悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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いざ、雄英へ

「うおー、マジで広いなこの学校…。校舎もめっちゃでかい」

 

さて、俺は今日本屈指のヒーロー養成学校の「雄英高校」にいる。

朝っぱらからこんなところにいるのはもちろん観光のため……ではなく入学試験を受けに、だ。

 

「雄英高校」といえば数多(あまた)の有名ヒーローを輩出したことで有名なヒーロー養成学校で、「一流ヒーローになるための登竜門」と言われており入試倍率はなんと300倍の超人気高校だ。

 

 

そして今日がその入試の日。馬鹿デカい講堂で番号の席へと向かう。

先に座っていた奴らを横切って自分の席にたどり着いた。

 

「あ、君の席ここ? ごめんごめん、今荷物どけるねー」

「ありがと、悪いね」

 

俺の席に荷物を置いていたのは、なんというかすごい目立つ女の子だった。

ピンク色の皮膚と髪、あとは角も生えている。おそらく異形系の「個性」なんだろう。

 

「私、芦戸三奈(あしどみな)。よろしくねー」

 

歯を見せて「ニシシ」と笑いながら話しかけてきた。

うむ、かわいい。

 

「俺は先見賢人(さきみけんと)。よろしくな芦戸ちゃん」

 

その後はプレゼント・マイクが入ってくる時間まで芦戸ちゃんとしゃべりながら時間を潰した。

割と気安いタイプというかコミュ力が高いのか話してるうちにどんどん話が弾んでいった。

最終的には連絡先とかも交換して「一緒に入学できるよう、ガンバロー!」って言ってくれました。

おかげでやる気30%アップである。絶対入学したる。

かわいい女の子は人類の宝。いいね?

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

さて、プレゼント・マイクの試験説明とありがたいお言葉をいただいた後(なんかメガネかけた野郎とモサモサした頭の奴がなんかやってた)、試験の会場までやってきた。

ちなみに芦戸ちゃんは別会場だったので今はいない。

 

カウントダウンもなしに「はい、スタート」で始まったのには面食らったが、順調にポイントを稼いでいっていると思う。

 

「あらよっと」

 

俺はその辺で拾った瓦礫を自分の前に投げつけると角から出てきたロボットのちょうど(・・・・)目の部分に命中した。

これでもうロボットはほとんど何もできなくなる。

あとはこれまたその辺で拾った棒で殴りつけて行動不能にするだけだ。

 

今ので38P。大体似たようなやり方で壊している。

ロボットを瞬殺できるような「個性」ではないので、索敵とかその辺でがんばらねばなるまい。

 

結構な数のロボットをぶっ壊したが周りの奴らも結構なペースでポイントを稼いでるからまだまだ楽できる状況とは言えない。

 

周りで特に目立っている体から電気を出して次々ロボットをショートさせてるやつ(カッコよくてうらやましい)とか、でっかい手をぶん回してる女の子(かわいい)とか、明らかに自分のペースを上回ってるやつらがいるから油断できない。

中には全然ポイントを取れてないやつもいるが、それは無視していい。

 

「しっかし、結構きついなこの試験…。けが人とかでるんじゃね?」

 

言っちゃ悪いが実力の無い人間も混ざっている、ロボットにやられたりするんじゃないか?と思ったのだ。

そんなことを言ったのがフラグだったのか、急に地震かと思うほどの揺れと地響きが聞こえてきた。

 

「おい! あれ見ろ!」

「でかっ! なんだありゃ!?」

「アレがもしかしてギミックか?」

「ギミックぅ? 0Pの? デカすぎだろ!!」

 

大・混・乱である。まぁあんなデカブツが出てきたらしょうがないだろう。

ビルぐらいの高さのロボットとか、もはや鉄の巨人って感じである。

何処から出てきたかは知らないが、明らかにこっちに向かって進撃してきている。

まぁ、ロボットが集まっていたからその分受験生も集まっている。そりゃこっち来るよな、と思った。

 

「とりあえず逃げるぞ!」

「ああ! あんなのに巻き込まれたらたまんねーよ」

 

我先にと、逃げ出す受験生たち。

実際、巻き込まれたらヤバいし、なによりあれは0P。関わるメリットがない。

 

「(俺もとっとと逃げようあんなのに関わってられん)」

 

そうやって逃げ出すために、ギミックの進行方向から逃れようと視線を向ける。

するとふと、目に入るものがあった。

 

「(逃げ遅れたか? ざまぁとしか言いようがないな、死なないように祈っておりますっと)」

 

地響きか揺れのせいか、崩れた瓦礫に挟まれた受験者が何人かいた。

運が悪かったか注意を怠ったかわからないがどっちにしろ助ける気は微塵もなかった。

 

しかし、

 

「(ん? あれ? あの子は…)」

 

なんと、さっきまで巨大化した手でロボット相手に無双してた女の子が(うずくま)っているではないか。

 

「(はぁ!? まじかよ!)」

 

それを見た瞬間ダッシュしていた。野郎?知らん! だが可愛い女の子は助けないわけにはいかない!

