悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

8 / 21
これは原作のストーリーとは関係ありません。





閑話:仲良きことは

今日は休日。

ヒーローの卵たる俺たちも高校生。休日では当たり前に遊ぶ。

 

それは俺も例外じゃない。

そんなわけでただいま待ち合わせ中。そろそろ誰か来てくれると嬉しいんだが・・・

 

「よっす」

「よお、来たな。」

 

軽く手を挙げて挨拶してきたのは上鳴電気。今日のメンバーの一人だ。

 

「予定時間の十分前に集合。感心だな。ぶっちゃけ遅刻するくらいだと思ってたのに」

「ぶっちゃけすぎだろ。流石に今日は遅刻しねーって」

 

上鳴の服装はジーンズに無地で黒のVネック。アクセも付けてシンプルにおしゃれだ。

 

「そりゃそーか。なんせ―――

 

「おはよー! おまたせー!」

「あれ? ウチが最後? ごめんごめん」

 

元気よくやってきたのが芦戸三奈ちゃん。

集合時間に遅刻した訳じゃないのに律儀に謝ってきたのが耳郎響香ちゃんだ。

 

そう、なんせ今日は戦闘訓練の時「せっかくだからこのメンツで遊びに行こうぜ!」と誘って実現した、女子との休日である。

上鳴がたいそう喜んでくれたぜ。気持ちはわかる。俺もめっちゃ嬉しい。

あと、話を聞いてた峰田が泣いてた。ざまあ。

 

「おはよう芦戸ちゃん。耳郎ちゃんも、まだ集合時間の5分前だから気にしなくてもいーよ。」

「はは、みんな集合時間前に集まっちまったな。」

 

芦戸ちゃんはロングブーツにホットパンツ。上は黒のTシャツと健康的なファッションだ。

耳郎ちゃんは丈長のTシャツにサマーニットを羽織って、これまた下はホットパンツ。

 

うむ。眼福である。魂がいやされるな~。

 

「今日はどうするんだっけ?」

「はーい! 服見に行きたい! 服!」

「あー、俺は服より靴見に行きたいな」

 

おっと、ボーっとしている場合ではないな。

 

「よし、それじゃまずは服見に行こうか。時間が余ったら次は靴も見に行こう。たぶんそのあたりで昼になると思うから、そしたら昼ご飯ね。」

「りょーかい!」

「へーい」

「わかった」

 

さあて楽しもう。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

ところ変わってフードコート。

 

「あー! 楽しかった!!」

「ウチは疲れたんだけど・・・。ずっと着せ替えさせられたし・・・」

 

芦戸ちゃんはホクホク笑顔。対して耳郎ちゃんは疲労困憊といった有り様だ。

俺の事を恨めしそうな目で見ている気がするがきっと気のせいだろう。

 

「いや、気のせいじゃねえよ」

「そーだよ! ウチが疲れてんのもとはと言えば先見のせいだからね!!」

 

怒られた。しかし、待ってほしいあれはやむを得ないことだったのだ。

 

「だって耳郎ちゃんが暇そうにしてたから。つい。」

 

そうなのだ。

芦戸ちゃんが服を見て回ってる時、「男子の意見もほしい」と言われたので俺と上鳴は芦戸ちゃんと一緒にあーだこーだ言いながら服を見ていたのだ。

すると、耳郎ちゃんは自分の見たいものを見終わったのか、ただ着いてくるだけになっていたので

 

『ねえねえ、これとか着てみない?』

『え、ウチが?』

『そうそう。今ちょっとヒマでしょ? 暇つぶしもかねて、さ』

 

そう言って色々とコーディネイトしてあげたのだ。

あれこれ着せてどれも似合ってたので褒めまくったら、耳郎ちゃんもやる気が出てきたらしく。

耳郎ちゃんのセンスとは違うけど似合う服装とかも着せたりした。

 

すると、なぜか店員さんがやる気になってしまったらしく、「これもお似合いですよ!」「これもいいと思います!」「これも!」とどんどんと服を持ってきてくれるようになった。

 

ここまではよかったのだが

 

流石に芦戸ちゃんと上鳴がこちらに気付き、芦戸ちゃんも耳郎ちゃんの着せ替えをしだした。この時点で完全に耳郎ちゃんのセンス云々は無視されていたように思う。

 

それで店員さんと芦戸ちゃんが次から次へと可愛らしい服装、かっこいい服装、いやそれもう民族衣装だよね?な服装を持ってきて耳郎ちゃんに着せていった。

勢いに負けたのか耳郎ちゃんも律儀にそれらを全部着て、さながらファッションショーのごとき有り様だった。

 

