悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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感想で疑問など多くいただきました。
けれどもまだ話せないのです。
モヤモヤしながら待っていただきたい。





職場体験へ

 雄英体育祭が終わって二日後。

 天気はあいにくの雨。

 

「む・・・。」

 

 いつも通り通学路を歩いているのだが・・・。

 どうも視線を向けられているような気がする。

 

 周りを窺う。

 やはり、周囲の人間がちらちらとこちらに視線を向けている。

 

 なんだ・・・? 最近は誰かに狙われるようなことはしてないはずだが・・・?

 カツアゲも、他人の彼女をナンパしたりもしていない・・・いったいどうして?

 

「なあ、君。雄英の先見くんだろう?」

「はい、そうですが?」

 

 すると、なんかオッサンに話しかけられた。

 オッサンだと!? カツアゲはしてないってば!

 

「やっぱりそうか! いやー、良かったよ体育祭!」

「・・・ああ! ありがとうございます!」

 

 あ、そっか。テレビに出たんだった。そりゃ知名度も上がるか。

 昔でいうところのオリンピック銅メダリストみたいなもんだしな。

 

 なるほど、この視線は俺の監視じゃなくて好奇の視線だったのか。

 素晴らしい。一気に気分がよくなってきた。

 

「おっさんも熱くなって応援しちゃったよ~。頑張ってな! プロになっても応援するからな!!」

「ありがとうございます! 頑張ります!!」

 

 ふははは、もっと褒め称えろ!! 家族とかに俺と出会ったことを自慢してもいいんダヨ?

 

 すると、オッサンを皮切りにして周囲の人たちが一気に話しかけてきた。

 

「準決勝はおしかったな!」

「応援してたぞ!」

「次は頑張んな!!」

「地味だけどカッコよかったよ!!」

 

 これだよ、これを求めてヒーローを目指してる感じあるよね。

 贅沢をいうのならオッサンじゃなくて若者・・・女の子がよかったが。

 

 ていうか、ほとんど野郎なのはどうして? 4対1くらいで男の方が多いんだけど?

 

 ――――ハッ! そうか! (イケメン)か!!

 お゛のれ!! クラス最強のイケメンには勝てないってことか!? いいよなあ!! アイツは「個性」も派手だもんなあ!!! 映像で見るならアイツが一番だよなあ!!

 

 ・・・・・・爆豪よりは人気があると信じたい。あれよりはましだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよーう」

 

 喜んだり、落ち込んだりと、いろいろあったが無事教室へ。

 やはりというかなんというか、教室ではみんなが一気に有名人へとなってしまったことに戸惑いを覚えていた。

 

「超声かけられたよ来る途中!」

「おれもおれも」

「・・・俺、いきなり小学生にドンマイコールされたんだけど」

「ドンマイ」

 

 流石は雄英体育祭。

 ヴィラン襲撃の件で話題性もあったし、視聴率がよかったんだろう。

 特に最後のトーナメント戦まで行った人間はかなり名前が知られるようになったみたいだ。

 

「先見、先見。ほら、これ見てよ」

「ん? どした尾白?」

 

 尾白が俺に自分のスマホを見せてくる。

 

 ネットニュース? なになに・・・・・・

 

「おー、表彰式の写真じゃん。改めてみるとすげえ絵面になってるな。」

「ははは。」

 

 ギャグみたいになってる。爆豪のインパクト強すぎでしょ。

 

「ほら、この記事ニュースランキングのトップになってるんだよ」

「お? うわ・・・まじだ。この写真が全国に晒されてるとなると流石に爆豪が憐れだな。」

「誰が憐れだゴラァ!!!」

「「うおおおお!?」」

 

 びびった。

 いつの間に来てたんだよ爆豪。

 

 ドデカい舌打ちをかましながら自分の席へと爆豪は向かって行く。

 どうやら未だにイライラが続いているらしい。

 

 あの後、クラスの奴らに詳しいことを聞いたところ、なんでも轟が緑谷戦で使用していた左側の炎の個性を使用せずに爆豪と戦ったらしい。それを舐めプだと爆豪がブチ切れ、あの表彰式につながったというわけだ。

 

「はぁ・・・。」

 

 ため息も出るというものである。

 今の爆豪はまともに話を聞いてくれるか怪しい。俺と戦った時の最後について聞いてみたいんだが・・・。

 

 ちなみに表彰式が終わった後に聞いてみた時の対応がコレである。

 

『なあ、爆豪。俺と戦ったとき最後なにしたの?』

『あ゛? 知るかカス、失せろ!』

『すいませ~ん(こぇ~)』

 

 なんだろ・・・俺、アイツとまともに会話できる気がしない。

 せめてイラついてないときに会話したい。・・・・・・めったにないな。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。」

 

 相澤先生がいらっしゃった。

 クラス全員が一斉に席へ着席し、静かになる。

 

 訓練されたなあ、俺ら。

 相澤先生騒がしいと躊躇なく肉体言語で黙らせに来るから・・・。

 

「早速だが、今日の"ヒーロー情報学"は特別授業になる。」

 

 またテストかな。

 どうでもいいけど雄英の授業抜き打ちテスト多すぎませんかね?

