悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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時系列は閑話の前です。





委員長決め

「ん? なんだあれ?」

 

戦闘訓練の翌日。

若干の筋肉痛に悩みながら登校していると、校門のところで人だかりができているのを発見した。

 

カメラがあるし・・・メディアの取材かな?

校門をふさぐのは止めていただきたい。

 

「雄英の生徒の方ですか? 今お時間よろしいですか?」

 

やべ、見つかった。

・・・このキャスター美人だな。野郎か不細工なら無視してたが美人なら話は別だ。

 

「はい、大丈夫です。取材ですか?」

「そうです! ありがとうございます! それでですね、本日は雄英にオールマイトが教師として・・・」

 

オールマイトが教師をやっていることについての意見を聞きたいようだ。

好青年っぽく「トップの指導を受けられて光栄です」とか「オールマイトの最初の生徒として頑張りたい」など無難に返答をこなした。

 

インタビューのところどころで「今度落ち着ける場所で話しませんか?」とか番号とか聞き出したかったけどガードが堅かった。流石は芸能界の住人だ。無念。

 

 

 

「おはよー」

 

若干テンションが下がったがどうにか教室までやってきた。あのあと、他の取材陣もやってきたが美人はいなかったので全部無視した。

教室では校門の取材陣について話題になっていた。

 

「おう、おはよう。先見も取材されたのか?」

「おはよ、切島。 ああ、されたよ。結構真面目に答えたぜ?」

「俺は緊張しちゃってさあ。インタビューとか初めて受けたし」

「そんなもんだろ、普通。ヒーローにマスコミは付き物だし、今のうちに経験できてよかったじゃん? オールマイトのおこぼれみたいなものだけど」

「ああいうのを見ると、やっぱオールマイトが教師になるってすげえことなんだなって感じるよな」

 

たしかに、実際意味わからんくらいすげえ

 

「そうだな。だってオールマイトってたぶん日本一人気がある個人だろうし。それが教師をしてるっていうんだから・・・ファンの人から見たら羨ましすぎて発狂もんでしょ」

「マジかよ。でもそっか、そうだな。気合入るぜ!」

「いや、気合はよくわからん」

 

その後、色々雑談してしばらくすると相澤先生がやってきてHRが始まった。

 

「今日は取材の人間が来ているが、ああいった手合いに不必要なことを話さないように。それと、不名誉な行動は慎め。雄英の名に関わる。」

 

キャスターをナンパしたのは不名誉かな? いや、不名誉ではない(反語)

 

「さて、今日のHRの本題だ…。急で悪いが今日は君らに…」

 

テストか!? もしかしてまたか!?

 

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

「「「学校っぽいのきたーー!!」」」

 

 

ああそっか、ここも一応普通の学校っぽいこともするんだな。

 

「はいはい! アタシやりたい!」

「おれも!」

「オイラも!」

 

なんかみんな手を挙げてるんですけど。

え、なにこのやる気は?

 

どうやらみんなはヒーローとしてみんなを引っ張る経験を積みたかったらしい。

収拾がつかなくなった辺りで、飯田の提案により投票で決めることになった。

 

しかし、ほぼ全員が自分に投票している。一票の人間がずらっと並んでいる。

当たり前か、みんな挙手してたし。

 

しかし、俺は自分ではなく飯田のところに線を入れた。

 

「・・・! 先見君!」

「・・・(グッ!」

 

サムズアップで返答する。

だって、飯田って明らかに委員長気質だし。今回も収集のつかない状況を投票という形でまとめ上げたのは飯田だ。これほど委員長向きの人材もいないだろう。

 

 

「えー、緑谷三票、八百万二票で委員長は緑谷に決定。八百万は副委員長な。」

 

―――と、思ったのだが。

 

アホなのかな?

飯田のやつ自分の投票を緑谷に入れやがった。

なんで自分に入れないんだよ! それでも副委員長だけど!

あああ、壇上の緑谷ガチガチじゃん。大丈夫かこれ・・・?

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

「メシくおーぜ」

 

今は昼休み。メシの時間だ。

切島と上鳴を呼んで食堂に向かう。

 

朝のHRで決まった緑谷が委員長になるのは、正直不安だったが。結局やる事は授業の号令くらいしかなかった。なので、特に問題はないかなと今は思う。

 

「にしてもやりたかったなー委員長」

「そうか? そういや二人とも自分に入れてたっけ?」

 

上鳴はまだ未練があるらしい。号令くらいしかやる事ないだろ。

 

「むしろなんで先見は自分にいれなかったんだよ?」

「切島も見てたろ? 俺は飯田が委員長にふさわしいと思ったからあいつに投票したんだよ。」

「飯田は委員長っぽいもんな。メガネだし」

 

雑だな理由が! わかるけど!

 

「しっかし、自分の一票を緑谷に入れちゃうんだもんな。意味なかったぜ。これなら切島に投票すりゃよかった。」

「まじか! 俺にも入れてくれるのか!」

「俺は? ねえ?」

 

切島はコミュ力の権化だからな。むしろクラスをまとめるのに委員長の肩書すら必要ないくらいだ。男らしいことが大好きだから、クラスを引っ張っていくタイプのリーダーになるだろう。

上鳴はあきらめろ。

 

 

ウウゥーーーー!!

 

 

すると、突然サイレンが響いた。

 

警報? (ヴィラン)か?

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください。』

 

避難指示の放送まで出された。もしかしてやばい?

