波乱万丈の個性把握テスト(体力測定)を終えて翌日。
午前中は英数国など一般科目の授業を受けた。
もちろん講師はプロヒーロー。教員免許とか頑張って取ったんだろーなと思いながら授業を受けた。
授業内容は極めて普通だ。なんにも面白くない。英語で無駄にプレゼント・マイクのテンションが高い。
そして午後からは 「ヒーロー基礎学」
ヒーロー科の人間でこの授業に期待してないやつはいないだろう。
クラス全体が浮かれる子供のようだ。
「わーたーしーが!」
そしてついにきた
「普通にドアからきた!!」
№1ヒーロー『オールマイト』
平和の象徴とも呼ばれる。ヒーローの中のヒーロー。本物の
「うおお! 画風が違う!」
「すごい! 本物!!」
皆興奮している。ま、しょうがない芸能人なんか目じゃないほどの有名人だし。
…ハッ! こっそり写真撮ったら週刊誌とかに売れないかな?
「今日の授業はこれ! 戦闘訓練!」
どうやら、授業一発目から座学じゃなくて実戦らしい。
すばらしい、座学よりよっぽど面白そうじゃないか。
「それに伴って! ――――こちら!」
オールマイトがそういうとコスチュームが出てきた。入学前に取られた要望をもとに作られている専用のヒーローコスチュームらしい。
流石、仕事が早いぜ雄英!
「よし、それに着替えて移動だ!」
俺のコスチュームを確認するとほぼ希望したとおりに作られていた。
パッと見は黒のロングコート、内側に大量の収納ポケットと袖口にも色々と仕込むための収納スペースがつけられている。注文した装備も用意されている。
「おお! 先見のコスチュームカッケェな!」
「だろ? 切島のコスチュームは………男らしいな!!」
「!!、わかるかこの男らしさが!!!」
切島は「男らしい」ってのがよほどうれしかったらしい。
切島よ・・・コスチュームって言うかお前のそれは上半身裸だから褒めずらいんだよ。
似合ってるけど! お前以外がその恰好したら変質者なんだよ!
そんな感じでコスチュームについてあーだこーだ言いながら訓練所まで移動していった。
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全員がコスチュームに着替えて訓練所に集まっている。
そして、クラスメイトを見渡す。
うん。こうしてみてみると……なんだあれだな。
「八百万さ……あんたそれ、ちゃんとコスチュームの意見出した?」
「ええ、出しましたわ。おおむね希望どうりです。耳郎さんは何かコスチュームに不備などがあったのですか?」
「い、いやそういうわけじゃないけど。そっか……希望通りなんだ。」
「梅雨ちゃんのコスチュームとっても似合ってるね!かわいい!!」
「ありがとう葉隠ちゃん。うれしいわ。ところで聞きたいのだけれど、もしかして葉隠ちゃんのコスチュームは靴と手袋だけなのかしら?」
「うん、そうだよ! 本気になったらそれも脱ぐけど!」
ふむふむ。なるほど、なるほど
「(我が世の春はここにあったか……!)」
俺が人知れず心の中で感動の涙を流していると、隣で俺と同じ目をした奴がいることに気付いた。
クラスで一番背の低い男。―――確か峰田、だったか?
向こうもこちらに気付いたようでお互いに見詰め合う。
「……」
「……」
ガシッ!
「自己紹介をしよう。俺の名前は
「オイラは
気付けば熱い握手を交わしていた。
理解したのだ。「こいつは同士である。」と。
ここに一つの友情が誕生した。
「ハイ! みんな注目!」
オールマイトから授業の説明が始まった。やたらとアメリカンな設定なのが気になるが、ざっくり言うと二人一組で
ペアはくじで決められた。プロになると現場で即席のチームを組むことがあるとか言う理由らしい。
「よろしくね、……えーと、」
「先見賢人だよ。よろしく。」
「あ、うん。ウチは
「おっけ、耳郎ちゃんって呼んでいい?」
ちゃん付けが恥ずかしいのか苦笑いだが「まあ、いいよ」と言ってくれた。
そうなのである。この俺の黄金の右腕は数少ない女子をペアに引き当てるという偉業を成し遂げたのだ。
めっちゃ嬉しい。若干ちゃん付けに恥ずかしがるところとかポイント高い。
喜びに浸っていると何処からか嫉妬の視線を感じた。
「……」
峰田だ。
奴の視線からは「同類の癖にお前だけ女子と仲良くしやがって・・・!」という意思を感じる。
これが目は口ほどにものを言うというやつか
そして、あいつのペアは
峰田の性格からして全く嬉しくない組み合わせであろう。
「(…ッハ!)」
「…!!!」
なので周りから見えないように全力で鼻で笑ってやった。
どうやら先ほど生まれた友情はお亡くなりになられたらしい。短い命だったぜ。
そんなこんなで戦闘訓練だ。
爆豪の協調性が無かったり、飯田がドまじめにヴィラン役をこなしてたり、相変わらず緑谷の破壊力がぶっ飛んでたり、麗日さんが可愛かったり、色々あったがおおよそ問題なく授業は進んでいった。
「じゃあ次! 上鳴・芦戸ペア 対 先見・耳郎ペア!」
ようやく自分の出番が来た。
「おっ、先見とか。負けても文句言うなよ?」
「言ってろ、返り討ちにしてくれるわ」
「耳郎ちゃん! 負けないよー!」
「ウチも負けないからね」
対戦相手は上鳴と芦戸ちゃん。
非常に明るい性格のコンビだ。訓練が終わった後、どこかの爆豪みたいに気まずくなる可能性が低いのがすごいありがたい。
ちなみに上鳴と芦戸ペアがヒーロー側。俺たちはヴィラン側だ。
宣戦布告みたいな挨拶も終わったし、とっとと中に入ってヒーローを待ち構えておくとしよう。
「―――って言うのがウチの「個性」」
「なるほどね。近距離ではプラグを指して内部破壊、中距離はスピーカーから不可視の衝撃波、音による索敵も高精度で可能、と。 ……ナニコレ汎用性高くない? 俺必要ないんじゃないか?」
ペアの「個性」が有能すぎる。偵察も牽制も戦闘もなんでもござれの「個性」だ。
衝撃波に至ってはノーモーションでコンクリを砕く威力で、デメリットなしときた。
あれ?俺いらない子かな?
