悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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個性についてはいくらか独自解釈が含まれておりますのでご了承ください。





勝利の後に

戦闘訓練が終わった。

俺が上鳴を確保。耳郎ちゃんが芦戸ちゃんを確保したらしい。

なぜか耳郎ちゃんのファッションが青少年にはまぶしすぎる感じになっていたが、ToLoveったのかな?

 

なんでも、芦戸ちゃんとの戦闘でそうなったらしい。

 

なんてことだ。俺にもっと力があれば・・・! 見に行けたのに・・・!!

内心はそんなもんだが表にはださない。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。

「これで隠しときなよ」と言って、俺のコスチュームを差し出す。「あ、ありがと・・」って言いながらモゾモゾと上に羽織る。かわええ。

 

そして、次はもちろん

 

「さあ! 反省会だ!」

 

オールマイト大先生による反省会のお時間だ。

 

「今回のMVPは! 先見少年! 君だ!」

 

やったぜ。

 

作戦の立案や、ヴィラン役をしっかりとこなしたことを評価されたようだ。

その他、俺たちのチームは「工夫を凝らした」とか「趣旨に沿ってやり遂げた」とか、結構な高評価をいただいた。

 

「ヒーローチームは今回は負けてしまったけれど大丈夫! 得難い経験をしたはずだ。ヴィランは先見少年のようにえげつない作戦も躊躇なく実行する! 悪意にまみれたそのやり口を体験できたことは必ずヒーロー活動で活かされる時が来るはずだ!」

 

ヒーロー側もこれまた高評価らしい。

上鳴は精神面での未熟さがどうとか言われていたが、それはこれから鍛えるものだとはげまされていた。芦戸ちゃんはもうちょっとよく考えて行動をするようにと言われていたが、それでも他の対戦だったらMVPでもおかしくない評価だった。

 

「どちらのチームもよく頑張っていたよ!!」

 

オールマイトはそう言って締めくくった。

 

マジで頑張ったよ今回は。上鳴も芦戸ちゃんも、直接触れたら感電、もしくは溶かされる「個性」持ちだから肉弾戦しかできない俺としては相性良くない相手だった。どうにか戦わずに勝とうとしたのに結局は戦闘になったし。勝ったけど。

 

「よう! おつかれ!」

「二人ともおつかれー!」

 

反省会が終わるとヒーローチームが話しかけてきた。

愛想笑いとか無理やり笑ってるとかではなくフツーに笑顔だ。

俺に対して「マジ強かったぜなんだよあの「個性」!?」とか「すごかったねー! あれ全部作戦だったの?」とか普段と同じように話しかけてくる。

 

・・・器がでけぇなー。

俺だったら絶対復讐計画とか考えるのに。末代まで祟るとか言いそう。

 

クラスメイトのところに戻ってくると

 

「おつかれ!!」

「すげえなあの「個性」!」

「結局どんな作戦だったのだ?」

「先見君! ヴィラン役を徹底するのは、相手のこれからを思っての…」

「ハァハァ、耳郎よぉ、暑くないか? 脱いじまえよ…それ…」

「…【未来視】? どの程度見れるのか、制限は…ブツブツ…」

 

一斉に話しかけられた。

 

聞き取れねーよ、落ち着け。緑谷はこっちに話しかけてるのか? 独り言か?

あ、峰田がぶっ飛ばされた。さもありなん。女性陣から汚物を見る目で見られてるぞ。

 

「オイッ! クソ金目ェ!!」

「はい? おれ?」

 

やせいの 爆豪(ボンバーマン)が あらわれた!

 

「チョーシのってんじゃねえぞ? お前もぶっ飛ばしてやるからなぁ!!」

「遠慮したいなーって・・・」

「わかったかコラァ!!」

「あ、返答は聞いてないんですね」

 

爆豪はキレながら(いっつもキレてるけど)自分の席に戻っていった

 

何の用かと思ったが、どうやら対抗意識を燃やされたようだ。マジ勘弁である。いや、普通に勝てないからね?

