悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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今回は戦闘ばかりです。

主人公の個性(チート)についてはあとがきに詳しいことを載せます。

お楽しみください。





やっと戦闘してる

「いっくぜぇ!」

 

上鳴が「個性」を発動させる。全身が帯電した、当たればシビれる人間スタンガンだ。

コスチュームがあっても何発かもらえば動けなくなるだろう。

 

そのまま俺に向かって殴りかかってくる。冷静になり余計な力が抜けたおかげか、挑発して頭に血が上っていた時よりもずっとキレのあるパンチだ。

 

しかし、

 

「当たらないって言ったろ!」

 

俺の「個性」で『拳を避ける未来』を観つづける限り当たることはない。掠らせもしない。

だが攻撃をどうする? 蹴るか? ダメだ、足がやられたら回避ができなくなる。

くそぅ、こんなことならコスチュームに手袋も付けておくんだった! そしたら殴れたのに!

 

とにかく、避ける避ける避ける避ける――――!!

 

「くっ!」

「・・・」

 

避けきった! ラッシュを終えて、呼吸を整えるために距離を取る。

 

体力に問題はない。純粋な身体能力なら俺の方が上だ。近接戦闘の技術でも俺の方が上だろう。さて――?

 

「そういうことかよ」

 

上鳴に不敵な笑みが浮かぶ。

 

「ガードしないんじゃなくて、ガードできないんだろ? 俺の電気が効いてないってわけじゃないんだな?」

 

ばれたーー! 「くっ!」とか言ったのが悪かったか? でも、躱すのきつかったし!

ちくしょう隠してたことが次から次へとばれてやがる! 

誤魔化せ俺ぇ! 顔面狙いの縛りが無いと流石によけらんねー!

 

「それはどうかな? まだよけr「オラァ!」うおお!?」

 

い、いきなり殴ってきた!? ヒーローならヴィランのセリフくらい聞いてよ!

 

「もうしゃべらせねーぞ! ろくなことになんねーからな!!」

「余裕、の、無いやつ、だな」

 

散々口先で(もてあそ)んだからか落ち着いてしゃべらせてくれるつもりはないようだ。動きながらじゃ軽口にキレが出ない。

トラッシュトークは俺のメインウェポンなのに!

 

チッ!もう限界だ! 痛いのは嫌なんだがな!

 

これ以上は躱し続けられないと判断して、一つ決心する。

上鳴の拳を前に踏み込みながら(・・・・・・・・・)躱す。

そのまま懐に潜り込み、渾身の肘鉄(・・)を打ち込む!

 

「フン!!」

「ぶはあ!?」

 

よし、成功! 思いついてよかった。肘ならコスチュームに守られてるからな。

腕が痛いしシビれる! けど許容範囲だ。

胸の中心、心臓マッサージをする位置に打ち込んだ。ハートブレイクショットだったか? 呼吸が一瞬止まるだろ?

 

呼吸が止められ、咳きこもうとして動きが止まった上鳴に向かって追撃に走る。

 

長期戦は不利! 判断力が戻る前に決めさせてもらう!

 

間合いに入る。

――狙いはハイキック。頭に打ちこんで気絶させる。

踏み込み。

――ようやく上鳴の視線が俺を捉える。もう間に合わない、体も動かない。動くのは目線ぐらいだろう。

 

 

 

「・・・!!!」

「ぐ、あ゛!?」

 

 

 

・・・・あ?

 

 

体中が痛い。体が上手く動かせず、立っていられない。受け身も取れずうつぶせに倒れる。

 

体に電気を(まと)ってもコスチュームのおかげで足がしびれる程度で済むはず。

行動不能になるなんて・・・?

 

混乱する頭を落ち着かせ、先ほど見た光景を思い起こす。

 

――踏み込み、勝利を確信した時。こちらを睨みつける上鳴。

――あとは、足を振り切るだけ。上鳴の全身が今までの比ではないほど光る。

――体に衝撃が奔り動きが止められる。コスチュームに覆われてない顔・手を含め全身を襲う激痛。

 

・・・もしかして『放電』か?

あのやろ! 「個性」は『帯電』だって言ってたじゃん! 『放電』もできるのかよ!

こんな手札を残しているとは思わなかった。「俺のは電気を纏うだけ」って言ってたのに!

 

か、か、完全にしてやられた。幸い、気絶はしてないがしばらくは体を動かせない。詰みだ。

 

うぐぐ。くやしい! こんな「切り札は最後までとっておくべきだ(キリッ」みたいな負け方をするなんて!

おバカキャラに頭脳戦で負けました(笑) とか!

精神攻撃(爆笑) とか言われるに違いない! うわあああああ!!

 

鬱だ・・・。世界滅ばねえかな・・・。

 

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

あれ? まだこないの?