 

 

「【コードネーム】ヒーロー名の考案だ。」

 

「「「「胸ふくらむ奴きたああああ!!!」」」」

 

 

 おおお、ヒーロー名か。かっちょいい奴考えないとな!!

 

「これは以前話した「プロからのドラフト指名」に関係してくる。指名が本格化してくるのは2、3年から・・・今回来た指名はあくまで"興味がある"程度のものだ。指名が撤回される可能性は十分にある。」

 

 ふむふむ。

 指名というより"スカウトの目に留まった"ってぐらいに考えておくべきかな?

 

「例年はもっとバラけるんだが、今年は二人に注目が偏った。」

 

 黒板に指名数が表示される。

 もっとも指名されているのは轟、その次に指名されているのが爆豪だ。

 この二人が三番目に多く指名されている奴と大きく差をつけている。ツートップ状態という奴か。

 

 ・・・・・・まあ、その三番目が俺なんだが。

 

「1位2位逆転してんじゃん」

「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな」

「ビビってんじゃねーよプロが!!!」

 

 うん、俺でも爆豪じゃなく轟を指名するな。怖いし。

 

「で、だ。これを踏まえいわゆる"職場体験"ってものに行ってもらう。プロとしての活動を実際に体験して、より実りある経験を積んで来いってことだ。」

 

「なるほど、それでヒーロー名か。」

「俄然楽しみになってきたぁ!」

 

 学生とは言えプロ活動するんだからヒーロー名を考えないといけないってことか。

 

「まあ、仮の名前ではあるんだが適当なモンは――

「つけたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

 おや? ミッドナイト先生がやってきた。

 

「この時の名前が世間に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」

 

 相変わらず素晴らしい格好だ。

 様々な意味でギリギリだが、

 

 

パァン!!

 

 

「――何か言ったかしら。」

「イエ、なにも。」

 

 いきなりムチを鳴らしたかと思うと、ものすっごい睨まれました。

 いや、ほんとに何も言ってない。何かは思ったけど。どうしてわかったんですかね?

 

「というわけでだ。ネーミングセンスを査定してもらうためにミッドナイトを呼んだ。俺はそういうのできないからな。名前を考えるときは自分が将来成りたいイメージを持って名前を付けろ。それによって自分の目指すものが明確になる・・・・"名は体を表す"ってやつだ。」

 

 良いこと言うな相澤先生。

 将来のイメージ・・・ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 およそ15分後。全員だいたい考えがまとまってきた頃。

 

「さあー! できた人から発表してってね!!」

 

 は、発表形式ですか・・・。

 いや、まあ、世間に知らしめるものだから、ここで恥ずかしがるようでは意味が無いというのはわかるんだが・・・。

 

 続々とクラスメイトが自分の考えたヒーロー名を発表していく。どれも秀逸なネーミングだ。

 

「小学生のころから決めてあったの【フロッピー】」

「俺はコレ! 【烈怒頼雄斗《レッドライオット》】!」

「ヒアヒーロー【イヤホン=ジャック】」

        ・

        ・

        ・

 

「いいよ、いいよー! この調子でじゃんじゃん言っちゃって!!」

 

 皆そこそこのネーミングセンスだな。

 しかしまだまだ。ここらで真打登場と行こう。俺のネーミングセンスにひれ伏すがいいわ。

 

 

 

 

 

 

「【爆殺王】!」

「【魔眼王】!」

 

「そういうのは止めた方がいいわね。」

 

 なんだと!!??!?

 馬鹿な・・・。超かっこいいだろ、このネーミング。いったい何がいけないというんだ?

 

 しかし、爆豪はいいセンスしてやがる。

 戦闘センスだけではなくあらゆるセンスが一流ってことか・・・。油断ならん奴だ。

 

「えーと、あと決まってないのは――飯田君と、緑谷君ね。先見君と爆豪君はもいっかい別の考えて。」

 

 ボツ・・・だと・・・。

 あれ以上の名前となると・・・。ふむ・・・。

 

 おや、緑谷が決まったらしい。壇上に登っていく。

 

「えぇ? 緑谷それでいいのかあ?」

「うん・・・。今まで好きじゃなかったんだけど・・・"ある人"に意味を変えられて・・・。」

 

 【デク】

 緑谷のヒーロー名はそう記されていた。

 

 確か、でくの坊的な意味で貶されていた名前だったはず。

 けれども、緑谷の表情は晴れやかだった。

 初めての戦闘訓練の時に叫んでたな・・・・・・

 

「これが僕のヒーロー名です。」

 

 "「頑張れ」って感じのデク" だったな。

 

 

 

 

 

 

「爆殺卿!!」

「魔眼皇!!」

 

「違う。そうじゃない」

 

 馬鹿な!!!?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・結局、今回は名前をヒーロー名として扱うことになった。

 

 おかしい。

 あの後いくつものヒーロー名を挙げていったんだが、全部ボツにされてしまった。

 