 

「おお・・・我がクラスの二大ヴィラン顔が・・・」

「ああ゛!? だれがヴィラン顔だぁ! このクソしょうゆ顔が!!」

「待って!? なにそれ!?」

 

心外である。

爆豪はともかく、俺はそんな厳つい顔をしてない。むしろ爽やか系だろ!

訴訟も辞さない。と、詰め寄るとクラス一のしょうゆ顔、瀬路範太(せろはんた)は言い訳を始めた。

 

「いやいやいや、俺が言い出したんじゃねーって! ほら、さっきまでの訓練で「先見がラスボスみーてなオーラ出してる」って話になってな? その時の顔が完全に悪の親玉(フィクサー)だって結論になっちまって・・・」

 

なんということでしょう。

アレは悪役(ヴィラン)という役作りで雰囲気を作っていたから、その時の事を言われると反論できない。

 

「ああ、確かに! あの時の先見は完全に悪役(ヴィラン)だと思ったぜ! ていうか、そんじょそこらのヴィランより怖かった・・・」

 

上鳴ィィィ!! 余計なこと言ってんじゃねえよー!!

みんなウンウン頷いて同意している。

 

ち、ちくしょう。救いはないのか?

 

その時「ハッ!」とある事に気付き、耳郎ちゃんの事を確認する。

まだだ! まだ俺には大天使耳郎ちゃんがいる!!

 

「・・・ごめん。いいやつなんだけど、ヴィラン顔だったていうのは反論できないっていうかその・・・」

 

か み は し ん だ

 

 

 

 

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その後は、切島に言われて俺の「個性」の詳細について説明させられたり、残りのクラスメイトの戦闘風景を観戦したりして授業は終わった。

 

帰り道、ふと瀬路に話しかけられた。

 

「にしてもさー。すげえ「個性」だよな未来視って」

「ん? まあな」

 

ドヤ顔をしてやる。すごいのは事実だからね! しょうがないね!

「うぜえ」とか言われても気にしない! ・・・気にしない!

 

「俺の「個性」ってほら・・・地味じゃん? 見た目的には先見の「個性」も派手なわけじゃないけど、やっぱインパクトが違うよな。・・・あー、俺も珍しい「個性」がよかったなー」

 

ふむ。瀬路は地味なことを気にしてるらしい。

しかし瀬路よ。希少な「個性」は希少なりの厄介ごとがついてくるんだよ?

 

「いや、お前・・・。珍しい「個性」がいいって言うけどさあ。下手に希少な「個性」だとひたすらに面倒なことになるんだぜ? 俺とか・・・後は八百万の「個性」だと特に」

「面倒なことって?」

 

決まってるでしょうよ

 

「誘拐」

「?」

「連れ去られたのが2回、未遂が5回、家を襲撃されたのが1回。」

「何の回数だそれ?」

「俺が(ヴィラン)に狙われた回数だよ」

「・・・マジ?」

「まじ」

 

俺は法律に気を使わなければ金の成る木だからな。俺がヴィランでも間違いなく狙うね。

 

「こんなもん序の口だぞ? 友人が人質にされないように中学までは学校を転々としなくちゃならんし、無断で出歩くことも禁止されてた。ついでに、俺は警察にマークされてるしな。俺の事を守るためじゃなくて、俺が(ヴィラン)にならないか監視するために、だ。」

 

おや、瀬路の顔色がよくない。調子に乗って話し過ぎたな。

 

「というわけで、だ。普通にお前の「個性」の方がいいと思うぜ? というか派手じゃないかも知れないが、応用の幅が広くて優秀な「個性」だろ?」

「おう・・・そうだな。贅沢は言わねえ」

 

納得してくれたようだ。あと、瀬路は「個性」を使用して立体機動とかするから別に地味じゃないと思うんですが。・・・まあいいか。

 

それからは重い話は止めて普通に授業の事とか話しながら教室に帰った。

 

 

 

 

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「ただいまー」

 

今日も一日が終わり、我が家へと帰ってきた。

実家は遠いので絶賛一人暮らし中だ。

ただいまとか言う必要は全くないのだが、癖とはおそろしい。

 

そのままベッドにダイブする。制服さえ着替えてない。

訓練で疲れているからか、すぐさま眠気が襲いかかってきた。

 

