落ちこぼれ提督が着任します〜ブラック鎮守府の立て直し〜   作:ティーズ

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4話

書類をすべて片付け終えたのは、もう外が暗くなっている頃だった。

 

終わった後、一度長門は部屋から出て行き、暫くして俺の食事を持って帰ってきた。

食事というのはサンドイッチだ。

色とりどりな具材が挟んであり美味そうではある。

 

「自分で食うものくらい選びたかったんだけど」と少し我儘を言ってみると

「文句を言うなら食わなくてもいいが?」と返されてしまったので、回収される前に手に取り口へ運ぶ。

 

ハムと野菜と特製ソースが絶妙なバランスで合わさっており、かなり美味かった。

 

 

一八三○になると長門は俺についての説明をするため、会議室へと向かった。

出て行く前、私室の説明をされた。

「私室だから好きに使っていい」とのことだ。

 

私室は執務室と部屋続きになっていて、扉一枚開ければすぐに移動できる。

さらには風呂やキッチンまで完備されている。

 

前提督の無駄遣いにほんの少しだけ感謝することにした。

 

 

 

さて...やることもなくなったことだし.長門にも「執務室から出てうろつかなければ自由にしてくれていい」と言われている。

 

とりあえず俺はコーヒーを淹れた後、一度コーヒーを淹れたカップを置き本棚の前へと立つ。

 

本棚には様々な種類の資料がしまってある。

深海棲艦についてのもの。 今までの作戦内容の資料。 この鎮守府に所属している艦娘についての資料など......いろいろだ。

 

とりあえずその中から、必要だと思うものや気になったものを片っ端から抜き取っていく。

抜き取った資料を執務机に運び終えると、椅子に座りコーヒを飲みながら運んできた資料の中から適当に選び読み始める。

 

適当に選んだ資料は今までの作戦内容についての資料だった。

それを読むでいくと、前提督がどれだけ無能で馬鹿な奴だったか見て取れた。

 

非効率な作戦に編成内容。 無謀な特攻に囮作戦。 艦娘のたちの怪我や疲労を考えない連日における同じ艦娘の連続投入。

 

 

これに加え、罵倒・暴言、暴力、セクハラ。

そりゃどんな奴でも提督に恨みを持つようになるわ......。

 

 

読んでるだけで頭の痛くなるような作戦内容に溜息を吐きながら資料をめくっていくと、突然と作戦内容が改善されたものがでてくるようになる。

 

長門の指揮によるものだろう。

資料に目を通せば、長門が優秀なことはすぐに分かった。

作戦内容、編成内容。 どれも前提督とでは比べようもない。

 

前提督では解放できていなかった海域も長門が指揮をとるようになってからは、着実に解放されていっている。

 

それでも解放されている海域は決して多くない。

 

長門の場合、前提督のこともあり、仲間たちを傷つけまい。 死なせまいと慎重になりすぎているのだろう。

 

慎重なのは結構だが、もう少し大胆にならないと解放できるものもできない。

 

「今度少しいじってみるか」

 

俺はそう呟く。

 

少しして資料を読め終えると、次の資料を手に取る。

そして読み終えると次の資料を、また読み終えたら次としていくうちに、ふと時計を見てみれば深夜もいい時間だった。

 

集中を解くと、今まで感じてなかった首肩目の疲労がどっと押し寄せてくる。

 

凝り固まった身体をほぐすようにストレッチをすると、ポキポキと身体から音が出る。

 

「ん〜ぬぁ〜」

 

すると疲れの次には眠気が襲ってくる。

まだ読みたい資料もあるので眠気を飛ばそうとコーヒーを淹れる。

 

熱いコーヒーを飲むと、一気に眠気が飛んだ......とまではいかないが、いくらかはマシになった気がする。

 

そうして、また資料を読んでめくっていく。

 

少しして、資料をめくる手が止まる。

ふと、昼間の天龍のことが思い出されたからだ。

 

天龍の提督への負の感情は思ったよりも深かった。

あれは、恨みと怒りを含んでいる目だった。

 

きっと天龍以外もあんな感じなのかもしれない。

天龍以上だとしても以下だとしても皆何かしらの負の感情を提督に持っている。

 

俺としては、艦娘たちの気持ちはさして気にする必要はない。

むしろここに居続けるためには現状維持のほうがいいのだろう。

 

だが四六時中、負の感情をぶつけられるのは居心地が悪い。

 

まぁ俺が居続けるのに少しでも快適にしたいわけだ。

だからまぁ少しなら提督への認識を向上させてもいいだろう。

 

いざとなったら、大本営への報告書何てどうにでもなるしな。

 

「俺カウンセラーじゃないんだけどなぁ」

 

俺は眠気をコーヒーで飛ばしながら資料へと向き直った。


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