GOD EATER Reincarnation 作:人ちゅら
そうして四日目。今日はアナグラの施設を一通り巡るオリエンテーションである。
ナビゲーターはこの世界で唯一の馴染みと言って良い――とシンは思っている――
だが実際はと言えば、リンドウはやる気なさげにダラダラと歩きながら、シンをエントランスホールに連れて来ると、カウンターに置かれていたリーフレットを一部取って手渡し、「だいたいそこに書いてある」と言って案内を終わらせようとした。
「先にちょっと話しておきたいことが有ってな」
そうして、朝食時を過ぎて閑散としている食堂の席に、二人、向かい合って座る。
「たぶんお前さんが勘違いしていることを、先に説明しておく」
そう前置きをしてから、リンドウは話を始めた。
こうしてこの男を真正面からじっと見たのは初めてかもしれない。などと益体もないことを考えるシン。正面に座る男は、まだ
自分が大人しくリンドウの言うことに従っているのも、そのあたりで多少、気後れしている部分があるのかもしれない……そんなシンの思索に気付いた様子もなく、喫煙所で立ち話と洒落込んだリンドウは、配給の紙巻き煙草を咥えたまま気怠げに話を続ける。
「アナグラってのは、防壁で囲まれたこの
「じゃあ周りに住んでる人間は、アナグラとは無関係なのか?」
「ああ。アナグラの職員は全員、アナグラの中で生活してる。だからまあアナグラなんて言われてるんだけどな。で、外にあるのは外部居住区っつって……あー。こう言っちゃあなんだが、勝手に住み着いた連中だ」
なんとも言いにくそうに視線を彷徨わせ、頭をボリボリと掻きながら、リンドウ。
「まあ、最初はな。フェンリルも人類救済を
「そうなるだろうな」
「で、何度もアラガミに襲撃されてるうちに、
「……ああ、なるほど」
「まあそんなクソッタレな職場だよ、ここは」
咥えタバコを足元に吐き捨てると、必要以上に力を込めてその火を踏み消すリンドウ。
シンはこの時代において、急激な減少傾向にある人間――もはや
シンの冷めた――あるいは
その気まずい空気も、そう長くは続かなかった。
ぼつ、と何かが通電したくぐもった音が響くと、続いて「あーあーあー」と、わずかに幼気の残った女の声が、壁に添えつけられたスピーカーから聞こえてきた。人間世界の最先端の科学の砦であるはずのアナグラだが、シンにはその箱型スピーカーが、まるでかつての小学校の体育館にあったそれと同じに見えた。
そんなノスタルジーなどお構いなしに、短い館内放送が始まる。先程の声でだ。
『雨宮リンドウ、間薙シン。両名は至急、整備局へ出頭してください。繰り返します。雨宮リンドウ、間薙シン。両名は至急――』
「……リンドウ?」
「あーそういやそんな話、してたっけ。スマン、忘れてた」
シンの冷めた視線を避けつつ、リンドウは頭を掻いて謝罪した。
12時にもう一話、更新されます。