落ちこぼれ提督が着任します〜ブラック鎮守府の立て直し〜   作:ティーズ

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1話 着任

「おい、そこで何をしている」

 

鎮守府をと眺めていると、突然と背中に声がかかる。

 

声を掛けてきた人物の方へと向く。

声音からしてわかっていたが女性。

黒髪のロングストレートに紅い瞳を持った美人だ。

 

ここにいるということは、この鎮守府の関係者。

そして服装は憲兵の制服でないことから答えは1つ。

 

「艦娘か......」

 

「長門型一番艦、戦艦長門だ」

 

俺の呟きが聞こえたのか律儀に自己紹介をしてくる。

長門と名乗った艦娘は俺の姿を上から下へと観察する。

俺は今、白い海軍の軍服を纏っている。

一目見れば俺が大本営から送られたされた人間だと気付くだろう。

 

「お前が今日着任する新しい提督か」

 

「あぁ、瀬戸 蓮だ。よろしく」

 

俺は名乗ると、お近づきに握手をと手を差し出すが、長門はそれを一瞥するだけで握ることをしなかった。

そのあと、俺と目を合わせると口を開く。

 

「率直に言おう、帰れ」

 

「どストレートだな」

 

プライドだけ馬鹿みたいに高いお偉いさんやその子息だったら、速攻ブチ切れて「解体だ!!!」とか叫んでるレベルだな。

いや、普通の奴でも頭にくるか......。

何にしても相手が俺で良かったわけだ。

大本営で好き勝手言われたい放題してたことから、これぐらいじゃ動じない。

 

「私たちは提督を必要としていない。 その証拠にお前が着任するまで私たちだけで鎮守府を切り盛りしてきた。 それどころか逆にいられることの方が他の者たちの士気を下げる要因となる。 」

 

長門の言う通りだろう。

こいつらにとっては『提督』という存在は忌むべき象徴、存在でしかない。

そんな奴が自分たちの居場所で、さらには敬うべき上司として居座る。 邪魔でしかないのは考えるまでもない。

 

「まぁお前らが受けて来た仕打ちは聞いた。 はい、わかりました。って言って帰りってやりたいのも山々だが、そうもいかないわけだ。 第一俺が大本営に帰りたくない。」

 

俺の言葉を聞いて長門が眉をひそめる。

 

「そもそも、俺が今ここで帰ったところで今度また別の奴が提督として着任することになると思うんだが? 」

 

「その時は今と同じようにお引取りを願おう」

 

願ってなかったよな? 思っくそ「帰れ」って命令系だったよな

 

「来る度にか?」

 

「そうだ」

 

「本当にそれで通じると?」

 

「............」

 

俺の質問に返せなくなり、長門がおし黙る。

 

そりゃそうだ、提督のいない鎮守府、艦娘なんてのは、安全装置の付いてない爆弾のようなもんだろう。

大本営に不満を募らせ爆発させられ反逆でも起こされればたまったもんじゃない。

 

だから、大本営としてはどうしても鎮守府に提督を置いておきたい。

艦娘のストッパーとして、見張り役として。

 

だから俺が帰っても別の奴が、そいつを追い返してもまた別の奴がーーー

そうやってイタチごっこが起きるだけだ。

 

 

「俺を置いておけよ。 大抵のことなら耐えられし、何をされても大本営にチクったりしない。 お前らが望むんなら鎮守府の運営にも口出ししない。 もしおかしな行動をとったら叩き出せばいいーーーーどうだ?」

 

大抵のことなら大本営の連中のおかげで慣れている。 そう簡単にねをあげたりしない。

 

俺の言葉に長門が考える素振りを見せる。

少しすると、俺の方へと向き直り答えを出す。

 

「いいだろう。 お前にこのまま、ここの提督として着任してもらおう」

 

何とか押し切れたことに笑みがこぼれる。

 

「ただしーーー」

 

そう言って長門が先ほどまでと比べ物にならないような眼光で俺を睨みながら言う。

 

「おかしな行動を起こせば全力でお前を排除する」

 

「そりゃ怖い」

 

その脅しとも取れる言葉に、両手をあげ降伏の姿勢を見せる。

それを見ると俺に背を向けて歩いていく。

 

多分ついて来いという意味だろう。

 

歩いて行く長門にあくまで戯れるように声をかける。

 

「それで、一応俺は長門の上官となったわけだが敬語とかは?」

 

俺の言葉を長門は鼻で笑うと、挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「お前が敬うに足る者と証明できれば使ってやろう」

 

てっきり「ふざけるな」みたいに一蹴されると思っていたのに、予想外の返答に驚く。

 

まぁ少しは近づけた証拠だろう。

 

「そりゃ難しそうだ......」

 

そうこぼし俺は長門の後をついていく。


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