悪のヒーローアカデミア   作:シュガー3

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原作を読みなおすの楽しいですね

新しいアイディアも浮かびますし




本物の敵

 広場を目指す。

 正確に言うと、黒いモヤのヴィランを目指す。

 報復は当然の権利! ハンムラビ法典もそう書いてる!

 

 しばらく走り回って、火災ルームの出口を発見した。

 

「おらぁ!」

 

 蹴り飛ばす。

 熱くて熱くてイライラしていた。一刻も早く脱出するために、この扉はやむを得ない犠牲だった。

 

「フゥー! 涼しいー!」

 

 気分爽快である。

 やっぱ暑いのはダメだな。クーラーの効いた部屋こそ至高よ。

 

 広場はまだ戦闘中のようだ。戦闘音がここからでも聞こえてくる。

 相澤先生ドライアイなのにきつくないのかな?

 とにかくさっさと向かう。奇襲できるなら一番なんだけど。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 side 相澤消太

 

 数が多い。

 どいつもこいつも雑魚ばかりだが、数の多さが問題だ。

 

「この人数相手によくやる…。流石はプロヒーロー」

 

 そして、おそらく主犯格のであろうヴィランがいっこうに動かない。

 こちらを舐めているだけなら構わないが・・・

 何か、隠し玉でもあるのか?

 

「動いているからわかりづらいが、一動作のたびに髪が下りている・・・。その間隔もずいぶん短くなった。・・・そろそろ限界が近いんじゃないのか?」

 

 気付かれたか。

 

「たしかに連携を乱すのは上手い。けれど本来は奇襲による短期決戦が得意なんじゃないのかなあ…?」

 

 ただのヴィランじゃない。

 こちらの「個性」や戦闘スタイルについて正確な分析をされてしまった。

「個性」の連続使用の限界が近いのも確かだ。その前に終わらせて―――?

 

「だから、数さえ用意すれば詰みだ。」

 

 ワープゲートから更なる敵の増援が現れた。

 馬鹿な、わざわざ予備の人員を・・・?

 

 新しい敵が向かってくる。相変わらず雑魚だが、体力と・・・目に限界が来た。

 

「個性」の消し損ね。クリーンヒットをもらってしまう。

 

「ぐあ!?」

 

 マズイ、隙が、内臓にダメージ、動きが戻るには―――

 

「調べておいてよかったよ。13号、イレイザーヘッド。あくまでオールマイトのついでだけど、プロヒーローには変わらないからな・・・」

 

 男の目が嗜虐に歪む。

 知っていた。弱点を調べられていた。今まで隠してたのは限界近くで増援を見せて心を折るため―――

 

「フッ! ヴィランらしい考え、だな」

「…? 何がおかしい?」

 

 ふと、思い出した。似たようなことを戦闘訓練でしでかしたやつを。

 

 なるほど、これは上鳴たちのいい経験になったはずだ。

 必要があったとはいえ、まさしくヴィランの発想そのままだ。

 

 ・・・・・・なら、こいつらにもそうするだけの理由がある?

 しかし、理由がどうあろうとこっちはもう限界だ。一度休めなければ「個性」にも支障がでる。

 

「・・・なんだ? 風切り音?」

 

 すると、何処からか風を切る音が聞こえてきた。

 何かが高速で飛び回っているような――?

 

 

 ブシュ! と血が噴き出す音が聞こえた。

 

 

「なああぁぁぁあぁ!!!?」

 

 

 男の体から鮮血が噴き出す。一度にいくつもの斬撃を受けたかのように。

 そして、体中に刺さったソレ(・・)が血の化粧によって姿を表す。

 

「な、んだこれ。ブーメランか?」

 

 それは、透明なブーメランだった。非常に視認しづらい。先ほどの風切り音はこれが飛来してくる音だったのだろう。

 

 

 

「そうそう、ブーメランで間違いねーですよー。」

 

 

 

 この、軽薄は声は・・・。

 

「先見!」

「はい! 先見賢人です! ピンチっぽいんで助けに来ましたよ!」

 

 コイツ…この状況でまだそんなへらへらした態度を・・・!

 

「お前・・・!! ・・・!?」

「なんだい、水色の人?」

 

 マズイ! 生徒が相手にするには荷が重すぎる!

 

「先見ィ! ふざけてないで逃げろ! 冗談で済む相手じゃないんだぞ!!」

「冗談・・・?」

 

 なぜ逃げない? ・・・いや、それよりも敵はどうした? なぜ黙っている?

 

 

 

 

「今回は本気も本気。一切の手加減も、一切の容赦も、一切の慈悲もありません。あとは、脳みそ丸出しの奴だけです。それ以外はもう終わりました(・・・・・・)。」

 

 

 

 

 なに?