 

少しは体が動くようになってきた。何とか頭を動かして上鳴の方を確認する。

 

 

 

「・・・ウェーイ。」

 

 

 

とりあえず目を閉じる。もう一回確認してみよう。

 

「ウェイ。」

 

サムズアップする上鳴(?)がいた。

 

「ええー・・・」

 

そういえば、「個性」を使い過ぎるとアホになるとかなんとか・・・。アホってなんだよと思ったが、確かにアホとしか言えない感じになってるな。あれで使い切ったのか・・・。

 

まだ立って歩けるほどに回復していないので、這いずって上鳴のもとへ向かう。

近づいても大した反応が無い。ずっとウェイウェイ言ってるだけだ。

確保テープを巻こう。頑張って立ち上がり、鉢巻みたいにしてあげた。

 

『・・・先見少年! 上鳴少年を確保!!』

 

オールマイトが確保宣言をした。どうやら俺が勝ったらしい。

動くのがきついので仰向けになって休む姿勢に移る。

 

「・・・むなしい」

 

もう寝よ。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

side 耳郎響香

 

先見の作戦通りに、二人から引きはがすことは成功した。

 

「(えっと、確か・・・)」

 

作戦会議の時を思い出す。

 

 

『耳郎ちゃん、これは作戦が失敗した時のための作戦だ。』

『俺たちは二人ともあまり防衛に向いた「個性」じゃない』

『だから、とにかく核のハリボテから気をそらすことが重要だ』

『一対一、正々堂々の一騎打ち。これならヒーローは必ず乗ってくる』

『互いに邪魔が入らない距離まで移動してそれぞれを相手にする』

『後は、頑張って勝ってくれ!!』

 

 

作戦と呼べるほどじゃなかった。

引きはがした後は頑張れとしか言われていない。

 

「(ウチとしてはその方が気楽でいいけど)」

 

少ない時間、かつ、たったあれだけの情報で、信じられないほど精密な作戦を立てたのだ。

そのことに関しては素直にすごいと思うし、実際有効な作戦だとも思った。

 

ただ・・・

 

「(上鳴には悪いことしちゃったな)」

 

予想の何倍も気まずかっただけだ。

だから先見には悪いが、あれを止めてくれた芦戸に感謝している。

 

「(だからここからは正々堂々真っ向勝負!)」

 

柱が何本も立ち並ぶ大広間、その中央までやってきた。

気合を入れなおして相手を迎える。

 

「お待たせ、はじめよっか」

「うん! いっくよー!」

 

同時に動き出す。

芦戸がまず、床一面に酸をぶちまけた。

 

自分の傍まで来た酸を警戒して音で吹き飛ばす。

しかし、量が多かったのか自分の周囲以外は酸で水たまりができるような状態だ。

 

「おそいよー!」

「うわっ」

 

「(早い! 酸で濡れた上を滑って移動してる!?)」

 

いつの間にか接近していた芦戸の飛び掛かりを躱す。

床にまかれた酸は移動の補助を目的としていることに気付く。

 

「(これなら、ウチも気にせず動ける!)」

 

しかし、

 

「(動きずらい・・・)」

 

スケートのように滑り高速移動を可能にする芦戸の酸。慣れない人間にとっては滑り易いせいで踏ん張りのきかない、転んでしまいかねないものになる。

 

「とりゃー!」

「うわっと、あっつ!」

 

そんな状況で周囲からは芦戸の攻撃用の酸が飛んでくる。

当然音で吹き飛ばそうとするがすべてをはじくのは難しい。ある程度は被弾してしまう。

 

「(とにかく、移動して自分が動ける空間を確保しないと!)」

 

踏ん張れる場所を確保するのは正しいが、今や機動性に雲泥の差がついている。

芦戸が見逃がしてくれるはずもなく、移動しようとするとどこからかやってきては攻撃される。

 

移動するのを諦め、足元の酸を全て音で吹き飛ばそうとするがぬるぬるして取れずらい上に、芦戸にすぐ補充されてしまう。

 

「(どうしよう!?)」

 

芦戸の主な攻撃方法は酸を投げかけること、しかも音の衝撃波よりも若干射程が長い。

つまり、射程の外から攻撃され、距離を詰めようとするとすぐさま離れる。自分よりもリーチが長く、速度も速い敵にヒット&アウェイされると打つ手が無くなる。

 

そうこうしているうちに何度か攻撃をもらいある事(・・・)に気付く。

 

「え!? ちょっと待って待って! 芦戸!! ウチのコスチュームが溶けてるんだけど!?」

「えー? そりゃ溶けるよー。酸だもん。」

「いやいやいやいや! まずいって!!」

「どっぱーん!」

「いやあああああ!!!」

 

乙女の危機的状況に先ほどよりも必死で酸を打ち落とす。

 

