悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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入学式は?

「うん、よしと」

 

姿見の前で自分の姿を確認する。そこには真新しい雄英高校の制服に袖を通した自分がいた。

流石に苦労しただけあってそこそこ感動するなぁ、と思いながらネクタイなどを整えていく。

 

しっかりと朝ご飯を食べる。朝は多目に食べる派なのだ。

準備が整ったら、制服と同様に真新しい鞄と靴をそろえて玄関へと向かう。

天気は快晴、春の日差しがまぶしいくらいだ。

 

「いってきます」

 

そう、今日は入学初日。華の高校生活、その始まりの日である。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

「(なにしてんだコイツ?)」

 

今、俺の目の前には1-A の教室のドアの前で緑のモジャヘアーの男が何やら小声でブツブツと呟いている。

とりあえず早く入ってほしい、すごい邪魔。

すると突然ドアが開き中からメガネをかけた男が出てきた。

 

「おはよう!緑谷君」

「おおぉ、おはよぅ」

 

どうやら、この緑モジャは緑谷というらしい。

メガネの方はしっかりと挨拶をしたのに緑谷のあいさつはどもってるし、尻すぼみだし、いじめられっこみたいなやつだなと思った。

 

「後ろの君もおはよう!」

「おはようございまーす」

「えっ、あああごごごめん! 邪魔だったかな!」

「おう、邪魔だったぜ。入っていいか?」

 

メガネの人が挨拶してくれたおかげで、ようやくこっちの事に気が付いてくれたらしい。

「邪魔だったか?」と聞かれて「邪魔だったよ」と答えただけなのに緑谷とやらはショックを受けてしまったようだ。なんか固まってしまった。

邪魔だったのは本当の事なので俺が悪いわけではないな、うん。

 

動かないのでしょうがなく横を通って教室に入る。

すると入口のすぐそばに座っていた知り合いと目があった。

 

「先見くんじゃーん! おっはよー!」

「おはよう! 芦戸ちゃん。いやー良かった。同じクラスだな!」

「うん! よろしくねー!」

 

入試の時に話した芦戸三奈(あしどみな)ちゃんである。どうやら同じクラスに慣れたようだ。これは素直に嬉しい。

相変わらず元気いっぱいである。朝から元気のいい挨拶を聞くと一日の活力みたいなのが湧いてくるな!

あ、メガネ君の挨拶はノーカンで

 

芦戸ちゃんと話をした後、机に荷物を置きに黒板に書かれた自分の席に向かう…

 

「おう!おはよう!」

 

前に、俺のふたつ前の席の男に挨拶された。

とりあえず荷物を置いてこっちも挨拶を返す。

 

「おはようさん。俺は先見賢人だ、よろしくな」

「よろしくな! 俺は切島鋭児郎(きりしまえいじろう)だ!」

「ういうい、あいにくと知り合いがクラスに少なくてな。仲良くしようぜ」

「おう!」

 

早速友人ができたようだ。こういう明るくてコミュニケーション力が高いやつがにいるとホント助かる。

 

「そういやさっき緑谷と話してたけど知り合いか?」

「いや? さっき初めて話した。ていうかほとんど話してないよ。あいつがどうかしたのか?」

 

さっきの緑モジャ君について聞かれたが特に知っていることはない。なんで気にしているのか聞いてみると

 

「えっ、しらねぇの? あいつ入学試験で0Pのギミックを「個性」でぶっ飛ばした奴だぜ?」

「・・・マジかよ」

 

どうやら、有名人のようである。

驚いた、マジで驚いた。

あんなおどおどしていじめられっこ(ナード)の雰囲気を振りまいている奴があの鉄の巨人をぶっ飛ばした…?

 

切島によるとどうやら筋力増強系の「個性」であるらしく、なんと素手であのギミックをぶん殴って破壊したらしいのだ。

「個性」の反動で腕とか足がズタズタになるほどの強化具合であるらしい。

・・・いや、ズタズタて。なんだそのやばい「個性」。俺だったら絶対に使わん。

しかし、いくら反動があるとはいえ人は感情で動く生き物。もし、緑谷氏がぷっつんしてしまったらシャレにならない。

 

「(やっべ。ぶっ飛ばされる前に下手に出とこ)」

 

緑谷出久は危ない。君子危うきに近寄らず。

もしや、あのビクビクした態度も何らかの罠である可能性も微レ存…?