 

 

 

 

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side 拳藤一佳(けんどういっか)

 

「(やっば)」

 

まさかこんなことになるとは思っていなかった。

注意を怠っていたわけではない。地響きが聞こえてきた際も、瓦礫が崩れてこないか気にかけていたし崩れても大丈夫な位置に移動していた。

 

「(助けたはいいけど、まさか巻き込まれちゃうなんてね)」

 

しかし、注意していたからこそ瓦礫に巻き込まれるであろう人を見つけてしまった。

とっさに助けたはいいがその時に自分の足が瓦礫に挟まれてしまったのだ。

「個性」を使って瓦礫自体はどうにかできたけれど、足を痛めたのか上手く動くことができない。

 

「(骨はたぶん折れてない…。早く逃げないと…)」

 

後ろからはギミック(0P)が迫ってきている。

早いところこの場所から離れないとまた瓦礫が崩れてくるかもしれないし、最悪踏み潰されてしまうかもしれない。

 

「(いっったい! けど、がまんしなきゃ!)」

「おい! 大丈夫か!」

「えっ!?」

 

気が付くと目の前に男の子が来ていた。黒髪から金色の綺麗な瞳がこちらを覗いている。

助けに来てくれたのだろうか?

 

「足を痛めたのか? 手を貸す、ここから逃げるぞ」

「あ、ありがとう」

 

そのまま彼は肩を貸してくれた。

そのままできる限り急いでこの場から離れていく。傷めた足のせいで上手く走れず、ほとんど彼に引っ張ってもらってしまった。

そのせいでかなり密着してしまい、こんな状況にもかかわらずちょっと恥ずかしい。

黙っていると気まずいし、恥ずかしさを誤魔化すためにもこちらから話しかけてみた。

 

「ごめんね、試験なのに足引っ張ってるみたいで」

 

しばらく話をした後、口から思わずこぼれるように謝罪が出てきてしまった。

当然だろう、今は試験中。それにもかかわらずわざわざこちらの手助けをしてくれているのだ。

自分に構っていなかったならもっとポイントを稼ぐことができていたはず。

ありがたいというよりも申し訳ない気持ちが勝ってしまっていた。

 

しかし、彼はそれを聞くときょとんとした表情になって

 

「なにいってんだ、助けるのなんて当たり前だろ?」

 

といった。

 

彼は本当に「何を当たり前のことを」という表情をしていた。

そうだった、自分たちは『ヒーロー』になるためにこの試験に挑んでいるんだ。

「『ヒーロー』が誰かを助けるなんて当たり前だ」と彼は心の底から思っているのだろう。

彼は間違いなく『ヒーロー』としての心構えを持って試験に挑んでいたのだ。

 

拳藤一佳は思う。あぁ、こういう人が本当の『ヒーロー』になるんだ、と

 

 

 

 

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「なにいってんだ、(美少女を)助けるのなんて当たり前だろ?」

 

そう言うと、一佳ちゃん(肩を貸して逃げるときに自己紹介はした)は目を見開いた後、うんうんと頷いた。

なんだろう。すごい誤解を受けている気がするがなんかいい方向に勘違いしてるっぽいし、あえてここは爽やかスマイルでキメ顔をしておこう。

 

しかし、良い子だな一佳ちゃん。俺がポイント稼げないんじゃないかと気を使うなんてな。

自分こそポイントを稼ぐどころじゃないのにそれでも気を使ってくれるところとかほんまええ子や。

 

確かに、ポイントは安全圏内とは言えない。けれどそこそこは稼いでいる。

それにぶっちゃけて言うと俺は雄英に落ちても他の高校に行けばいいだけの事だと思っている。

「トップヒーロー」になるには雄英出身なのは必須かもしれないが、俺は別にトップじゃなくてもいいし。

ここで死に物狂いでポイントを稼がず、美少女とトークする余裕があるのもそれが理由だろう。

他の受験者からすれば「ふざけんな」と言われるかもしれないが、俺からすればそんなもん気にする価値もないのだ。

トークと雄英を天秤にかけてトークを選んだだけである。

 