 あれだな、俺が時代を先取りしすぎたんだな。

 まあ、俺がプロヒーローになる事には世間も俺に追いついてくるだろう。

 ふう、まったく。ミッドナイト先生ってばしょうがないなぁ。

 

「いやぁ・・・あの名前は無いよ、マジで」

「先見ちゃん、ネーミングセンスはダメダメだったのね」

 

「(ぐふぁ!!!?)」

 

 そんな感じでヒーロー名について話していると、思わぬダメージをいただいた。

 

「じ、耳郎ちゃん? 梅雨ちゃん?」

 

「ウチも大して自分のセンスを良いとは思ってないけど・・・。アレは無い。」

「ええ。あれはちょっと無いわ。」

 

 言葉の刃が俺の心を抉ってくる。

 もうヤメテ!! 俺のハートはズタボロだよ!!?

 

 同級生の女の子にセンスを罵倒されるのは想像以上に心にくる。

 うぐぐ、かっちょいいと思ったのに・・・・・・。

 

 しかし、事実として俺の案は全部ボツ。しょうがないから名前で登録される有り様だ。文句を言える資格が無い。

 

 割と落ち込んでいると、耳郎ちゃんと梅雨ちゃんが慌ててフォローに回ってくれた。

 

「え、えっと、ほら! 先見は他が色々優秀だしネーミングセンスが悪いことぐらい気にすることないって!!」

「そうよ、先見ちゃん。気にすることないわ。爆豪ちゃんも同じくらい悪いのだし。」

 

 フォローのようでそうでもない。

 ネーミングセンスが悪いことは覆らないんですね、わかります。

 

「ち、ちくしょう。中学校の奴らはどうして俺のセンスについて何も言ってくれなかったんだ・・・!」

 

 誰も文句とか言ってなかったのに・・・。「ピッタリだよ!」とか「ナイスセンス!」とか言ってくれてたのに・・・。

 あれか? 「ピッタリだよ(笑)」、「ナイスセンス(笑)」だったってことか?

 許せん。今度奴らの家に行ったらコーラで濡らした雑巾で床を拭きまくってやる。蟻が家の中で繁殖する恐怖におびえるがいい。

 

「それよりアレよ、職場体験学習! どこ行くか決めた?」

 

 耳郎ちゃんが話題を変えてくれた。

 職場体験か・・・。

 

「俺はもう提出したよ。即日提出した。」

「そうなの? で、どこにしたの?」

 

 どこにした・・・というか。

 

「指名が来てた事務所の中から、ヒーローランキング順に上から三つを候補に出したんだ。」

「え? そんな決め方でいいの?」

 

 と、言われてもな。

 活動地域もジャンルも特に希望が無いのだ。よほど特殊なジャンルじゃない限り「個性」が対応できないってこともないし・・・。

 

 ぶっちゃけどこでもいい。

 

「ほら、いい経験を積むことが目的でしょ? 様々なジャンルに取り組むことも経験だと思ってさ? だからジャンルとかにこだわらず、できるだけいい事務所を選んだんだよ。」

「それも一理あるわね。私はジャンルを決めてから選んだけれど、先見ちゃんみたいな選び方も良いと思うわ。」

 

 適当なことをほざいたが、割と納得してもらえたみたいだ。

 候補に出した事務所はどこも人気ヒーローだったが、結局どれになるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ―――職場体験当日。

 

 いい天気だ。

 遠出するのに天気が悪いと、それだけでめんどくささがアップするからな。

 

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場での着用は厳禁だ。落とすなよ。」

 

 相澤先生からの注意が始まった。

 

 外部へと生徒たちを出すわけだから心配もあるのだろう。

 ヒーロー科の人間はなんというか少々問題があるやつが多いからな。

 

「くれぐれも失礼の無いように。じゃあ行け!」

 

 クラスメイトがそれぞれの研修先へと向かう。

 中には九州まで行くやつもいたり、もちろん近場の事務所に行くやつもいる。

 

 ちなみに俺の研修先はここから近い。時間もかからず到着するだろう。

 

 えーと? 地図によると場所は・・・・・・。

 

「こっちか?」

 

 都心にも近く、どちらかと言えば雄英のある地域寄りの場所に事務所が建てられている。

 

 都市部は犯罪率の高さからヒーローの需要が高い。

 ゆえに、ヒーローの多くが都心部に事務所を構え、ヒーローが乱立する状況ができてしまう。

 ここで活躍するということは、そのヒーローの実力が確かなことを表している。

 

 つまり、ここは実力ある人気ヒーローの事務所。

 少しばかり緊張しながら中に入る。

 

「雄英高校から来ました。先見賢人です。よろしくお願いします。」

「・・・ああ、来たか。どうぞ、入ってくれ。」

 

 中にいたのは一人の男。

 木製のヘルメットのような頭部、黒のぴっちりとしたヒーロースーツ、そして腕がひと肌ではなく樹木のような質感を持っている。

 

「歓迎しよう。ようこそ"シンリンカムイヒーロー事務所"へ。」

 

 目の前にいるのは実力派人気若手ヒーロー"シンリンカムイ"だ。

 

 

 

 

 

 

 


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