 

さっきから入口で騒いでる緑谷出久の方に目を向ける。

 

「お友達ごっこがしたいなら余所へ行け。ここは・・・ヒーロー科だぞ」

 

なんかいた。

 

なに…あれ、なに?

寝袋にくるまったオッサンが芋虫みたいにもぞもぞ動きながら教室に入ってきた。

どう見ても不審者です本当にありがとうございました。

 

「ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性を欠くね」

 

あなたは常識を欠いているのでは?

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね。早速だが、体操服コレ来てグラウンドに出ろ」

「「「(担任・・・!?)」」」

 

無駄にクラスの一体感を感じる。今まさに俺たちの心は一つになったぜ的な。

 

 

 

 

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なんだかんだで着替えて今はグラウンド。

今から体力測定を行うらしい。それも「個性」ありありの何でもアリ体力測定だ。

「まずは、見本」ということで。爆豪勝己(クラスで騒いでいた金髪)とかいう入試1位の奴がソフトボール投げで「個性」を使用して705.2メートルという記録をたたき出していた。

 

それを見てクラスの連中が「面白そう」と騒いでいたのが気に入らないのか、相澤先生は「最下位は除籍する」とか言い出した。

教師の権限すげぇな・・・。ていうかその方針を認めてる雄英もすごいな。

流石に除籍は嫌なのでまじめに頑張るとしよう。

 

 

50メートル走、握力測定、反復横跳び、立ち幅跳び・・・

 

 

今の種目はソフトボール投げだ。

記録的に最下位は何とか免れそうである。生まれつき運動スペックは無駄に高いからな。

ぶっ飛んだ記録はないが好成績しか残していない。

「個性」無しの記録ならクラスでも1,2を争うんじゃないかな?

しかし、流石に上位組には歯が立たない。てか、握力測定で万力とか反則じゃないですか?

 

しかし、噂の緑谷出久の成績が(かんば)しくない。

ていうか、ぶっちゃけ最下位である。筋力増強系とか体力測定じゃ独壇場では?と思ったが、よく考えたらデメリットの存在が痛すぎる。

当たり前の事だが怪我なんかしたら測定中断である。かといって素の身体能力では(そこそこ鍛えているようだが)最下位になってしまう。

あれ?除籍(クビ)かな?やったぜ(ガッツポ)

 

さて、その緑谷の出番である。この後の種目は(パワー)が役に立たないものばかりなので、ここで記録を出さないと間違いなく除籍(クビ)だ。

 

「46メートル」

 

・・・おや?

 

なんと相澤担任が「個性」を消したらしい。聞いたこともない「個性」だが一部では有名らしい。

どうやら緑谷のことがお嫌いなのかな? 担任がそんなことしていいのかよ。・・・とは思うが、いいぞもっとやれ。

 

そして、2度目の挑戦だ。相澤先生から「行動不能になったら失格」と言われているので「個性」を使うこともできず終わるだろう。

みじめ極まりないが諦めてもらうしかない。あぁ~悲しいな~

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思ったのだが。

 

 

「先生・・・! まだ、動けます」

 

 

まさかまさかの指先だけの筋力増強。もちろん指は酷いことになっているが、なるほど確かに「まだ動ける」。

しかも記録が705.3メートル。爆豪の記録を上回っている。それも指だけ(・・・)でだ。

・・・どんだけだよ。

 

 

 

 

 

ようやく全種目の測定が終わった。

結果発表の時間だ。最下位は「緑谷出久」

 

ソフトボール投げの後、まだ動けるとはいえ痛みに邪魔されたのかその後の記録がよくなかった。

残念無念というやつだろう。本当に文字通り「骨を折ってまで」努力したというのに除籍処分とは。

しかし、これもやむを得ないこと。世の中残酷なんですね。本当にお疲れさまでs・・・

 

「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

・・・HA?