「うおーやべーおきろーおれー」

 

一人暮らしは独り言が増えるというのは本当らしい。

どうにか眠気を振り払って夕飯を作る。

 

もそもそと一人でメシを食べながら考えるのは授業でのこと。「個性」を使えば大抵のことはできると思っていただけに、今日の苦戦はそれなりに思うところがあるのだ。

 

「(決め手が無いんだよな。必殺技というか。)」

 

そもそも攻撃手段が少なすぎる。

素手で殴れない相手にはほぼ抵抗できないことが分かった。

芦戸、切島、上鳴、あとは轟もかな? ああいう、自分の体の表面に攻撃性を帯びるタイプの「個性」が天敵となってしまっている。

 

後は、瀬路が言っていたことも重要だ。【戦闘が地味】これはヒーローとしての人気に関わるのではないだろうか?

つまりは――

 

「(派手で、直接触らず、かつ俺だけにしかできないこと)」

 

んな都合のいいもんあるかな? とは思うが。とにかく考えてみる。

 

とりあえずは、武器・・・だろうか?

 

近接武器――は、意味ないな。敵の身体能力が高かったら奪われて終わる。威力も出ない。

射撃武器――銃はヒーローとしてどうなんだろう? 「個性」を使えば百発百中ではあるんだが。

投擲武器――地味だな。なんとか派手にできたらなぁ。

 

武器というか兵器を使うことを前提にするなら、一番いいのは爆弾だろう。

 

未来を観て(ヴィラン)が通るであろう位置を把握。

殺さない程度に行動不能にする理想の未来を観て、爆弾の設置場所を決める。

後は、タイマーをセットするだけ。

 

・・・・か、完璧だ!

これはいけるぞ! 爆発は派手だしな!! この戦法なら無敵に近い!!

 

 

 

 

・・・むしろ完璧に(ヴィラン)だこれ!!!

 

 

 

 

ていうかテロリストかよ! 絶対人気とかでない、むしろドン引きされるわ!

 

考えれば考えるほど俺の「個性」は暗殺とかに向いてるな。狙撃とかでも、【精度が許す限り】じゃなく【威力が許す限り】の距離で撃てるからな。大量にグラスを用意してどのグラスを誰がとるのか把握、ターゲットのグラスだけに毒を混ぜれば毒殺完了・・・。

 

ハッ! いかんいかん! 俺はヒーローだヒーロー。アサシンではない。

 

やっぱり投擲武器かな、地味だけど。

これも「個性」を使えば絶対に命中するだろうし、あとは威力と派手さと携帯性かな?

 

ちょっと調べてみるか、えーと? 

投げナイフ、ダーツ、ブーメラン、手裏剣、トマホーク、etc・・・

 

結構いいのがあるな。

大量のナイフとかカッコイイ。現実的じゃないけど。

 

よし! 今度相澤先生にでも相談しよう。

あの人俺と同じ攻撃力のない「個性」だし。方向性としては見習うべきだろ。

 

たしか、あの包帯かマフラーかよくわからんやつが先生の武器だったか?

ヒーローにふさわしくない武器とかあるだろうし、一度聞いてみないとな。

 

うんうん。勝って兜の緒を締めよを実践してるな。流石俺!

 

 

 

 

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side 相澤消太

 

「―――それで、先見をどう感じましたか?」

 

トゥルーフォームに戻ったオールマイトに今日の戦闘訓練での事について聞く。

 

 

先見賢人。座学・実技ともに好成績でヒーロー科に入学した男。「個性」は非常に有用かつ希少な『未来視』。個性把握テストでは、個性を使用せずに8位と肉体的にも優秀。これだけ見れば優等生なのだが・・・。

 

入試実技、彼は現在1-Bの拳藤一佳(けんどういつか)を救助。これによる救助(レスキュー)ポイントで入学が決定した。しかし、彼女以外にも要救助者が居たにも関わらずそれを助けようとしなかった。教員の間で、「複数を助けられないと判断した」もしくは「気が付かなかった」という意見の人間がポイントを入れた。

 

だが、「わざと助けなかった」という意見の人間も少なからず存在する。少なくともここに二人。

 

 

彼は難しそうな顔をして話し始めた。

 

「・・・私は彼が積極的に(ヴィラン)に加担することはないと思う。しかし、彼はなんというか容赦がない(・・・・・)

「容赦がない? 訓練で手加減をする方が問題だと思いますが?」

「いや、違うんだ。戦闘での手加減ではなく、発想に容赦がない。私はそう感じた」

 

発想に容赦がない? どういうことだろうか?