安全な場所に移動した後、一佳ちゃんに応急手当をしていると試験終了の合図が聞こえた。

一佳ちゃんは「あ…」と声を漏らし、ばつが悪そうにこちらを見た。

 

「ごめんね…。いや、ありがと。手当してくれて。」

 

始めは謝ってきたが、思い直したのか笑顔で「ありがと」と言ってくれた。

うむ、かわいい女の子の笑顔こそ最高の報酬よ

助けたかいがあったというものである。

 

「どういたしまして」

 

こちらも笑顔で返答する。

 

 

しばらく待っていると雄英講師のリカバリーガールが受験者にグミを配りながらやってきてくれた。

 

「おや、あんたは足を怪我しているね。ほら早く見せな」

「あ、はい、おねがいします」

「どれどれ、…捻挫だね、応急処置がしっかりしているからそのままでもいいくらいだ。ま、一応治療するよ」

 

一佳ちゃんを見つけたリカバリーガールが簡単に診察すると「チュー!」とキスをして治療してくれた。

足首を動かして痛みを確認したあと、

 

「ありがとうございました!」

「あんまりけがするんじゃないよ」

 

一佳ちゃんが元気よくお礼を行った後、そう一言だけ言うとリカバリーガールは次の患者へと向かって行った。

あの試験でけがするなって結構無茶じゃありませんかね・・・・

 

「よかったねちゃんと怪我が治って」

「うん! 先見くんもありがとね!」

 

それから、試験会場の外まで二人で話しながら歩いて行った。

アクシデントもあって正直受かるかどうか微妙なところだがそこから話を広げていって「二人とも受かっていることを祈って!」とかいって連絡先も交換してもらった。

 

 

今日だけで二人も可愛い女の子と連絡先を交換したとか、間違いなく今日の俺は勝ち組だな。

家に帰った後、今日一日を振り返って俺はそう思いました まる

 

 

 

 

 

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それから数日後、雄英から合否通知が送られてきた。

両親がかなりそわそわしていたが、こういうのは一人で見たいので自分の部屋で見ることにした。

封筒の中から変な機械が出てきたかと思うと、そこからNO.1ヒーロー「オールマイト」の映像が流れてきた。

 

『私が映像に映された!!』

「うおっいきなりかよ」

 

そういえばオールマイトが新任教師にって噂があったことを思い出す。

 

「(噂はホントだったみたいだな)」

『初めまして先見賢人くん!どうして私が映っているのかって?私が今年度の合否を伝える担当だからさ!』

 

流石は№1ヒーロー、インパクトがすごい。

あと、無駄にすごい技術だ。サポート科とかあるし、そういう技術力の高さも感じる。

 

『さて、あとが詰まっていてねサクサク進めさせてもらうよ。まずは、筆記試験!これは文句なしの合格だ!順位は10番!よく頑張ってくれた!!』

「うしうし」

 

自己採点でいい点数なのは予想していたが悪くない結果だ。…ていうか相当に自信があったのに10位かよって気もする。

よっぽど順位一桁はいい成績なんだろう。

 

『…さて、次は肝心の実技試験の方に移ろう。君の実技の点数は39Pこれも悪くはない点数だ。けれど、君よりも成績のいい生徒はいる。…残念ながら不合格だ。』

「(落ちたか…)」

『―――が、しかし!この試験にはもう1つの点数がある!! その名も、『救助(レスキュー)ポイント』! しかも審査制だ!!』

「はぁ?」

 

なんだそりゃ?救助(レスキュー)

 

『君は確かに拳藤一佳君を助けていたせいでポイントを稼ぐ時間が無くなってしまったのだろう!しかし!誰もが逃げ出す圧倒的脅威を前に、他人を助ける行動を起こした君を評価しないなんて!……あってたまるかってことだよ!!よって、君の実技試験の点数は救助(レスキュー)ポイント25Pを加えて64P!!合格だ!!!』

「……んん~?」

 

これ…たぶんヒーローとしての心意気が評価された的な点数…だよな?

いや、俺は可愛い女の子を助けただけで何人か見捨ててるんですけど……

ヒーローとしての心意気とか最低ランクな自信があるんだけれど……

 

「…………ま、いっか」

 

 

 




ちなみに拳藤が助けた受験者は拳藤を置いて逃げ出しました。
もちろん不合格。


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