 

「「「はーーーー!!?」」」

「あんなの嘘に決まってるじゃない・・・。ちょっと考えればわかりますわ・・・」

 

あっれぇ? 絶対本気だったとおもったのに。

やっぱりヒーローには演技力も不可欠ということか。まんまと騙されたぜ。

なかなかにむかつく笑顔だぜ相澤先生。

 

「はいはい、というわけでこれで解散。着替えて教室に戻るように。」

 

そう言って相澤先生は歩き去っていった。

半端ないな雄英。

 

緑谷とか緊張が吹き飛んだのかまだ戻ってきてないし、俺も流石に気疲れがすごい。

 

 

 

 

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「しっかし、終わってみると結構楽しかったな体力測定。」

「ん? 確かにな」

 

昼休み、切島たちと体力測定を振り返っているとそんな感想を漏らしていた。

ちなみにメンツは切島、上鳴、障子、俺、だ。

 

「実際、除籍とか無くてよかったぜホントに。まだ初日だし」

「今回は緑谷が最下位だったけど俺たちも結構危なかったからな」

 

苦笑いしながら「あぶねぇ、あぶねぇ」とか言っているこいつは上鳴電気(かみなりでんき)

今回の最下位レースの参加者の一人だ。

上鳴の「帯電」はクラスでも最強ランクの「個性」なのだが体力測定では物の役に立たなかったらしい。

 

というか、よく考えたら体力測定に使えない「個性」持ちが不利すぎる。だからあの状況で除籍処分はありえなかったんだろうな、と思う。

 

切島も「俺の「硬化」も意味なかったしな!」と笑っている。ちなみにこいつは割と上位だ。体を鍛えまくってるみたいだからな。

上鳴が恨めし気に「この才能マンが・・・」て呟いてる。悪気はないんだよね切島って。

あと純粋な才能だったらお前の方がすごいと思うぞ。

 

「そういえば先見。お前の「個性」はなんだ?」

 

馬鹿話を続けていると、障子から俺の「個性」について話を振られた。

 

 

少し悩む。

 

「(答えてもいいんだけど・・・。ただ教えるだけじゃあつまんないな)」

 

そこでちょっと意地悪をすることにした。

 

「ただ教えるのも面白くない。・・・ヒントを出してあげるから俺の「個性」を当ててみてくれ」

「お! 面白そうだな!」

「・・・ふむ、やってみるか」

「ヒントってなによ?」

 

どうやら、3人とも乗り気になってくれたようだ。

上鳴はちょっと待て。

 

「ちょっと待て・・・。」

 

そう言うとさっき買った缶コーヒーを飲み干す。

そして、大体20メートルくらい先にある自販機。の横にあるごみ箱を指さす。

ゴミ箱はよくあるビン・缶で分けて入れる穴の開いた蓋がかぶせてある。

 

「あれを見とけよ」

 

そして「個性」を発動。

空き缶をゴミ箱に投げる。

 

 

「カァン!」と音を鳴らして見事ホールインワン。針の穴を通すようなコントロールで空き缶はゴミ箱に見事入った。

 

「「「おぉ~!」」」

 

パチパチパチと拍手までいただいた。ノリ良いなこいつら。

 

「さて、今のはどういった「個性」を使って入れたでしょーか」

 

俺が宣言すると真剣な顔をして考察しだした。結構真面目にやるのね。

 

「ん~、スナイプ先生みたいな射撃補正だと思うぜ?」

「・・・サイコキネシスで軌道修正した可能性はないか?」

「わっかんねーなー」

 

色々と意見は出たがどれも不正解だ。

上鳴はちょっとは考えろ。

話しているうちに昼休みが終わったので「正解は次回に持ち越し!」といってうやむやにした。

 

 

ま、そのうち誰か気付くでしょ

 

 




主人公の「個性」はそのうち説明します。

あと、握力測定で万力を使ってたのは八百万百です。

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