 

「あの授業は基本くじ引きで対戦相手を決めたが、彼だけはわざと(・・・)上鳴少年と対戦するように操作した」

「なぜそんなことを?」

「彼にとっては上鳴少年が天敵だからさ。「個性」を使えば簡単に勝てるという相手ではない、その時にどういった選択をするのかが知りたかった。」

 

上鳴の『帯電』は先見のような肉弾戦しかできない人間に対して絶対的な有利を誇る。いくら未来が読めても攻撃手段が無ければ何時かはやられてしまうだろう。

 

「結果はあの通りさ。」

「精神的に打ちのめすことで相手の心を折る。ですか。」

「そう、その発想が問題だ。普通なら戦闘の工夫を考える。もしくは時間切れ狙いとかね。しかし、彼は違った。言い方を悪くすると、相手の絶望を狙ったのさ。・・・これは、完全に(ヴィラン)側の思考だ。」

 

(ヴィラン)側の思考。

確かに、ヒーロとして活動しているときに似たようなことを好むヴィランがいた。

相手の絶望の表情を見るのが大好きだという最低最悪の犯罪者だ。

 

しかし――

 

「先見は相手を絶望させたくてやった・・・ということですか?」

「それは違う。彼は『有効だと思った』、『他の選択肢よりも可能性があった』、『ヴィランらしい発想だと思った』と言っていた。つまりそれが有効な戦法だと思って使っただけだ。」

「それなら問題はないのでは?」

「いいや、それも違う。彼はおそらく必要とあればどんなことでも(・・・・・・)する。文字通りどんなことでも、だ。それはヒーローの考え方ではない。」

 

№1ヒーロー。平和の象徴は断言する。それはヒーローとして間違っていると。

 

「彼は正義心や道徳心ではなく、自分の利益に従って行動している。彼が(ヴィラン)ではないのは単純にメリットがない、もしくは好みではないからだろう。」

「それは・・・」

 

それはヒーローとは呼べない。

 

「やはり除籍処分にするべきでしょうか。」

 

ヒーローにふさわしくないものがヒーロー科にいるべきではない。本当に心からヒーローを目指し才能の壁に潰された人間のためにも。

 

「それは・・・ダメだ。」

 

しかし、オールマイトはそれを否定する。

 

「なぜです? 彼はヒーローにふさわしい心を持っていない。除籍処分も当然でしょう。」

「相澤君。彼は確かに悪かもしれないが、(ヴィラン)ではない。・・・しかし、ヒーロー科を辞めた彼が(ヴィラン)にならないとは限らないんだ。」

 

それは・・・確かにそうだが・・・

 

「君の考えることもわかる。彼は多くのヒーローの心を持った人間を才能だけで叩き潰している。それが許せないと思うことはしょうがない。だが、少し待ってもらえないだろうか?」

「・・・ヒーローとしての心を教え込む、ということですか?」

「その通り、敵を増やすくらいなら味方にしてしまえ。そういうことさ」

 

事実、先見がヴィランとして活動すれば厄介極まりない。間違いなく大物のヴィランになるだろう。暗殺や資金繰り、作戦指示などできることの幅が広すぎる。

 

「この方針は根津校長も賛成している。」

「!!・・・わかりました」

 

上に話が通っている以上、除籍するのは簡単ではないだろう。

 

 

「せいぜい見極めさせてもらいますよ。先見をね・・・。」

 

 

 

 

 

 

 




主人公の座学の成績がいいのは「個性」の副産物のようなものです。
なので特に努力して勉強したわけではありません。

身体能力はヴィランに対する危機感などから。そこそこ鍛えてあります。
まあ、そこそこで切島より身体能力が上なのですが・・・






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