 

 周囲を見渡す。増援に来た敵も、いまだ残っていた敵も例外なく地に倒れ伏している。

 全員の背中の中心には、先ほどの主犯格のヴィランと同じ透明なブーメランが刺さっている。

 

「知ってますか? 背骨には隙間がある。もし何か刺さったらどうなるでしょうか? 下半身麻痺? 植物人間状態? どれになるかはご愛嬌! とりあえず気絶はしてくれますよね? 気絶するまでは未来を観たんですけどその後は知りませんので。 ・・・ああ! 先生ご安心を。殺してはないですよ。ただ、もう【一生】歩けないかもしれないだけで!」

 

 まるで何でもないかのように話す。それが恐ろしい。

 先見は本当になんとも思ってない。敵とはいえ一人の人生を潰しておいて何の感慨も抱いていない。

 

「水色の人も動けないでしょ? 四肢の腱を切っちゃったから。悪いね、奇襲で俺の「個性」を使うと強すぎてさー。」

 

 

 

 絶体絶命のピンチ。そこに現れた味方なのに、そいつはヒーローと呼ぶには遠すぎる何かだった。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 ふうー! 奇襲成功! 大成功!

 

 焦ったー、先生やられちゃうんだもんな。本当は黒いモヤの奴のところに行きたかったのに。

 でも、いっか! 水色の人すげえドヤ顔してたしな! 台無しだぜ! ざまあ!!

 

「さてさて? どうしますか、水色の人。先生もそろそろ復活するでしょうし、二対一ですね?」

 

 しかし、予想外なことが一つ。

 

「・・・・・・脳無ゥ!!!! こいつらを、殺せ!!」

 

 こいつ、勝てる未来が観えないんだけど。

 

 全力でサイドステップ。

 俺がいた場所を砲弾のような拳が通り過ぎる。

 衝撃波が離れたところにあるコンクリートを爆散させていた。

 

「・・・はは。冗談キツイって」

 

 あ、冗談では済まないって言われたばっかだったわ。

 

 しゃがんだ後にバク転する。

 頭上を振り回した腕が空振り、足を狙ったローキックは飛び越えた。

 

 足を引いて反転。その後、飛び込み前転。からのヘッドスライディング。

 目の前を手刀が横切り、頭の後ろに蹴りの風圧を感じた。ストンピングは俺の股を通って床を陥没させた。

 

 一つとして動作が見えない。

 死んでいない未来を観て、その通りに動いているだけだ。

 

 そもそも、俺が回避してから相手が攻撃している。

 現在の状況を見ても全く役に立たない。未来だけ観た方が楽かもしれない。

 

 すると脳みそ丸出しのヴィラン(脳無だったか?)に先生の包帯が巻き付いた。

 一瞬の隙をついて離脱する。

 

「いやー、強いな。ここまでとは・・・」

「あれだけ煽って今更なにいってんだ。余計なことしてくれやがって。」

 

 どうやらダメージは回復したようだ。時間を稼いだ甲斐があった。

 呼吸を整える。「個性」は何度も発動しまくってる。一秒気を抜いたら死んでる気がする。

 

「相澤先生、あいつの「個性」消しました?」

「ああ、消した後もパワーに変化が無かった。つまりあれが素の筋力ってことだ」

「うげえ、まじっすか」

 

 勘弁してほしい。緑谷並みのパワーが「個性」じゃないとか。

 

「ははは! さっきまでの調子はどうした? ヒーロー? ずいぶん余裕が無いじゃないか。」

 

 ずいぶん機嫌がよさそうだ。もしかして挑発のつもりか?

 

「お前、せめてそう言うセリフは立ち上がって言ってくれよ。結構ダサい。」

 

 俺が四肢の腱を切ったせいだが、倒れたままなのだ。もうちょっと頑張っていただきたい。むしろ悲しくなってしまう。

 

「脳無ゥウウ!!! 殺せェ!!」

 

「挑発しすぎだって言ったろうが! この馬鹿!!」

「うおおお!? すいませーん!!」

 

 とにかく回避する。

 気分は一発の被弾も許されない弾幕ゲーだ。

 違いはベットするのがコインか命かってこと!! スリル満点だなチクショウめ!!

 

 だが、先生が復活したおかげで余裕が出てきた。

 一瞬しか動きを止められないが、十分である。その隙に逃げれる。いったん脱出すると、なぜか水色の人の指示を待つのも好都合だ。

 

「ジリ貧ですね。持って20分ってところです」

「あの攻撃に20分耐えられるなら上等だ。・・・お前、持久走で手を抜いてたな。」

「滅相もない」

 

 手を抜いたわけではない。気力が尽きたので走るのを止めただけだ。

 

 そんなことより攻撃手段だ。またこれに悩まされるのか・・・

 

「相澤先生。さっきから未来視で確認してるんですけど、脳無というやつには攻撃が通じません。」

「どういうことだ?」

「ようするに俺じゃあどうあがいても傷をつける可能性が0%ってことです。あと、たぶん先生も」

「チッ どうするかな・・・」

 

 戦闘訓練の時と状況が似ている。こちらは攻撃できないのに向こうだけ攻撃できる。

 どうしてこう、ワンサイドゲームに縁があるのかなあ? むしろ俺がワンサイドゲームしたいんだけど?