酸は溶かすもの。服が溶けるのも道理である。

気が付くのが遅かったせいか、ロックな雰囲気のコスチュームがパンクな雰囲気になってしまっている。

 

涙目になりながら襲いくる酸を吹き飛ばしていく。

 

「そりゃそりゃそりゃー!」

「うわわわわわ! あわわわ!!!」

 

耳郎響香のスピーカーから出る音の衝撃波は心音を増幅させたものだ。

つまり、慌てたり焦ったり緊張したりすると、

 

「はぁ、はぁ、全部はじいたよ!!」

 

鼓動が早くなり、音の衝撃波は威力と数を増してゆく。

もはや音の弾幕となった衝撃波で酸の一切を吹き飛ばした。

 

『・・・先見少年! 上鳴少年を確保!!』

 

すると、オールマイトからの通信が届いた。

 

「え!? 上鳴が負けちゃった!?」

「(いよっし!!)」

 

先見と上鳴の対決は先見が勝利した。

 

「(これで2対1。先見がこっちまで来たら勝てる!)」

 

耳郎は時間稼ぎすれば勝ちが決まると判断した。

 

「ごめんね! いっきにいくよ!」

 

しかし、それは芦戸も同じこと。

彼女もまた時間稼ぎをされたら負ける。一気に勝負を決めにかかる、と判断した。

 

「それそれそれー!!」

「うああああ!!!」

 

鳴り響く爆音。

まき散らされる強酸。

 

全力で倒しにかかり、全力で時間を稼ぐ。そして――――

 

 

 

 

「「来ない!(来ない?)」」

 

 

 

 

何時まで経っても、先見は来なかった。

耳郎はもう(R指定的に)限界だというのに、先見は来ない。

そろそろ(乙女的に)ヤバいというのに、先見は来ない。

 

「ああもう!! なんで来ないのよ!?」

 

文句は言うが想像はできている。相打ちに近い形で倒し、動けないほどダメージを負っているのだろうと。すなわち自力で倒さねばならないということを。

 

「(どうしよう、どうしよう。防戦一方だし、攻撃は届かないし、ウチじゃ芦戸に追いつけないし・・・)」

 

芦戸は本当に強い。運動能力も高いし、「個性」の応用も上手い。

 

「(先見も「まともに戦ったら向こうの方が圧倒的に強い」って言ってたし)」

 

確かに強い。勝てないかもしれない。―――けれど、諦めるつもりはない。

 

「(この程度で諦めたらヒーローじゃない、だよね!)」

 

そして、一つの案が浮かぶ。成功すれば勝てるかも(・・)しれない。失敗すれば当然のように負ける。そういった案だ。

 

「いけっ!」

「??」

 

しかし、可能性があるならそれに賭ける。

辺りの壁や柱、腰から上にあるコンクリート製のものを粉々に砕きながら移動する。

土埃が立ち、芦戸が高速機動で離れる。

 

「・・・」

 

視界が晴れると、芦戸はどこにも見当たらなかった。

そして―――

 

 

「うぎゃ!!」

 

 

後ろから接近した(・・・・・・・・)芦戸を振り向きもせず迎撃した。

 

「確保ぉーー!!」

 

怯んだすきにテープを芦戸にまきつける。

 

『ヴィランチーム! WIIIIIN!!!』

 

オールマイトの勝利宣言が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公:先見賢人(さきみけんと)

個性:『未来視』(正式名称は後述)

 主人公の「個性」。非常に希少な【未来視系】の「個性」である。その中でも更に特殊な複合型個性。
未来視には「運命を見る」ものと「先を予想する」ものの2種類がある。彼は後者の「先を予想する」未来視。彼は最大で12分後の(このタイプの未来視では破格)視界全ての未来においてほぼ確実な予測が可能。
そして、彼の「個性」で最も特殊なのが、予測の未来視と同時に、理想の未来を見て、そこに至る過程を知ることができる。という点だ。

第3話「入学式は?」で行った、空き缶を投げる動作を例にしよう。
普通の未来視
 個性発動→缶が外れる未来を見る→缶を投げることを諦める
主人公の未来視
 個性発動→缶が外れる未来を見る。と同時に缶が入る未来を見る(理想の未来)→理想の未来に至る過程を感覚的に理解する→感覚に従い投げる→缶が入る

未来を演算し理想に至る方法を逆算しているらしい。本人は無意識でしている。
すなわち「可能性があれば達成する」というチート。どの程度の可能性まで達成できるかは不明。(測定方法が無い)

本人の認識は「未来さえ見えれば必ず成功する」というもの。
個性の正式名称は『逆行未来演算』

デメリットは未来を理想のモノに変えるといちいち演算しなおさないといけないこと。連続使用は脳に負担がかかる事。





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