最終的にゴスロリを着せられた耳郎ちゃんを思わずスマホで撮影したところで正気に戻ったらしく、ファッションショーは終了した。

 

「いや、耳郎ちゃんノリノリだったじゃん。ほら、見てよこれ」

「うわあああ!! 消してってばーー!」

 

スマホにはしっかりとゴスロリ着た耳郎ちゃんが映っている。絶対に消さない。絶対にだ。

 

「うわー! かーわいいー!」

「おおー、マジだ!」

 

恥ずかしさに耐えきれなかったのかテーブルに突っ伏してしまった。腕の隙間から見える耳が真っ赤である。

 

「まあまあ、どんまいどんまい」

「なんで先見が慰めてんの!? おかしいでしょ!!」

 

慰めたら怒られてしまった。

いやー楽しい。

 

「それくらいにしとけよ先見。それより、次どこ行くか決めようぜ」

「次はどこに行こっかー!」

 

そうだな。からかい過ぎてもよくないしな。よし。

 

「それじゃカラオケはどうだ? ストレス発散的な意味で」

「アタシはおっけー!」

「俺もいいぜ!」

「・・・よし! 歌おう! 歌って忘れる!」

 

そんじゃ、満場一致でれっつごー!

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

『―――!――、――――!!』

 

そんなこんなでカラオケ店。

今は耳郎ちゃんの歌の番だ。伊達でロックなファッションをしているわけじゃないらしい。力強い歌声でめちゃくちゃ上手い。

 

ジャーン! と曲が終了する。

 

「「「おおー」」」

 

『ありがとー!!』

 

ノリノリである。

次は・・・上鳴か、ロックで対抗するようだ。『耳郎より上の点とってやる!』とか言ってる。

 

「うーん。何歌おっかなー?」

 

おや? 芦戸ちゃんが曲を決めかねてるらしい。

 

「芦戸ちゃんは何を歌うんだ?」

「ん? えーと、どうしよっかなーって考えてたとこ。・・・そうだ! 先見は何歌うの?」

 

自分の好きな曲を歌えばいいのに。まあいいや、俺が歌う曲か。

 

「バラードかな」

「え? 二人ともロック歌ってるのに?」

 

確かに、場の空気を読んで歌うならロックかポップス。バラードは論外って感じだ。

 

「まあ、空気は外すかもしんないけど歌いたいのを歌えばいいんだよ。俺が今はバラード歌う気分ってだけ」

「ええ~、ちゃんと空気読まないと~」

 

当然ながら空気を呼んだ方がいいのは間違いないけど

 

「二人ともちょっと空気外すくらいで文句言うような奴じゃないだろ? もちろん、芦戸ちゃんも」

 

友達に合わせるのも大切だが、自分を出せないのはつまらないからな。

するとなぜか芦戸ちゃんがキョトンとした表情をしている。

 

「そっか! そうだね!」

 

すると突然機嫌がよくなった。

よくわからんが曲が決まったっぽい。

 

入力したのは少し前にCMで流行った曲だ。辛くてもくじけない、いつか報われる。という曲だったはず。割としっとりとした歌なので確かに空気は読めてないかもしれない。

 

「ちょっと前に流行った曲だね」

「うん! アタシこの曲が大好きなんだ!!」

 

お、上鳴が歌い終わった。ロックの雰囲気が似合いすぎなんだよな。

 

「っしゃーー! どうだ!!」

「うっそ! ウチが負けた!?」

 

点数で耳郎ちゃんに上鳴が勝った。

くやしいのか耳郎ちゃんがぐぬぬ顔になってる。かわいい

 

「次は俺だ。マイクくれ。」

「おう、ほらよ。曲は・・・バラードか」

「悪いなテンション下げて。」

「気にすんな。お前の歌が上手かったらテンションあがるぜ?」

 

にやにやと笑いながら上鳴がそう言ってくる。

耳郎ちゃんに勝てたからって。調子に乗っているようだな。

 

「ハッ! うっとりしてテンション上げ忘れないように気を付けとけ!」

「おお!? すげえ自信だ!」

 

曲が始まった。いくぜ!!!

