思い違いをしていたらしい。
考えてみれば、マガタマが自身の姿を変生させる
ふと興味が湧いて、シンは虚空から
【
有名であるということは情報が多く仕入れやすいということだ。
自身の考えが正しければ、この宝重が来歴を教えてくれるはず。
シンは右目に望遠鏡を当てると、近くの台座に固定されたひとつの
* * *
「何してるんですかねえ?」
「さぁ、なぁ?」
「あれは?」
「ありゃあ確かレイチェル・アダムスの……」
「ああ、あのヴァジュラとの初の交戦記録を残したっていう」
「酷いもんだったらしいがな」
感想、評価、お気に入り、いつもありがとうございます。
個別にお返事できていませんが、いただいた感想は楽しく拝見しています。
神機大破への感想が概ね「知ってた」で、「デスヨネー」という(笑)
折角のゴッドイーターとのクロスですので、神機にはこだわりたかったりも。
物欲センサーとの戦いをくぐり抜け、やっと新調した神機を担いでアラガミを試し切りに行く。それもまたゴッドイーター。
……まあ「#000」にあるとおり、グーパンで片付けちゃったりもするんですが。
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(20180524)誤字訂正
伊科礼悟様、ご指摘ありがとうございました。