まずは―――

 

「おい! 避難するぞ!」

「先見! 急げ!!」

 

上鳴と切島はすぐさま行動に移る。本来なら理想的な行動なんだが・・・今は、いいや未来(・・)ではそれが悪手となる。

 

「ちょっと落ち着け。今は動かない方がいい。「個性」で確認したから間違いない。パニックに巻き込まれて怪我しても知らんぞ」

「え、あ。【未来視】か。何が見えたんだ?」

「とりあえず問題ないってことだけはわかった。あとあれだ、出口の上のところ見とけ。」

 

こういう時はまず【未来視】。まったく便利な「個性」である。

観えたのはパニックになる群衆。狭い出口で押しつぶされる生徒。倒れて踏まれそうになる生徒。そして・・・。

 

そろそろである。音声が無い【未来視】じゃ、何が何だかわからんが面白いのだけは間違いない。パニックも収まってたし。

 

 

 

「大丈ーー夫!!!!」

 

 

 

飯田が出口の一番目立つところに張り付いた。すると、食堂全体に響き渡るほどの声で説明を始める。

 

「ただのマスコミです! 何も心配になる事はありません!!」

 

どうやらマスコミが学校の敷地に侵入してきたようだ。警報は侵入されれば自動で鳴り出すらしく、(ヴィラン)が侵入してきたとか言うわけではないらしい。人騒がせな話だ。

 

食堂中の注目を集めるためにわざわざあのポジションを選んだのだろう。パニックになった人間は、そうでもしないと話を聞いてくれないからな。

 

そして、出口の上で話す飯田の姿はまさしくアレだった。

 

「非常口だな」

「非常口だ」

「非常口飯田だな」

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

「――――というわけで、僕は委員長を飯田君に任せたいと思います」

「委員長の指名なら仕方あるまい!!」

 

「がんばれよ、非常口!!」

「任せたぞ非常口飯田!!」

 

なんと委員長が交代した。

クラスメイトも歓迎(?)している。

 

理由も納得だ。あの状況下で冷静かつ的確に判断できたのは飯田しかいない。俺もパニックにはならなかったが、できたのはせいぜい周りの数人を助けることくらい。

食堂全体をまとめた飯田のリーダーシップを疑う人間はもういないだろう。

 

そして、非常口はあだ名に決定した。

印象に残るよね・・・あれは。

 

それにしてもマスコミはすごいな。

雄英の校門は校門って言うかほとんど防壁なのに、あれをどうやって突破したのだろう?

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

「―――というわけでして、相談に来たのです。」

「そうか」

 

授業も終わって現在放課後。場所は職員室。

職員室って悪いことしてないのに入るの躊躇しちゃうよね? なんでだろうね?

 

昨日の夜から考えてた装備について、相澤先生にご相談している。

なんだか、職員室が慌ただしいからちょっとだけ申し訳ない。マスコミのせいかな?

 

「まず、銃やナイフの殺傷性の高いものは基本的にダメだ。あくまでヒーローは(ヴィラン)を捕縛するのが仕事だからな。「個性」がそれに関するものだったりしたら別だが、お前はそうじゃないだろ。」

「なるほどなるほど」

 

やっぱ銃はダメか。スナイプ先生は例外ってことね。

 

「あとは、「個性」と全く関係が無い装備もあまり推奨できない。ヒーローには「個性」を有効活用している象徴という一面がある。なので、「個性」を有効活用させる装備を考えろ。」

 

警棒とか誰でも使えるのはあんまりよくないってことか。

そういったものを使うならヒーローじゃなくて警察でいいもんな。

 

「それと、そういったコスチュームや装備に関することは俺じゃなくてサポート科に聞け。とりあえずサポート科のパワーローダー先生を紹介してやる。」

「ありがとうございます」

 

餅は餅屋。ということか。

というわけで、パワーローダー先生に話を聞く。

 

「くけけ…。この時期から装備について考えるとは優秀じゃないか…」

 

キャラが濃い! さすが雄英だぜ!!

ヒーローはやっぱり地味じゃダメなんだな! 理解したぜ!

 

話を聞くと、そういうことはサポート科の生徒にも関わらせてほしいらしい。

ヒーロー活動の悩みを解消する事の経験を積ませたいようだ。もちろん先生が監修するので半端なものを渡すことはない。と、断言してくれた。

 

「ウチの生徒の経験にもなる。お前もいろんな装備を試せる。一石二鳥だろォ…?」

 

ようは教材になれってことだ。

何度か試作品のテストをしなくちゃいかんので、時間と手間が少々かかるようだが、別に問題はない。せいぜい中間試験に間に合えばいいだろ。

 

俺の「個性」の詳細と、欲しい装備について意見を書いたプリントを提出させられた。

 

「これをもとに生徒に考えさせるからな…。いくつか試作ができたら伝える。」

「わかりました。期待して待ってます。」

 

先生は「くけけ…」と笑いながら了承してくれた。

これで後は、優秀なサポート科の諸君がなんとかしてくれるだろう。

 

もう用事はないので職員室から出ようとすると、相澤先生から呼び止められた。

 

「先見。お前が考えてた装備についての意見もまとめてくれ。冗談で考えたような奴でもいいから。サポート科に参考として提出する。」

 

そういうことなら、と。昨日のうちに考えてたことをレポートにまとめる。

冗談で考えた奴も書けとのことなので、爆弾の戦法とかも全部書いちゃう。

書き終わって提出すると「もういいぞ」と言われたので、今度こそ退出する。早いところ武器ができればいいんだが。

 

 

 

 

「・・・ふん」

 

 

 

 

 




主人公は信頼を得ることができるのでしょうか?
私にもわかりません。



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