 

『―――、――。―――――!!!!』

 

「「!!?」」」

 

・・・曲が終わった。

ドヤ顔しながら感想を待つ。

 

 

 

「ふつうだ・・・。」

「普通だったねー」

「あれだけ自信満々で普通かよ・・・」

 

 

 

せやろな。

 

『うるせーー!! 普通で悪いか!! お前らが上手すぎるんだよ!!!!』

「お前がうるさい!! マイクを使うな!!」

 

おっと、思わず。

 

「流石に無理。だって上鳴の点数とか90後半じゃん。」

「それでなんであんな自信満々なんだよ・・・」

 

もう俺の事はいいんだ。それより次だ。

 

「はい、芦戸ちゃん」

「はいはーい! それじゃ歌うよー!」

 

芦戸ちゃんの出番だ。曲が始まる。

 

『――――。――、―。――。』

 

「あ、懐かしい」

「たしかCMで流れてたよな?」

 

しっとりとした曲を歌う芦戸ちゃんは、いつもの明るく天真爛漫な雰囲気とは変わっていた。

 

「いい曲だな」

「そうだねー。ウチも次は懐かしいのいれよっと」

 

曲が終わった。

 

「うーん。アタシも先見と同じくらいだね!」

「よし! これで今のとこ一位は俺だな!」

「ウチが抜かすまではね! 芦戸ちゃんマイク貸して」

 

芦戸ちゃんが耳郎ちゃんにマイクを渡してこっちに戻ってきた。

 

「はーっ、つかれたー!」

「おつかれさま。ジュース飲む?」

「のむー!」

 

ジュースを手渡す。

なんかさっきより芦戸ちゃんのテンションが下がった気がするな?

 

「ねえねえ先見。」

「ん? なに?」

「さっきのアタシの歌どうだった?」

「よかったよ。普段と違う雰囲気の新しい一面を見れたって気分だ。」

 

感想を返すと「ふーん」といって静かになってしまう。

あれ? なんかマズイこと言った? どうしよ。

 

「・・・うん! わかった!」

 

急にテンションが戻った。

まったく意味が分からんが、気まずい雰囲気にならずにほっとする。

 

「えーと、なにがわかったの?」

「え、うーん。・・・こっち来て!」

 

隅の方に呼ばれた。二人には内緒の話みたいだ。

 

「あのさ、入試の時隣の席に座ってたの覚えてる?」

「覚えてるよ。」

「あの時、アタシの方から話しかけてきたよね?」

「・・・確かそうだったな」

 

なんで入試の話? 

 

「アタシ、初対面の人には自分から話しかけるようにしてるんだ」

「うん、そんな感じする」

 

 

「それってね、アタシに初対面の人は話しかけてこないからなんだよね。見た目のせい・・・だと思う。」

 

 

は? まじかよ。

ありえねえな。と思ってると芦戸ちゃんが苦笑した。

 

「ほら、不思議そうな顔した。先見は全然気にしないんだよねそういうこと。」

「え、うん。気にしない。」

 

可愛いかどうかしか気にしてなかったわ。

 

「曲を選ぶときも他の人と違うことをするのが怖かったんだ」

「・・・ああ、なるほど。俺の選曲で安心したのか。」

「そーいうこと。違っても大丈夫だって思った。」

 

そっか、そんなこと思ってたのか

 

「それでもちょっと不安だったから感想聞いてみたの!」

「どうだった?」

「うん! 先見は大丈夫だってわかった!」

 

なるほどね。安心してもらえたようでよかった。

でも―――

 

『ふーん。先見は大丈夫なんだ』

 

気になるよね。隅でこそこそ話してると

 

『なにが大丈夫なのかなー?』

「・・・あれー? 聞こえてたかなー? なんて・・・」

 

芦戸ちゃんが振り向くとマイクを持った耳郎ちゃんが歌うのを中断して後ろに立ってた。

 

「ハァ・・・。ウチが聞いちゃったのは選曲の時の話からだよ。」

「ア、アハハ・・・」

 

わかりづらいけど、ピンクの肌に赤みがさしてる。

 

「まったく! ウチは気にしないし、上鳴はアホなんだから、気を遣わなくていいんだよ!」

「うん、」

「クラスメイトだし、友達なんだから!」

「うん! ありがと!」

 

「なあ、なんで俺は馬鹿にされたの?」

「わかんね」

 

芦戸ちゃんが耳郎ちゃんに飛び込むように抱きついた。

耳郎ちゃんも「あーもー」とか口では言ってるけど嬉しそうだ。

どちらも顔が真っ赤だ。

 

「ま、あの光景に免じて許してやれ」

「しょーがねーなー・・・」

 

その二人をパシャリと撮影する。どちらも嬉しそうな表情をしている。

 

写真にタイトルをつけると・・・そうだな。

 

仲良きことは美しきかな。

 

・・・なんてな。

 

 

 




たぶんあったと思うんですよね。いじめ
異形系の個性のいじめとか社会現象になってそう

この話、書き終わった後になんか悶えました。きつい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。