「い、いや! 流石に一人じゃ無理だよ。当てられるかわかんないし、ウチの「個性」多人数相手には弱いんだよね。それに、上鳴の「個性」は触れたら一発でアウトでしょ? あれを相手にするのはちょっとキツイ」
「あー、そっかぁ。
他人の事を才能マンとか呼ぶくせに才能にあふれるやつである。電気系の「個性」は『生まれた時からの勝ち組』とか呼ばれてんのに。
自覚がないのかなんなのか……。とにかく敵に回ると面倒なのは間違いない。
「あとさ、耳郎ちゃんの「個性」って向こうに知ってるやつはいる?」
「うん、どっちにも話してある。」
つまり、向こうからすればこちらが索敵する手段を持っているって前提で動くわけか。
むしろそっちの方がいいな。行動の制限ができるし。
「――――おっけ。思いついたよ、作戦。」
これならたぶん大丈夫。
近寄るだけでアウトになる上鳴、やたら身体能力が高く、応用も強さもある「個性」の芦戸ちゃん。
チームワークも悪くなる性格じゃないし、連携も即席ながらしてくる可能性もある。
ぶっちゃけ相当面倒くさいんだが……。
残念だったな。今回の俺はマジだ。
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side 上鳴電気
『訓練スタートだ!』
通信からオールマイトのスタートの合図が聞こえてきた。
「うっし。じゃあ、行くか!」
「おー!」
とりあえず、他のチームも基本的に上の階に居たし上に向かうか!
「ねえねえ。二手に分かれたりとかしないでいいの?」
「いいんだよ、確か耳郎が音で周りの事がわかるって言ってたし。分かれてもすぐに見つけられるから意味ねーだろ?」
「あ、そっか! たしかそういうこと言ってたね!」
しっかし、先見の「個性」は結局教えてもらってないんだよな。身体能力を上げるタイプの「個性」じゃないのはわかるけど。
対策とか立てられねえし、あいつの情報だけないってなんかズルいよな。
まあいっか! 実際に「個性」使われたらわかるだろ!
「あー! 階段見つけたよ!」
「よっしゃ! 行くぜ!」
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「どう? あいつらまとまってきてる?」
「……うん。二人まとまってきてる。ていうか、すごいペースでこっち来てるんだけど。下の階とか全然探索してない。」
なんと。あの二人、索敵の「個性」もないのにどうしてこっちの場所がわかってるんだろう?
確かに他の組と同様に一番上の階に核のハリボテを設置してあるが……。
まさか当てずっぽうじゃあるまいし。
「まあいいや。じゃあ作業はその辺で中断してアイツらを待ち構えよう」
「うん。了解」
核の置いてある広間から廊下へと移動する。
耳郎ちゃんによると部屋から一番近い階段から足音がするそうなので、そちらに注意を向けておく。
「ねえ、ホントにいいの?
今、核の周辺には誰もいない。つまりはノーガード。部屋に入られたら即ゲームオーバーである。
「いいの、いいの。なんせ
つまるところ奇襲については考えなくてもいいのだ。もしも「二手に分かれている」とか「派手な音を立てながら向かってくる」とかだと話は別だが。
ま、その時は奇襲前提で作戦を組み立てるだけなのだが。
「だから大丈夫。俺たちは相手の位置を探れるからどうあっても向こうは後手になる。問題ないさ。……それに、そろそろ来たみたいだ。」
俺の耳にも階段を上ってくる音が聞こえてきた。
しばらくすると上鳴と芦戸ちゃんが階段を上ってきた。
――――さて、始めるか
「よう。早かったな」
「いいや、待たせちまったみてえだな」
そんなことねえよ。マジで早かったよ。予想以上だよ。
「しかし、お前らどうやってこっちの居場所を探ったんだ? 他の階は全然調べてもないみたいだけど?」
答えるとは思えないが、索敵手段の有無は重要情報だ。探りを入れて損はない。
「え? だってみんな上の階にいたじゃん」
……ホントに当てずっぽうかよ。
二人とも「何言ってんだこいつ?」みたいな顔でこっち見てんじゃねーよ。
こっちのセリフだよそれは。耳郎ちゃんも「マジかコイツら」って顔してるじゃん。気づけ。
「……まあいいや。それより始めようぜ。時間制限あるのはそっちだろ?」
「あ、やべ。そうだった。―――それじゃ行くぜ!! 芦戸! 援護頼む!」
「まっかせてー!!」
二人が構える。戦闘時の打ち合わせ位はしてきたようだ。
むしろそれくらいしておいてくれないと困るんだが。
「んじゃ、こっちも行くか。耳郎ちゃんは援護お願い」
「おっけー」
こっちの準備も完了だ。
耳郎ちゃんがいつでもスピーカーから音出せるように構えるだけだけど。
それじゃ、
「さあ来い
彼は主人公です