 

 すると、黒いモヤのヴィランが水色の人の傍にワープしてきた。

 

「無事ですか、死柄木(しがらき)!?」

黒霧(くろぎり)か・・・何しに来た?」

 

 ほう、黒モヤは黒霧。水色は死柄木というのか。

 

「そうでした・・・。申し訳ありません。生徒の一人を取り逃がしました。応援をよばれてしまうでしょう。」

「はぁ?」

 

 おっと、グッドニュース。

 相澤先生の方を窺う。軽くうなずいてくれた。

 

 どうやら緊急事態には教員のプロヒーローがすぐさま集合してくれるようだ。

 この脳無が幾ら強くてもオールマイトにはかなうまい。

 

「・・・くそ、くそ、くそ! 黒霧、お前ワープゲートじゃなかったらバラバラにしてたよ」

「申し訳ありません・・・」

 

 つまり、援軍が来るまで耐えれば俺の勝ちだ。10分くらいかな?

 

「脳無! 誰でもいい(・・・・・)! ガキどもを一人でも多く殺せ!!」

 

 

 

 ――『それ』は、マズイ

 

 

 

「緑谷ァァァアア!!!! 下がれェェェ!!!!」

 

 脳無が駆け出す。後ろに向かって(・・・・・・・)

 俺を殺すのが難しいと判断したのかはわからない。そんなことはどうでもいい、脳無はこちらを選ばなかった。

 

 ―――そして、向こうには緑谷、梅雨ちゃん、峰田の三人がいた。

 

 緑谷が反応する。おそらく全力。迎撃を選んだ。

 

SMASH(スマッシュ)!!!」

 

 轟音。

 

 クラス最強の破壊力。自身さえ壊す力は伊達ではない。

 伊達ではないが――脳無には通用しなかった。脳無は吹き飛んですらいない。緑谷の拳の先で仁王立ちしている。

 

 緑谷が呆然としている。自分の力が足りないなど初めてなんだろう。だが、いまはマズイ。

 

「そこをどけ!!!」

 

 追いついた。

 目に向かってダーツを投擲。効き目があるかは知らん。気がそらせれば十分。

 

 その隙に緑谷が離脱した。

 俺は峰田と梅雨ちゃんを思い切り突き飛ばす。

 そして、脳無が苦し紛れに振るった腕が―――

 

「があ゛あ゛!!」

 

 かすった。

 掠っただけのはずだ。それでこれ?

 

「ごふ゛!?」

「先見ちゃん!!」

「おおお、おい! 大丈夫か!?」

 

 肺に、肋骨、刺さって、

 

「ち、血を吐いてる!? ヤバいってこれ!」

 

 峰田と梅雨ちゃんが慌てている。悪いなスマートな助け方じゃなくて。

 

 相澤先生と緑谷がしのいでくれてる。

 たのむ、あと、もうちょっとなんだ。

 

「先見ちゃん! しっかりして!!」

 

 悪い。無視してる訳じゃないんだ。ちょっとしゃべるのが無理なだけで。

 

 緑谷が吹き飛ばされた。脳無との距離が開く。

 ダメージは大したことなさそうだが、

 

 脳無がこちらを向いた。

 

 緑谷の位置からフォローに入ることはできない。先生の足止めもすぐに破られるだろう。

 

「あ゛ああ!! もうだめだ!!」

 

 峰田が叫ぶ。誰も脳無を止められない。

 こちらには重傷者が一人、逃げられない。状況は最悪だ。

 

 

 

 

 

 

 ――――ドゥン!!!!!

 

 

 

 

 

 そして、音が聞こえた。

 何かを吹き飛ばすような音だ。似たような音を俺は聞いたことがある。ついさっき聞いた。

 

 ・・・あれは、扉を蹴破る音だ。

 

 

 

 

「――みんな、もう大丈夫だ」

 

 

 

 

 やっときた、5分ジャスト。予測してたぜ

 

 

 

「わたしがきた!!!!!」

 

 

「「「オールマイト!!!」」」

 

 

 

 これで、ゲーム、クリアだ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公よりオールマイトがかっこいいですね。

アニメでもこのシーン大好きだったのでつい。

5分っていうのは緑谷に叫ぶちょっと前からです。


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